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第5章 家族の物語
第39話
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ブルーノが帰ると俺達もすぐに店を出ることにした。会計の折にふと気になって店主に店はどうなるか聞いてみると、まだしばらくは続けるつもりらしい。だが、その内弟子に任せていく事になるだろうと言っていた。彼も引退してしまう前にまた顔を出すのを約束して店を後にした。
夜風に当たって酔いを醒ましながら領主館へ戻る。そんなに長い付き合いではないけれど、ブルーノとはもう会えないと思うと何だか寂しい。
「お帰りなさい」
夜遅い時間だったにもかかわらず、オリガは寝ないで俺を待ってくれていた。着替えを済ませると、酔い覚ましの果実水を持ってきてくれる。少し酸味のある果実を使っているらしく、さっぱりして飲みやすい。
「何かあったの?」
察しのいい彼女は俺の精神状態などお見通しの様だ。気遣うように俺の顔をのぞき込んでくる。
「ブルーノが引退する。後は俺に任せるだって」
「ルーク……」
オリガは俺の頭を包みこむように抱きしめてくれたので、俺も彼女の背中に腕を回して抱き寄せた。彼女が纏う香りと柔らかな感触に癒される。そのまま俺の気が済むまでそのままで居させてくれたのだった。
翌朝早朝、俺の要望で共寝し、結果力尽きて眠っているオリガを起こさないように寝台を抜け出すと兵団の鍛錬に加わった。昨夜、俺に同行して俺より吞んでいたシュテファンやザムエルも平気な顔をして参加している。逆に別行動だったマティアスやレオナルトの顔色の方が悪い。収穫祭の前祝と言う名目で兵士達と呑んだらしい。
「そんなに呑んだのか?」
「そうでもないですよ」
一緒にいたはずのコンラートに聞いてみるが、彼は平然として答える。まあ、彼も第3騎士団で鍛えられた酒豪の1人だ。マティアスやレオナルトが敵うはずもない。2人には無理せず休んでおくように言い渡し、我が領の兵団の練度を見させてもらった。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
鍛錬の合間にブルーノの元部下達が挨拶にやって来た。これまでも俺の発案の行事に手伝いとして参加してくれたことがある面々だった。これからは配下として仕えさせていただくと誓ってくれた。ザムエルの話だと、もう市街の巡回を任せているらしい。
「これからもよろしく頼む」
頼もしい味方が加わった。彼等と握手を交わし、鍛錬を再開した。
鍛錬の後は目を覚ましたオリガと共に朝食を済ませた。彼女はまだ体がだるいと言っていたので休んでいてもらい、俺は書類の決裁と春からミステルで行われる騎士科の準備状況を確認した。
教官用、生徒用の宿舎や座学用の教室への改装も始まっていたが、空き部屋にはまだまだ余裕がありそうだ。責任者となるブロワディ卿と話をしてどうするか決めることになるだろう。ともかく準備は順調に進んでいるので、一安心だ。
昼過ぎになってオリガも回復して動けるようになったので、連れ立って町中へ出かけた。行先はビアンカの店。俺もどんな様子か気になったので、2人で訪れることにしたのだ。ちなみに昨日オリガは、町中にある3つの孤児院全てを視察してもらっていた。
他の町に比べて孤児が多いのでどこも満員に近い状態だが、神殿からも支援してもらっているおかげでどうにか維持できていた。後は年嵩の子供達に職人の見習いや農家の手伝いを斡旋したりして自立を促うながしている。あと数年は我慢が必要だ。
「随分賑やかになったな」
「そうね」
馬車の窓の外を見ると、2年前とは比べ物にならないくらいに活気づいた町中が見える。アジュガ同様、ミステルでも近々収穫祭が行われるので、そのお祭りの雰囲気もあるのだろう。だが、2年前はそのお祭りすら開ける状態ではなかった。
俺達が乗る馬車に気付くと、みんなが手を振ってくれている。2年前は俺が騎馬で通ればお金を無心に来るか奪いに来るかだけだったのが嘘の様だ。何だか平和をしみじみと感じた。
「いらっしゃいませ」
町はずれにあるビアンカの店に到着すると、彼女だけでなく従業員が全員で出迎えてくれた。中には男性に対して恐怖を感じる人もいるらしいのだけど、それでも後ろの方で参加してくれていた。
「元気そうで安心したよ。店はどう?」
「最初は不安でしたし大変でしたけど、みんなで力を合わせて乗り越えています。兵団の関係者の方が良く来られるので安心です」
チラリとザムエルに視線を向けると、彼はそ知らぬふりをしている。しかし、彼がこの店に足しげく通っていると言う報告を受けている。それがただの同郷のよしみというだけでなく、もっと個人的な感情がありそうなのだが本人が口を閉ざしているので分からない。俺としては応援したいが、ビアンカが最初の結婚で傷ついているのは確かなので、今はそっとしておくことに決めていた。
「だっこぉ」
店に入ると、俺の姿を見たベティーナに抱っこをせがまれる。ビアンカは慌てて止めようとしたが、覚えていてくれたのが嬉しくて、かまわず俺はベティーナを抱き上げた。
「大きくなったね」
「しゅきぃ」
俺に抱き着き、嬉しい事を言ってくれる。そのままクルリと回転すると、声を上げて笑ってくれる。
「あ、じゃむしゃん!」
誰の事だろうとベティーナが指す方向を見て見ると、店の前で警護をしているザムエルの姿があった。なるほど、彼が「じゃむしゃん」か。ザムエルを店の中に呼んでお嬢様のご要望に応える。
「じゃむしゃん!」
ベティーナの懐きようから見ても、彼がこの店に良く訪れている事が分かる。ビアンカがベティーナを引き取ろうとしているが、子供は「いやぁ」と言ってザムエルにしがみついている。
ザムエルもビアンカも困っていたが、子どもが好きなようにさせていた方が大人しいだろうと言うことになり、そのまま彼に子守りを任せることにした。厳つい風貌の彼が子供を抱っこしている姿に笑いがこみあげて来そうになったが、彼に睨まれたので咳払いをしてごまかした。
「お待たせしてすみません」
子供が落ち着いたところでビアンカが不手際を詫びてきたが、俺もオリガもそんな事は気にしていない。むしろ珍しいものを見ることが出来た。そう言って彼女を安心させてから案内された席に着いた。
それからほどなくして運ばれてきたのは、野菜がたっぷり入ったスープとチーズをのせたパン、そして焼いた鶏肉だった。この店の今日の献立で、日によってスープの具が変わり、お肉は追加料金で付けるようにしている。
この店は町の外れ近くにある。労働者が多く、最近になって経済的に余裕が出てきた人たちが多く住む場所だ。朝から昼過ぎまでの営業で、仕事前に労働者が朝食を食べに来たり、最近では兵団関係者が昼を食べに来たりするらしい。
「うん、美味しい」
料理は正に家庭料理といった感じで、優しい味付けとなっていた。今は品数を抑えているが、いずれは増やしていく予定らしい。一番の目的は弱い立場の女性を受け入れる場所を作る事だ。従業員も独りで子供を育てている母親や夫の暴力から逃げてきた女性もいる。まだまだそんな立場の人は多くいるので、できるだけ多く受け入れられるように俺も支援している。いずれはこの食堂だけでなく、彼女達が作った小間物を売る店も作る予定だ。
「やりがいがあるんです」
みんなに頼られるのが嬉しいとビアンカは胸を張る。小柄な女性なのに何だか頼もしい。俺達も出来る限りの支援をすると約束して店を後にした。
ビアンカの店の視察も終わり、一先ずミステルで予定していた事は全て終了した。カミルの事も気になるし、慌ただしいがその日のうちにアジュガへ帰ることにした。サイラスは俺の考えなどお見通しで、ビアンカの店から戻ってくると、既に荷物がまとめられていた。おかげですぐに出立することが出来、日が傾く前にはアジュガに到着していた。
「とぉー」
着場に降り立つと、カミルが真っ先に駆けて来た。抱き上げると嬉しそうに俺の顔をペタペタと触って来た。
「いい子にしていたか?」
頬ずりをすると楽しいのか声を上げて笑っている。母さんが言うには、ザシャたちと楽しそうに遊んでいても、時折辺りを見回して俺達を探していたらしい。やはり寂しい思いをさせてしまっていた様だ。残りの休み期間は出来るだけ一緒に過ごして楽しい思い出を作って行こうと心に決めたのだった。
夜風に当たって酔いを醒ましながら領主館へ戻る。そんなに長い付き合いではないけれど、ブルーノとはもう会えないと思うと何だか寂しい。
「お帰りなさい」
夜遅い時間だったにもかかわらず、オリガは寝ないで俺を待ってくれていた。着替えを済ませると、酔い覚ましの果実水を持ってきてくれる。少し酸味のある果実を使っているらしく、さっぱりして飲みやすい。
「何かあったの?」
察しのいい彼女は俺の精神状態などお見通しの様だ。気遣うように俺の顔をのぞき込んでくる。
「ブルーノが引退する。後は俺に任せるだって」
「ルーク……」
オリガは俺の頭を包みこむように抱きしめてくれたので、俺も彼女の背中に腕を回して抱き寄せた。彼女が纏う香りと柔らかな感触に癒される。そのまま俺の気が済むまでそのままで居させてくれたのだった。
翌朝早朝、俺の要望で共寝し、結果力尽きて眠っているオリガを起こさないように寝台を抜け出すと兵団の鍛錬に加わった。昨夜、俺に同行して俺より吞んでいたシュテファンやザムエルも平気な顔をして参加している。逆に別行動だったマティアスやレオナルトの顔色の方が悪い。収穫祭の前祝と言う名目で兵士達と呑んだらしい。
「そんなに呑んだのか?」
「そうでもないですよ」
一緒にいたはずのコンラートに聞いてみるが、彼は平然として答える。まあ、彼も第3騎士団で鍛えられた酒豪の1人だ。マティアスやレオナルトが敵うはずもない。2人には無理せず休んでおくように言い渡し、我が領の兵団の練度を見させてもらった。
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
鍛錬の合間にブルーノの元部下達が挨拶にやって来た。これまでも俺の発案の行事に手伝いとして参加してくれたことがある面々だった。これからは配下として仕えさせていただくと誓ってくれた。ザムエルの話だと、もう市街の巡回を任せているらしい。
「これからもよろしく頼む」
頼もしい味方が加わった。彼等と握手を交わし、鍛錬を再開した。
鍛錬の後は目を覚ましたオリガと共に朝食を済ませた。彼女はまだ体がだるいと言っていたので休んでいてもらい、俺は書類の決裁と春からミステルで行われる騎士科の準備状況を確認した。
教官用、生徒用の宿舎や座学用の教室への改装も始まっていたが、空き部屋にはまだまだ余裕がありそうだ。責任者となるブロワディ卿と話をしてどうするか決めることになるだろう。ともかく準備は順調に進んでいるので、一安心だ。
昼過ぎになってオリガも回復して動けるようになったので、連れ立って町中へ出かけた。行先はビアンカの店。俺もどんな様子か気になったので、2人で訪れることにしたのだ。ちなみに昨日オリガは、町中にある3つの孤児院全てを視察してもらっていた。
他の町に比べて孤児が多いのでどこも満員に近い状態だが、神殿からも支援してもらっているおかげでどうにか維持できていた。後は年嵩の子供達に職人の見習いや農家の手伝いを斡旋したりして自立を促うながしている。あと数年は我慢が必要だ。
「随分賑やかになったな」
「そうね」
馬車の窓の外を見ると、2年前とは比べ物にならないくらいに活気づいた町中が見える。アジュガ同様、ミステルでも近々収穫祭が行われるので、そのお祭りの雰囲気もあるのだろう。だが、2年前はそのお祭りすら開ける状態ではなかった。
俺達が乗る馬車に気付くと、みんなが手を振ってくれている。2年前は俺が騎馬で通ればお金を無心に来るか奪いに来るかだけだったのが嘘の様だ。何だか平和をしみじみと感じた。
「いらっしゃいませ」
町はずれにあるビアンカの店に到着すると、彼女だけでなく従業員が全員で出迎えてくれた。中には男性に対して恐怖を感じる人もいるらしいのだけど、それでも後ろの方で参加してくれていた。
「元気そうで安心したよ。店はどう?」
「最初は不安でしたし大変でしたけど、みんなで力を合わせて乗り越えています。兵団の関係者の方が良く来られるので安心です」
チラリとザムエルに視線を向けると、彼はそ知らぬふりをしている。しかし、彼がこの店に足しげく通っていると言う報告を受けている。それがただの同郷のよしみというだけでなく、もっと個人的な感情がありそうなのだが本人が口を閉ざしているので分からない。俺としては応援したいが、ビアンカが最初の結婚で傷ついているのは確かなので、今はそっとしておくことに決めていた。
「だっこぉ」
店に入ると、俺の姿を見たベティーナに抱っこをせがまれる。ビアンカは慌てて止めようとしたが、覚えていてくれたのが嬉しくて、かまわず俺はベティーナを抱き上げた。
「大きくなったね」
「しゅきぃ」
俺に抱き着き、嬉しい事を言ってくれる。そのままクルリと回転すると、声を上げて笑ってくれる。
「あ、じゃむしゃん!」
誰の事だろうとベティーナが指す方向を見て見ると、店の前で警護をしているザムエルの姿があった。なるほど、彼が「じゃむしゃん」か。ザムエルを店の中に呼んでお嬢様のご要望に応える。
「じゃむしゃん!」
ベティーナの懐きようから見ても、彼がこの店に良く訪れている事が分かる。ビアンカがベティーナを引き取ろうとしているが、子供は「いやぁ」と言ってザムエルにしがみついている。
ザムエルもビアンカも困っていたが、子どもが好きなようにさせていた方が大人しいだろうと言うことになり、そのまま彼に子守りを任せることにした。厳つい風貌の彼が子供を抱っこしている姿に笑いがこみあげて来そうになったが、彼に睨まれたので咳払いをしてごまかした。
「お待たせしてすみません」
子供が落ち着いたところでビアンカが不手際を詫びてきたが、俺もオリガもそんな事は気にしていない。むしろ珍しいものを見ることが出来た。そう言って彼女を安心させてから案内された席に着いた。
それからほどなくして運ばれてきたのは、野菜がたっぷり入ったスープとチーズをのせたパン、そして焼いた鶏肉だった。この店の今日の献立で、日によってスープの具が変わり、お肉は追加料金で付けるようにしている。
この店は町の外れ近くにある。労働者が多く、最近になって経済的に余裕が出てきた人たちが多く住む場所だ。朝から昼過ぎまでの営業で、仕事前に労働者が朝食を食べに来たり、最近では兵団関係者が昼を食べに来たりするらしい。
「うん、美味しい」
料理は正に家庭料理といった感じで、優しい味付けとなっていた。今は品数を抑えているが、いずれは増やしていく予定らしい。一番の目的は弱い立場の女性を受け入れる場所を作る事だ。従業員も独りで子供を育てている母親や夫の暴力から逃げてきた女性もいる。まだまだそんな立場の人は多くいるので、できるだけ多く受け入れられるように俺も支援している。いずれはこの食堂だけでなく、彼女達が作った小間物を売る店も作る予定だ。
「やりがいがあるんです」
みんなに頼られるのが嬉しいとビアンカは胸を張る。小柄な女性なのに何だか頼もしい。俺達も出来る限りの支援をすると約束して店を後にした。
ビアンカの店の視察も終わり、一先ずミステルで予定していた事は全て終了した。カミルの事も気になるし、慌ただしいがその日のうちにアジュガへ帰ることにした。サイラスは俺の考えなどお見通しで、ビアンカの店から戻ってくると、既に荷物がまとめられていた。おかげですぐに出立することが出来、日が傾く前にはアジュガに到着していた。
「とぉー」
着場に降り立つと、カミルが真っ先に駆けて来た。抱き上げると嬉しそうに俺の顔をペタペタと触って来た。
「いい子にしていたか?」
頬ずりをすると楽しいのか声を上げて笑っている。母さんが言うには、ザシャたちと楽しそうに遊んでいても、時折辺りを見回して俺達を探していたらしい。やはり寂しい思いをさせてしまっていた様だ。残りの休み期間は出来るだけ一緒に過ごして楽しい思い出を作って行こうと心に決めたのだった。
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