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第16章 魔王は4人で倒すもの
第214話 この一撃で
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しかし、火球を投げ飛ばそうとしたところでライトの動きが止まった。
「だめだよ。みんな、僕の大切な人なんだから」
その声はあどけなさが残っていたが、確かに怒りが籠っていた。
ライトがその声がするほうへと顔を向けると、杖にぶら下がって宙に浮いているリオンの姿があった。自分以外に空を飛べる者がいるとは思っていなかったのだろう。彼の存在にライトは目を見開くくらい驚いていた。
「たとえムギトくんの弟でも、みんなを傷つけるのは許さない」
そう言って鉄棒のようにくるっと逆上がりしたリオンは、空中に横たわった杖の上に立った。
「飛んでけ!」
手に魔力を溜めたリオンが、腕を振り上げて自ら風を作り出す。その風は息もできないほどの強い突風で、ライトの作った火球でさえもその風力によってかき消されてしまった。
この風力を前に、ライトは火球諸共吹っ飛ばされる。しかし、くるくると回転しながら飛ばされても、ライトは空気を掴むようにその場に手を置いて、吹っ飛ばされる自分を押さえ込んだ。
「チッ……仲間にだけは恵まれてるってことね」
ライトが青筋を立てながら大きな舌打ちをする。だが、俺たちの追撃は終わらない。
「その通りだよ」
そう言うと、ライトが俺のほうに顔を向けた。
ライトが怪訝そうに顔をしかめる。奴は俺が何をしたいかわかっていないようだ──猫の姿になったノアと一緒に大きなゴレムンちゃんの手にわざと握られている、この俺が。
「頼んだ! ゴレムンちゃん!」
俺のかけ声で、ゴレムンちゃんはピッチャーのように大きく振りかぶった。
振りかぶったゴレムンちゃんが、俺たちをボールに見立ててライトのほうへぶん投げる。人間大砲。球は俺たち自身だ。
「歯ぁ、食いしばれよ。ライト」
飛びながらも俺はバトルフォークを構えていた。そして、ちょうどライトと一直線上になったところで、持っていたバトルフォークを思い切り投げた。
力任せに投げたバトルフォークがまっすぐにライトのほうへ飛んでいく。スピードに乗ったバトルフォークに当たれば、貫通してしまうかもしれない。そう思ったのかライトは血相を変えながらさらに空へ飛んだ。
ギリギリ避けられたバトルフォークは、ライトをすり抜けて遠くの彼方へと過ぎ去る。その飛んでいったバトルフォークをライトは冷めた目で見送りながら、呆れたように息を吐いた。
「馬鹿なの? 武器を飛ばしたら丸腰になるだけでしょ」
しかも俺自身は勢い余ってライトの頭上を越えている。こんな空中だと、俺は格好の的だろう。今、あいつは完全に俺のことを見下している。絶対に俺の攻撃ターンは終わったと思っている。その油断こそ、俺の狙いだった。
「戻ってこい!」
そのひと声で、俺の手元にバトルフォークが戻ってきた。いきなり現れたバトルフォークにライトが目を瞠ったが、それでもこんな宙に浮いた状態で攻撃手段はないと思っているのだろう。冷ややかな眼差しは消えることはなかった。
だが、俺は攻撃を止めなかった。
「ノア!」
「ああ」
ノアが猫の姿から一瞬で聖獣の姿に変化する。だが、ノアの背中に乗るために聖獣になってもらった訳ではない。こいつには、足の踏み台になってもらうのだ。
ノアの背中に着地した俺は、すぐに彼女の背中を踏み蹴って足を高く振り上げた。
振り上げた勢いで逆さまになっていく。それでも俺は構わずにバトルフォークを自分の足先に合わせるようにそっと投げた。
「当たれ──おらぁ!」
声を荒らげながら、俺は空中で逆さまになりながらもバトルフォークの柄を蹴り飛ばした。その格好は、サッカーのオーバーヘッドキックによく似ていた。
『お前、普段も蹴ったほうがいいんじゃねえの?』
バトルフォークの柄を蹴った時、ふとライザが漏らしたあの言葉が聞こえてきた。あいつの言う通りだ。俺は、投げるより蹴ったほうがコントロールできる。その証拠に、蹴り落としたバトルフォークは重力に身を任せ、一直線にライトのほうへ飛んでいく。
「ぐはっ!」
落ちていくバトルフォークは見事にライトの肩元に直撃した。
「だめだよ。みんな、僕の大切な人なんだから」
その声はあどけなさが残っていたが、確かに怒りが籠っていた。
ライトがその声がするほうへと顔を向けると、杖にぶら下がって宙に浮いているリオンの姿があった。自分以外に空を飛べる者がいるとは思っていなかったのだろう。彼の存在にライトは目を見開くくらい驚いていた。
「たとえムギトくんの弟でも、みんなを傷つけるのは許さない」
そう言って鉄棒のようにくるっと逆上がりしたリオンは、空中に横たわった杖の上に立った。
「飛んでけ!」
手に魔力を溜めたリオンが、腕を振り上げて自ら風を作り出す。その風は息もできないほどの強い突風で、ライトの作った火球でさえもその風力によってかき消されてしまった。
この風力を前に、ライトは火球諸共吹っ飛ばされる。しかし、くるくると回転しながら飛ばされても、ライトは空気を掴むようにその場に手を置いて、吹っ飛ばされる自分を押さえ込んだ。
「チッ……仲間にだけは恵まれてるってことね」
ライトが青筋を立てながら大きな舌打ちをする。だが、俺たちの追撃は終わらない。
「その通りだよ」
そう言うと、ライトが俺のほうに顔を向けた。
ライトが怪訝そうに顔をしかめる。奴は俺が何をしたいかわかっていないようだ──猫の姿になったノアと一緒に大きなゴレムンちゃんの手にわざと握られている、この俺が。
「頼んだ! ゴレムンちゃん!」
俺のかけ声で、ゴレムンちゃんはピッチャーのように大きく振りかぶった。
振りかぶったゴレムンちゃんが、俺たちをボールに見立ててライトのほうへぶん投げる。人間大砲。球は俺たち自身だ。
「歯ぁ、食いしばれよ。ライト」
飛びながらも俺はバトルフォークを構えていた。そして、ちょうどライトと一直線上になったところで、持っていたバトルフォークを思い切り投げた。
力任せに投げたバトルフォークがまっすぐにライトのほうへ飛んでいく。スピードに乗ったバトルフォークに当たれば、貫通してしまうかもしれない。そう思ったのかライトは血相を変えながらさらに空へ飛んだ。
ギリギリ避けられたバトルフォークは、ライトをすり抜けて遠くの彼方へと過ぎ去る。その飛んでいったバトルフォークをライトは冷めた目で見送りながら、呆れたように息を吐いた。
「馬鹿なの? 武器を飛ばしたら丸腰になるだけでしょ」
しかも俺自身は勢い余ってライトの頭上を越えている。こんな空中だと、俺は格好の的だろう。今、あいつは完全に俺のことを見下している。絶対に俺の攻撃ターンは終わったと思っている。その油断こそ、俺の狙いだった。
「戻ってこい!」
そのひと声で、俺の手元にバトルフォークが戻ってきた。いきなり現れたバトルフォークにライトが目を瞠ったが、それでもこんな宙に浮いた状態で攻撃手段はないと思っているのだろう。冷ややかな眼差しは消えることはなかった。
だが、俺は攻撃を止めなかった。
「ノア!」
「ああ」
ノアが猫の姿から一瞬で聖獣の姿に変化する。だが、ノアの背中に乗るために聖獣になってもらった訳ではない。こいつには、足の踏み台になってもらうのだ。
ノアの背中に着地した俺は、すぐに彼女の背中を踏み蹴って足を高く振り上げた。
振り上げた勢いで逆さまになっていく。それでも俺は構わずにバトルフォークを自分の足先に合わせるようにそっと投げた。
「当たれ──おらぁ!」
声を荒らげながら、俺は空中で逆さまになりながらもバトルフォークの柄を蹴り飛ばした。その格好は、サッカーのオーバーヘッドキックによく似ていた。
『お前、普段も蹴ったほうがいいんじゃねえの?』
バトルフォークの柄を蹴った時、ふとライザが漏らしたあの言葉が聞こえてきた。あいつの言う通りだ。俺は、投げるより蹴ったほうがコントロールできる。その証拠に、蹴り落としたバトルフォークは重力に身を任せ、一直線にライトのほうへ飛んでいく。
「ぐはっ!」
落ちていくバトルフォークは見事にライトの肩元に直撃した。
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