33 / 242
第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第33話 魔法ってなんだろう
しおりを挟む
「どうした? 貴様がボードを見たいなんて珍しいな」
「ああ……ちょっと『冷たい風』の技性能見直したくて」
ノアに頼むと彼は俺の目の前にステータスボードを出してくれた。
『冷たい風』……敵に氷の結晶攻撃を与えるグループ攻撃。決して敵に目眩しする魔法ではない。「氷の結晶」と書いているが、俺が出しているのはただの雪だ。まあ、雪も結晶だが……本来ならもっと攻撃力があるはずだ。
――待てよ。
そういえば、最初にあの魔法を打った時、粉雪くらいしか出てなかったはず。
それが今は雪くらいまで大きくなった。この違いはなんだろう。異世界に来てまだ二日目とはいえ魔法も、クラスの能力も、正直いまいち掴めていない。それに、このバトルフォークのことだって。
「あ、おい」
ノアが声をかけて来たが、頭の中は考え事でいっぱいだった。だから、目の前に岩があることに気づいていなかったのだ。
「ムギちゃん! あぶな――」
「え?」
アンジェの声で我に返るが、気づいた時にはもう遅く、俺は岩に顔面をぶつけた。
「いってー……」
ぶつけた鼻を手で擦る。
そんな俺を見て、アンジェは「あらあら」と苦笑した。
「大丈夫? 考え事?」
「ああ……そんなとこ」
「まあ。でも、ここは暗いから余所見は危ないわよ。そろそろ次の燭台が見える頃だけど……あ、あった」
燭台を見つけたアンジェは剣の切っ先を向け、火を放つ。
その光景に俺は違和感を抱いた。
「なあ、なんでアンジェは呪文なしで火を出せるんだ?」
俺は呪文を唱えないと雪を出せない。だが、アンジェはこれまで一度も呪文を唱えていない。詠唱を破棄しているのか?
俺の素朴な疑問に、アンジェは「え?」と素っ頓狂な声をあげる。
「そう言われると難しいわね……これも割と無意識だし」
「え? 無意識? それでそこまで使えるのか?」
さらに問うとアンジェは腕を組み、人差し指を自分のあごに当てて考え始めた。
「たとえば……そうね。やってみるのが早いかしら」
そう言ってアンジェは次の燭台に切っ先を向け、火を放って明かりを灯す。彼にとってはなんの造作もない行動だ。
「こうやって物体に火を纏わせたり、物体を媒体にして放射をするのは得意なの。でも――」
アンジェは手のひらを上に向け、手に力を入れる。だが、ただ力んでいるだけで手には何も変化はない。
アンジェが何をしようとしているのかわからずにいると、疲れたのか彼も深く息を吐いた。
「……こんな感じで、火球にするのは苦手――というか、できないのよ。せいぜい手が熱に籠るくらいね」
「そうなのか? 火ならなんでもできそうなイメージなんだけど」
しかし、アンジェは首を振って否定する。
「属性魔法とクラスの特性なんでしょうけど、魔法にも型があるらしいわ。逆に言えば、型と属性魔法がハマればこうやってイメージだけでも魔法を使えるのよ」
「へー、魔法にも型があるのか」
「しかも同じクラスでも得意・不得意がある。十人十色ってことよ」
つまり、同じ属性の魔法や同じクラスでも細分化されていて、扱えるものも限られているもいうことか。
「型……型ねえ……」
魔法に型があることも目から鱗だったが、なおさら俺の型はなんなのだろうか。
腕を組んで考え込んでいると、アンジェが目をパチクリさせてこちらを見ていた。
「もしかして、魔法のことを悩んでたの?」
「あ、うん……」
アンジェに図星を突かれたが、素直に頷く。しかし、アンジェは俺の悩みを茶化すことなく、一緒に頭を抱えてくれた。
「『冷たい風』が範囲攻撃だったから、型はあたしと似ている気がするのよね……でも、ムギちゃんのクラスって前衛タイプなのかしら」
「前衛……なのか?」
アンジェが言っているのは前衛か後衛かでまた型が決まってくるということなのだろう。
そう言われてみると、俺のクラスはどちらに当てはまるのだろうか。というか、マジで【赤子の悪魔】ってなんなんだ。最早、哲学。
考えに行き詰まり苦悩していると、アンジェは「あらあら」と生温かい眼差しで俺を見守っていた。
「焦らなくても大丈夫よ。練習すればきっと上手くなるし、コツも掴んでくるわ」
フフッと笑いながら、アンジェは再び剣を燭台に向けて火を放射する。
そこで、彼の動きがピタリと止まった。明るくなった洞窟の先に広い空間が現れたからだ。
「ああ……ちょっと『冷たい風』の技性能見直したくて」
ノアに頼むと彼は俺の目の前にステータスボードを出してくれた。
『冷たい風』……敵に氷の結晶攻撃を与えるグループ攻撃。決して敵に目眩しする魔法ではない。「氷の結晶」と書いているが、俺が出しているのはただの雪だ。まあ、雪も結晶だが……本来ならもっと攻撃力があるはずだ。
――待てよ。
そういえば、最初にあの魔法を打った時、粉雪くらいしか出てなかったはず。
それが今は雪くらいまで大きくなった。この違いはなんだろう。異世界に来てまだ二日目とはいえ魔法も、クラスの能力も、正直いまいち掴めていない。それに、このバトルフォークのことだって。
「あ、おい」
ノアが声をかけて来たが、頭の中は考え事でいっぱいだった。だから、目の前に岩があることに気づいていなかったのだ。
「ムギちゃん! あぶな――」
「え?」
アンジェの声で我に返るが、気づいた時にはもう遅く、俺は岩に顔面をぶつけた。
「いってー……」
ぶつけた鼻を手で擦る。
そんな俺を見て、アンジェは「あらあら」と苦笑した。
「大丈夫? 考え事?」
「ああ……そんなとこ」
「まあ。でも、ここは暗いから余所見は危ないわよ。そろそろ次の燭台が見える頃だけど……あ、あった」
燭台を見つけたアンジェは剣の切っ先を向け、火を放つ。
その光景に俺は違和感を抱いた。
「なあ、なんでアンジェは呪文なしで火を出せるんだ?」
俺は呪文を唱えないと雪を出せない。だが、アンジェはこれまで一度も呪文を唱えていない。詠唱を破棄しているのか?
俺の素朴な疑問に、アンジェは「え?」と素っ頓狂な声をあげる。
「そう言われると難しいわね……これも割と無意識だし」
「え? 無意識? それでそこまで使えるのか?」
さらに問うとアンジェは腕を組み、人差し指を自分のあごに当てて考え始めた。
「たとえば……そうね。やってみるのが早いかしら」
そう言ってアンジェは次の燭台に切っ先を向け、火を放って明かりを灯す。彼にとってはなんの造作もない行動だ。
「こうやって物体に火を纏わせたり、物体を媒体にして放射をするのは得意なの。でも――」
アンジェは手のひらを上に向け、手に力を入れる。だが、ただ力んでいるだけで手には何も変化はない。
アンジェが何をしようとしているのかわからずにいると、疲れたのか彼も深く息を吐いた。
「……こんな感じで、火球にするのは苦手――というか、できないのよ。せいぜい手が熱に籠るくらいね」
「そうなのか? 火ならなんでもできそうなイメージなんだけど」
しかし、アンジェは首を振って否定する。
「属性魔法とクラスの特性なんでしょうけど、魔法にも型があるらしいわ。逆に言えば、型と属性魔法がハマればこうやってイメージだけでも魔法を使えるのよ」
「へー、魔法にも型があるのか」
「しかも同じクラスでも得意・不得意がある。十人十色ってことよ」
つまり、同じ属性の魔法や同じクラスでも細分化されていて、扱えるものも限られているもいうことか。
「型……型ねえ……」
魔法に型があることも目から鱗だったが、なおさら俺の型はなんなのだろうか。
腕を組んで考え込んでいると、アンジェが目をパチクリさせてこちらを見ていた。
「もしかして、魔法のことを悩んでたの?」
「あ、うん……」
アンジェに図星を突かれたが、素直に頷く。しかし、アンジェは俺の悩みを茶化すことなく、一緒に頭を抱えてくれた。
「『冷たい風』が範囲攻撃だったから、型はあたしと似ている気がするのよね……でも、ムギちゃんのクラスって前衛タイプなのかしら」
「前衛……なのか?」
アンジェが言っているのは前衛か後衛かでまた型が決まってくるということなのだろう。
そう言われてみると、俺のクラスはどちらに当てはまるのだろうか。というか、マジで【赤子の悪魔】ってなんなんだ。最早、哲学。
考えに行き詰まり苦悩していると、アンジェは「あらあら」と生温かい眼差しで俺を見守っていた。
「焦らなくても大丈夫よ。練習すればきっと上手くなるし、コツも掴んでくるわ」
フフッと笑いながら、アンジェは再び剣を燭台に向けて火を放射する。
そこで、彼の動きがピタリと止まった。明るくなった洞窟の先に広い空間が現れたからだ。
10
お気に入りに追加
19
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
2回目の人生は異世界で
黒ハット
ファンタジー
増田信也は初めてのデートの待ち合わせ場所に行く途中ペットの子犬を抱いて横断歩道を信号が青で渡っていた時に大型トラックが暴走して来てトラックに跳ね飛ばされて内臓が破裂して即死したはずだが、気が付くとそこは見知らぬ異世界の遺跡の中で、何故かペットの柴犬と異世界に生き返った。2日目の人生は異世界で生きる事になった

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる