掌中の珠のように Honey Days

花影

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桜色の幸せ2

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 気付けば体を清められ、きちんと夜着を着せられた状態でベッドに横になっていた。先ほどの激しい情交は夢ではないかと錯覚してしまいそうだが、体の中にまだ義総が入っているような感覚がまだ残っている。そろそろと体を起こしてみると、あのコテージの寝室の中で、テラスに続くカーテンはきっちりと閉められていた。
 ベッドから降りて窓に近寄り、カーテンを開けると、高く昇った太陽でより鮮やかに照らされたあの桜色の景色が広がっている。目に痛いくらいの鮮やかなピンクの景色を眺めていると、後ろからふわりと抱きしめられる。馴染んだ体温と纏う匂いは義総のもので、沙耶は振り返って相手を見上げる。
 カジュアルシャツにジーンズ姿の彼は朝から存分に沙耶の体を堪能したせいもあり、どこか満足げでそして壮絶な色気を放っている。彼女は頬を染めて彼を見上げる。
「義総様……」
「沙耶」
 義総はそのまま体を屈めて沙耶に唇を重ねる。軽くついばむように重ねてすぐに離し、彼女の体を抱きしめる。沙耶の纏う香りを嗅いでいると、オスの欲求が頭をもたげてくる。このまま、またベッドへ逆戻りしたくなるが、頑張って今日の休日を確保したのに、それだけで終わらせたくは無かったので辛うじて我慢した。
「向こうに食事の用意をさせる。着替えてからおいで」
 名残惜しそうに義総は沙耶の額に口づけると、彼女から体を離した。彼女は頬を染めたまま小さく頷いた。



 義総が寝室から出ていくと、沙耶は用意されていた着替えに袖を通した。シンプルなワンピースから下着に至るまで、用意されているものは全て義総の好みが反映されている。鏡の前で最後に身だしなみをチェックし、寝室を後にする。
 隣の部屋に行くと、すぐに義総が沙耶をエスコートして席に案内してくれる。外の景色が良く見える窓際にテーブルがセットされていて、2人分の食事が用意されていた。窓の外に向かって2人が並ぶようにセットされているのだが、なぜか2つの席は必要以上にくっついている。
 朝食と昼食を兼ね、見た目も素材も春を感じる和洋折衷の弁当仕立てになっている。筍の炊き込みご飯と雑穀米のご飯は沙耶には一口サイズのおにぎりに。鰆の西京焼きに菜の花のお浸し、山菜の炊き合わせ。和食の定番、茶わん蒸しと蛤のお吸い物も添えられている。和牛のステーキに鴨のローストも一口サイズにカットされ、季節の花を添えて見目良く盛りつけられていた。沙耶の膳には桜餅と苺のムースがデザートとして添えられている。
「おいしそう……」
「頂こうか」
「はい」
 ここ数日間、義総の仕事が忙しかったこともあり、こうして一緒に食事をするのは久しぶりだった。他愛もない会話を交わしながら、料理長、黒崎の渾身の花見弁当を2人は堪能する。
 一足先に食べ終えた義総は、沙耶に合わせてグレープフルーツジュースを飲んでいたが、不意に彼女を抱き上げると自分が彼女の席に移り、その膝の上に彼女を座らせる。
「義総様?」
「気にするな。続けなさい」
 あれだけ激しく交わったのに、どうやら彼はまだスキンシップが足りないらしく、食事中の彼女の腰に腕を回し、その首筋に顔を埋める。当然、食事どころではない。
「あの……食べにくい……です」
「どうして?」
「その……義総様が、その……」
「私の所為か?」
「……」
 邪魔だとは言えずに沙耶は口籠る。義総はニヤリと笑うと沙耶の箸を手に取り、食べやすくカットされているステーキを一切れつまんで彼女の口元へ運ぶ。
「え?」
「口あけて」
「……」
 何をしようとしているか察した沙耶は頬を赤らめると目を閉じて口を開けた。その中へ彼はステーキを入れる。
「……子供じゃ……ないのに」
 沙耶はどうにか咀嚼して飲み込むと、ちょっとだけムッとして義総を見上げる。彼は気にせずにまだ残っていた筍ご飯のおにぎりをさらに小さな塊にして口元へ運んだ。
「案外、これも楽しいな」
 どこがどう楽しいのだろうかと思いながらも、結局沙耶は彼に残りの食事を食べさせてもらった。半強制的に食べさせられて、ちょっとお腹が苦しい。それでも満足した彼は終始ご機嫌だったので、沙耶はまあいいかと自分を納得させたのだった。


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本編でもよく出て来たけれど、食事シーン多いなぁ……。
作者が食い意地がはっているからでしょうか。(苦笑)
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