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第8章 崩壊の足音
第131話 報酬の話
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「ここからは仕事の話をしましょう。クエストはクリアしました。報酬はどうしますか?」
「あ、そういえば報酬とかあったな」
すっかり忘れていたが、確か望むものはなんでもいいと言われていたのだった。
「といっても、すぐには浮かばないよな……」
武器もどうせフォークしか使えないし、防具と言ってもピンとくるものもない。やはり、金か。
腕を組んで悩んでいる横で、アンジェも一緒になって考え込む。
と、それも束の間。アンジェは「そうだ!」と言って思いついたように手を叩いた。
「あたし、アイス・コア・ボックスがほしい!」
「アイス・コア・ボックス?」
意外なところが出たようで、セバスもフーリも口を揃えて素っ頓狂な声をあげる。しかし、それは俺も賛成だ。人数も増えし、冷蔵庫があれば何かと便利だろう。何よりアンジェの美味い飯のレパートリーが増える。
「この子の家に立派な箱があったのよ。ねえ、いいでしょ、セバちゃ~ん。あたしのために作って~」
甘えた口調でアンジェはセバスの腕を取るが、強請られているセバスは頬を引き攣らせて固まっていた。
「作るのは構いませんが……あれ程の代物ですと上等なアイス・コアがないと作れませんよ」
「ギルドに行けばあるかもしれないが……いかんせんあんな惨状だからな。見つかるかどうか」
「あら……そうなの。残念」
セバスとフーリの言葉にアンジェは口をへの字にする。彼らの言う通り、あんな爆破されて半壊状態の建物の中でコアを探すのはちょっと骨が折れそうだ。
「ん? 上等のアイス・コア?」
話題に出されて思い出したが、何個かコアを持っていたのを思い出した。
「これ、『ザラクの森』の魔物のコアなんだけど、使えそうか?」
ショルダーバッグを開け、ブルースピリットや死神のコアをセバスに渡す。
すると、そのコアを見てセバスとフーリが「おお!」と声をあげた。
「なんですかこのコアは!?」
「俺でもわかるよ! これ一個で十分立派なアイス・コア・ボックスが作れるくらい上等品だ!」
「え? マジで? 当たり?」
おそらく彼らが言っているのは死神のコアだ。あいつとの戦いは思い出しただけで総毛立つほどトラウマ級の戦闘だった。本気で死ぬかと思ったし、アンジェも死んだかと思ったし、けれども、これがそんな優良なコアで本当によかった。
「他のコアもこれには劣るがなかなかいいですよ。概算でも一万ヴァルは取れるでしょう」
「凄いじゃねえかムギト。いったい、どうやってこんな魔物倒したんだよ」
興奮するセバスとフーリに詰め寄られ、「えっと……」と口籠る。
「どうやってと言われても、あの時は必死だったし――あれ?」
そこまで言って、口が詰まった。確かにあの時は必死だったし、結果的にあの方法でしか打破する手立てはなかった。
――でも、どうして今更あれが使えたことにこんなにも違和感を抱いているのだろう。
「ムギト……おーい、ムギト~?」
フーリに名を呼ばれ、ハッとする。この考え事も傍からだと魂が抜けたように見えたらしい。
「あ、悪い……なんだっけ?」
「このコアをどうするかってこと。全部換金していいのか?」
「あ、ああ……そうしてもらおうかな。リオンの備品も買わねえと」
「そうね。この子、服すらまともに持ってないし」
「あ、換金で思い出したけど、お前ら指名手配の荒くれをやっつけてくれたろ? あれの報酬も出るぞ」
「あら、あいつらも無事に御用となったのね」
「でも、いいのか? 連行したのお前らだろ? ギルドも復興に金がかかるんじゃねえの?」
「やっつけたのはお前らだからいいんだよ。もらっとけ」
「そうか……そう言うなら、遠慮なく」
予期せぬ収入に思わず笑みがこぼれる。一人増える分、出費も多くなるから臨時収入はありがたい。これにはアンジェもにっこりだ。
そんな会話をしている最中、リオンはベッドの端にちょこんと座りながら、じっとセリナを見つめていた。
「……ありがとう、リオン君」
横たわりながらもセリナはニコッと微笑む。覇気はまだないが、今までと比べるとだいぶ顔色も良くなっている。その成果がリオンも嬉しいらしく、釣られるように破顔した。
「あの、私もみなさんにお礼をしたいのですが……」
「あー、いいよ。無理すんな」
「そうそう。あなたが元気になることだけで十分なんだから」
アンジェが「ウフッ」と笑いながらセリナの頭を撫でるが、セリナは「でも」と退かなかった。命を救われた身だからか、彼女も何かしないと気が済まないのかもしれない。
「あ、そういえば報酬とかあったな」
すっかり忘れていたが、確か望むものはなんでもいいと言われていたのだった。
「といっても、すぐには浮かばないよな……」
武器もどうせフォークしか使えないし、防具と言ってもピンとくるものもない。やはり、金か。
腕を組んで悩んでいる横で、アンジェも一緒になって考え込む。
と、それも束の間。アンジェは「そうだ!」と言って思いついたように手を叩いた。
「あたし、アイス・コア・ボックスがほしい!」
「アイス・コア・ボックス?」
意外なところが出たようで、セバスもフーリも口を揃えて素っ頓狂な声をあげる。しかし、それは俺も賛成だ。人数も増えし、冷蔵庫があれば何かと便利だろう。何よりアンジェの美味い飯のレパートリーが増える。
「この子の家に立派な箱があったのよ。ねえ、いいでしょ、セバちゃ~ん。あたしのために作って~」
甘えた口調でアンジェはセバスの腕を取るが、強請られているセバスは頬を引き攣らせて固まっていた。
「作るのは構いませんが……あれ程の代物ですと上等なアイス・コアがないと作れませんよ」
「ギルドに行けばあるかもしれないが……いかんせんあんな惨状だからな。見つかるかどうか」
「あら……そうなの。残念」
セバスとフーリの言葉にアンジェは口をへの字にする。彼らの言う通り、あんな爆破されて半壊状態の建物の中でコアを探すのはちょっと骨が折れそうだ。
「ん? 上等のアイス・コア?」
話題に出されて思い出したが、何個かコアを持っていたのを思い出した。
「これ、『ザラクの森』の魔物のコアなんだけど、使えそうか?」
ショルダーバッグを開け、ブルースピリットや死神のコアをセバスに渡す。
すると、そのコアを見てセバスとフーリが「おお!」と声をあげた。
「なんですかこのコアは!?」
「俺でもわかるよ! これ一個で十分立派なアイス・コア・ボックスが作れるくらい上等品だ!」
「え? マジで? 当たり?」
おそらく彼らが言っているのは死神のコアだ。あいつとの戦いは思い出しただけで総毛立つほどトラウマ級の戦闘だった。本気で死ぬかと思ったし、アンジェも死んだかと思ったし、けれども、これがそんな優良なコアで本当によかった。
「他のコアもこれには劣るがなかなかいいですよ。概算でも一万ヴァルは取れるでしょう」
「凄いじゃねえかムギト。いったい、どうやってこんな魔物倒したんだよ」
興奮するセバスとフーリに詰め寄られ、「えっと……」と口籠る。
「どうやってと言われても、あの時は必死だったし――あれ?」
そこまで言って、口が詰まった。確かにあの時は必死だったし、結果的にあの方法でしか打破する手立てはなかった。
――でも、どうして今更あれが使えたことにこんなにも違和感を抱いているのだろう。
「ムギト……おーい、ムギト~?」
フーリに名を呼ばれ、ハッとする。この考え事も傍からだと魂が抜けたように見えたらしい。
「あ、悪い……なんだっけ?」
「このコアをどうするかってこと。全部換金していいのか?」
「あ、ああ……そうしてもらおうかな。リオンの備品も買わねえと」
「そうね。この子、服すらまともに持ってないし」
「あ、換金で思い出したけど、お前ら指名手配の荒くれをやっつけてくれたろ? あれの報酬も出るぞ」
「あら、あいつらも無事に御用となったのね」
「でも、いいのか? 連行したのお前らだろ? ギルドも復興に金がかかるんじゃねえの?」
「やっつけたのはお前らだからいいんだよ。もらっとけ」
「そうか……そう言うなら、遠慮なく」
予期せぬ収入に思わず笑みがこぼれる。一人増える分、出費も多くなるから臨時収入はありがたい。これにはアンジェもにっこりだ。
そんな会話をしている最中、リオンはベッドの端にちょこんと座りながら、じっとセリナを見つめていた。
「……ありがとう、リオン君」
横たわりながらもセリナはニコッと微笑む。覇気はまだないが、今までと比べるとだいぶ顔色も良くなっている。その成果がリオンも嬉しいらしく、釣られるように破顔した。
「あの、私もみなさんにお礼をしたいのですが……」
「あー、いいよ。無理すんな」
「そうそう。あなたが元気になることだけで十分なんだから」
アンジェが「ウフッ」と笑いながらセリナの頭を撫でるが、セリナは「でも」と退かなかった。命を救われた身だからか、彼女も何かしないと気が済まないのかもしれない。
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