掌中の珠のように Honey Days

花影

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桜色の幸せ3

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 豪華なお花見弁当を味わった後、少し休憩をしてから義総と沙耶はアレクサンダーとグレイスを連れて散歩に出かけた。天気も良く、満開の桜の下を2人で手を繋いで歩いていると、ひらひらと桜の花びらが降ってくる。いつしか義総は沙耶の腰に腕を回し、持っているのも煩わしくなってきたので、2匹の犬のリードも外してやった。
 好奇心旺盛なグレイスは蝶を追いかけたり、舞い落ちてくる花びらに飛びかかろうとしたりと忙しい。逆にアレクサンダーは落ち着いていて、主人である義総の傍らを大人しく歩いている。こんなにゆったりとした時間を義総と過ごすのはずいぶん久しぶりな気がした。
「お仕事……大丈夫なのですか?」
「……今だけは忘れさせてくれ」
 少し心配になってきた沙耶が尋ねると、義総は不機嫌そうに少し顔を顰める。沙耶は慌てて「ごめんなさい」と小さく謝った。彼はそんな彼女を引き寄せると軽く口づけて許してやった。とにかく今は久しぶりにとれた休暇を楽しむことに専念したいらしい。
 桜の木々の間を縫うように整備された小道を2人はゆっくりと歩いて散策する。途中にある池の鯉に餌をやったり、道を少し外れて芝生の広場に出て犬達と遊んだり……。休憩に立ち寄った東屋にはいつの間にか冷たい飲み物が用意されているのだが、魔法でも使ったのではないかと疑いたくなるくらい、散策中に他の人の姿を見る事は無かった。
 散策を終え、コテージに戻ると、今度は2人で映画を楽しんだ。ソファに座る義総に沙耶が寄り添うと、時々悪戯な手が彼女の体を撫でまわす。映画に集中できないと抗議するが、彼はどこ吹く風で悪戯を止めなかった。



 こうして2人だけの時間は過ぎていき、日が暮れて辺りは夕闇に包まれていた。
「うわ……」
 義総に促されてテラスに出た沙耶は感嘆の声を上げる。満開の桜はライトアップされ、ひらひらと花びらが風に舞う光景は、昼間とは異なり幻想的であった。
「さ、どうぞお嬢様」
 テラスに食卓が用意されているのだが、どうやら今夜のディナーはフレンチのフルコースらしい。義総が椅子を引いて沙耶を座らせてから彼自身も席に着くと、どこからともなく塚原が現れて2人に飲み物を給仕する。沙耶には色鮮やかなオレンジジュース、義総にはスパークリングワインが用意されていた。
「乾杯」
 グラスを合わせ、夜桜を鑑賞しながらの晩餐が始まった。こちらも料理長が丹精をを込めて作られていて、味だけでなく見た目も美しい皿が次々と出てくる。
 桜鯛のカルパッチョ仕立てに季節の野菜のバーニャカウダといった5種類の前菜に新じゃがのポタージュスープ、ロブスターのローストに牛ほほ肉の赤ワイン煮……。もちろん沙耶にはデザートとして桜のシフォンケーキにバニラアイスを添えてでてきた。
「おいしぃー」
 沙耶が目を細めてふわふわのシフォンケーキを口にしている間、義総は満足そうに彼女を眺めながらワインのグラスを傾ける。彼女が最後の一口を食べ終え、フォークを皿に置くと塚原がスッとデザートの皿を下げ、代わりに紅茶のカップを差し出す。そして静かに頭を下げると主たちの邪魔にならないように下がった。
「こっちにおいで」
「はい」
 義総が手招きするので側に行くと彼の膝の上に座らされる。テラスで桜を見ながらの食事は目新しくて楽しかったが、日が沈んでからは余計に風が冷たく、体が少し冷えていた。膝の上に座るのは恥ずかしいが、義総に抱き締められ、伝わってくる彼のぬくもりに沙耶はホッとする。
「体が冷えてしまったな」
「でも、こうしていると温かいです」
「中に入るか?」
「もう少し……桜を見てていいですか?」
「いいぞ」
 義総は沙耶の額に口づけると、彼女が寒くないように自分の体に引き寄せて密着させる。彼女も彼の胸にそっと頭を寄せた。そして2人は寄り添いながら、2人の為に……厳密には沙耶の為にセッティングされた夜桜の光景を心行くまで鑑賞した。



「旅館……みたい」
 義総にお風呂を勧められた沙耶はコテージの浴室に一歩足を踏み入れて絶句する。数人がゆったり浸かれる程広い浴槽の奥の壁はガラス張りになっており、その向こうにはまるで旅館のような露天風呂がなみなみと湯を湛え、風にのって入り込んできた桜の花びらが水面に揺れている。
 この浴室は斜面を利用して中二階に作られていて、巧みに作られた目隠しのおかげもあって景色を眺めながら入浴を楽しめるようになっていた。当然、今眼下に広がっているのは満開の桜である。
「風邪ひくぞ」
 タオルを体に巻き付けただけの状態で立ち尽くしていた沙耶を裸の義総が背後から抱きしめる。この状況に幾分興奮しているのか、彼女の腰辺りに硬くなった彼自身が当たるのを感じる。彼は彼女が巻きつけていたタオルを外すと自分の方に向けて唇を重ねた。
 昼の間、彼は彼女と交わるのを我慢に我慢を重ねてそろそろ耐え切れなくなっているのだろう。2人は軽く体を流し、先ずは内風呂に浸かって外の景色を眺める。沙耶は義総の膝の上に座らされ、逃げられないようにしっかりと腰に腕が回されている。
「なんだか、贅沢な気分」
「そうか」
 話をしながらも義総の手は沙耶の感じやすい背中をサワサワと撫で、彼女がつい甘い声を漏らすと満足そうに目を細める。そして手の動きはだんだんと大胆になり、お尻や胸の先端にも触れて来るようになる。
「外のお風呂も……入ってみたい……かな」
「いいぞ」
 本格的にここでエッチが始まってしまうのがなんだか嫌だったので、沙耶は義総の気持ちを少し逸らそう試みる。露天風呂には1人で入るつもりでいたのだが、彼女を抱えたまま義総は立ち上がり、硝子戸を開けて外へ出る。
「……っ」
 体が濡れているので余計に夜風が冷たく感じる。義総は急いで桜の花びらが浮かんでいる湯船に沙耶を抱えたまま浸かった。そこへまた一枚、花びらがひらひらと舞い落ちてくる。
「素敵……」
 浮かんでいる花びらを沙耶は両手で掬って遊んでいる。無邪気なその姿に義総は満足そうな笑みを浮かべると、彼女を引き寄せてまた唇を重ねる。
「花びらがたくさんついている」
 湯から出ている彼女の肩から胸元にかけて淡いピンクの花びらが数枚ついているのだが、それよりももっと色濃く今朝の情交の痕が残っていた。沙耶が恥ずかしげに隠そうとすると義総は腕を掴んで押さえ、鎖骨の辺りに吸い付いて新たな痕をつけた。
「あ……」
「もっとつけよう」
 二の腕や乳房にも吸い付きながら、巧みに彼女の体を自分に向けると体を跨らせた。手は彼女の体を撫でまわし、そそり立った彼自身を彼女の秘所に撫でつけている。
「あ、あ、あ……」
 沙耶が甘い声を上げ、我慢できなくなって義総に抱きついてくると、徐に彼自身を秘所に突き立てた。突然の快楽に彼女の体は仰け反り、彼は彼女が倒れないようにしっかりと抱きしめた。
「ああ…沙耶……」
 義総が激しく腰を突き上げると彼女はすぐにのぼりつめ、休む間もなく快楽が押し寄せてくる。しばらくそのままの格好で交わっていたが、義総は物足りなくなってきたのか一度自身を引き抜くと、彼女に浴槽の縁に手を突かせて尻を高く上げ、背後から貫く。
「ひぃっ、あぁぁぁん!」
 達して敏感になっている内部は義総を一層締め付けて更に快楽を得ようと蠢いている。抽送も一層激しくなり、やがて沙耶が甲高い声を上げて達すると同時に彼も中に熱い欲望を吐き出していた。
「ああぁぁぁ……」
 義総が中から自身を引き抜くと、蜜と白濁が混ざった物が零れ落ちてくる。力が抜けた状態の沙耶はそのまま浴槽の中に座り込んだ。そんな彼女を彼は優しく抱き寄せて口付けた。
「ちょっと掻き出して綺麗にしてから上がろうか」
 義総は横抱きにした彼女の足を広げると、中に指を入れて中のものを掻き出すように動かし始める。
「や、あっ、あっ、あぁっ!」
 自然と彼女の感じるところをせめてしまい、沙耶は再び嬌声をあげながらすぐに達してしまう。それでも彼は休みなく手を動かし続け、何度も何度も彼女を絶頂へ導く。

 執拗ともいえる後戯と長時間湯に浸かっていたことにより、沙耶は逆上せてフラフラになっていた。異変に気付いた義総が慌てて介抱したが時すでに遅く、綾乃の知るところとなって彼は小言を受ける事となった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ちなみに……義総が休日を満喫している陰で貧乏くじを引かされた人物が約一名……。

青柳「会食、お疲れ様でした。この後は本社に戻って書類に目を通して頂きます」
幸嗣「えー、まだあるの?」
青柳「明朝は朝一番の飛行機で台北に向かい、現地のホテルを視察する予定です」
幸嗣「ウソだろ……」
青柳「経済学を実戦で学べるんです。これ以上の教材はございません」
幸嗣「……」
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