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第4章 ギルド、崩壊
第58話 一周まわって振り出しに戻る
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さて、正式にアンジェと「魔王討伐同盟」を組んだので、翌日からさっそく今後のことを打ち合わせすることにした。
「ところで、この前のクエストって収穫あったのか?」
先日アンジェが買ってくれたミレアを頬張りながら尋ねるが、彼の表情は浮かなかった。
「ぶっちゃけるとね、ハズレだったの」
「ハズレだって?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまうが、こんなこともなくはないらしい。
「『街の周辺で魔王の配下を見かけたから倒してほしい』っていう内容だったんだけど、結局見つからなくてね。タイムオーバーで帰ってきちゃった」
魔王の配下には街を襲う輩もいる。貿易区だから先方は早く倒してほしいようだったが、アンジェいわく街の中や周辺を探しても何も見つからなかったらしい。
それで先方はアンジェのようなギルド員でなく、傭兵を雇って街の整備の強化を図ったとかなんとか。つまり、ほぼ無駄足だ。
「謝礼はもらったとはいえ、あんまりよね」
「お手上げ」と言うようにアンジェは両手を広げ、ため息をつく。
「ルソードの時はすぐ見つけられたのに……あいつ、三下だったからかしら」
「三下とか言ってやるな……俺、そんな奴に殺されかけたんだから」
半笑いで返すとアンジェの頬が引き攣った。
とはいえ、ルソードの時は相当運が良かったようで、ピンポイントで魔王の配下を見つけるのも骨が折れるらしい。
魔王の配下を見つけるのも大変だが、魔王本体を探すのも大変だ。なんせこちらのほうがもっと情報がない。わかっているのはまだ復活しないということ。だが、これはノアの受け売りだ。これを言うと色々説明するのが面倒だからアンジェには言ってない。
「つまり、振り出しってことな……」
頼りになるのはギルド経由の情報……手持ちのカードがゼロである今はセリナからの連絡を待つしかない。
「とにかく今はどうなってもいいようにギルドの仕事をして準備を整えておきましょ」
「まあ、それが最善だよな。んで、今日は何をする?」
「とりあえずギルドに行きましょう。紹介してあげたい人もいるしね」
そう言われてたどり着いたのは、集会所とは別の棟だった。
レンガ造りの平屋で、煙突からはモクモクと煙が出ている。カンカンと金槌で金属を叩く音が聞こえてくるので、中で誰かが作業をしているようだ。
「ここはコアの研究棟よ。さ、中に入りましょう」
アンジェに連れられ中に入ると、途端に薬品のつーんとした臭いがした。集会所とは違い、みんな白衣を着て忙しなくカウンターの奥を右往左往している。
カウンターには丸眼鏡をかけた少年が分厚い本を読んでいた。小柄な身長と耳まで隠れる紺色のマッシュカットの少年だ。中学かそこらに見えるが、彼も研究員なのだろうか。
「ごきげんよう、セバちゃん」
「あ、アンジェさん――そしてあなたがムギトさんでしたっけ?」
セバスと呼ばれた少年は読んでいた辞書のような本をパタンと閉じた。
「ムギちゃん、この子はセバスチャンよ。セバスって呼んであげて」
「ああ、セバスちゃんね」
「出会って早々無礼ですね。ぶっ飛ばしますよ」
ムッとするセバスだったが、すぐにアンジェが「まあまあ」と宥める。この感じだと過去に何度も弄られてきたのだろう。「セバス」という呼び名もからかわれないようにしているようだ。隣のアンジェも琴線に触れるかギリギリの呼び名だけど。
「コホン……それで、今日はどういった御用で?」
セバスが咳払いをして気を取り直す。そこでアンジェは「そうそう」と自分の鞄を探り、布でできた袋を出した。中には石が入っているのか、ごつごつとした角ばった膨らみがある。
「遠征した時にいくつかコアと素材を採ってきたの。これで色々強化できないかしら?」
「ふむふむ……では、お借りします」
アンジェから袋を受け取ったセバスは袋の中をカウンターに広げる。中には数個のコアと小瓶に入ったキラキラとした砂。それとサンゴ礁のような不思議な形をした白い石が出てきた。
「こんなので何ができるんだ?」
「それが凄いのよ。武器や防具を強くしてくれるの。つまりは合成ね。セバちゃんは合成が得意な【創造者】なの」
「そんな。大したことないですよ」
丸眼鏡をかけ直しながら謙遜するセバスだったが、満更でもないようで、気恥ずかしそうに頬を赤く染める。
そんな彼にアンジェは「照れないの」と小突いた。
「ところで、この前のクエストって収穫あったのか?」
先日アンジェが買ってくれたミレアを頬張りながら尋ねるが、彼の表情は浮かなかった。
「ぶっちゃけるとね、ハズレだったの」
「ハズレだって?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまうが、こんなこともなくはないらしい。
「『街の周辺で魔王の配下を見かけたから倒してほしい』っていう内容だったんだけど、結局見つからなくてね。タイムオーバーで帰ってきちゃった」
魔王の配下には街を襲う輩もいる。貿易区だから先方は早く倒してほしいようだったが、アンジェいわく街の中や周辺を探しても何も見つからなかったらしい。
それで先方はアンジェのようなギルド員でなく、傭兵を雇って街の整備の強化を図ったとかなんとか。つまり、ほぼ無駄足だ。
「謝礼はもらったとはいえ、あんまりよね」
「お手上げ」と言うようにアンジェは両手を広げ、ため息をつく。
「ルソードの時はすぐ見つけられたのに……あいつ、三下だったからかしら」
「三下とか言ってやるな……俺、そんな奴に殺されかけたんだから」
半笑いで返すとアンジェの頬が引き攣った。
とはいえ、ルソードの時は相当運が良かったようで、ピンポイントで魔王の配下を見つけるのも骨が折れるらしい。
魔王の配下を見つけるのも大変だが、魔王本体を探すのも大変だ。なんせこちらのほうがもっと情報がない。わかっているのはまだ復活しないということ。だが、これはノアの受け売りだ。これを言うと色々説明するのが面倒だからアンジェには言ってない。
「つまり、振り出しってことな……」
頼りになるのはギルド経由の情報……手持ちのカードがゼロである今はセリナからの連絡を待つしかない。
「とにかく今はどうなってもいいようにギルドの仕事をして準備を整えておきましょ」
「まあ、それが最善だよな。んで、今日は何をする?」
「とりあえずギルドに行きましょう。紹介してあげたい人もいるしね」
そう言われてたどり着いたのは、集会所とは別の棟だった。
レンガ造りの平屋で、煙突からはモクモクと煙が出ている。カンカンと金槌で金属を叩く音が聞こえてくるので、中で誰かが作業をしているようだ。
「ここはコアの研究棟よ。さ、中に入りましょう」
アンジェに連れられ中に入ると、途端に薬品のつーんとした臭いがした。集会所とは違い、みんな白衣を着て忙しなくカウンターの奥を右往左往している。
カウンターには丸眼鏡をかけた少年が分厚い本を読んでいた。小柄な身長と耳まで隠れる紺色のマッシュカットの少年だ。中学かそこらに見えるが、彼も研究員なのだろうか。
「ごきげんよう、セバちゃん」
「あ、アンジェさん――そしてあなたがムギトさんでしたっけ?」
セバスと呼ばれた少年は読んでいた辞書のような本をパタンと閉じた。
「ムギちゃん、この子はセバスチャンよ。セバスって呼んであげて」
「ああ、セバスちゃんね」
「出会って早々無礼ですね。ぶっ飛ばしますよ」
ムッとするセバスだったが、すぐにアンジェが「まあまあ」と宥める。この感じだと過去に何度も弄られてきたのだろう。「セバス」という呼び名もからかわれないようにしているようだ。隣のアンジェも琴線に触れるかギリギリの呼び名だけど。
「コホン……それで、今日はどういった御用で?」
セバスが咳払いをして気を取り直す。そこでアンジェは「そうそう」と自分の鞄を探り、布でできた袋を出した。中には石が入っているのか、ごつごつとした角ばった膨らみがある。
「遠征した時にいくつかコアと素材を採ってきたの。これで色々強化できないかしら?」
「ふむふむ……では、お借りします」
アンジェから袋を受け取ったセバスは袋の中をカウンターに広げる。中には数個のコアと小瓶に入ったキラキラとした砂。それとサンゴ礁のような不思議な形をした白い石が出てきた。
「こんなので何ができるんだ?」
「それが凄いのよ。武器や防具を強くしてくれるの。つまりは合成ね。セバちゃんは合成が得意な【創造者】なの」
「そんな。大したことないですよ」
丸眼鏡をかけ直しながら謙遜するセバスだったが、満更でもないようで、気恥ずかしそうに頬を赤く染める。
そんな彼にアンジェは「照れないの」と小突いた。
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