群青の軌跡

花影

文字の大きさ
上 下
109 / 231
第4章 夫婦の物語

第3話

しおりを挟む
「あのね、ルーク兄さん、私ね、赤ちゃんできたみたいなの」
「は?」
 しばらくして意を決したカミラさんが告白すると、その内容がすぐに理解できなかったルークはその場で固まっていた。私はやはりと思うと同時に、まだ顔色は悪いながらも幸せそうに微笑む彼女が少しうらやましく思えた。
「な、何で、えっと、相手は?」
「それでね、聞いてほしい事があるの」
 まだ混乱していたルークは、カミラさんのお願いに少し緊張した面持ちでうなずいた。疑問は多々あるけれど、質問するのは彼女の話を聞いてからになる。
「ルーク兄さんが領主になっても自分は変わらないと思っていたから、知らない人に急に結婚を申し込まれるようになってちょっとびっくりした。でも、ルーク兄さんが早く対策をとってくれたおかげですぐにそんな事が無くなってちょっと安心していた」
 ルークが領主に任命されたのは昨秋。陛下の信認が篤い彼とつながりを得ようとする貴族は後を絶たない。そんな彼らが目を付けたのがまだ独身のカミラさんで、婚姻の申し込みが殺到していた。皇都にいる私達を通じてだけでなく、アジュガまで足を運んでカミラさんに直接申し込む者までいた。
 中には強引に迫ってくる者までいたらしいのだけど、ザムエルさんやウォルフさんが適切に対処してくれていた。私達はカミラさんの意思を確認し、申し込んできた貴族にはサイラスやガブリエラと知恵を出し合って内容を考えたお断りの手紙を送っていた。その後、ブランドル家とサントリナ家のご助力のおかげもあって、縁談の申し込みは一段落していた。
「それでも諦めが悪い人がいて、無理に迫られて怖かった」
「問題なかったと聞いていたが?」
「うん。ウォルフさんが機転を利かせてくれたし、ザムエルさんがすぐに対応してくれたから大丈夫。でも、ザムエルさんもウォルフさんも大変だったみたい」
「そいつの名前、教えてくれ」
 怒りを覚えたらしく、ルークの声が地を這う。それでもカミラさんはあっけらかんとしていて、相手の名前までは覚えていないと答えた。
「ウォルフさんなら知っているかも」
「分かった。後で聞いておく」
 ルークも当初の衝撃からようやく落ち着いたらしく、冷静に考えを巡らせるようになっているみたいだった。
「それでもやっぱり外に出るのが怖くなっちゃって、冬の間はずっと家に引きこもってしまって、仕事は結局辞めさせてもらったの」
 「踊る牡鹿亭」の仕事は天職だったように思えたけれど、それを辞めるとは相当精神的に参っていた様に思える。領主であり家族でもあるのに、そこまで知らされていなかったことにルークは一層不機嫌になる。
「聞いてないぞ」
「討伐期が終わるまでは忙しいだろうし、この程度で手紙を送るのもどうかと思ったのよ。夏至祭が終われば来ると聞いていたし、会ったら直接言おうと思っていただけ」
 水臭いとは思うが、彼女なりに気を使ってくれた結果だったのかもしれない。それでもルークは腑に落ちない様子で顔をしかめている。
「引きこもっている間ね、ウォルフさんが心配してくれて忙しいのに色々と気遣ってもらったの。そのおかげで気持ちがだいぶ楽になって、春分節のお祭りには出かけられるようになったわ」
「ウォルフが?」
「うん。ウォルフさんてすごいね。頭が良いだけじゃなくて勇気もあって、優しくて。知らない人から強引に結婚を迫られた時も身を挺して庇ってくれて、ザムエルさんが駆け付けてくれるまで1人で守ってくれたの。頼りになる人だと改めて思ったわ」
 穏やかに話すカミラさんの表情から、ああ、彼女は恋をしているのだと分かった。一緒に話を聞いていたお母さんが口を挟まないでいる所からすると既にご存知の様子だった。ルークにも分かったみたいだったけど、表情を変えることなく先を促していた。
「春分節に一緒に出掛けるお願いをしたら、嫌な顔をせずに付き合ってくれて……。暗くなる頃に家まで送ってくれようとしてくれたんだけど、私が無理に迫って朝まで一緒に過ごしちゃった。迷惑かけたんだけど、それでもちゃんと家まで送ってくれて、待ち構えていたお父さんからも一緒に怒られたの」
「じゃあ、子供の父親は……」
「うん。ウォルフさんなの」
 カミラさんは幸せそうにうなずいていた。
「ウォルフには言ったのか?」
「まだ。気づいたのは最近だし、彼は……多分、結婚を望んでいないから」
 内乱前にゲオルグ殿下の取り巻きをしていた過去の過ちをつぐなうため、ウォルフさんは己を律し、他人に尽くして生きる道を選んでいるとルークが言っていた。公言をしたわけではないけれど、生涯独身を貫くつもりでいるらしい。
「ちゃんと話した方が良い」
「それは……分かっているけど……」
 私もルークと同意見だ。経緯はどうであれ、生まれてくる子供の為にも話し合いは必要だった。それはカミラさんも分かっているみたいだけど、消極的なのは自分の方に負い目を感じているからかもしれない。
「話は早い方が良い。連れてくるから待っていろ」
 ルークはそう言うと、すぐに部屋を出て行った。カミラさんはためらいがちにそれを制しようとしていたが、間に合わなかった。
「行っちゃった……」
「カミラ、ルークの言う通りだよ。あれからまともに話をしていないだろう? きっと、ウォルフ君も気にしているよ。いい機会だからちゃんとこれからどうするか2人で話し合いなさい」
 ここでようやくお母さんが諭すようにカミラさんへ声をかける。親として色々と思うことはあっても、成人しているのだからそれぞれの意思を尊重して意見するのを控えていたご様子だった。しかし、カミラさんのお腹に宿った新しい命の事を思うと、口を挟まずにいられなくなったのかもしれない。
「でも……」
「私も話をした方がいいと思う」
「オリガお姉さん……」
 カミラさんの声が詰まる。カミラさんの隣に移動して彼女を抱きしめると、耐えきれなくなったのかポロポロと涙を流し始める。彼女も思いがけない妊娠に戸惑い、ずっと不安を抱えていたのだろう。私は彼女が落ち着くまでその背中を撫で続けた。

ドタドタドタ

 ほどなくして慌ただしい足音が聞こえて来た。少し乱暴に扉が叩かれると、カミラさんの体が少し強張る。安心させるように彼女を宥めてから返事をした。
「し、失礼します」
 緊張した面持ちでウォルフさんが入って来る。そしてぎこちなく近づいてくるとその場にひざまずいた。
「カミラさん、好きです。結婚して下さい!」
「えっと……」
 私にしがみついたカミラさんは返答に困って固まっている。するとようやく開きっぱなしになっていた扉からルークが姿を現す。
「ウォルフ、ちゃんと話し合って結論を出してからって言ったじゃないか」
「でも、先に気持ちを伝えたかったんだ」
「分かった、分かった。俺達は席を外すから、じっくり話し合ってくれ」
 ルークはそう言うと、お母さんと私を促して部屋の外へ連れ出す。そしてその場で固まったままの2人に「ごゆっくり」と声をかけて扉を閉めた。
「大丈夫かしら?」
「なるようになるさ」
「そうそう。カミラは迫るだけ迫って、いざとなると怖くなって逃げ出すし、ウォルフ君は嫌われたと思い込んで遠慮しているし。見ている私達の方がハラハラしていたのよ」
 カミラさん自身を望んだわけではない縁談が数多く寄せられて、お父さんもお母さんも随分と心配されていた。話し合い次第でまだ決まったわけではないけれど、カミラさんが自分で選んだ人と結ばれるのなら一安心なのかもしれない。
 結婚が決まれば、その縁談に悩まされる事は無くなる。ちゃんと話し合えばきっといい結果が出るだろうとお母さんは安堵したように笑っていた。



 その日私達は領主館ではなくルークの家で休むことにした。豪華すぎるのもあるし、あのまま領主館にいるとウォルフさんとカミラさんの話し合いがどうしても気になって落ち着かない。すでにその旨をザムエルさんに伝えていてくれたらしく、玄関には馬車が用意されていた。遠慮するお母さんも一緒に乗せて実家まで送り、私達も家の中に入ると思わず安堵の息を吐いた。
「疲れたね」
「そうね」
 思っていた以上に豪華に仕上がっていた領主館を見て回り、お祝いの食事会があって、カミラさんとウォルフさんの事もあって盛りだくさんな一日だった。
 正装を解き、居間のソファに座り込む。ルークがお茶を淹れてくれていたので、2人でゆっくりと味わった。
「一つさ、提案があるんだけど」
「なあに?」
「ウォルフとカミラにこの家を使ってもらおうと思うんだけど」
 彼の提案に私は少し驚いた。私が目をしばたかせていると、彼は私を抱き寄せて穏やかな口調で続ける。
「領主になったとはいえ、俺はずっとアジュガにいられるわけじゃないし、クルト兄さんも自分の工房を構えて実家から出ている。今はまだ大丈夫だけど、この先父さんと母さんが年を重ねていくと、今まで通りとはいかなくなる。もし、カミラとウォルフが結婚してここに住んでくれれば、俺達も安心だし選択肢も増える。もちろん、2人に全部押し付けるつもりはないけど」
 ルークは一度お茶で喉を潤してから更に続ける。
「家は人が住んでいないと傷んでしまう。今でもこの家に住むのは夏場の2カ月だけだ。領主館も完成してしまったし、この家に住む機会はどんどん減ってしまう。だったら、2人に使ってもらえばいいと考えたんだ。尤も2人が出した結論次第だけど」
「そうね。良い案だと思うわ」
 ルークの言葉の端々に家族やこの家に対する彼の想いが込められている。もちろんその想いは私にも十分伝わった。
「後はどんな結論を出したかだな」
「そうね」
 後は2人が出した結論次第。いい結果になるといいねと話しながら、私達も自分達の時間を過ごした。





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



ルーク 「ウォルフ、カミラが子供が出来たと言っているぞ」
ウォルフ「えー!?」
動揺のあまり手に持っていたものを全部ばらまく。
ウォルフ「すぐに求婚してきます」
ルーク 「慌てるな。ちゃんと話し合ってから結論を出せ」
ウォルフ「自分の答えは決まっています!」
ルーク 「だから、カミラの意見も……。あぁ、行っちゃった」
突っ走っていくウォルフの後をルークはのんびりと追いかけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...