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第12章 VS暗殺者・パルス
第164話 クラス名:アサシン
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「なっ!?」
突然消えたパルスに俺は足を止める。
「にゃろう」
神経を尖らせ辺りを見回す。だが、あの一瞬でパルスの気配すら感じなくなった。
焦りと緊張感でごくりと唾を呑む。そんな俺を嘲笑うかのように今度は背後で殺気を感じる。
「ほらほら、がら空きですよ」
パルスの声に慌てて振り向くと、奴はリオンの後ろで短剣を構えていた。リオンが気づいた時にはすでに短剣を振りかざしており、この間合いではたとえリオンの魔法でも避けられない。
「うらぁ!」
反射的に持っていたバトルフォークを奴に向けて突く。隣にいたアンジェも剣を振るっており、パルスは両サイドから攻撃が飛んでいた。
「おっと」
軽い声と共に再びパルスが水に潜る。消えたと同時に俺のバトルフォークはアンジェの剣とぶつかり、十字の形に交わった。
ハッと振り返るとパルスは先ほどまで彼がいた定位置に戻っていた。
床を水浸しにするなんて面倒なことをどうしてするのかと思っていたが、答えは思いの外シンプルだった。
水中移動。それがこいつのスキルだ。
「もう……ムカつくスキルね」
目くじらを立てるアンジェが舌打ち交じりで呟く。その様子にパルスはニヤニヤと笑う。
「そうでもないですよ。なんせ移動しかできませんからね。残念ながら僕は攻撃魔法には恵まれませんでしたので……武器もこのようにありふれたものです」
と言いながらパルスは持っていた短剣を軽く投げてキャッチする。「ありふれた」とか言いながら今の攻撃スピードといい、その短剣の空中キャッチといい、手馴れている感じは見て取れた。
水中移動といい、変化魔法といい、おまけに攻撃は手早い接近戦。特技は暗躍といったところか。
「お前……もしかして【暗殺者】か?」
低い声で答えを求めると、パルスは「ご名答」と口角を上げた。
姿は消せるが、攻撃は近距離か。なるほど、それならば遠距離も近距離も魔法でどうにでもなるリオンが一番やりにくいのか。だが遠近両方攻撃を扱えるのはリオンだけではない。
「――なら、あたしも天敵かしら!?」
発言と共にアンジェが切っ先を向ける。その途端に切っ先から炎が噴射されパルスまで一直線に放たれた。
「おっと」
驚いたのは口調だけで、パルスは再び水の中に潜んだ。そして今度は部屋の角まで移動し、俺たちから距離を取る。
「危ないですね。当たれば丸焦げでした」
そう言ってパルスはひと息つく。同じ水属性でも攻撃が水魔法だったライザと違い、攻撃魔法を扱えない分、奴は魔法属性の優劣はなさそうだ。ただ、「攻撃が当たらない」というだけで。
攻撃が当てにくいのは何もアンジェだけではない。近距離攻撃しかダメージを与えられない俺が一番不利だ。
「俺……やっぱお前のこと嫌いだわ」
こんな部屋の端の端まで広範囲で逃げられたらやりやなくいったらありゃしない。こいつが水に潜って逃げるのをどうにかしたいが、さて、どうしたものか。
「ムギト君、下がって」
考えている横でリオンの声がしたので振り向くと、彼の杖についた風核《ウィンド・コア》がまたぼんやりと光っていた。
「『竜巻魔法』」
呪文を唱えると、床からいきなり竜巻が現れた。
巻き込まれないようにバックステップで避ける。
ハッと顔を上げると床に張られた水がリオンが出した竜巻に吸い込まれていった。
まるで某メーカーのサイクロン掃除機のように水は渦巻いている。しかもこの時は水は吸い込まれているからパルスが逃げられるような水量はなかった。
これにはパルスも感心したように口角を上げて「ひゅぅ」と口笛のような息が漏れた。
「やりますね。でも、無防備になってますよ」
そう言ってパルスは短剣を構えてリオンに突っ込む。
「させっかよ」
と、気合い十分に奴に臨戦したが、振りかぶったバトルフォークをパルスは難なくしゃがんで避けた。
俺を華麗にスルーしたパルスは素早く体制を直してリオンに駆け寄る。だが、今度はアンジェに阻まれ、パルスが突き刺した短剣はアンジェの剣に防がれた。
「さけないわよ……」
振り切ろうと剣に力を籠めるが、逆にパルスに押さえ込まれていた。そして僅かな隙を見極めてするりと受け流したパルスはさらに踏み込んでアンジェの懐に短剣を突き刺そうとした。
だが、その間に今度は空を舞っていた水が大粒の雨のように一気に降り注いだ。
突然消えたパルスに俺は足を止める。
「にゃろう」
神経を尖らせ辺りを見回す。だが、あの一瞬でパルスの気配すら感じなくなった。
焦りと緊張感でごくりと唾を呑む。そんな俺を嘲笑うかのように今度は背後で殺気を感じる。
「ほらほら、がら空きですよ」
パルスの声に慌てて振り向くと、奴はリオンの後ろで短剣を構えていた。リオンが気づいた時にはすでに短剣を振りかざしており、この間合いではたとえリオンの魔法でも避けられない。
「うらぁ!」
反射的に持っていたバトルフォークを奴に向けて突く。隣にいたアンジェも剣を振るっており、パルスは両サイドから攻撃が飛んでいた。
「おっと」
軽い声と共に再びパルスが水に潜る。消えたと同時に俺のバトルフォークはアンジェの剣とぶつかり、十字の形に交わった。
ハッと振り返るとパルスは先ほどまで彼がいた定位置に戻っていた。
床を水浸しにするなんて面倒なことをどうしてするのかと思っていたが、答えは思いの外シンプルだった。
水中移動。それがこいつのスキルだ。
「もう……ムカつくスキルね」
目くじらを立てるアンジェが舌打ち交じりで呟く。その様子にパルスはニヤニヤと笑う。
「そうでもないですよ。なんせ移動しかできませんからね。残念ながら僕は攻撃魔法には恵まれませんでしたので……武器もこのようにありふれたものです」
と言いながらパルスは持っていた短剣を軽く投げてキャッチする。「ありふれた」とか言いながら今の攻撃スピードといい、その短剣の空中キャッチといい、手馴れている感じは見て取れた。
水中移動といい、変化魔法といい、おまけに攻撃は手早い接近戦。特技は暗躍といったところか。
「お前……もしかして【暗殺者】か?」
低い声で答えを求めると、パルスは「ご名答」と口角を上げた。
姿は消せるが、攻撃は近距離か。なるほど、それならば遠距離も近距離も魔法でどうにでもなるリオンが一番やりにくいのか。だが遠近両方攻撃を扱えるのはリオンだけではない。
「――なら、あたしも天敵かしら!?」
発言と共にアンジェが切っ先を向ける。その途端に切っ先から炎が噴射されパルスまで一直線に放たれた。
「おっと」
驚いたのは口調だけで、パルスは再び水の中に潜んだ。そして今度は部屋の角まで移動し、俺たちから距離を取る。
「危ないですね。当たれば丸焦げでした」
そう言ってパルスはひと息つく。同じ水属性でも攻撃が水魔法だったライザと違い、攻撃魔法を扱えない分、奴は魔法属性の優劣はなさそうだ。ただ、「攻撃が当たらない」というだけで。
攻撃が当てにくいのは何もアンジェだけではない。近距離攻撃しかダメージを与えられない俺が一番不利だ。
「俺……やっぱお前のこと嫌いだわ」
こんな部屋の端の端まで広範囲で逃げられたらやりやなくいったらありゃしない。こいつが水に潜って逃げるのをどうにかしたいが、さて、どうしたものか。
「ムギト君、下がって」
考えている横でリオンの声がしたので振り向くと、彼の杖についた風核《ウィンド・コア》がまたぼんやりと光っていた。
「『竜巻魔法』」
呪文を唱えると、床からいきなり竜巻が現れた。
巻き込まれないようにバックステップで避ける。
ハッと顔を上げると床に張られた水がリオンが出した竜巻に吸い込まれていった。
まるで某メーカーのサイクロン掃除機のように水は渦巻いている。しかもこの時は水は吸い込まれているからパルスが逃げられるような水量はなかった。
これにはパルスも感心したように口角を上げて「ひゅぅ」と口笛のような息が漏れた。
「やりますね。でも、無防備になってますよ」
そう言ってパルスは短剣を構えてリオンに突っ込む。
「させっかよ」
と、気合い十分に奴に臨戦したが、振りかぶったバトルフォークをパルスは難なくしゃがんで避けた。
俺を華麗にスルーしたパルスは素早く体制を直してリオンに駆け寄る。だが、今度はアンジェに阻まれ、パルスが突き刺した短剣はアンジェの剣に防がれた。
「さけないわよ……」
振り切ろうと剣に力を籠めるが、逆にパルスに押さえ込まれていた。そして僅かな隙を見極めてするりと受け流したパルスはさらに踏み込んでアンジェの懐に短剣を突き刺そうとした。
だが、その間に今度は空を舞っていた水が大粒の雨のように一気に降り注いだ。
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