水の魔物

たかまちゆう

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序章

幻影

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 ――誰かに、呼ばれたような気がした。

 ふと気付くと、ウエインは森の中に立っていた。
 前方に、木々の途切れている場所があり、水面がのぞいている。
 泉のようだった。
 広さはそれほどないだろう。
 一分もあれば、周りをぐるりと一周できそうな、小さな泉だ。
 初めて見るはずなのに、なぜか懐かしい気がする。

 近づいていくと、泉の中に人影があるのが見えてきた。
 青いワンピースに包まれた華奢な身体に、やや青みがかった銀色の、長い髪。
 こちらの気配に気付いたのか、女性がその長い髪を揺らしてこちらを振り向く。
 ウエインは、その女性から目を離せなくなった。
 考える前に足が動いて、さらに女性へと近づいていく。
 白い肌。
 整った顔立ち。
 優美な曲線を描く眉も、長い睫毛(まつげ)も、髪の毛と同じ青銀色だ。
 見上げた瞳は、ウエインがまだ見たことのない海を連想させる、深い藍色をしていた。
 知らない女性だ。……そのはずだ。
 なのになぜ、切ないほどに愛おしく感じるのだろう。
 ウエインの中で、強い決意を持って叫ぶ声が響く。

 ――絶対ニ、守ル。

 それは誰の声なのだろうか。
 見知らぬ誰かの声のようでいて、やはりウエイン自身の声でもあるように思えた。
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