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第13章 神と魔王が動き出す
第182話 仲間、三人目
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小さくため息をつきながら、フーリは言う。
「……墓のことは任せろ。俺が見といてやる」
「ええ……ありがとう。これで心置きなく旅立てるわ」
「でも、お前らの墓を作る気はないからな。きっちり魔王をぶん殴って、あいつらを見返してやれ。リオンも、こいつらのこと頼むぞ」
「うん、またお馬さんに乗せてね」
「色々ありがとうな。セントリーヌにも礼を言っておいてくれ」
「おう、了解」
手をかかげて挨拶するフーリの顔が寂しそうだ。だが、このやり取りの最中もセリナはずっと黙りこんでいた。
ああ、そうか。セリナともここでお別れか。
切なさにキュッと胸が絞めつけられたが、時間は待ってくれない。俺は鞄からギルドカードを取りだし、セリナに渡そうとした。だが、それもアンジェに遮られた。
「待って。ムギちゃんも出すなら、あたしも出すわよ」
そう言ってアンジェは自分のギルドカードを取り出し、俺と一緒にセリナに渡した。けれども、セリナはそれを受け取ろうとしない。
その様子を見たフーリは「は~」と深いため息をしながら、ポリポリと自分の頭を掻いた。
「悪いが……もらうのはこっちなんだわ」
そう言いながらフーリが手を差し出す。ポカンとしながらセリナを見ると、彼女は意を決したように俺たちに告げた。
「私──ムギトさんたちについていきたいです」
「……え?」
想定外の言葉に三人共目が点になる。けれども、セレナはその真剣な表情を崩さなかった。
「ずっと思っていたんです。親友の仇もアンジェさんに任せっぱなしで、ムギトさんたちにも命を救ってもらったのに何もしてなくて……私もみなさんの力になりたいんです。どうか、お願いします」
セリナに深々と頭を下げられ、たまらず戸惑う。だが、助けを求めるようにフーリを見ても目を逸らされるだけだし、アンジェもニコニコと笑うだけで何も言ってこない。まるで、決めるのは俺だと言っているようだ。
「いいのか? 帰って来られるかもわからないし……それに……こんな俺と……」
念のため確認をしてみたが、自分で言っておいて、どんどん声が小さくなっていた。
この先、何があるかわからない。自分の命さえ賭けることになる。そんな危険な旅にセリナを付き合わせていいのか。こんな俺に、彼女の命がかかっていいのか。
そんなことを考えていると、セリナはニコッと笑った。
「──ムギトさんだから、一緒に行きたいと思ったんですよ」
その優しくて眩しい笑顔に、俺の体温が一気に上がった。同時に鼻の奥もツンと痛くなって、目頭も熱くなった。
ああ、そうだ。セリナってこういう子だった。こういう時にこんな言葉で終わらせていいのかわからないが、本当に好──
「ひゅ~。モッテモテ」
──俺の思考を遮るようにフーリが茶化してくる。恨めしそうに顔をやると、フーリは「フッ」と小さく笑って俺の肩を叩いた。
「まあ……これでわかっただろ。お前、自分が思っている以上に周りに慕われているんだぜ」
フーリが流れるように視線を上げる。その先にはアンジェとリオンがいた。そして今、それに混ざるようにセリナがゆっくりと彼らに近づく。三人共、俺を見て優しく微笑んでいた。こんな彼らに言えることは、ただ一つ。
「……よろしく、頼む」
そう言うと、みんな目を細めた。
優しい朝陽が木のすき間からこぼれ落ちる。こぼれ落ちた光はイルマとアンジェの親父さんの墓をそっと照らす。まるで俺たちを、アンジェとセリナを、見送るように。
アンジェはその墓の前にひざまずくと、祈るように指を絡めた。目を閉じたアンジェが無言を貫く。きっと、心の中で彼らに別れを告げているのだろう。俺たちはそよぐ風の声を聞きながら、アンジェの祈りが終えるのを待った。
やがてアンジェがゆっくりと立ち上がった。
「……墓のことは任せろ。俺が見といてやる」
「ええ……ありがとう。これで心置きなく旅立てるわ」
「でも、お前らの墓を作る気はないからな。きっちり魔王をぶん殴って、あいつらを見返してやれ。リオンも、こいつらのこと頼むぞ」
「うん、またお馬さんに乗せてね」
「色々ありがとうな。セントリーヌにも礼を言っておいてくれ」
「おう、了解」
手をかかげて挨拶するフーリの顔が寂しそうだ。だが、このやり取りの最中もセリナはずっと黙りこんでいた。
ああ、そうか。セリナともここでお別れか。
切なさにキュッと胸が絞めつけられたが、時間は待ってくれない。俺は鞄からギルドカードを取りだし、セリナに渡そうとした。だが、それもアンジェに遮られた。
「待って。ムギちゃんも出すなら、あたしも出すわよ」
そう言ってアンジェは自分のギルドカードを取り出し、俺と一緒にセリナに渡した。けれども、セリナはそれを受け取ろうとしない。
その様子を見たフーリは「は~」と深いため息をしながら、ポリポリと自分の頭を掻いた。
「悪いが……もらうのはこっちなんだわ」
そう言いながらフーリが手を差し出す。ポカンとしながらセリナを見ると、彼女は意を決したように俺たちに告げた。
「私──ムギトさんたちについていきたいです」
「……え?」
想定外の言葉に三人共目が点になる。けれども、セレナはその真剣な表情を崩さなかった。
「ずっと思っていたんです。親友の仇もアンジェさんに任せっぱなしで、ムギトさんたちにも命を救ってもらったのに何もしてなくて……私もみなさんの力になりたいんです。どうか、お願いします」
セリナに深々と頭を下げられ、たまらず戸惑う。だが、助けを求めるようにフーリを見ても目を逸らされるだけだし、アンジェもニコニコと笑うだけで何も言ってこない。まるで、決めるのは俺だと言っているようだ。
「いいのか? 帰って来られるかもわからないし……それに……こんな俺と……」
念のため確認をしてみたが、自分で言っておいて、どんどん声が小さくなっていた。
この先、何があるかわからない。自分の命さえ賭けることになる。そんな危険な旅にセリナを付き合わせていいのか。こんな俺に、彼女の命がかかっていいのか。
そんなことを考えていると、セリナはニコッと笑った。
「──ムギトさんだから、一緒に行きたいと思ったんですよ」
その優しくて眩しい笑顔に、俺の体温が一気に上がった。同時に鼻の奥もツンと痛くなって、目頭も熱くなった。
ああ、そうだ。セリナってこういう子だった。こういう時にこんな言葉で終わらせていいのかわからないが、本当に好──
「ひゅ~。モッテモテ」
──俺の思考を遮るようにフーリが茶化してくる。恨めしそうに顔をやると、フーリは「フッ」と小さく笑って俺の肩を叩いた。
「まあ……これでわかっただろ。お前、自分が思っている以上に周りに慕われているんだぜ」
フーリが流れるように視線を上げる。その先にはアンジェとリオンがいた。そして今、それに混ざるようにセリナがゆっくりと彼らに近づく。三人共、俺を見て優しく微笑んでいた。こんな彼らに言えることは、ただ一つ。
「……よろしく、頼む」
そう言うと、みんな目を細めた。
優しい朝陽が木のすき間からこぼれ落ちる。こぼれ落ちた光はイルマとアンジェの親父さんの墓をそっと照らす。まるで俺たちを、アンジェとセリナを、見送るように。
アンジェはその墓の前にひざまずくと、祈るように指を絡めた。目を閉じたアンジェが無言を貫く。きっと、心の中で彼らに別れを告げているのだろう。俺たちはそよぐ風の声を聞きながら、アンジェの祈りが終えるのを待った。
やがてアンジェがゆっくりと立ち上がった。
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