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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第23話 異世界初心者、ギルドに入る
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「セリちゃんは妹の友達なのよ。あたしがギルドに登録したのも、彼女の勧めでね。そりゃあもう、良くしてもらってるの」
「とんでもないです! むしろ、こちらがアンジェさんの活躍に大助かりです!」
アンジェの言葉にあせあせとしながら謙遜するセリナ。
うろたえる様子も小動物のように可愛くて、魅入ってしまいそうだ。こんな子が受付ならば、毎日でも通ってしまいそうだ。
毎日、通う――自分の胸内で復唱して、ようやく本来の目的を思い出した。
「ギルドの登録って……俺でもできるのか?」
徐に尋ねると、アンジェが「まあ!」と驚いた。
「ムギちゃん、ギルドに入ってくれるの?」
「お、おう……いつまでもアンジェに迷惑かけてられないし」
「そんな、気にしなくていいのに……でも、とても嬉しいわ」
アンジェが澄ました顔のまま口角を上げる。その隣にいるセリナも嬉しそうに目を細めている。これは歓迎してくれているようだ。
「勿論、どなたでも登録できますよ」
セリナは机の引き出しから紙を取り出し、置かれていた羽ペンを俺に手渡す。
「こちらがギルドの登録票です。わからない箇所があれば遠慮なく言ってくださいね」
「へー、これだけで入れるのか」
なんだか拍子抜けだ。筆記テストや戦闘試合などなんらかの試験があるかと思ったのだが、なんだろう、この既視感。ポイントカード作るような手軽さなのだが、ギルドとはこんな感じで入れるのだな。
だが、試験があっても俺の能力では受からないだろうからこれはこれでいいだろう。
さっそく記入していこうではないか――あれ?
羽ペンを握ると、ふと疑問が湧いた。
それは「今更」と言えるほど、遅すぎる気づきだった。俺は、どうしてこの世界の言葉を理解できるのだろうか。
セリナからもらった紙をじっくり見る。名前、年齢、住所……何度確認しても日本語だ。本来なら、そんなはずないのに。
首を傾げていると、見計らったようにノアが俺の頭に乗ってきた。
「気づくのが遅いぞ。なんのために私と契約したと思っている」
頭上からノアの得意げな声がする。おそらく、表情も俺を卑下するような嘲笑なのだろう。
だが、これでよくわかった。俺がこの世界の言語がわかるのはノアと契約しているおかげなのだ。
だから文字もわかるし、この感じだと日本語で書いてもアンジェたちにも通じそうだ。こいつ、実は翻訳こんにゃくと同じ機能だったのか。くそ、感謝したくない。
「……お前が乗ってたら書けねえんだけど」
悔し紛れに文句を垂らすと、ノアは舌打ちをしながら俺の頭から机に飛び降りる。
しかし、降りたら降りたでセリナが「可愛いー!」とノアの頭を撫で始めた。まあ、相手が猫とはいえ、女子にちやほやされることは決して羨ましくはない。死んでほしいと思うだけだ。
――それはさておき、どう書こうか。
登録に書くのは名前や住所、年齢、属性魔法などの基本情報ではあるが、俺の住所は不定だし、例のごとくクラスは書けない。
すっかり筆が止まっていると、見兼ねたのかアンジェがスッと赤いカードを机に置いた。
「住所はうちのを使っていいわよ」
アンジェがカードに書かれた住所欄を指す。
よく見ると、この赤いカードはアンジェのギルドカードだった。年齢は二十五歳でクラスはやはり【剣士】だった。氏名欄は「アンジェ」と下の名前だけ書いてある。そもそもこの世界では苗字という概念がないのかもしれない。ここは無難に俺もカタカナで下の名前を記入する。
住所はアンジェの家のを書かせてもらい、属性魔法は素直に「氷」と書く。クラスは記憶になければ書かなくていいと言ってくれたので、空欄にしておいた。
「書けたけど……これでいいのか?」
渡された紙をセリナに戻す。
記入欄に目を通すとセリナは「オーケーです」とにこやかに笑って、紙を机の上に戻した。
「とんでもないです! むしろ、こちらがアンジェさんの活躍に大助かりです!」
アンジェの言葉にあせあせとしながら謙遜するセリナ。
うろたえる様子も小動物のように可愛くて、魅入ってしまいそうだ。こんな子が受付ならば、毎日でも通ってしまいそうだ。
毎日、通う――自分の胸内で復唱して、ようやく本来の目的を思い出した。
「ギルドの登録って……俺でもできるのか?」
徐に尋ねると、アンジェが「まあ!」と驚いた。
「ムギちゃん、ギルドに入ってくれるの?」
「お、おう……いつまでもアンジェに迷惑かけてられないし」
「そんな、気にしなくていいのに……でも、とても嬉しいわ」
アンジェが澄ました顔のまま口角を上げる。その隣にいるセリナも嬉しそうに目を細めている。これは歓迎してくれているようだ。
「勿論、どなたでも登録できますよ」
セリナは机の引き出しから紙を取り出し、置かれていた羽ペンを俺に手渡す。
「こちらがギルドの登録票です。わからない箇所があれば遠慮なく言ってくださいね」
「へー、これだけで入れるのか」
なんだか拍子抜けだ。筆記テストや戦闘試合などなんらかの試験があるかと思ったのだが、なんだろう、この既視感。ポイントカード作るような手軽さなのだが、ギルドとはこんな感じで入れるのだな。
だが、試験があっても俺の能力では受からないだろうからこれはこれでいいだろう。
さっそく記入していこうではないか――あれ?
羽ペンを握ると、ふと疑問が湧いた。
それは「今更」と言えるほど、遅すぎる気づきだった。俺は、どうしてこの世界の言葉を理解できるのだろうか。
セリナからもらった紙をじっくり見る。名前、年齢、住所……何度確認しても日本語だ。本来なら、そんなはずないのに。
首を傾げていると、見計らったようにノアが俺の頭に乗ってきた。
「気づくのが遅いぞ。なんのために私と契約したと思っている」
頭上からノアの得意げな声がする。おそらく、表情も俺を卑下するような嘲笑なのだろう。
だが、これでよくわかった。俺がこの世界の言語がわかるのはノアと契約しているおかげなのだ。
だから文字もわかるし、この感じだと日本語で書いてもアンジェたちにも通じそうだ。こいつ、実は翻訳こんにゃくと同じ機能だったのか。くそ、感謝したくない。
「……お前が乗ってたら書けねえんだけど」
悔し紛れに文句を垂らすと、ノアは舌打ちをしながら俺の頭から机に飛び降りる。
しかし、降りたら降りたでセリナが「可愛いー!」とノアの頭を撫で始めた。まあ、相手が猫とはいえ、女子にちやほやされることは決して羨ましくはない。死んでほしいと思うだけだ。
――それはさておき、どう書こうか。
登録に書くのは名前や住所、年齢、属性魔法などの基本情報ではあるが、俺の住所は不定だし、例のごとくクラスは書けない。
すっかり筆が止まっていると、見兼ねたのかアンジェがスッと赤いカードを机に置いた。
「住所はうちのを使っていいわよ」
アンジェがカードに書かれた住所欄を指す。
よく見ると、この赤いカードはアンジェのギルドカードだった。年齢は二十五歳でクラスはやはり【剣士】だった。氏名欄は「アンジェ」と下の名前だけ書いてある。そもそもこの世界では苗字という概念がないのかもしれない。ここは無難に俺もカタカナで下の名前を記入する。
住所はアンジェの家のを書かせてもらい、属性魔法は素直に「氷」と書く。クラスは記憶になければ書かなくていいと言ってくれたので、空欄にしておいた。
「書けたけど……これでいいのか?」
渡された紙をセリナに戻す。
記入欄に目を通すとセリナは「オーケーです」とにこやかに笑って、紙を机の上に戻した。
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