白銀の簒奪者

たかまちゆう

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第34話

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「……あの、そろそろ出ませんか? 結構長く浸かってると思うんですけど……」

 議論がヒートアップしているので、僕はそれに割り込んだ。
 本当にのぼせそうなことも理由だが……。

「そうね。話は後でもできるし」
「……私達、先に出ます。……ティルト、こっちを見ないでね……?」
「み、見ないよ……!」
「まだ恥ずかしがってるの? そろそろ、裸を見られることくらいは受け入れればいいのに」
「……ベルさん、貴方も一緒に出てください。やっぱり、付いてきて正解でした。2人だけにしたら、もっといやらしい方法でティルトに迫るんでしょう?」
「まあ、失礼な子ね」

 そう言いながら、ベルさんはクレア達と一緒に、浴室から出て行った。


 少し待ち、湯船から出て、しばらく身体を冷ます。

 大変な目に遭った。
 やはり、若い男女が一緒に入浴する、というのは問題があると思う。

 まあ……ベルさんの裸を見て、嬉しくなかったと言えば嘘になるが……。

 そういえば、彼女達を先に行かせてしまうと、レレの下着にも色が付いているのか、確かめることができないな……。
 そんなことを考えてしまい、慌てて首を振る。

 女性が脱いだ下着を漁るなんて、異常な人間のすることだ。
 そんなことをしたら、レレやクレアは勿論のこと、ベルさんですら、僕のことを気持ち悪いと感じるだろう。

 こんな願望が湧いてくるのも、僕がダッデウドとして覚醒しかけているからなのだろうか?

 いや……ダッデウドであることは無関係であるはずだ。
 単に、僕が元々持っていた欲望が湧き出してきているだけなのだろう。

 つまり、これが僕の本性なのだ。
 ということは、僕には元々、女性の下着を見たいという願望がある、ということになる。

 そこまで考えて、ため息を吐いてしまった。

 僕が脱衣所から出ると、そこにレレが佇んでいた。
 今は、髪を三つ編みにせず、解いた状態である。

 思わずドキリとした。
 まさか、卑猥なことを考えたことに、気付かれたわけではないだろうが……。

「どうしたの? 1人で……」
「ここでティルトを待つようにと、叔母様が……」

 そういえば、入浴中だけ全員が一緒にいても、風呂から出た後で1人だったら意味がない。

「そっか。ありがとう」
「……」

 レレは真っ赤になって俯いた。
 そんなに恥ずかしがることはないと思うのだが……。

 それにしても、どうしてベルさんは、自分じゃなくてレレを残したんだろう?

 クレアとベルさんは仲が良くない。
 一方で、クレアとレレはとても仲良しだ。

 そして、レレは男である僕のことを嫌っている。
 普通に考えたら、ベルさんが残りそうだが……?

 いや、それはクレアが許さないだろう。
 言い争って、全員一緒に残ることになるのが嫌だったのだろうか?

 僕達は部屋に戻った。

 クレアとベルさんは、特に口論している様子もない。
 そのことに、少し安心した。

「貴重な経験もできたことだし、これからは、もっと打ち解けましょう? 心理的な抵抗はなくしていって、なるべく全員で、一緒に行動するべきよね」

 ベルさんがそう言った。

 この人は……少し、調子に乗っているのではないだろうか?

「ベルさん。男女で一緒に入浴なんて、これっきりにしてください」
「あら、どうして? 少なくとも、貴方がダッデウドとして完全に覚醒するまでは、いつもこういう風にするべきだと思うけど?」
「そんなことをしていたら、気が休まらないじゃないですか!」
「当然じゃない。貴方は、人を殺して逃亡しているんだから」
「……」
「ちょっと、ベルさん……!」
「責めているわけじゃないの。私は、ティルトと一緒に入浴することに抵抗はないわ。クレアとディフィはどうなの? やっぱり嫌なら、今度からは2人ずつでもいいのよ?」
「それは駄目です!」

 やはり、クレアは、僕とベルさんを二人にすることには反対であるようだ。

「だったら、私とティルトの2人で入浴します」

 レレが、突然そんなことを言い出した。

 僕達は驚愕する。

「……えっと、レレ? それ、冗談だよね?」

 僕は考えた。
 クレアとベルさんが口論するのを止めるために、こんな提案をしているのだろうと。

 しかし、その予想に反して、彼女は首を振った。

「私は本気です」
「いや、でもさ……いつでも、今日みたいに順調に済むとは限らないんだよ? 本当に敵が襲ってきたら、全身を晒したまま戦うことになるかもしれないし、そうじゃなくても……例えば、転んだりした拍子に、見えたり、触っちゃったりすることだって、絶対にないとは言えないよね?」
「……貴方が故意にやったことでなければ、全部許します」
「いや、でも……僕は男で、君は女の子だし……2人きりで裸の状況で、絶対に何もしないって保証するのは難しいんだけど……」
「それは……そうなったら、その時に考えます」
「待って! レレ、貴方どうしちゃったの!? あんなにティルトのことを嫌がっていたのに!」

 クレアは、信じられない様子で、レレに詰め寄った。

「……やっぱりね。そうじゃないかと思ったのよ」

 ベルさんはため息を吐く。

「どういうことですか? やっぱりって……?」
「ダッデウドの女性は、ダッデウドの男性に惹かれるものなのよ。最近、ディフィの様子がおかしいから、気にはなっていたんだけど……どうやら、ティルトに惚れちゃったみたいね」
「ええっ!?」

 僕は驚いてレレを見る。
 レレは、顔を真っ赤にして俯いた。
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