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第2章 創造者《クリエイター》の冒険者ギルド
第22話 ラブコメの波動がレーザービーム
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◆ ◆ ◆
朝食を食べ、身支度を終えると、俺たちはすぐにギルドへと向かった。
昨日チラッと見た出店を横切り、さらに街の奥へと進む。すると、何棟も建物があるような大きな広場に出た。
出店がある通りも賑わっていたが、ここは段違いだった。鎧を着たガタイのいい男。杖を持ったとんがり帽子をかぶった少女。武闘着のような服を着た仙人のような爺さん……いろんなクラスの人たちが防具屋や鍛冶屋、素材屋に立ち寄っている。彼らが噂の「冒険者」というものだろうか。
そんな広場の中心に石の壁でできた一際目立つ建物があった。冒険者の人もその建物に向かっているのが多い。
もしや、あれが――
答えを求めるようにアンジェを見ると、彼は俺に向けてパチンとウィンクした。
「そう、あれがギルドの集会所よ」
そう言ってアンジェは建物の中に入っていくので、俺も緊張しながらも彼に続いて行った。
集会所の木造の扉を開けると、これまた別世界だった。
集会所はだだっ広い大広間だったが、中央には机と椅子が飲食店のようにいくつも置かれていた。どうやらここでパーティーの顔合わせをしたり、軽食や酒を飲みながらクエストの作戦会議ができるようになっているらしい。
また、壁際にはたくさん紙が貼られた掲示板があった。冒険者らしき人たちが紙を眺めているから、多分あそこにクエスト内容が貼られているのだろう。
奥には冒険者たちの憩いの場と区切るように、木製の机がカウンターとして端から端まで並んでいた。カウンターの先には制服を着た同年代の女の子たちが忙しなく働いている。彼女たちがギルドの人のようだ。
「あ、いたいた。セリちゃーん」
アンジェが誰か見つけたようで、大きく手を振る。すると、カウンターの奥で本の整理をしていた女の子がパッと顔を上げた。
「あ! アンジェさん!」
女の子は満面の笑みを浮かべながらカウンターのほうに寄ってくる。
女の子と言っても、年は俺と大差変わりない。長いオレンジ色の髪を編みこんでハーフアップにしたその子はとても可愛いらしい子だった。茶色の瞳は大きく、まつげも長い。それに加えて色白の肌に華奢な体。正直言って、どストライクだ。
現れた女の子に見惚れていると、アンジェが「ほら」と俺の背中を押して先導した。
「この子がムギちゃんに会いたがっていた子よ」
「え? え??」
こんな可愛い子が俺に会いたがっていただと? 何そのラブコメの波動。めっちゃ照れるのだが。
顔の火照りと心音の高鳴りを感じながらも、ついに彼女の元へ連れて行かれる。
すると、彼女は大きな目を細めて、にこやかに挨拶してくれた。
「初めまして、セリナです」
「あ、えっと……ムギトです」
「んもー! ムギちゃんったら照れちゃって! このこの!」
セリナに目も合わせられない俺を見兼ねてアンジェが肘で小突いてくる。だが、恥ずかしがるのも仕方がないではないか。なんせ俺はここしばらく異性と会話をしていない。母親とすらしていない。あれ、なんか途端に悲しくなってきた。
ばつの悪さに頬を掻いていると、セリナは俺を見てクスクスと笑う。
「ムギトさんがいい人そうでよかったです。これでアンジェさんも寂しくないですね」
「そうそう。あの家、一人で暮らすには広いからね」
アンジェとセリナが楽しげに会話している。
話の流れからすると、俺というよりアンジェの家に住み込む輩を見てみたかった感じだろう。まあ、会ったこともなかったから普通そうなる。だが、なぜだろうか。少しだけ虚しさを感じる。
「えっと……二人はどんな関係なんだ?」
虚しさを拭うようにアンジェたちに尋ねると、アンジェはフフッと短く笑った。
朝食を食べ、身支度を終えると、俺たちはすぐにギルドへと向かった。
昨日チラッと見た出店を横切り、さらに街の奥へと進む。すると、何棟も建物があるような大きな広場に出た。
出店がある通りも賑わっていたが、ここは段違いだった。鎧を着たガタイのいい男。杖を持ったとんがり帽子をかぶった少女。武闘着のような服を着た仙人のような爺さん……いろんなクラスの人たちが防具屋や鍛冶屋、素材屋に立ち寄っている。彼らが噂の「冒険者」というものだろうか。
そんな広場の中心に石の壁でできた一際目立つ建物があった。冒険者の人もその建物に向かっているのが多い。
もしや、あれが――
答えを求めるようにアンジェを見ると、彼は俺に向けてパチンとウィンクした。
「そう、あれがギルドの集会所よ」
そう言ってアンジェは建物の中に入っていくので、俺も緊張しながらも彼に続いて行った。
集会所の木造の扉を開けると、これまた別世界だった。
集会所はだだっ広い大広間だったが、中央には机と椅子が飲食店のようにいくつも置かれていた。どうやらここでパーティーの顔合わせをしたり、軽食や酒を飲みながらクエストの作戦会議ができるようになっているらしい。
また、壁際にはたくさん紙が貼られた掲示板があった。冒険者らしき人たちが紙を眺めているから、多分あそこにクエスト内容が貼られているのだろう。
奥には冒険者たちの憩いの場と区切るように、木製の机がカウンターとして端から端まで並んでいた。カウンターの先には制服を着た同年代の女の子たちが忙しなく働いている。彼女たちがギルドの人のようだ。
「あ、いたいた。セリちゃーん」
アンジェが誰か見つけたようで、大きく手を振る。すると、カウンターの奥で本の整理をしていた女の子がパッと顔を上げた。
「あ! アンジェさん!」
女の子は満面の笑みを浮かべながらカウンターのほうに寄ってくる。
女の子と言っても、年は俺と大差変わりない。長いオレンジ色の髪を編みこんでハーフアップにしたその子はとても可愛いらしい子だった。茶色の瞳は大きく、まつげも長い。それに加えて色白の肌に華奢な体。正直言って、どストライクだ。
現れた女の子に見惚れていると、アンジェが「ほら」と俺の背中を押して先導した。
「この子がムギちゃんに会いたがっていた子よ」
「え? え??」
こんな可愛い子が俺に会いたがっていただと? 何そのラブコメの波動。めっちゃ照れるのだが。
顔の火照りと心音の高鳴りを感じながらも、ついに彼女の元へ連れて行かれる。
すると、彼女は大きな目を細めて、にこやかに挨拶してくれた。
「初めまして、セリナです」
「あ、えっと……ムギトです」
「んもー! ムギちゃんったら照れちゃって! このこの!」
セリナに目も合わせられない俺を見兼ねてアンジェが肘で小突いてくる。だが、恥ずかしがるのも仕方がないではないか。なんせ俺はここしばらく異性と会話をしていない。母親とすらしていない。あれ、なんか途端に悲しくなってきた。
ばつの悪さに頬を掻いていると、セリナは俺を見てクスクスと笑う。
「ムギトさんがいい人そうでよかったです。これでアンジェさんも寂しくないですね」
「そうそう。あの家、一人で暮らすには広いからね」
アンジェとセリナが楽しげに会話している。
話の流れからすると、俺というよりアンジェの家に住み込む輩を見てみたかった感じだろう。まあ、会ったこともなかったから普通そうなる。だが、なぜだろうか。少しだけ虚しさを感じる。
「えっと……二人はどんな関係なんだ?」
虚しさを拭うようにアンジェたちに尋ねると、アンジェはフフッと短く笑った。
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