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第15章 絶望の街『イルニス』
第209話 決着
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自重のせいもあって、転んだせいで壊れたゴレムンちゃんは最早大きな岩と化していた。一生懸命元の姿に戻ろうとするが、動きがゆっくりのせいで体制を整えるのはまだまだ時間がかかりそうである。
セリナを護る騎士は、小さなゴーレムのゴレちゃんとムンちゃんだけとなってしまった。それでもセリナは決してうろたえなかった。
「頭上、気をつけたほうがいいですよ」
スッと空のほうへと向けるセリナの指の先を見ると、あの丸みを帯びた岩がケインの上を飛んでいた。それがゴレちゃん(※推定)だと気づいた時、ケインも驚きで息を呑んだ。ゴレちゃんが何かを背負っていたからだ。
「あなたのを真似て私も自作してみました。ご賞味ください」
ムンちゃんがケインにしがみついたタイミングで、セリナはパチンと指を鳴らした。それを合図にゴレちゃんが背負ったセリナ印のコア爆弾はゴレちゃん諸共爆発した。
ケインの無残な断末魔が響き渡る。爆風すらも起こらない爆発であったが、ゼロ距離の衝撃はケインに痛恨の一撃を与えるには十分過ぎた。
風の護りを使ったようだが、爆発のせいでケインの服はやぶれ、体は火傷で赤くなり、顔や腕など肌をさらけ出しているところは血が出ていた。
だが、セリナの追撃は終わらない。
「──こういうのも作ってみたのですが、いかがでしょう」
セリナのその言葉を合図に、地面からムンちゃん(※推定)が飛び出てきた。
飛び出たムンちゃんは、野球ボールくらいの大きさの球体を掲げていた。ただし、その球体は茶色と青が混ざり合ったおどろおどろしい色をしていた。
「なんだあれ……アース・コアと何か混ざってる?」
球体の正体がわからず、小首を傾げるケイン。そんな怪訝な顔をするケインの前に向けて、ムンちゃんは勢い良く球体を叩きつけた。
球体が地面の上で弾けた途端、ケインの周りだけ地盤がいきなり液体となった。
何が起こったか理解する前に、ケインの体は底なし沼のように泥と化した地盤へと沈んでいく。あっという間に膝元まで沈んだが、奴は「沈んでたまるか」と顔を真っ赤にしながら必死にもがいていた。だが、それも無駄な抵抗で、もがけばもがくほど、奴の体は沈んでいく。
異様な光景にアンジェやリオンも目が点になっていたが、俺はなんとなく察しがついていた。あれは多分「液状化現象」だ。
大地震があった時、震源地で道路があんなドロドロの液体になっているところ以前テレビで見たことがある。大地震が起こると、地震の揺れで地盤が泥のような液体になってしまう場合があるのだそうだ。
多分、あの球体はアース・コアとウォーター・コアを混ぜて地面に叩きつけることで、一部の地盤を液状化させられるようにしたのだろう。そしてそれにはまってしまった者は、ああやって埋まって身動きができなくなる。
こうしている間も、ケインの体はもう腰元まで沈んでいた。ここまで来るとケインも諦めたようで、抵抗もしなくなっていた。
「やれやれ……どうせ何をやっても死なないから、生き埋めにするってことだろ。あんた、本当にやることえぐいな」
疲れた顔をしながら、ケインは自分を見下ろすセリナに笑った。
今となっては、あのゴレムンちゃんにひたすら地面を殴らせていたのも、地盤を脆くさせるためだったように思えてならなかった。ケインがウォーター・コアで辺りを濡らしたのは棚から牡丹餅だったかもしれないが、それでも、事は彼女の思惑通りに進んでいたのだ。全ては、この一撃のために。
しかし、勝利を飾った後でも、セリナは氷のように冷たい表情を浮かべていた。
「……それくらい、あなたは私を怒らせたということですよ」
そう静かに告げるセリナだったが、ケインは「そうかい」と鼻を鳴らすだけだった。
火花が散り終わった戦場に静粛さが戻る。そろそろ、この戦いにも幕を下ろさなければならない。
「……リオン、お願いを聞いてくれるか」
リオンに請うと、彼は無言のまま首を縦に振った。
リオンが自分の杖を振ると、俺の体はふわりと宙に浮いた。重力を無視した風の移動魔法だ。リオンは俺に魔法をかけたまま、慎重にケインに近づけさせた。以前旧灯台の螺旋階段でぶっ飛ばされた時とは雲泥の差のコントロールだった。
セリナを護る騎士は、小さなゴーレムのゴレちゃんとムンちゃんだけとなってしまった。それでもセリナは決してうろたえなかった。
「頭上、気をつけたほうがいいですよ」
スッと空のほうへと向けるセリナの指の先を見ると、あの丸みを帯びた岩がケインの上を飛んでいた。それがゴレちゃん(※推定)だと気づいた時、ケインも驚きで息を呑んだ。ゴレちゃんが何かを背負っていたからだ。
「あなたのを真似て私も自作してみました。ご賞味ください」
ムンちゃんがケインにしがみついたタイミングで、セリナはパチンと指を鳴らした。それを合図にゴレちゃんが背負ったセリナ印のコア爆弾はゴレちゃん諸共爆発した。
ケインの無残な断末魔が響き渡る。爆風すらも起こらない爆発であったが、ゼロ距離の衝撃はケインに痛恨の一撃を与えるには十分過ぎた。
風の護りを使ったようだが、爆発のせいでケインの服はやぶれ、体は火傷で赤くなり、顔や腕など肌をさらけ出しているところは血が出ていた。
だが、セリナの追撃は終わらない。
「──こういうのも作ってみたのですが、いかがでしょう」
セリナのその言葉を合図に、地面からムンちゃん(※推定)が飛び出てきた。
飛び出たムンちゃんは、野球ボールくらいの大きさの球体を掲げていた。ただし、その球体は茶色と青が混ざり合ったおどろおどろしい色をしていた。
「なんだあれ……アース・コアと何か混ざってる?」
球体の正体がわからず、小首を傾げるケイン。そんな怪訝な顔をするケインの前に向けて、ムンちゃんは勢い良く球体を叩きつけた。
球体が地面の上で弾けた途端、ケインの周りだけ地盤がいきなり液体となった。
何が起こったか理解する前に、ケインの体は底なし沼のように泥と化した地盤へと沈んでいく。あっという間に膝元まで沈んだが、奴は「沈んでたまるか」と顔を真っ赤にしながら必死にもがいていた。だが、それも無駄な抵抗で、もがけばもがくほど、奴の体は沈んでいく。
異様な光景にアンジェやリオンも目が点になっていたが、俺はなんとなく察しがついていた。あれは多分「液状化現象」だ。
大地震があった時、震源地で道路があんなドロドロの液体になっているところ以前テレビで見たことがある。大地震が起こると、地震の揺れで地盤が泥のような液体になってしまう場合があるのだそうだ。
多分、あの球体はアース・コアとウォーター・コアを混ぜて地面に叩きつけることで、一部の地盤を液状化させられるようにしたのだろう。そしてそれにはまってしまった者は、ああやって埋まって身動きができなくなる。
こうしている間も、ケインの体はもう腰元まで沈んでいた。ここまで来るとケインも諦めたようで、抵抗もしなくなっていた。
「やれやれ……どうせ何をやっても死なないから、生き埋めにするってことだろ。あんた、本当にやることえぐいな」
疲れた顔をしながら、ケインは自分を見下ろすセリナに笑った。
今となっては、あのゴレムンちゃんにひたすら地面を殴らせていたのも、地盤を脆くさせるためだったように思えてならなかった。ケインがウォーター・コアで辺りを濡らしたのは棚から牡丹餅だったかもしれないが、それでも、事は彼女の思惑通りに進んでいたのだ。全ては、この一撃のために。
しかし、勝利を飾った後でも、セリナは氷のように冷たい表情を浮かべていた。
「……それくらい、あなたは私を怒らせたということですよ」
そう静かに告げるセリナだったが、ケインは「そうかい」と鼻を鳴らすだけだった。
火花が散り終わった戦場に静粛さが戻る。そろそろ、この戦いにも幕を下ろさなければならない。
「……リオン、お願いを聞いてくれるか」
リオンに請うと、彼は無言のまま首を縦に振った。
リオンが自分の杖を振ると、俺の体はふわりと宙に浮いた。重力を無視した風の移動魔法だ。リオンは俺に魔法をかけたまま、慎重にケインに近づけさせた。以前旧灯台の螺旋階段でぶっ飛ばされた時とは雲泥の差のコントロールだった。
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