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第一章 水の魔物
1-2 討伐隊
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「なあ、聞いたか? ようやく来てくれることになったんだってよ! 討伐隊が」
開口一番、エスリコは挨拶もなしにそう切り出した。
「……え?」
抜き身の剣を持って素振りをしていたウエインは、手を止めて友人を振り返った。エスリコはかなり背が高いので、その顔を少し見上げる格好になる。
「討伐隊、って……」
「王都の魔物討伐隊さ! 知ってるだろ? 最近隣町にも支部ができたじゃないか」
「いや、それはもちろん知ってるけど」
(――何のために?)
剣を鞘に戻しながら、ウエインは嫌な予感に顔をしかめた。
討伐隊、と一般に呼ばれている組織は、全国で増え続けている魔物を掃討するため、二十年ほど前に王都で結成された部隊だ。
結成当初は志願者の人数も実力も足りず、元々あった近衛兵団や騎士団の分隊という形に近かったが、その時同時に隊員の養成機関が設立され、徐々に近衛兵団などとははっきり分離されるようになったらしい。
各地に「支部」と呼ばれる詰め所のようなものもできはじめている。そこからそれぞれの地方における魔物の種類や数などの情報が中央へ送られ、その情報に応じて討伐隊の隊員たちが送り込まれてくる、という態勢が整いつつあるという。
だが、今までリューカ村に討伐隊が来たことはなかった。
王都から遠くて手が回らないせいもあるかもしれないが、それ以前に、急いで退治しなければならないような危険な魔物がこの辺りにいないからだとウエインは思っていた。
――それなのに。
「ついにこんな田舎まで来てくれることになった。これでもう安心だ」
エスリコは心底嬉しそうに、興奮気味な口調で言った。魔物嫌いの彼は、討伐隊が魔物を倒しにくることを心から歓迎しているらしい。
だが、リューカ村近辺の「魔物」といえば、思い浮かぶのは『水の魔物』しかいない。
(――『水の魔物』が、殺される?)
黙り込むウエインの様子に気付き、エスリコは不審そうな表情になった。
「なんだ? あんまり嬉しくなさそうだな。お前が心配してるだろうと思って、わざわざ知らせに来てやったのに」
「心配?」
「クラム爺さんだよ。まだ帰ってないっていうから、お前は心配だろ?」
「え? クラム先生? まだ戻ってなかったのか!?」
ウエインが驚いて聞き返したら、エスリコは呆れたような顔をした。
「知らなかったのか? 村じゃ今、結構な騒ぎだぜ?」
「…………」
知らなかった。
クラムはリューカ村で最高齢の人物であり、村の子供達に勉強を教えるため、自宅を開放して塾を開いている。「半分は趣味」と公言していて、報酬は季節ごとの農作物などを少し受け取る程度だった。
エスリコはその塾に通ったことがないが、ウエインや妹のアンノは十二歳までそこで文字の読み書き、文法や算術、地質学、植物学、地理など様々なことを習った。他にも多くの村人がクラムから教えを受けており、その豊富な知識と誠実な人柄は村人達の尊敬の的だ。
彼は、生まれつき心臓が悪い曾孫のため、『泉』へ『水』を貰いにいったらしいが……。
(――あの人が、まだ帰ってこない?)
彼が出かけてから、そろそろ一週間になる。まさかまだ帰っていないとは思わなかった。
もしかしたら妹あたりは女友達から何か聞いているかもしれないが、ウエインはそういった情報には疎い方だ。
そもそも、クラムが『水』を取りに行ったという話も、ウエインはエスリコから聞いたのだった。
ウエインは、胸の奥がざわつくような、落ち着かない気持ちになった。
エスリコは一つ溜息をつくと、手近な木の幹に寄りかかった。
「皆が討伐隊を呼んだのだって、爺さんが帰ってないってのが何より大きな理由なんだと思うぜ」
「でも……、今まで『水の魔物』の被害に遭った人は多かったらしいけど、死人は出てないんだろう?」
「いや、死体が確認されてないってだけだ。『水』を取りに行ったまま帰ってこなかった人なら、今までにもいなかったわけじゃない。それに……」
エスリコは何かを言いかけたが、ふとウエインの顔を見て、それきり黙ってしまった。
「『それに』、何だよ?」
そんな中途半端なところで話を切られたら、気になって仕方ない。
「いや……。これは、お前の親父さんに関する噂なんだが」
エスリコは、短めの頭髪に指を入れてガシガシと頭を搔くと、気が進まない様子で話し始めた。
「父さんに?」
「ああ。……お前の親父さん、『水』を持ち帰ったって話だろ? 直後は皆、その方法を知りたがってたみたいなんだ」
その話なら、ウエインも聞かされていた。
――十八年ほど前、ウエインの母ダルシアが、原因不明の病にかかった。
有効な治療法がなく、そのままでは母も、当時母の腹の中にいたウエインも助からないだろうと、村で唯一の医者はウエインの父、イスティム・サークレードに告げた。
だがイスティムは、どうしても諦めることができなかった。妻も、生まれてくるはずの赤ん坊も、彼にとっては替え難い命。だから彼は、『奇跡の泉』の伝説に縋ることを決意した。家の奥に仕舞い込んでいた剣を取り、密かに『泉』へ向けて出発したのだという。
そしてどういうわけか、彼はそれまでの歴史上数人しか手に入れることのできなかった『泉』の『水』を持って帰ってきたのだ。
『水』を飲むと、ダルシアの病状はみるみる回復した。
それから三ヵ月後、彼女は無事ウエインを出産した。
当然、イスティムの元には、どのようにして『水』を手に入れたのか訊きに来る者が殺到したらしい。
妹のアンノが以前、自分の父はどういう人間だったのかと母に訊いたとき、ウエインも一緒にその話を聞いたのだった。
父の言う「水の精霊」が『水』を分けてくれたのだろう、とウエインは理解し、納得していた。
だがエスリコは、この話には続きがあると言う。
「でも親父さんが亡くなってからは、『水』の入手法を知りたがる人は急激に減ったんだってよ。まあ、事情を知ってる当の本人がいなくなったんだから、訊きに行く人がいなくなるのは当然なんだが、それだけじゃない。『水』を手に入れるのは命と引き換えだ、だから彼は死んだんだ――って噂が広まって、みんな恐れをなしたのさ」
「な……!?」
「飲めばどんな病気でも治っちまう水だろ? そのくらいの代償はあってもおかしくないっていうのが、その噂の根拠だ。だから、死にかけてる家族とか友達のために『水』を手に入れたい人間はともかく、自分の健康のために『泉』へ行きたがる奴はもういないな。……やっぱり知らなかったか」
絶句しているウエインを見て、エスリコは困ったように笑った。
ウエインは、何か反論しなくてはと焦って言葉を紡ぐ。
「でも……でも、父さんはそんなこと、一言も――」
「お前が親父さんなら言ったか? お前達を助けるために、自分は命を懸けた、なんて」
エスリコは、探るような目でこちらを見つめてきた。
ウエインは目を逸らす。
「言わない……だろうな」
「だろ?」
それは、愛する人達に、罪の意識を感じさせないため。
――今思うと、あの日の父の態度は少し妙ではなかったか?
ウエインは、父の微笑を思い返しながら考える。
急に息子に剣を渡したり、「母さんを大切に」などと言い残したり……まるで、自分はすぐにもそこからいなくなるつもりだったかのような……。
もしかしたら父は、自らの死期を悟っていたのだろうか?
死を覚悟して。それでも、心残りで。だから、後のことをウエインに託した。そう考えれば、辻褄は合うような気がする。
だがあの時の父には、『水の魔物』を憎んでいるような様子はなかった。むしろ感謝さえしているかのような口ぶりだった。――いや、正確には父が感謝していたのは「彼女」、すなわち「水の精霊」で、『水の魔物』はその守護者である、というような言い方をしていたように思う。
だからウエインは今まで、見たこともない「水の精霊」や、他の村人からは恐れられている『水の魔物』に対しても、好意のような感情を抱いていられたのだ。
はたして父の命を奪ったのが『水の魔物』であるなどということが、ありえるのだろうか?
(……ある、かも、な)
たとえ自分の命と引き換えでも、自分の大切な人の命を救ってくれる存在があるなら……。妹や母の姿を思い浮かべ、自分なら、と考えたウエインは、おそらくそれでも父は感謝しただろう、と結論づけた。
だが、残されたウエインは?
母と自分の命を救う代わりに父を殺したかもしれない存在に対して、どういう感情を抱けばいいというのか。
「……自分で言っておいてなんだが」
動揺するウエインを見て、エスリコが口を開いた。
「まあ、そう気にするな。クラム爺さんだって、まだ死んだと決まったわけじゃない」
過去に思いを馳せていたウエインは、クラムの名前で現実に引き戻された。
「ああ……」
「それに、もし本当に『水』が命と交換でも、親父さんと同じ状況なら、クラム爺さんだって一度は『水』を持って帰ってこなきゃおかしいしな」
ウエインはきょとんとした。
言われてみれば、そうだ。
「そうか……。そうだよな」
「だからきっと大丈夫さ。爺さんだって、どこかで道に迷ってるのかもしれない。討伐隊が来てくれるんだ。爺さんのことも見つけてくれるかもしれないだろ」
「うん……」
エスリコは、寄り掛かっていた木の幹から身体を離し、心配そうにウエインの顔を覗き込んだ。
「……なんだか、かえって不安にさせたみたいだな」
「あ、……いや」
「悪いけど、俺はこれから行かなきゃならない所があるんだ」
「そうなのか?」
「ああ。だからまた、後でな」
「うん。また……」
エスリコはひらりと軽く手を振ると、ウエインに背を向けて歩き去った。
途中で一度だけこちらを振り返ったので、ウエインは「大丈夫」と示すように、ちょっと微笑んで見せた。
*
開口一番、エスリコは挨拶もなしにそう切り出した。
「……え?」
抜き身の剣を持って素振りをしていたウエインは、手を止めて友人を振り返った。エスリコはかなり背が高いので、その顔を少し見上げる格好になる。
「討伐隊、って……」
「王都の魔物討伐隊さ! 知ってるだろ? 最近隣町にも支部ができたじゃないか」
「いや、それはもちろん知ってるけど」
(――何のために?)
剣を鞘に戻しながら、ウエインは嫌な予感に顔をしかめた。
討伐隊、と一般に呼ばれている組織は、全国で増え続けている魔物を掃討するため、二十年ほど前に王都で結成された部隊だ。
結成当初は志願者の人数も実力も足りず、元々あった近衛兵団や騎士団の分隊という形に近かったが、その時同時に隊員の養成機関が設立され、徐々に近衛兵団などとははっきり分離されるようになったらしい。
各地に「支部」と呼ばれる詰め所のようなものもできはじめている。そこからそれぞれの地方における魔物の種類や数などの情報が中央へ送られ、その情報に応じて討伐隊の隊員たちが送り込まれてくる、という態勢が整いつつあるという。
だが、今までリューカ村に討伐隊が来たことはなかった。
王都から遠くて手が回らないせいもあるかもしれないが、それ以前に、急いで退治しなければならないような危険な魔物がこの辺りにいないからだとウエインは思っていた。
――それなのに。
「ついにこんな田舎まで来てくれることになった。これでもう安心だ」
エスリコは心底嬉しそうに、興奮気味な口調で言った。魔物嫌いの彼は、討伐隊が魔物を倒しにくることを心から歓迎しているらしい。
だが、リューカ村近辺の「魔物」といえば、思い浮かぶのは『水の魔物』しかいない。
(――『水の魔物』が、殺される?)
黙り込むウエインの様子に気付き、エスリコは不審そうな表情になった。
「なんだ? あんまり嬉しくなさそうだな。お前が心配してるだろうと思って、わざわざ知らせに来てやったのに」
「心配?」
「クラム爺さんだよ。まだ帰ってないっていうから、お前は心配だろ?」
「え? クラム先生? まだ戻ってなかったのか!?」
ウエインが驚いて聞き返したら、エスリコは呆れたような顔をした。
「知らなかったのか? 村じゃ今、結構な騒ぎだぜ?」
「…………」
知らなかった。
クラムはリューカ村で最高齢の人物であり、村の子供達に勉強を教えるため、自宅を開放して塾を開いている。「半分は趣味」と公言していて、報酬は季節ごとの農作物などを少し受け取る程度だった。
エスリコはその塾に通ったことがないが、ウエインや妹のアンノは十二歳までそこで文字の読み書き、文法や算術、地質学、植物学、地理など様々なことを習った。他にも多くの村人がクラムから教えを受けており、その豊富な知識と誠実な人柄は村人達の尊敬の的だ。
彼は、生まれつき心臓が悪い曾孫のため、『泉』へ『水』を貰いにいったらしいが……。
(――あの人が、まだ帰ってこない?)
彼が出かけてから、そろそろ一週間になる。まさかまだ帰っていないとは思わなかった。
もしかしたら妹あたりは女友達から何か聞いているかもしれないが、ウエインはそういった情報には疎い方だ。
そもそも、クラムが『水』を取りに行ったという話も、ウエインはエスリコから聞いたのだった。
ウエインは、胸の奥がざわつくような、落ち着かない気持ちになった。
エスリコは一つ溜息をつくと、手近な木の幹に寄りかかった。
「皆が討伐隊を呼んだのだって、爺さんが帰ってないってのが何より大きな理由なんだと思うぜ」
「でも……、今まで『水の魔物』の被害に遭った人は多かったらしいけど、死人は出てないんだろう?」
「いや、死体が確認されてないってだけだ。『水』を取りに行ったまま帰ってこなかった人なら、今までにもいなかったわけじゃない。それに……」
エスリコは何かを言いかけたが、ふとウエインの顔を見て、それきり黙ってしまった。
「『それに』、何だよ?」
そんな中途半端なところで話を切られたら、気になって仕方ない。
「いや……。これは、お前の親父さんに関する噂なんだが」
エスリコは、短めの頭髪に指を入れてガシガシと頭を搔くと、気が進まない様子で話し始めた。
「父さんに?」
「ああ。……お前の親父さん、『水』を持ち帰ったって話だろ? 直後は皆、その方法を知りたがってたみたいなんだ」
その話なら、ウエインも聞かされていた。
――十八年ほど前、ウエインの母ダルシアが、原因不明の病にかかった。
有効な治療法がなく、そのままでは母も、当時母の腹の中にいたウエインも助からないだろうと、村で唯一の医者はウエインの父、イスティム・サークレードに告げた。
だがイスティムは、どうしても諦めることができなかった。妻も、生まれてくるはずの赤ん坊も、彼にとっては替え難い命。だから彼は、『奇跡の泉』の伝説に縋ることを決意した。家の奥に仕舞い込んでいた剣を取り、密かに『泉』へ向けて出発したのだという。
そしてどういうわけか、彼はそれまでの歴史上数人しか手に入れることのできなかった『泉』の『水』を持って帰ってきたのだ。
『水』を飲むと、ダルシアの病状はみるみる回復した。
それから三ヵ月後、彼女は無事ウエインを出産した。
当然、イスティムの元には、どのようにして『水』を手に入れたのか訊きに来る者が殺到したらしい。
妹のアンノが以前、自分の父はどういう人間だったのかと母に訊いたとき、ウエインも一緒にその話を聞いたのだった。
父の言う「水の精霊」が『水』を分けてくれたのだろう、とウエインは理解し、納得していた。
だがエスリコは、この話には続きがあると言う。
「でも親父さんが亡くなってからは、『水』の入手法を知りたがる人は急激に減ったんだってよ。まあ、事情を知ってる当の本人がいなくなったんだから、訊きに行く人がいなくなるのは当然なんだが、それだけじゃない。『水』を手に入れるのは命と引き換えだ、だから彼は死んだんだ――って噂が広まって、みんな恐れをなしたのさ」
「な……!?」
「飲めばどんな病気でも治っちまう水だろ? そのくらいの代償はあってもおかしくないっていうのが、その噂の根拠だ。だから、死にかけてる家族とか友達のために『水』を手に入れたい人間はともかく、自分の健康のために『泉』へ行きたがる奴はもういないな。……やっぱり知らなかったか」
絶句しているウエインを見て、エスリコは困ったように笑った。
ウエインは、何か反論しなくてはと焦って言葉を紡ぐ。
「でも……でも、父さんはそんなこと、一言も――」
「お前が親父さんなら言ったか? お前達を助けるために、自分は命を懸けた、なんて」
エスリコは、探るような目でこちらを見つめてきた。
ウエインは目を逸らす。
「言わない……だろうな」
「だろ?」
それは、愛する人達に、罪の意識を感じさせないため。
――今思うと、あの日の父の態度は少し妙ではなかったか?
ウエインは、父の微笑を思い返しながら考える。
急に息子に剣を渡したり、「母さんを大切に」などと言い残したり……まるで、自分はすぐにもそこからいなくなるつもりだったかのような……。
もしかしたら父は、自らの死期を悟っていたのだろうか?
死を覚悟して。それでも、心残りで。だから、後のことをウエインに託した。そう考えれば、辻褄は合うような気がする。
だがあの時の父には、『水の魔物』を憎んでいるような様子はなかった。むしろ感謝さえしているかのような口ぶりだった。――いや、正確には父が感謝していたのは「彼女」、すなわち「水の精霊」で、『水の魔物』はその守護者である、というような言い方をしていたように思う。
だからウエインは今まで、見たこともない「水の精霊」や、他の村人からは恐れられている『水の魔物』に対しても、好意のような感情を抱いていられたのだ。
はたして父の命を奪ったのが『水の魔物』であるなどということが、ありえるのだろうか?
(……ある、かも、な)
たとえ自分の命と引き換えでも、自分の大切な人の命を救ってくれる存在があるなら……。妹や母の姿を思い浮かべ、自分なら、と考えたウエインは、おそらくそれでも父は感謝しただろう、と結論づけた。
だが、残されたウエインは?
母と自分の命を救う代わりに父を殺したかもしれない存在に対して、どういう感情を抱けばいいというのか。
「……自分で言っておいてなんだが」
動揺するウエインを見て、エスリコが口を開いた。
「まあ、そう気にするな。クラム爺さんだって、まだ死んだと決まったわけじゃない」
過去に思いを馳せていたウエインは、クラムの名前で現実に引き戻された。
「ああ……」
「それに、もし本当に『水』が命と交換でも、親父さんと同じ状況なら、クラム爺さんだって一度は『水』を持って帰ってこなきゃおかしいしな」
ウエインはきょとんとした。
言われてみれば、そうだ。
「そうか……。そうだよな」
「だからきっと大丈夫さ。爺さんだって、どこかで道に迷ってるのかもしれない。討伐隊が来てくれるんだ。爺さんのことも見つけてくれるかもしれないだろ」
「うん……」
エスリコは、寄り掛かっていた木の幹から身体を離し、心配そうにウエインの顔を覗き込んだ。
「……なんだか、かえって不安にさせたみたいだな」
「あ、……いや」
「悪いけど、俺はこれから行かなきゃならない所があるんだ」
「そうなのか?」
「ああ。だからまた、後でな」
「うん。また……」
エスリコはひらりと軽く手を振ると、ウエインに背を向けて歩き去った。
途中で一度だけこちらを振り返ったので、ウエインは「大丈夫」と示すように、ちょっと微笑んで見せた。
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