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プロローグ
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「やはり、貴方が……!」
聖女様が、感激した様子で叫んだ。
こうしていると、普段の神秘的な雰囲気が陰をひそめて、普通の女性だと感じられる。
ひたすら嬉しそうな聖女様と違って、彼女の仲間達は呆然自失の状態だった。
自分の目の前で起こったことが、信じられないらしい。
そして僕も、自分に何が起こったのか理解できていなかった。
つい先ほど、聖女様は僕に、精霊が宿る石を握らせた。
金色に輝く、指で摘める大きさの、丸い宝石だ。
すると、僕の目の前に、金色に輝く「女性」が現われた。
宙に浮かんでいる彼女こそが、石に宿っていた精霊である。
精霊は、この世界に呼び出されると、精霊石と呼ばれる石に宿り、人々の手に渡ることになる。
そして、自分の主人に相応しいと認めた人間が精霊石に触れた時だけ姿を現わす。
精霊の守護を受ければ、本来人間が有さない魔力を供給してもらえるので、強大な魔物に対抗する力を手に入れることができるのだ。
精霊の多くは掌に乗る大きさだが、今僕の目の前にいる精霊は、僕と同じような大きさだ。
間違いなく、この世界でも最大級の精霊である。
精霊の能力は、その大きさに比例すると言われている。
つまり、今、僕の目の前にいる彼女こそが、この世界で最強の精霊なのだ。
すなわち、彼女を宿す者こそが最強の人間になれることを意味する。
問題は、彼女が僕に反応して姿を現わしたということだ。
それは、彼女が僕のことを宿主として認めたことを意味する。
落ちこぼれ冒険者であるこの僕を、である。
「あの……これは一体?」
僕は、混乱しながら聖女様に尋ねた。
どうしてこうなったのか、とても自分では理解できそうになかったからだ。
「貴方はこの精霊に認められたのです。今まで何百人、いいえ、何千人に試しても適合しなかったこの精霊は、貴方のために存在しているのだと言っても過言ではありません」
聖女様は、嬉々としてそう言った。
しかし、そんなことを言われても困ってしまう。
どうして、僕なんだ?
「この精霊を宿せば、貴方は後世に名を残すような英雄になれるでしょう。さあ、この子を受け入れてください」
聖女様に期待に満ちた目で見られて、僕はどうすればいいのか分らなくなってしまった。
金色の精霊を見上げる。
彼女は、無表情な顔で僕を見下ろしていた。
聖女様とは違って、彼女が僕のことをどう思っているのか、全く窺い知れなかった。
右手を開いて見下ろす。
先ほど、聖女様に握らされた金色の石が、掌の上に乗っていた。
この石を飲み込めば、今目の前にいる精霊は、正式に僕に宿ることになる。
しかし、本当に僕でいいのか?
もう一度、精霊を見上げる。
人と変わらない大きさの精霊は、とても美しかった。
小さな精霊は、誰もが可愛いと思う存在である。
それは、頭を撫でたくなるような愛らしさであり、ペットを飼っているような感覚になる者が多いことも頷けるものだ。
しかし、それが自分と同じ大きさになると、存在感が全く違う。
恐れ多くて、とても触れようとは思えない。
金色の光を放つ彼女は、女神のように見えた。
一部の人が、精霊を神の使いだと思っていることも、彼女を見れば納得できる。
僕が戸惑っている間も、目の前の精霊は何も言わなかった。
それは、精霊ならば当然の事なのだが、表情も変えないのは珍しい。
まるで、僕が結論を出すのを邪魔しないようにしているかのようだった。
「決めるのは貴方よ」
そう言われた気がした。
聖女様が、感激した様子で叫んだ。
こうしていると、普段の神秘的な雰囲気が陰をひそめて、普通の女性だと感じられる。
ひたすら嬉しそうな聖女様と違って、彼女の仲間達は呆然自失の状態だった。
自分の目の前で起こったことが、信じられないらしい。
そして僕も、自分に何が起こったのか理解できていなかった。
つい先ほど、聖女様は僕に、精霊が宿る石を握らせた。
金色に輝く、指で摘める大きさの、丸い宝石だ。
すると、僕の目の前に、金色に輝く「女性」が現われた。
宙に浮かんでいる彼女こそが、石に宿っていた精霊である。
精霊は、この世界に呼び出されると、精霊石と呼ばれる石に宿り、人々の手に渡ることになる。
そして、自分の主人に相応しいと認めた人間が精霊石に触れた時だけ姿を現わす。
精霊の守護を受ければ、本来人間が有さない魔力を供給してもらえるので、強大な魔物に対抗する力を手に入れることができるのだ。
精霊の多くは掌に乗る大きさだが、今僕の目の前にいる精霊は、僕と同じような大きさだ。
間違いなく、この世界でも最大級の精霊である。
精霊の能力は、その大きさに比例すると言われている。
つまり、今、僕の目の前にいる彼女こそが、この世界で最強の精霊なのだ。
すなわち、彼女を宿す者こそが最強の人間になれることを意味する。
問題は、彼女が僕に反応して姿を現わしたということだ。
それは、彼女が僕のことを宿主として認めたことを意味する。
落ちこぼれ冒険者であるこの僕を、である。
「あの……これは一体?」
僕は、混乱しながら聖女様に尋ねた。
どうしてこうなったのか、とても自分では理解できそうになかったからだ。
「貴方はこの精霊に認められたのです。今まで何百人、いいえ、何千人に試しても適合しなかったこの精霊は、貴方のために存在しているのだと言っても過言ではありません」
聖女様は、嬉々としてそう言った。
しかし、そんなことを言われても困ってしまう。
どうして、僕なんだ?
「この精霊を宿せば、貴方は後世に名を残すような英雄になれるでしょう。さあ、この子を受け入れてください」
聖女様に期待に満ちた目で見られて、僕はどうすればいいのか分らなくなってしまった。
金色の精霊を見上げる。
彼女は、無表情な顔で僕を見下ろしていた。
聖女様とは違って、彼女が僕のことをどう思っているのか、全く窺い知れなかった。
右手を開いて見下ろす。
先ほど、聖女様に握らされた金色の石が、掌の上に乗っていた。
この石を飲み込めば、今目の前にいる精霊は、正式に僕に宿ることになる。
しかし、本当に僕でいいのか?
もう一度、精霊を見上げる。
人と変わらない大きさの精霊は、とても美しかった。
小さな精霊は、誰もが可愛いと思う存在である。
それは、頭を撫でたくなるような愛らしさであり、ペットを飼っているような感覚になる者が多いことも頷けるものだ。
しかし、それが自分と同じ大きさになると、存在感が全く違う。
恐れ多くて、とても触れようとは思えない。
金色の光を放つ彼女は、女神のように見えた。
一部の人が、精霊を神の使いだと思っていることも、彼女を見れば納得できる。
僕が戸惑っている間も、目の前の精霊は何も言わなかった。
それは、精霊ならば当然の事なのだが、表情も変えないのは珍しい。
まるで、僕が結論を出すのを邪魔しないようにしているかのようだった。
「決めるのは貴方よ」
そう言われた気がした。
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