掌中の珠のように Honey Days

花影

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いつか見た光景1

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 昨夜も義総に何度も求められた結果、昼近くまで寝ていた沙耶は午後になってようやく起きれるようになっていた。午前中は書斎で仕事をしていた義総と一緒に食事を済ませ、自然な流れでリビングに誘われたのだがその光景に沙耶は唖然として立ち尽くす。
「何これ……」
 これはデジャヴ? リビングはブティックと化し、いつか別荘で見た光景と重なる。但し、別荘のリビングよりも本宅(ここ)の方が広いので、集められた服の量は前回の比ではない。
「今日は何日か分かるか?」
「14日……ですけど……あ、ホワイトデー?」
 沙耶の答えに義総は満足げに頷く。
「そうだ。バレンタインのお返しをしようと思ってな」
「でも、義総様はバレンタインにお花をくださったのに……」
 バレンタインにもらったプリザーブドフラワーは今でも部屋に飾られている。その他にもバラ風呂に出張先からのお土産となんだかんだで山のようにプレゼントをもらった記憶がある。
 対して自分は固まらなかったチョコレートと誕生日のプレゼントとして贈ったセーターだけである。セーターは確かに喜んで、家にいる時によく着てくれているが、あのチョコレートは本当に失敗だった。
「沙耶から素晴らしい贈り物をもらったからな、そのお礼がしたいんだ」
 義総が後ろから沙耶に抱きついてきて耳元に甘く囁く。それだけで体が甘く痺れて立っていられなくなりそうだった。
「貰いすぎです……。それに……私、たくさん頂いたのにお返しを用意していない……」
「気にしなくていいが、気になるなら今夜も私の相手をしてくれ」
「あ……」
 義総が首筋に吸い付いて赤い痕をつける。体はそれに反応してしまい、秘所ははしたなく蜜を溢れさせた。
「さ、気に入った物から着てみるといい。私はその姿を堪能させてもらうよ」
「は…い……」
 義総に煽られた熱で思考が働かなくなった状態の沙耶は素直に答えたが、我に返るとスゥーッと血の気が引いてくる。
 案の定、衝立の類は用意されておらず、着替えは必然的に義総の目の前でする事になる。しかも今回は服よりも下着……特にベビードールといったランジェリーの数が多く、裸にならなければ着れない物の方が多数を占めていた。
「どうした?」
 長い脚を組んでソファに座る義総は優雅な所作で寛いでいるが、その目は獲物を狙う肉食獣のように鋭い。
「いえ……あの……」
「脱がせてほしいのか?」
「い、いえ、自分で出来ます……」
「ならば、早く着て見せてくれ」
「……」
 どう見ても沙耶に逃げ場は無かった。白旗を上げた彼女は仕方なく衣服に手をかけた。
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