悲しい夢

たかまちゆう

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悲しい夢

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とてもとても悲しい夢を見た。

大切な友達が、癌になる夢だった。
しかも、一度治ったと聞いてしばらく経った頃に、
「再発したんだよね……」
と言われたのだった。
癌の再発。
完治する望みは薄いのかな、と考えてしまうと、安易な慰めを口にすることもできなかった。
気軽に「頑張れ」とも言えない。
何かしてあげたいのに、私はあまりにも無力で、何もできることがないのだ。
それでも、今一番つらいのはその友達で、その子が私に再発の話をし始めたのだから、それは私に聞いてほしいということなのだろう。
私は、なるべく友達の話を遮らないように、じっくりと話を聞き始めた。
…………目が覚めても、しばらくは何が現実か分からなかった。
夢の友達は、別に癌ではない。
再発とかいう以前に、そもそも癌になったという事実がないのだった。
なのに、夢の中の友達の、声のトーンや話し方が、あまりにもリアルで。
ついさっきまでその子と会っていたような感覚が消えなくて。
半ば混乱した状態のまま、私はその友達に連絡を取った。
「久し振りに会わない?」
――と。
そして実際会うことになった。
けれど、
「あなたが癌になる夢を見た。しかも再発だって」
などと言ったらどう思われるか。
とてもそんな話はできず、お互いの近況や、共通の友人の話など、他愛ないことだけをひとしきり喋って、帰る時間になった。
別れる時、
「じゃあここで買い物して帰るよ」
と友達は言って、私に背を向けた。
「あ……」
その瞬間、私はこれがこの子に会える最後の機会になる、と反射的に思い、呼び止めようとして――、
それは夢の話だった、と思い直した。
違うよ、あの子は別に癌じゃないんだよ。
まだ混乱しているみたい。
自嘲して、私も家に帰った。
ところが。
二度と会えない、という直感は現実になった。
癌でこそなかったけれど、友達はその帰り道で事故に遭い、そのまま帰らぬ人となったのだ。
……どうしてあの時、呼び止めなかったのだろう?
いや、むしろ逆に、私が会いたいなんて言わなければこんなことにはならなかったのか。
私が殺したわけではない。
でも私は、私の行動のせいで友達を殺してしまったというざらついたこの感覚を、一生忘れることはできないだろう――。






…………という夢だ。
本当に目が覚めた時、心の底から、夢で良かった、と思った。
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