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第二章 失われた故郷
2-5 博士
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「博士」
門番の男達が、声のした方へ目を遣り、異口同音に呼ぶ。
ウエインが振り返ると、そこには微笑を浮かべた年齢不詳の男が立っていた。白髪の多く交ざった髪からは五十代くらいと見えるが、顔は童顔で、まだ三十代前半にも見える。
博士、と呼ばれたその男は、ウエインと目が合うと、にっこり笑った。
初対面の大人――しかも男――に、こんな満面の笑みを向けられたことなどなかったので、ウエインは大いに戸惑った。
「初めまして。僕はジブレ・ローアスといいます。ここでは『博士』って呼ばれることが多いけど、名前で呼んでもらえると嬉しいかな。君達は?」
「あ、ウエイン・サークレードです。こっちは、友達の、アンノ・イルス。リューカ村から来ました」
とっさに適当な偽名を考え出して、ウエインはモニムを紹介した。
「アンノ」は妹の名だが、モニムを「妹」と紹介して「似ていない」と指摘されるのは避けたかったので、あえて「友達」と言った。
「イルス」というのは、本物のアンノに想いを寄せている村の少年の姓だった。
「へえ。リューカから。一体何の用で?」
ウエインの背中を緊張が走った。
ジブレには、門番の男のような威圧感はないが、かといって迂闊なことは言えない。
「あの、リューカ村にクラムという高齢の方がいるんですが、数日前に森へ入ったきり、家に帰ってこないんです。何人かで森を捜索したんですが、見つからなくて。まだ森にいるかもしれないですけど、もしかしたら、途中で訳あって近隣の町へ行った可能性もあるかと思って、捜しに来てみたんです」
ウエインは、先程から考えていた理由を口にした。
クラムが家に帰ったことは、まだほとんどの村人が知らない。
今ならこの嘘も通用するのではないかと思った。
仮に確認されても、クラムならきっとうまくごまかしてくれるだろうと思う。
他にちょうどいい口実は何も思い浮かばなかった。
「え? クラムさん、いなくなったの?」
ジブレが驚いたように言ったので、ウエインもびっくりした。
「クラム先生をご存知なんですか?」
「うん。彼とは僕も何度か話したことがあるよ。お年の割に…と言ったら失礼だけど、とても柔軟な考え方のできる人だよね。僕は色々新しい物を考えて作るのが好きなんだけれどね、行き詰まったときに彼と話すと、とてもいい刺激に――」
「あの、博士」
門番の男が、痺れを切らしたように口を挟んできた。
「こいつらをどうしましょう?」
その言葉にウエインは身を硬くしたが、ジブレは相変わらずのほほんとした顔で、
「クラムさんの知り合いなら邪険にはできないな。僕が相手をするよ」
と言った。
「それでいいだろう?」
「は……。いや、しかし」
門番の視線がウエインの腰の剣へちらりと向けられた。どうやらウエインが警戒されている最大の原因はこの剣だったらしい。
だが、
「相手はまだ子供だ。大丈夫だよ」
ジブレの笑顔が変わらないのを見ると、門番は諦めたように小さく一つ息を吐いてこう言った。
「お前達、この数日、リューカ村からここへ来た者はいない。そのクラムという者も、誰も見ていない。別の場所を捜すんだな」
「……はい」
ウエインは頷くしかなかった。
「……では博士、よろしくお願いします」
「うん」
門番達に軽く手を振って、ジブレは門には入らず、壁に沿って東へ向かい始めた。
ウエイン達が戸惑ったように立ち尽くしていると、彼は足を止めて振り返り、「どうしたの?」という顔をした。
困った。
門番の追及から逃れられたのはありがたいが、ディパジットへ入ることには失敗してしまった。
しかし、この状況では、ジブレについていく以外にできることはなさそうだ。
ウエインはモニムと共に、ジブレの後ろを歩き始めた。
どこかへ連れていってくれそうな雰囲気だから、せめて、モニムの行きたがっているデュナーミナの跡地がどの辺りなのかだけでも途中で聞き出したいところだ。
このまま壁沿いを歩くなら、ディパジットに他の入り口があるかどうかも見ておきたい。
「あの、今、どこへ向かってるんですか? クラム先生の行きそうな場所に心当たりがあるとか?」
門から少し離れたところでジブレにそう訊いてみると、ジブレは意味深な笑みを浮かべた。
「あのクラムさんが森で迷うとは、僕には思えないね。まだ帰ってこないなら、きっとまだ何かやることが残ってるっていうことじゃないかな?」
「そう……でしょうか……」
嘘を疑われている?
それとも、安心させようとしてくれている?
判断がつかず、ウエインは曖昧に相槌を打った。
しかし、それならなおさら、ジブレは今どこへ向かおうとしているのだろうか?
ウエインの脳裏に、先程の門番の「よろしくお願いします」という声がよみがえった。
よろしくとは一体、何をよろしくという意味だったのだろうか?
モニムも緊張しているのか、手を握る力が強くなっている。
ウエインはモニムを安心させようと、痛くない程度にぎゅっと握り返した。
「これから行くのはね、君達にぜひ見てほしいところなんだ」
相変わらずの柔和な口調で、ジブレが言った。
「はあ」
なんだか怖い。突然「君達の死に場所さ」なんて言われたらどうしよう、とウエインはドキドキした。
「今ちょうどそこへ行ってきた帰りだったんだけどね」
「……どういう場所なんですか?」
ウエインがそう訊くと、ジブレはピタリと足を止め、質問したウエインではなく、顔を伏せているモニムの方を振り返った。
「穴、だよ」
「穴?」
思わず前へ出て視線を遮ろうとしながら、ウエインは聞き返した。
「……君達は、」
ジブレは急に真顔になって訊いてくる。
「イリケ族って知ってる?」
「……!」
うまく驚きを隠せたか分からない。
ここは肯定するべきか否定するべきかウエインは迷い、
「聞いたことがあるような、ないような……」
結局曖昧に答えた。
「そう」
ジブレは頷いて、また歩き始めた。
失敗だっただろうか?
後に続きながら、ウエインは少し後悔した。
彼が急にこの話題を出したのが、モニムの正体に気づいたからだとしてら、むしろはっきり知っていると答えるべきだったのかもしれない。
しかしジブレは、また柔和な声と口調に戻って語り始めた。
「イリケ族というのはね、今から三百年前にこの町の東の方に住んでいた種族のことだよ。僕達デューン人と争いになって、滅ぼされた」
どうやら説明してくれるらしい。
「種族……ですか? 民族、じゃなくて?」
「彼女達はね、皆揃って特徴的な外見と、水を操る不思議な能力を持っていたそうだよ。僕達とは違いすぎる。もっとも、リューカ村の人達にとってはそうでもないのかもしれないけれどね」
「え? なぜですか?」
「だって、リューカ村には最近まで『魔導士』がいたっていうじゃないか。……あ、いや、でもそれは三十年も前だったんだっけ。君くらいの年齢の子には『最近』とは言えないのかな」
「まどうし……?」
(――あ)
そういえば聞いたことがある。
魔導士というのは、虚空に炎を出したり、手を触れずに岩を砕いたりなどと、自然には起こらない現象を意図して引き起こす力――『魔力』と呼ばれる――を持っている人々だという。
実際それを目にしたことのないウエインにはどうも実感が湧かないのだが、リューカ村にも以前はそんな人々が住んでいたらしい。
だが、それも今では絶えてしまった。
いや――、最後の一人は行方不明で、死亡を確認されたわけではないのだったか。
(そうだ……)
ウエインは思い出した。
リューカ村最後の魔導士の名はたしか、リーン・キエコーンといったらしい。村長のモイケと懇意にしていた人物らしいという噂を妹から聞いたような気がする。
森で出会った金髪の少女の、「リーン」という名前の響きに聞き覚えがある気がしたのは、その魔導士の名が頭のどこかに残っていたからだったのだろう。
もっとも、両者に関係があるとは思えないが。
「話に聞いたことはありますけど、実際に見たことはありません。その意味ではイリケ族と同じで、俺にとっては不思議な、伝説に近い存在です」
「不思議かな?」
「え、だって……。ジブレさんは、不思議だとは思わないんですか?」
「うーん。例えばこの壁はここにこうして在るよね?」
ジブレは左の壁を示しながら言った。
「でも、動かない。一方で我々人間はこうして歩き、考え、喋ることができる。君はそれを不思議だと思う?」
「え、いや、だってそれは当たり前で……」
答えかけて、それは本当に当たり前のことなのだろうか、とウエインは疑問に思った。
言われてみると、実はとても不思議なことのように思えてくる。
壁が動いたり考えたりしないのは、壁は無生物で、命がないからだ。
しかし、「命」とは何だろう? なぜ人間には命があるのだろう?
植物は歩いたりはしないが成長はする。だから命はあると言えるのだろうが、植物は喋らないし、何かを考えているかどうかは分からない。
ならば、石には本当に命がないのだろうか?
動かないだけで、実は生きているという可能性もあるのだろうか?
人間は命を持ち、動くことができる。それは本当に「当たり前」のことなのだろうか? 実は凄く不思議なことなのではないのだろうか?
うまく言葉にできないながらもそのようなことをウエインが言うと、ジブレは、我が意を得たりとばかりに頷いた。
「そう、一度真剣に考え始めると不思議なことを、僕らは当たり前だと思って暮らしているよね。だからきっと、『魔力』を扱える人にとっては、それが当たり前なんだと僕は思うんだ。全然不思議なんかじゃない」
「はあ……。そういうものですか……?」
ウエインはちらりとモニムを顧みた。
彼女は顔を俯け、視線を少し先の地面に向けたままではあったが、ジブレの言葉に同意するように小さく頷いた。
そういうものか。
人は意外と、自分の持っているものに対しては鈍感なのかもしれない。
そうして話しながら歩いているうちに、壁は緩やかに左へ曲がり始めた。
ジブレはその壁に沿って歩いていくので、二人もそれに続いた。
門番の男達が、声のした方へ目を遣り、異口同音に呼ぶ。
ウエインが振り返ると、そこには微笑を浮かべた年齢不詳の男が立っていた。白髪の多く交ざった髪からは五十代くらいと見えるが、顔は童顔で、まだ三十代前半にも見える。
博士、と呼ばれたその男は、ウエインと目が合うと、にっこり笑った。
初対面の大人――しかも男――に、こんな満面の笑みを向けられたことなどなかったので、ウエインは大いに戸惑った。
「初めまして。僕はジブレ・ローアスといいます。ここでは『博士』って呼ばれることが多いけど、名前で呼んでもらえると嬉しいかな。君達は?」
「あ、ウエイン・サークレードです。こっちは、友達の、アンノ・イルス。リューカ村から来ました」
とっさに適当な偽名を考え出して、ウエインはモニムを紹介した。
「アンノ」は妹の名だが、モニムを「妹」と紹介して「似ていない」と指摘されるのは避けたかったので、あえて「友達」と言った。
「イルス」というのは、本物のアンノに想いを寄せている村の少年の姓だった。
「へえ。リューカから。一体何の用で?」
ウエインの背中を緊張が走った。
ジブレには、門番の男のような威圧感はないが、かといって迂闊なことは言えない。
「あの、リューカ村にクラムという高齢の方がいるんですが、数日前に森へ入ったきり、家に帰ってこないんです。何人かで森を捜索したんですが、見つからなくて。まだ森にいるかもしれないですけど、もしかしたら、途中で訳あって近隣の町へ行った可能性もあるかと思って、捜しに来てみたんです」
ウエインは、先程から考えていた理由を口にした。
クラムが家に帰ったことは、まだほとんどの村人が知らない。
今ならこの嘘も通用するのではないかと思った。
仮に確認されても、クラムならきっとうまくごまかしてくれるだろうと思う。
他にちょうどいい口実は何も思い浮かばなかった。
「え? クラムさん、いなくなったの?」
ジブレが驚いたように言ったので、ウエインもびっくりした。
「クラム先生をご存知なんですか?」
「うん。彼とは僕も何度か話したことがあるよ。お年の割に…と言ったら失礼だけど、とても柔軟な考え方のできる人だよね。僕は色々新しい物を考えて作るのが好きなんだけれどね、行き詰まったときに彼と話すと、とてもいい刺激に――」
「あの、博士」
門番の男が、痺れを切らしたように口を挟んできた。
「こいつらをどうしましょう?」
その言葉にウエインは身を硬くしたが、ジブレは相変わらずのほほんとした顔で、
「クラムさんの知り合いなら邪険にはできないな。僕が相手をするよ」
と言った。
「それでいいだろう?」
「は……。いや、しかし」
門番の視線がウエインの腰の剣へちらりと向けられた。どうやらウエインが警戒されている最大の原因はこの剣だったらしい。
だが、
「相手はまだ子供だ。大丈夫だよ」
ジブレの笑顔が変わらないのを見ると、門番は諦めたように小さく一つ息を吐いてこう言った。
「お前達、この数日、リューカ村からここへ来た者はいない。そのクラムという者も、誰も見ていない。別の場所を捜すんだな」
「……はい」
ウエインは頷くしかなかった。
「……では博士、よろしくお願いします」
「うん」
門番達に軽く手を振って、ジブレは門には入らず、壁に沿って東へ向かい始めた。
ウエイン達が戸惑ったように立ち尽くしていると、彼は足を止めて振り返り、「どうしたの?」という顔をした。
困った。
門番の追及から逃れられたのはありがたいが、ディパジットへ入ることには失敗してしまった。
しかし、この状況では、ジブレについていく以外にできることはなさそうだ。
ウエインはモニムと共に、ジブレの後ろを歩き始めた。
どこかへ連れていってくれそうな雰囲気だから、せめて、モニムの行きたがっているデュナーミナの跡地がどの辺りなのかだけでも途中で聞き出したいところだ。
このまま壁沿いを歩くなら、ディパジットに他の入り口があるかどうかも見ておきたい。
「あの、今、どこへ向かってるんですか? クラム先生の行きそうな場所に心当たりがあるとか?」
門から少し離れたところでジブレにそう訊いてみると、ジブレは意味深な笑みを浮かべた。
「あのクラムさんが森で迷うとは、僕には思えないね。まだ帰ってこないなら、きっとまだ何かやることが残ってるっていうことじゃないかな?」
「そう……でしょうか……」
嘘を疑われている?
それとも、安心させようとしてくれている?
判断がつかず、ウエインは曖昧に相槌を打った。
しかし、それならなおさら、ジブレは今どこへ向かおうとしているのだろうか?
ウエインの脳裏に、先程の門番の「よろしくお願いします」という声がよみがえった。
よろしくとは一体、何をよろしくという意味だったのだろうか?
モニムも緊張しているのか、手を握る力が強くなっている。
ウエインはモニムを安心させようと、痛くない程度にぎゅっと握り返した。
「これから行くのはね、君達にぜひ見てほしいところなんだ」
相変わらずの柔和な口調で、ジブレが言った。
「はあ」
なんだか怖い。突然「君達の死に場所さ」なんて言われたらどうしよう、とウエインはドキドキした。
「今ちょうどそこへ行ってきた帰りだったんだけどね」
「……どういう場所なんですか?」
ウエインがそう訊くと、ジブレはピタリと足を止め、質問したウエインではなく、顔を伏せているモニムの方を振り返った。
「穴、だよ」
「穴?」
思わず前へ出て視線を遮ろうとしながら、ウエインは聞き返した。
「……君達は、」
ジブレは急に真顔になって訊いてくる。
「イリケ族って知ってる?」
「……!」
うまく驚きを隠せたか分からない。
ここは肯定するべきか否定するべきかウエインは迷い、
「聞いたことがあるような、ないような……」
結局曖昧に答えた。
「そう」
ジブレは頷いて、また歩き始めた。
失敗だっただろうか?
後に続きながら、ウエインは少し後悔した。
彼が急にこの話題を出したのが、モニムの正体に気づいたからだとしてら、むしろはっきり知っていると答えるべきだったのかもしれない。
しかしジブレは、また柔和な声と口調に戻って語り始めた。
「イリケ族というのはね、今から三百年前にこの町の東の方に住んでいた種族のことだよ。僕達デューン人と争いになって、滅ぼされた」
どうやら説明してくれるらしい。
「種族……ですか? 民族、じゃなくて?」
「彼女達はね、皆揃って特徴的な外見と、水を操る不思議な能力を持っていたそうだよ。僕達とは違いすぎる。もっとも、リューカ村の人達にとってはそうでもないのかもしれないけれどね」
「え? なぜですか?」
「だって、リューカ村には最近まで『魔導士』がいたっていうじゃないか。……あ、いや、でもそれは三十年も前だったんだっけ。君くらいの年齢の子には『最近』とは言えないのかな」
「まどうし……?」
(――あ)
そういえば聞いたことがある。
魔導士というのは、虚空に炎を出したり、手を触れずに岩を砕いたりなどと、自然には起こらない現象を意図して引き起こす力――『魔力』と呼ばれる――を持っている人々だという。
実際それを目にしたことのないウエインにはどうも実感が湧かないのだが、リューカ村にも以前はそんな人々が住んでいたらしい。
だが、それも今では絶えてしまった。
いや――、最後の一人は行方不明で、死亡を確認されたわけではないのだったか。
(そうだ……)
ウエインは思い出した。
リューカ村最後の魔導士の名はたしか、リーン・キエコーンといったらしい。村長のモイケと懇意にしていた人物らしいという噂を妹から聞いたような気がする。
森で出会った金髪の少女の、「リーン」という名前の響きに聞き覚えがある気がしたのは、その魔導士の名が頭のどこかに残っていたからだったのだろう。
もっとも、両者に関係があるとは思えないが。
「話に聞いたことはありますけど、実際に見たことはありません。その意味ではイリケ族と同じで、俺にとっては不思議な、伝説に近い存在です」
「不思議かな?」
「え、だって……。ジブレさんは、不思議だとは思わないんですか?」
「うーん。例えばこの壁はここにこうして在るよね?」
ジブレは左の壁を示しながら言った。
「でも、動かない。一方で我々人間はこうして歩き、考え、喋ることができる。君はそれを不思議だと思う?」
「え、いや、だってそれは当たり前で……」
答えかけて、それは本当に当たり前のことなのだろうか、とウエインは疑問に思った。
言われてみると、実はとても不思議なことのように思えてくる。
壁が動いたり考えたりしないのは、壁は無生物で、命がないからだ。
しかし、「命」とは何だろう? なぜ人間には命があるのだろう?
植物は歩いたりはしないが成長はする。だから命はあると言えるのだろうが、植物は喋らないし、何かを考えているかどうかは分からない。
ならば、石には本当に命がないのだろうか?
動かないだけで、実は生きているという可能性もあるのだろうか?
人間は命を持ち、動くことができる。それは本当に「当たり前」のことなのだろうか? 実は凄く不思議なことなのではないのだろうか?
うまく言葉にできないながらもそのようなことをウエインが言うと、ジブレは、我が意を得たりとばかりに頷いた。
「そう、一度真剣に考え始めると不思議なことを、僕らは当たり前だと思って暮らしているよね。だからきっと、『魔力』を扱える人にとっては、それが当たり前なんだと僕は思うんだ。全然不思議なんかじゃない」
「はあ……。そういうものですか……?」
ウエインはちらりとモニムを顧みた。
彼女は顔を俯け、視線を少し先の地面に向けたままではあったが、ジブレの言葉に同意するように小さく頷いた。
そういうものか。
人は意外と、自分の持っているものに対しては鈍感なのかもしれない。
そうして話しながら歩いているうちに、壁は緩やかに左へ曲がり始めた。
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