7 / 242
第1章 異世界《エムメルク》の歩き方
第7話 VSスライム ※ただし、武器は食器
しおりを挟む
「ちょうどいい。雑魚敵だ」
「すらいむ?」
聞いたことがある名前が出たので、改めて踏みつけたモノを見る。
スライムとは言っていたが、俺が知っているのとは少し形が違っていた。
パッチリとした両目はついているものの饅頭のような楕円形で、緑色の体をしている。余程体に水分を含んでいるのか、動かなくても体がタプタプと波打つように動いている。
「ピギー! ピギー!」
スライムは俺に踏みつけられたことを怒っているのか鳴き声をあげて何度もジャンプしていた。しかし、体長は二十センチくらいしかないものだから、いくらジャンプしても威厳は感じない。こう言ってはなんだが、とても弱く見える。
そんな余裕ぶっこきながらスライムを見ていると、やがてスライムは眉間にしわを寄せ、俺に向かって勢いよく体当たりしてきた。
スライムの体が俺の腹部に当たる。その衝撃は肋がミシッと音をたてるほど強く、俺はその場に吹っ飛ばされた。
「いってぇ……」
あまりの痛さに立っていられず、腹を抑えながらうずくまる。雑魚敵だと思っていたがとんでもない。完全に油断していた。
「おいおい、こんなところで死なれたらこっちが困る」
ノアが口角を上げながら俺の周りをうろちょろしている。そんなところで動きまわるくらいなら、ちょっとくらい手伝ってくれてもいいではないか。
そう思っているのが顔に出ていたのか、ノアは呆れたようにため息をついた。
「言っておくが、私は戦えないぞ」
「なんでだよ。お前、神の使いなんだろ。こんなスライムくらい蹴散らせよ」
「神の使いだからこの世界に干渉できないのだよ。今だってこうして仮の姿でないと実体化すらできない。この声だって契約している貴様にしか聞こえないのだ」
「なんだって?」
ということは、こいつには俺のステータスを管理するメニュー画面と同じ機能しかないということか。確かにどうして猫の姿に戻っているのかとは思っていたけれど、そういうことならもっと早く言ってほしかった。
「ほら、さっさと起きろ。説明はまだ終わってないぞ」
ノアは俺に気合を入れるように前足で俺の肩を叩く。
ふと前を見ると、まだスライムが怒っていた。ピョンピョンとその場で飛び上がっており、またいつ飛びかかってくるかはわからない。
「スライムに殺されるとか……笑えないよな」
そう言い聞かせて肋を抑えながらゆっくりと立ち上がる。
よろめきながらも臨戦態勢を取る俺を見てノアは「よし」と頷くと、そのまま飛び上がって俺の肩に乗った。
「まずは武器の確認だ。貴様の腰元に差してあるだろ?」
ノアに言われた通りに腰を見るといつの間にか銀色の細い柄がついたステッキのようなモノが差さっている。十センチくらいの革のケースに入るくらい小振りだったので今の今まで気づかなかった。
「それが貴様の武器だ」
ニヤリとノアが不敵な笑みを浮かべる。
俺の武器……心の中で反芻すると、自然と胸が高鳴った。
緊張しながら銀色の柄を握る。丸腰では勝てないだろうから、迷っている時間はない。
――でも、この武器いったいなんだ?
疑問を持ちながらも、俺は意を決して銀色の柄を革のケースから引き抜いた。
そこから出てきたのは――……なんの変哲もない、食事でよく使う銀色のフォークだった。
「おぃぃぃ! これが俺の武器だっていうのかよ!」
再びノアに捲したてるが、彼女は相変わらずあっけらかんとしていた。
「だって、まだ赤子であろう? 赤子が物騒な武器なんて持てるか」
「そうだけどよ! 確かに俺の知ってるベビーサタンもこんなの持っていたけどよ! いいよここまで忠実に再現しなくても! もっとまともな武器よこせよ!」
凄い剣幕でノアを睨めつけていると、ノアは「うるさいなあ」と言いながら前足で自分の耳を掻いた。
「すらいむ?」
聞いたことがある名前が出たので、改めて踏みつけたモノを見る。
スライムとは言っていたが、俺が知っているのとは少し形が違っていた。
パッチリとした両目はついているものの饅頭のような楕円形で、緑色の体をしている。余程体に水分を含んでいるのか、動かなくても体がタプタプと波打つように動いている。
「ピギー! ピギー!」
スライムは俺に踏みつけられたことを怒っているのか鳴き声をあげて何度もジャンプしていた。しかし、体長は二十センチくらいしかないものだから、いくらジャンプしても威厳は感じない。こう言ってはなんだが、とても弱く見える。
そんな余裕ぶっこきながらスライムを見ていると、やがてスライムは眉間にしわを寄せ、俺に向かって勢いよく体当たりしてきた。
スライムの体が俺の腹部に当たる。その衝撃は肋がミシッと音をたてるほど強く、俺はその場に吹っ飛ばされた。
「いってぇ……」
あまりの痛さに立っていられず、腹を抑えながらうずくまる。雑魚敵だと思っていたがとんでもない。完全に油断していた。
「おいおい、こんなところで死なれたらこっちが困る」
ノアが口角を上げながら俺の周りをうろちょろしている。そんなところで動きまわるくらいなら、ちょっとくらい手伝ってくれてもいいではないか。
そう思っているのが顔に出ていたのか、ノアは呆れたようにため息をついた。
「言っておくが、私は戦えないぞ」
「なんでだよ。お前、神の使いなんだろ。こんなスライムくらい蹴散らせよ」
「神の使いだからこの世界に干渉できないのだよ。今だってこうして仮の姿でないと実体化すらできない。この声だって契約している貴様にしか聞こえないのだ」
「なんだって?」
ということは、こいつには俺のステータスを管理するメニュー画面と同じ機能しかないということか。確かにどうして猫の姿に戻っているのかとは思っていたけれど、そういうことならもっと早く言ってほしかった。
「ほら、さっさと起きろ。説明はまだ終わってないぞ」
ノアは俺に気合を入れるように前足で俺の肩を叩く。
ふと前を見ると、まだスライムが怒っていた。ピョンピョンとその場で飛び上がっており、またいつ飛びかかってくるかはわからない。
「スライムに殺されるとか……笑えないよな」
そう言い聞かせて肋を抑えながらゆっくりと立ち上がる。
よろめきながらも臨戦態勢を取る俺を見てノアは「よし」と頷くと、そのまま飛び上がって俺の肩に乗った。
「まずは武器の確認だ。貴様の腰元に差してあるだろ?」
ノアに言われた通りに腰を見るといつの間にか銀色の細い柄がついたステッキのようなモノが差さっている。十センチくらいの革のケースに入るくらい小振りだったので今の今まで気づかなかった。
「それが貴様の武器だ」
ニヤリとノアが不敵な笑みを浮かべる。
俺の武器……心の中で反芻すると、自然と胸が高鳴った。
緊張しながら銀色の柄を握る。丸腰では勝てないだろうから、迷っている時間はない。
――でも、この武器いったいなんだ?
疑問を持ちながらも、俺は意を決して銀色の柄を革のケースから引き抜いた。
そこから出てきたのは――……なんの変哲もない、食事でよく使う銀色のフォークだった。
「おぃぃぃ! これが俺の武器だっていうのかよ!」
再びノアに捲したてるが、彼女は相変わらずあっけらかんとしていた。
「だって、まだ赤子であろう? 赤子が物騒な武器なんて持てるか」
「そうだけどよ! 確かに俺の知ってるベビーサタンもこんなの持っていたけどよ! いいよここまで忠実に再現しなくても! もっとまともな武器よこせよ!」
凄い剣幕でノアを睨めつけていると、ノアは「うるさいなあ」と言いながら前足で自分の耳を掻いた。
12
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
おっさんの異世界建国記
なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様
コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」
ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。
幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。
早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると――
「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」
やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。
一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、
「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」
悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。
なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?
でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。
というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる