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第5章 『死の森』へ
第85話 俺、覚醒
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辺りの空気が凍りついているのが自分でもわかった。
俺の魔力が溢れ出しているのだろうか。広げた俺の両手から紫色の光がぼんやりと光っていた。
俺の異様な気配にエレメントたちがうろたえる。だが、もう泣いても喚いても無駄だ。
イメージ? 情熱? 勢い そんなこと、しったこっちゃねえよ。ただ今は――こいつらを一匹残らずぶちのめしたい。
それが、俺が初めて抱いた殺意だった。
「俺を怒らせたこと……後悔させてやる」
怒りをぶつけるように奴らを鋭く睨みつける。
そして最大限の魔力を込めて、俺は奴らに向かって両腕を振り払った。
「『集団即死魔法』」
魔法を詠唱すると、放たれた青い光がパァン!と分裂した。
弾けた青い光は骸の形に変化し、エレメントたちの元へ飛んでいく。
そして骸を模った光が奴らを貫通した時、この森につんざく金切り声が一面に轟いた。
陽炎に似た紫色の靄が燃えるように広がるエレメントたちが絶命したのだ。だが俺は奴らの最期を見届けることなく、その場で膝を落とした。
あの魔法を放ってからいきなり全身に力が入らなくなった。魔力が枯渇してしまったのだろう。ただ、ポタポタとエレメントたちが残したコアが落ちる音を聞きながら、枯れた草原にうずくまる。
横たわったまま呆然としていていると、森の空気が変わった気配を感じた。
力を振り絞って体を起こし上げると、あれだけ霧のように濃かった『陰の気』が少し晴れていることに気づいた。ひょっとすると、あの死神をぶっ倒したから『陰の気』が弱まったのかもしれない。
そうだ。こんなところでうかうかしてられないのだった。
振り返り、後ろで横たわるアンジェに近づく。
「アンジェ?」
小声で名を呼んでみるが、やはり反応はなかった。
震える手で恐る恐る彼の脈を計る。すると、かろうじて脈拍を感じとることができた。危ない容態であるには変わりないが、彼はまだ生きている。
一つ山を越えたからか、俺自身落ち着きを取り戻しつつあった。
ひとまずここをさっさと出よう。話はそれからだ。
アンジェの腹部からは未だに血が出ていたので、彼の鞄から包帯を拝借し、傷口に巻いた。これで止血できるかはわからないが、しないよりはマシだろう。
あとはお互いの武器や転がったコアを回収し、そこから眠りについているアンジェを背負う。この時点で足元がふらついていたが、ここは俺が踏ん張るしかなかった。
よろめきながら、森の奥へと再び歩き出す。
ここまで来ると意識も朦朧としていた。
一歩足を進めるたびに頭が絞めつけられるように痛むし、まっすぐに歩けているのかわからないほどくらくらと眩暈がした。それでも俺は、ひたすら森の中を歩いた。
そうしてしばらく歩いていると、途端に目の前が明るくなった。あれだけ重苦しかった空気も晴れ、爽やかな風が吹き抜けた。
この環境の変化に辺りを見渡してみるが、目を開けるのもやっとで周りの景色もぼんやりとしか見えなかった。
「エルフ……探さないと……」
自分に言い聞かせるように独り言ちる。しかし、再び一歩踏み入れたところでガソリンが切れたようで、風に流されるようにその場で倒れ込んだ。
懐かしい草の臭いがする。それに、陽の光が暖かい。どうやら本当に森を抜けたみたいだ。
このままだと、この温もりに溶けてしまう。
だめだ。もう限界だ。
そう思った時、向こう側から誰かの足音が聞こえた。
ぼうっとした意識でその足音を聴いていると、間もなくして小さな足が俺の頭元で立ち止まった。
「……だあれ?」
幼い声が不思議そうな声で尋ねる。徐に視線を上げると、小さな影が俺を見下ろしていた。
しかし、それ以上応えることができず、その影の顔を拝む前に俺は力尽きてしまった。
もう瞼を開けることすらもできず、だんだんと意識が遠退いていく。
ただ、真っ暗な世界の中で、強い風の音だけが脳内に響いていた。
俺の魔力が溢れ出しているのだろうか。広げた俺の両手から紫色の光がぼんやりと光っていた。
俺の異様な気配にエレメントたちがうろたえる。だが、もう泣いても喚いても無駄だ。
イメージ? 情熱? 勢い そんなこと、しったこっちゃねえよ。ただ今は――こいつらを一匹残らずぶちのめしたい。
それが、俺が初めて抱いた殺意だった。
「俺を怒らせたこと……後悔させてやる」
怒りをぶつけるように奴らを鋭く睨みつける。
そして最大限の魔力を込めて、俺は奴らに向かって両腕を振り払った。
「『集団即死魔法』」
魔法を詠唱すると、放たれた青い光がパァン!と分裂した。
弾けた青い光は骸の形に変化し、エレメントたちの元へ飛んでいく。
そして骸を模った光が奴らを貫通した時、この森につんざく金切り声が一面に轟いた。
陽炎に似た紫色の靄が燃えるように広がるエレメントたちが絶命したのだ。だが俺は奴らの最期を見届けることなく、その場で膝を落とした。
あの魔法を放ってからいきなり全身に力が入らなくなった。魔力が枯渇してしまったのだろう。ただ、ポタポタとエレメントたちが残したコアが落ちる音を聞きながら、枯れた草原にうずくまる。
横たわったまま呆然としていていると、森の空気が変わった気配を感じた。
力を振り絞って体を起こし上げると、あれだけ霧のように濃かった『陰の気』が少し晴れていることに気づいた。ひょっとすると、あの死神をぶっ倒したから『陰の気』が弱まったのかもしれない。
そうだ。こんなところでうかうかしてられないのだった。
振り返り、後ろで横たわるアンジェに近づく。
「アンジェ?」
小声で名を呼んでみるが、やはり反応はなかった。
震える手で恐る恐る彼の脈を計る。すると、かろうじて脈拍を感じとることができた。危ない容態であるには変わりないが、彼はまだ生きている。
一つ山を越えたからか、俺自身落ち着きを取り戻しつつあった。
ひとまずここをさっさと出よう。話はそれからだ。
アンジェの腹部からは未だに血が出ていたので、彼の鞄から包帯を拝借し、傷口に巻いた。これで止血できるかはわからないが、しないよりはマシだろう。
あとはお互いの武器や転がったコアを回収し、そこから眠りについているアンジェを背負う。この時点で足元がふらついていたが、ここは俺が踏ん張るしかなかった。
よろめきながら、森の奥へと再び歩き出す。
ここまで来ると意識も朦朧としていた。
一歩足を進めるたびに頭が絞めつけられるように痛むし、まっすぐに歩けているのかわからないほどくらくらと眩暈がした。それでも俺は、ひたすら森の中を歩いた。
そうしてしばらく歩いていると、途端に目の前が明るくなった。あれだけ重苦しかった空気も晴れ、爽やかな風が吹き抜けた。
この環境の変化に辺りを見渡してみるが、目を開けるのもやっとで周りの景色もぼんやりとしか見えなかった。
「エルフ……探さないと……」
自分に言い聞かせるように独り言ちる。しかし、再び一歩踏み入れたところでガソリンが切れたようで、風に流されるようにその場で倒れ込んだ。
懐かしい草の臭いがする。それに、陽の光が暖かい。どうやら本当に森を抜けたみたいだ。
このままだと、この温もりに溶けてしまう。
だめだ。もう限界だ。
そう思った時、向こう側から誰かの足音が聞こえた。
ぼうっとした意識でその足音を聴いていると、間もなくして小さな足が俺の頭元で立ち止まった。
「……だあれ?」
幼い声が不思議そうな声で尋ねる。徐に視線を上げると、小さな影が俺を見下ろしていた。
しかし、それ以上応えることができず、その影の顔を拝む前に俺は力尽きてしまった。
もう瞼を開けることすらもできず、だんだんと意識が遠退いていく。
ただ、真っ暗な世界の中で、強い風の音だけが脳内に響いていた。
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