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33.デートの約束(2)*
しおりを挟む「何がおかしい?」
「私と目が合っただけで、そんな大げさです」
「綾芽の仕事は俺だけを見ること。そして、ずっと俺の傍にいることだよ」
「そんなことをしたら、きっと透也さんはすぐ私に飽きますよ」
「まさか、綾芽に飽きる訳ないだろ」
ちょっとムキになったように答える透也の真剣な表情がおかしくて、笑いが止まらなくなる。
「綾芽、今日はどこへ行きたい?」
「それなら、緑が見える場所に行きたいです。すぐ近くで構いませんから、自然が多い場所に……」
「もっと豪華なレストランとか、海の上でクルーズとか、遠慮せずに、もっと贅沢な願いでもいいんだが……」
綾芽はしばらく頭を巡らせた。都会の景色はどれも素敵に感じるけれど、やはりどこか落ち着かない。思い切り空気が吸って、ホッとできるような場所に行きたかった。
「それなら……この辺りだと、浜離宮庭園はどうだ?」
「行ってみたいです!」
勢いよく答えると、透也が一瞬驚いたような表情を浮かべ、すぐに満面の笑みになった。
「本当に天然だな、綾芽は」
「変ですか?」
「そういうところが可愛くて、手放せなくなる」
いきなり透也がベッドの中で抱きつき、綾芽の身体に密着してきた。大きい腕の中へ綾芽はすっぽりと入ってしまうから、抱きしめられるとその心地良さに出られなくなってしまう。
「ちょっ、もう起きないと……」
もがいているうちに、サイドテーブルの上に置かれたスマホが鳴り出した。
「何だ、邪魔が入ったな」
透也は手を伸ばしスマホを取ると、画面を見つめ、すぐに起き上がり神妙な顔つきになった。
「悪いな、綾芽。急に仕事が入ってしまった」
「私は、また今度連れて行ってもらえばいいので、気にせずに出かけてください」
「すまない……」
強張らせた表情のまま仕事モードになると、手早くスーツに着替え、すぐに出かけて行った。
それから結局、透也の帰宅は普段とあまり変わらないような時間になった。時計の針は夜の十時を過ぎている。
「おかえりなさい」
綾芽はリビングのソファーから立ち上がり透也を迎えると、いきなり抱きしめられた。アルコールと普段とは違う香水のような匂いがして、かなり酔っていることが分かる。
「どうしたのですか?」
透也は無言のまま、強い力で思いきり抱き締めるから、腕や背中に痛みを感じるくらいだった。いつもとは違う様子に、ただ戸惑ってしまう。
「透也さ……」
いきなり口を塞がれるように唇を奪われ、声を上げようとしても、逃してはくれない。
「……何が……あっ……ふ……」
いつもより乱暴に綾芽の唇を漁り、まるで焦っている様子で服を脱がし始めた。戸惑う綾芽を下着姿にさせソファーに寝かせると、透也が勢いよく跨った。何度も啄むようなキスをして、唇が離れる。
「……と、透也さん、いきなりどうしたんですか?」
「早く子どもを作ろう。そうすれば、堂々と結婚ができる。綾芽が嫌だと言っても、俺は認めない」
「で、でも、子どもって……」
透也は先日の会長との約束を果たそうとしてる。だからと言って、こんなに乱暴に迫るなんて……。
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