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第77話
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僕が皆の所に戻ると、クレアとノエルが、困った様子で佇んでいた。
彼女達の方に近付いていくと、クレアが険悪な表情を浮かべる。
「ティルト! ベルさんの様子がおかしかったのは、その子のせいなのね!?」
クレアは、僕が抱えているミスティのことを見ながら、こちらに詰め寄ってきて叫んだ。
彼女がこんなに怒るのは、とても珍しいことなので面食らってしまう。
「……いや、この子は、ベルさんとは関係ないよ」
「そんなの、信じられるわけがないでしょ! どうして、タームっていう男の子を助けに来たのに、女の子を抱えて戻ってくるのよ!?」
「そのことは、ちゃんと説明するから……ベルさんとレレは?」
「ベルさんは、泣きながらどこかに行っちゃったわよ! レレは、ベルさんを心配して付いて行ったわ。ベルさんが泣くなんて、何が起こったのかと思ったけど……こういうことだったなんて!」
「だから誤解だってば……」
「あの……ロゼットさんと、タームという男の子は?」
ノエルがそう尋ねてきたので、僕は別荘で起こったことを、かいつまんで話した。
「何よそれ! そのタームっていう男の子も、ティルトも最低だわ!」
誤解が解けて怒りが静まるかと思ったが、クレアはさらに怒り出した。
「そんなに怒らなくても……」
「貴方、どうかしてるんじゃないの!? 結婚の約束までしたミスティを他人に押し付けたタームも、捨てられたミスティを引き受けた貴方も、男として最低だわ!」
「でも、何もかも、仕方がないことだったっていうか……」
「仕方がないで済ませないで! 今すぐ、タームには責任を取らせるべきよ!」
「不可能だよ、そんなこと。タームはロゼットのこと以外は頭にないし、ミスティはタームに捨てられたら自殺する覚悟だから、これ以上話し合っても無駄だと思うよ? そもそも、タームはすぐに警備隊に捕らえられるだろうし……」
「貴方は、ミスティが可哀相だと思わないの!? まさか、可愛い女の子が自分の所に来て、ラッキーだとでも思ってるんじゃないでしょうね!?」
「そんなことはないよ。この子のことは可哀相だと思うけど、何とかして、タームのことを早く忘れてもらうしかないっていうか……」
「最低だわ! 貴方が、そんな酷い人だったなんて!」
どれだけ説得しようとしても、クレアは激昂するばかりで、まともに話ができる様子ではなかった。
ノエルも、言葉には出さないものの、僕やタームのことを快く思っていないことは明らかである。
僕だって、ミスティを遠くへ連れ去ることが素晴らしい解決策だと思っているわけではないのだが……そのことを説明しても、クレア達は反発するばかりだった。
「うっ……」
ミスティが、小さく呻いて目を覚ます。
そして、周囲の状況を確認すると……狂ったように絶叫した。
「ターム!? タームはどこ!?」
「ミスティ、落ち着いて……」
「嫌! ターム! ターム‼」
何とか落ち着かせようと試みるが、正気を失った様子で泣き叫び、僕の腕の中で暴れるミスティは、とても話ができる様子ではなかった。
クレアもノエルも、言葉をかけることすら出来ない様子で佇んでいる。
「うるさいわよ。黙りなさい」
突然、ベルさんの声が聞こえた。
その直後、スッと近寄ってきたベルさんは、ミスティの首筋に触れる。
すると、ミスティの全身から力が抜けて、ぐったりとした。
「ベルさん……!」
「話は少しだけ聞こえたけど……この子は、タームを虐げていた娼婦なのね?」
ベルさんの言葉には、殺意が込められているように感じたので、僕は慌てた。
「待ってください! ミスティは、タームと結婚の約束をしていた相手なんですよ!?」
「関係ないわよ、そんなこと。そもそも、オットームがダッデウドの男を誑かすこと自体が不愉快だわ」
「でも、ミスティの母親はダッデウドだったんです! だから、この子はダッデウドを産む可能性が高いんですよ!?」
「……そう。この子は、ダッデウドの血を引いているのね」
予想に反して、ベルさんの反応は好意的でなかった。
むしろ、先ほどまでよりも深い、憎悪のようなものを感じた。
「……忌々しい子だわ」
ベルさんはそう呟くと、身動きが出来なくなったミスティの胸を、おもむろに鷲掴みにする。
「……!」
力が抜けているはずのミスティの身体から、強張りが伝わってきたような気がした。
「ちょっと、ベルさん!?」
「……なるほど。オットームのくせに、発育のいい子ね。タームや貴方が欲情するのも、仕方がないかもしれないわ」
そんなことを呟きながら、ベルさんはミスティの胸を、無遠慮に揉んだ。
「ベルさん! 抵抗できない女の子に、卑猥な行為をするのはやめてください!」
「あら、いいじゃない。この子は娼婦なんだし、タームと散々いやらしいことをしたんでしょ? 今さら、この程度のことを気にするとは思えないけど?」
「ミスティは、娼婦になった直後に、ロゼットの屋敷に雇われたんです! おまけに、まだ処女なんですよ!?」
「……そうなの。じゃあ、この子はタームの子を孕んではいないのね?」
「それは……」
完全な失言だった。
これで、ダッデウドを孕んでいる可能性を主張して、ミスティの身を守ることが出来なくなってしまった。
「だったら、容赦はしないわ。私はこの子を殺すから、邪魔しないでね?」
そう言うと、ベルさんは僕の答えを待たずに、ミスティの喉へと手を伸ばした。
彼女達の方に近付いていくと、クレアが険悪な表情を浮かべる。
「ティルト! ベルさんの様子がおかしかったのは、その子のせいなのね!?」
クレアは、僕が抱えているミスティのことを見ながら、こちらに詰め寄ってきて叫んだ。
彼女がこんなに怒るのは、とても珍しいことなので面食らってしまう。
「……いや、この子は、ベルさんとは関係ないよ」
「そんなの、信じられるわけがないでしょ! どうして、タームっていう男の子を助けに来たのに、女の子を抱えて戻ってくるのよ!?」
「そのことは、ちゃんと説明するから……ベルさんとレレは?」
「ベルさんは、泣きながらどこかに行っちゃったわよ! レレは、ベルさんを心配して付いて行ったわ。ベルさんが泣くなんて、何が起こったのかと思ったけど……こういうことだったなんて!」
「だから誤解だってば……」
「あの……ロゼットさんと、タームという男の子は?」
ノエルがそう尋ねてきたので、僕は別荘で起こったことを、かいつまんで話した。
「何よそれ! そのタームっていう男の子も、ティルトも最低だわ!」
誤解が解けて怒りが静まるかと思ったが、クレアはさらに怒り出した。
「そんなに怒らなくても……」
「貴方、どうかしてるんじゃないの!? 結婚の約束までしたミスティを他人に押し付けたタームも、捨てられたミスティを引き受けた貴方も、男として最低だわ!」
「でも、何もかも、仕方がないことだったっていうか……」
「仕方がないで済ませないで! 今すぐ、タームには責任を取らせるべきよ!」
「不可能だよ、そんなこと。タームはロゼットのこと以外は頭にないし、ミスティはタームに捨てられたら自殺する覚悟だから、これ以上話し合っても無駄だと思うよ? そもそも、タームはすぐに警備隊に捕らえられるだろうし……」
「貴方は、ミスティが可哀相だと思わないの!? まさか、可愛い女の子が自分の所に来て、ラッキーだとでも思ってるんじゃないでしょうね!?」
「そんなことはないよ。この子のことは可哀相だと思うけど、何とかして、タームのことを早く忘れてもらうしかないっていうか……」
「最低だわ! 貴方が、そんな酷い人だったなんて!」
どれだけ説得しようとしても、クレアは激昂するばかりで、まともに話ができる様子ではなかった。
ノエルも、言葉には出さないものの、僕やタームのことを快く思っていないことは明らかである。
僕だって、ミスティを遠くへ連れ去ることが素晴らしい解決策だと思っているわけではないのだが……そのことを説明しても、クレア達は反発するばかりだった。
「うっ……」
ミスティが、小さく呻いて目を覚ます。
そして、周囲の状況を確認すると……狂ったように絶叫した。
「ターム!? タームはどこ!?」
「ミスティ、落ち着いて……」
「嫌! ターム! ターム‼」
何とか落ち着かせようと試みるが、正気を失った様子で泣き叫び、僕の腕の中で暴れるミスティは、とても話ができる様子ではなかった。
クレアもノエルも、言葉をかけることすら出来ない様子で佇んでいる。
「うるさいわよ。黙りなさい」
突然、ベルさんの声が聞こえた。
その直後、スッと近寄ってきたベルさんは、ミスティの首筋に触れる。
すると、ミスティの全身から力が抜けて、ぐったりとした。
「ベルさん……!」
「話は少しだけ聞こえたけど……この子は、タームを虐げていた娼婦なのね?」
ベルさんの言葉には、殺意が込められているように感じたので、僕は慌てた。
「待ってください! ミスティは、タームと結婚の約束をしていた相手なんですよ!?」
「関係ないわよ、そんなこと。そもそも、オットームがダッデウドの男を誑かすこと自体が不愉快だわ」
「でも、ミスティの母親はダッデウドだったんです! だから、この子はダッデウドを産む可能性が高いんですよ!?」
「……そう。この子は、ダッデウドの血を引いているのね」
予想に反して、ベルさんの反応は好意的でなかった。
むしろ、先ほどまでよりも深い、憎悪のようなものを感じた。
「……忌々しい子だわ」
ベルさんはそう呟くと、身動きが出来なくなったミスティの胸を、おもむろに鷲掴みにする。
「……!」
力が抜けているはずのミスティの身体から、強張りが伝わってきたような気がした。
「ちょっと、ベルさん!?」
「……なるほど。オットームのくせに、発育のいい子ね。タームや貴方が欲情するのも、仕方がないかもしれないわ」
そんなことを呟きながら、ベルさんはミスティの胸を、無遠慮に揉んだ。
「ベルさん! 抵抗できない女の子に、卑猥な行為をするのはやめてください!」
「あら、いいじゃない。この子は娼婦なんだし、タームと散々いやらしいことをしたんでしょ? 今さら、この程度のことを気にするとは思えないけど?」
「ミスティは、娼婦になった直後に、ロゼットの屋敷に雇われたんです! おまけに、まだ処女なんですよ!?」
「……そうなの。じゃあ、この子はタームの子を孕んではいないのね?」
「それは……」
完全な失言だった。
これで、ダッデウドを孕んでいる可能性を主張して、ミスティの身を守ることが出来なくなってしまった。
「だったら、容赦はしないわ。私はこの子を殺すから、邪魔しないでね?」
そう言うと、ベルさんは僕の答えを待たずに、ミスティの喉へと手を伸ばした。
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