白銀の簒奪者

たかまちゆう

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第105話

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 僕は、スピーシアに連れられて、地下室へと向かった。
 かなり深くまで潜り、そこで見た光景に息を飲む。

 その部屋には、アンナとサーシャがいた。
 しかし、彼女達は、いつもの使用人の服を着て待っていたわけではない。

 2人は全裸だった。

 彼女達は、何者かの上半身を、水を張ったバスタブに押し込んでいた。
 下半身の身体つきから、水に押し込まれている人物が女性だと分かる。

 少し近付くと、水責めを受けている人物も全裸であり、全身を、身動きが出来ないように縛り上げられていることが分かった。

 水に押し込まれている人物が暴れるために、2人の使用人はずぶ濡れになっている。
 ランプに照らされたその姿は、艶めかしくもあり、不気味でもあった。

 アンナとサーシャは、示し合わせたように水に押し込んでいた人物を引きずり出して、床に仰向けに横たえる。
 横たえられた女性は、咳き込んで、苦しそうに喘いだ。

 もはや、息も絶え絶えといった様子である。
 意識も遠のいているようだ。

 かなりの長時間、責められていたことが窺える。

 アンナとサーシャは、表情を変えないまま、手早く自分達の身体をタオルで拭いて、それから横たえた女性の全身と床を拭く。
 その後で、下着と使用人の衣裳を身に着けた。

 一連の作業の間、2人は、自分達のことを見つめる僕のことを、非難するような目で何回か見た。
 しかし、文句を言ったり、腕で身体を隠そうとしたりする様子はなかった。

 アンナもサーシャも、カーラと遜色のない、素晴らしい身体をしている。
 アンナの下着は白っぽい色で、サーシャの下着は黒っぽい色だったが、ランプの明かりだけでは詳しく分からなかった。

 できれば、日光か月明かりに照らされた状態で、もう一度見てみたいものだ。
 そんなことを考えて、僕は興奮した。

 2人が服を着てしまったので、残念だと思いながら、横たわった女性を見下ろす。
 その女性は、苦しそうに顔を歪めていて、本来の魅力を損なっているように思えたが……なかなかの美人に見えた。

 そして、身体の方も、カーラや他の2人の使用人と互角か、それ以上であるように思える。

 縛り上げられた女性は、少しずつ意識がはっきりとしてきた様子で、僕の方を見ると小さな悲鳴を上げた。
 おそらく、もう少し体力が残っていれば絶叫していただろう。

「いかがですか? とても綺麗な子でしょう?」

 スピーシアは、満足した表情でそう言った。

「あの……この女性は?」
「この子がロザリーですわ」
「ロザリーって……カーラが、逃げ出したと言っていた使用人ですよね?」
「はい」
「……」

 僕は、ロザリーを見下ろす。
 彼女は、身体を隠そうと足掻いていたが、全身を完全に拘束されており、全く解ける様子はなかった。

「見ないで……お願い……」

 そう懇願されて、僕は目を逸らした。
 さすがに、この状況は不憫である。

「あら、意外とお優しいのですわね?」

 スピーシアは、少し驚いた様子だった。
 その反応に、少し腹が立つ。

「彼女は……貴方の快楽のためのおもちゃにされていた、というわけですね? ひょっとして、いずれはカーラのことも……?」

 僕が睨むと、スピーシアは眉を寄せた。

「まあ、心外ですわ。私は、理由もなく、ここまでのことはしませんのよ?」
「えっ……?」
「ロザリーは、私の財産を盗んで逃げようとしたのですわ。警備隊に突き出せば、間違いなく公開処刑になる額の数倍に相当する金品を、です。なので、これはそのお仕置きですわ」
「……」

 僕は、もう一度ロザリーのことを見た。
 いくら、スピーシアが相続した財産で贅沢な暮らしをいていても……それほどの盗みは、極めて悪質である。

 ロザリーは、潤んだ瞳でスピーシアを見ながら懇願する。

「お許しください……どうか……」

 その言葉を聞いて、スピーシアはため息を吐いた。

「まだ分からないのですか? どんなに請われても、私は貴方のことを許すつもりはありません」
「お願いします……スピーシア様……」
「聞きたくありませんね、そのような言葉は」

 スピーシアの言葉を聞いて、アンナとサーシャは、ロザリーに猿轡を噛ませた。
 ロザリーは、諦めきれない様子で呻く。

 スピーシアは、淡々とロザリーに告げた。

「私が貴方に求めるのは、全てを諦めて、一生を絶望しながら終えることですわ。そのために、時間をかけて拷問を繰り返しているのです。それなのに、まだ私に慈悲を求めるなど……やはり、私の責め方が生ぬるいようですわね?」
「……そういえば、ロザリーは何日も拷問を受けているはずなのに、そこまで衰弱していないように見えます」
「当然ですわ。アンナとサーシャが、ロザリーの美しさを損なわないようにお仕置きをしたい、という私の願いを最大限に実現してくれているのですから。休憩も食事も睡眠も、適度に与えながら拷問しているのですわ」
「そんな手間をかけて……貴方は、ロザリーがどんな状態になれば解放するつもりなんですか?」
「それはもちろん、何をされても拒まない、お人形のような状態になったら、ですわ。そうなったら、私はこの子を、多くの人の前で裸にして自慢しますわ」

 スピーシアは、完全に本気である様子だった。
 そんな彼女を見て、ロザリーの顔が絶望に染まる。

「ひょっとして……アンナとサーシャにも、同じようなことをしたんですか?」

 僕が思い付きでそう言うと、アンナとサーシャは怒りの感情を僕に向けた。
 どうやら、大分気に障ることを言ってしまったようだ。

「この2人は、元々こういう子達なのですわ。いえ、元はもう少し感情的なところもあったのですが……私がお願いしたら、あまり感情を露わにしなくなりました。先ほど、ティルト様に裸を見られた時だって、2人は恥ずかしがっていたのですが……気付かなかったでしょう?」
「……とても、そうは見えませんでしたよ?」
「相手が恥ずかしがると、もっと恥ずかしい思いをさせたくなるものですわ。同じように、相手が嫌がれば、もっと嫌がることをしたくなるものです。どんなことをしても平気であると装ってくれれば、私が嗜虐心を発露することも防げますので、とても助かっておりますわ」
「……それで、カーラのことだけはいじめるんですね」
「あの子は、とても良い反応をしますから」

 とてつもなく悪趣味な人だ……。
 僕にはこんなことを言う資格はないので、心の中で呟いた。

「それで……ここに連れて来られて、僕は、具体的に何をすればいいんですか?」
「簡単なことですわ。男の貴方にしか出来ないことをしていただきたいのです」
「それって、つまり……」
「ロザリーの身体を楽しんでください」

 スピーシアの言葉を聞いて、ロザリーは叫ぶような声を出し、逃げようともがいた。

「いくら何でも、そこまでしますか……?」
「この子、男性が生理的に駄目なんです。凌辱されたら、従順になってくれると思いますわ」
「……そこまでしたら、ロザリーの精神が崩壊するかもしれませんよ?」
「そうならないように、私の身体で慰めますわ」
「……」

 ロザリーのような女性を凌辱したら、自殺してしまうのではないだろうか?
 これほどの女性を再起不能にするなんて、勿体ないことである。

 しかし、暴露されたくない秘密を知られているために、スピーシアの頼みを簡単には断れない。

 どうしたものか?
 僕は、何とかして逃げようとするロザリーを見下ろしながら考えた。
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