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第76話
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ロゼットは、ミスティを着替えさせるために、自分の部屋に入った。
あの服のままでは、胸や脚が気になって仕方がないし、迂闊に抱えると下着が丸見えになってしまうので、それはありがたいことだった。
「お前、ミスティの服があれじゃなくて、本当にいいのか? あの胸の谷間の良さが、分からないってのかよ?」
タームが不思議そうに尋ねてくる。
「女性が、あんな風に胸を晒すなんて不健全だよ。いちいち目のやり場に困るし、通りすがりの男に見られたら、嫌な気分になるじゃないか。スカートだって、下着が見えそうで心配になるし……」
「他の男のことなんか、気にする必要なんて無いだろ? 若い女の胸だぞ? 間に指を突っ込んだら楽しそうだと思わないのか? 下着だって、見えたら嬉しい気分になるじゃないか」
「……」
「それに、あのスカートは、足を開かせて下から覗き込むと、気分が昂るんだよな。ミスティの脚は綺麗だから、見ていて飽きないのも嬉しいところだ」
……初対面の男から、知りたくもない性癖の話をされてしまった。
とても不愉快である。
タームが僕達のパーティーに加わらなくて、本当に良かったと思ってしまう。
もしもタームが加わったら……きっと、こいつはノエルやレレのことを、強引に口説こうとするに違いない。
彼女達が、こんな男と仲良くするところなんて、見たくなかった。
やがて、ロゼットが僕達を呼ぶために部屋から出てきた。
部屋に入ってミスティを見ると、いかにも都会的な、綺麗な服を着ている。
当然ながら、胸を半ばまで晒したり、太腿を晒すような服装ではない。
こちらの方が、この少女には似合っている気がした。
「ロゼット。君は、本当に、タームと一緒に死ぬ運命を選んでもいいの?」
ミスティを抱えてから、僕はロゼットに尋ねた。
「構いません。私がここで死ぬことは、貴方達と出会った時から決まっていたことです」
「でも……タームがダッデウドとして目覚めていることは、君の計算に入ってなかったはずだよね? 彼のダッデウドとしての力があれば、2人で逃げても、生き延びることは可能だと思うよ?」
「それでは、タームを捕らえようとする者と戦い、殺すことになるかもしれないでしょう? 私は、どのような理由があろうとも、人を殺しながら生きることには反対です」
「分からないな……君は、まだ若いのに。どうして、そんなに簡単に死のうとするの?」
「お婆様は、若い頃、この世で最も美しいとまで言われるほどの女性だったそうです。それほどの人であっても、老いることには抗えず、その現実を受け入れることもできずに、精神を病んでしまいました……。私は思います。人は、永く生きることで幸せになれるわけではないのだと。我々は、最も幸せな時に死ぬべきなのです」
「……君は今、幸せなの?」
「はい。ダート人であるタームが、同じダート人である貴方達ではなく、オルト人である私を選びました。私には、それで充分です」
「……」
ロゼットから、初めて狂気のようなものを感じた。
彼女にとっては、祖母を狂わせた原因である人間の老い、そしてダッデウドの存在は、憎むべき対象だったに違いない。
ダッデウドに勝った今、若く美しいまま命を終えることこそが、彼女の願いになってしまっているようだ。
「……惜しいな。君ほどの女性が……」
「外見的な美しさだけを求めるのであれば、あのベルという女性など、ダート人がいれば充分でしょう?」
「外見だけじゃないよ。君は、自分の身が危険に晒されても、全くひるまなかったじゃないか。そんな女性は、なかなかいないよ」
「ですが、結果としてペティのことは守れませんでした」
「それは……」
「……それに……今の私は、外見の美しさなどでは、女の価値は決められないと思っています。ですが、私がそれを失ったとしたら……自分に見向きもしなくなった男性を呪い、美しさを保っている女性を憎むかもしれません。私が何よりも恐れているのは、自分が身も心も醜くなってしまうことなのでしょうね」
「……君は考えすぎだと思うよ?」
「そうなのでしょう。ですが、私が抱えてしまった虚無感は、簡単に拭い去れるようなものではありません。貴方は、生きたい者達のことだけを考えてください」
「……」
僕は、それ以上は何も言わずに、ミスティを抱えたまま立ち去った。
それから、玄関に集まっていたケイト達を逃がす。
幸い、ベルさんが突然襲ってくるようなことはなかった。
そして、僕はクレア達の所へ戻った。
あの服のままでは、胸や脚が気になって仕方がないし、迂闊に抱えると下着が丸見えになってしまうので、それはありがたいことだった。
「お前、ミスティの服があれじゃなくて、本当にいいのか? あの胸の谷間の良さが、分からないってのかよ?」
タームが不思議そうに尋ねてくる。
「女性が、あんな風に胸を晒すなんて不健全だよ。いちいち目のやり場に困るし、通りすがりの男に見られたら、嫌な気分になるじゃないか。スカートだって、下着が見えそうで心配になるし……」
「他の男のことなんか、気にする必要なんて無いだろ? 若い女の胸だぞ? 間に指を突っ込んだら楽しそうだと思わないのか? 下着だって、見えたら嬉しい気分になるじゃないか」
「……」
「それに、あのスカートは、足を開かせて下から覗き込むと、気分が昂るんだよな。ミスティの脚は綺麗だから、見ていて飽きないのも嬉しいところだ」
……初対面の男から、知りたくもない性癖の話をされてしまった。
とても不愉快である。
タームが僕達のパーティーに加わらなくて、本当に良かったと思ってしまう。
もしもタームが加わったら……きっと、こいつはノエルやレレのことを、強引に口説こうとするに違いない。
彼女達が、こんな男と仲良くするところなんて、見たくなかった。
やがて、ロゼットが僕達を呼ぶために部屋から出てきた。
部屋に入ってミスティを見ると、いかにも都会的な、綺麗な服を着ている。
当然ながら、胸を半ばまで晒したり、太腿を晒すような服装ではない。
こちらの方が、この少女には似合っている気がした。
「ロゼット。君は、本当に、タームと一緒に死ぬ運命を選んでもいいの?」
ミスティを抱えてから、僕はロゼットに尋ねた。
「構いません。私がここで死ぬことは、貴方達と出会った時から決まっていたことです」
「でも……タームがダッデウドとして目覚めていることは、君の計算に入ってなかったはずだよね? 彼のダッデウドとしての力があれば、2人で逃げても、生き延びることは可能だと思うよ?」
「それでは、タームを捕らえようとする者と戦い、殺すことになるかもしれないでしょう? 私は、どのような理由があろうとも、人を殺しながら生きることには反対です」
「分からないな……君は、まだ若いのに。どうして、そんなに簡単に死のうとするの?」
「お婆様は、若い頃、この世で最も美しいとまで言われるほどの女性だったそうです。それほどの人であっても、老いることには抗えず、その現実を受け入れることもできずに、精神を病んでしまいました……。私は思います。人は、永く生きることで幸せになれるわけではないのだと。我々は、最も幸せな時に死ぬべきなのです」
「……君は今、幸せなの?」
「はい。ダート人であるタームが、同じダート人である貴方達ではなく、オルト人である私を選びました。私には、それで充分です」
「……」
ロゼットから、初めて狂気のようなものを感じた。
彼女にとっては、祖母を狂わせた原因である人間の老い、そしてダッデウドの存在は、憎むべき対象だったに違いない。
ダッデウドに勝った今、若く美しいまま命を終えることこそが、彼女の願いになってしまっているようだ。
「……惜しいな。君ほどの女性が……」
「外見的な美しさだけを求めるのであれば、あのベルという女性など、ダート人がいれば充分でしょう?」
「外見だけじゃないよ。君は、自分の身が危険に晒されても、全くひるまなかったじゃないか。そんな女性は、なかなかいないよ」
「ですが、結果としてペティのことは守れませんでした」
「それは……」
「……それに……今の私は、外見の美しさなどでは、女の価値は決められないと思っています。ですが、私がそれを失ったとしたら……自分に見向きもしなくなった男性を呪い、美しさを保っている女性を憎むかもしれません。私が何よりも恐れているのは、自分が身も心も醜くなってしまうことなのでしょうね」
「……君は考えすぎだと思うよ?」
「そうなのでしょう。ですが、私が抱えてしまった虚無感は、簡単に拭い去れるようなものではありません。貴方は、生きたい者達のことだけを考えてください」
「……」
僕は、それ以上は何も言わずに、ミスティを抱えたまま立ち去った。
それから、玄関に集まっていたケイト達を逃がす。
幸い、ベルさんが突然襲ってくるようなことはなかった。
そして、僕はクレア達の所へ戻った。
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