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第16章 魔王は4人で倒すもの

第213話 VS魔王

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「なら、その希望をさっさと打ち砕いてやるよ。やってやろうぜ、ライト!」

「了解」

 セトの鶴の一声で、ライトは天に向かって腕を伸ばした。

 奴の腕からバチバチと電気が放出され、プラズマが発生している。そのプラズマが目が眩むくらい発光すると、いつの間にか奴の手には金色に輝く三叉槍が握られていた。長さはライトの身長ほどで、切っ先は銛のごとく鋭い。そんな立派な三叉槍を構える姿は、まさしく魔王だった。

「避けてみなよ。『落雷魔法サンボリッド』」

 ライトが魔法を詠唱すると、突き上げた三叉槍を中心に黒い雷雲が渦巻き始めた。

 黒雲が陽光を遮り、辺りを一気に暗くする。と思ったら、今度はピカッといきなり空が光った。

 嫌な予感がする。そう思った時にはすでに後ろへ飛んでいた。案の定、その瞬間に黒雲から稲妻が「ズドン」と重たい音を鳴らして落ちた。

 稲妻が落ちた場所は地面がえぐれており、赤茶色の大地が黒くなっていた。辺りには焦げ臭いにおいが漂う。これに当たっていたら即死だっただろう。

「一発で終わりだと思うなよ」

 ニンマリと笑いながら、ライトは三叉槍を大きく振り下ろした。それを合図に黒雲がバチバチと放電し始めた。

 だが、避けようとしたところで今度は俺の数メートル手前で雷が落ちた。こんな木一本もない開けた場所なら雷の性質上、落ちてくるのは俺たちだ。しかし、無作為にどんどん落ちてくる雷を前にしても、俺たちは一歩も動くことができなかった。光ってから落ちるまでが一瞬すぎて、全然目で終えていない。最初の一発を避けられたのが奇跡だ。これではいつか絶対当たってしまう。

「みなさん! 私の近くに!」

 セリナがいきなり声をあげたので、俺はすぐに彼女の近くに寄った。

「ゴレムンちゃん!」

 雷が落ちる中、セリナが叫びながら地面に両手をつける。その途端、地面がぼこぼこと波打ち、割れた地面から大きなゴーレムが出てきた。

 その途端、雷がゴレムンちゃんの上に落ちた。しかし、多少体は欠けたものの、ゴレムンちゃんは感電していない。これがセリナの狙いだったみたいだ。

 雷は高い物に落ちる性質がある。たとえライトが魔法で作り出した雷であっても、その性質は同じだった。こんな開けた場所で一番背の高いゴレムンちゃんは、雷に当たりやすい。こうしてわざと避雷針となることで、俺たちの代わりに雷を受けてくれているのだ。けれども、なけなしの魔力を使ったセリナはその場で座り込んでしまった。

「セリナ! お前はここで休んでろ!」

 ゴレムンちゃんは土だ。おそらくゴレムンちゃんの足元にいれば雷は食らわないだろう。しかし、それをライトが許さなかった。

「まったく、面倒臭いものを作って……」

 そう言いながらライトが三叉槍を掲げると、切っ先から特大な火球が出てきた。

 燃えたぎる火の玉がみるみると大きくなっていく。こちらへ飛ばそうとしているのは明白だ。だが、スピードが遅いゴレムンちゃんも、最早立つこともままならないセリナがあの火球を避けられるとは思えない。ここは誰かが受け止めるしか──

 そう思って立ちはだかろうとすると、アンジェが腕を伸ばして俺を止めた。

「あたしがやるわ」

 アンジェが飛んでくる火球に向けて剣を構えた。火球を捉えるアンジェの目が鷹のように鋭くなる。あの火球をぶった切るつもりなのだ。

「アンジェ!」

 彼の名前を呼んだ時、すでに彼は火球に向かって剣を振るっていた。

 剣に当たった火球が縦に割れ、剣筋を中心に二手に分かれて飛んでいく。飛んでいった火球のかけらは地面に落ち、地盤を黒く焦がした。この攻めた防御にはライトも唖然としていた。だが、一番肝を冷やしたのはアンジェ本人だった。

「あー……本当、死ぬかと思ったわ」

 頬を引き攣らせながら、アンジェが安堵の息をつく。そんな彼の剣の切っ先は赤く染め上がっていた。どうやら、剣先に熱をため込んだまま切ったらしい。随分前に旧灯台でぬりかべゴーレムと戦った時にも使った彼の新技だ。

「でも、そんな居合切りも数を増やせば意味はないでしょ」

 と、ライトが再び三叉槍を天に向ける。今度は三つの槍頭に一つずつ火球が現れた。先ほどよりも小さな火球とはいえ、当たったら燃えて丸焦げになってしまうだろう。あんな火球をバラバラのタイミングで飛ばされたら流石のアンジェでも切るのは難しい。それは本人が一番理解しているみたいで、アンジェは「くっ」と悔しそうに奥歯を噛みしめていた。
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