7 / 14
番外編
学校での隠れ咲き
しおりを挟む
「……と、」
誰かの声が聞こえる。脳内に反響して、またどこかに行ってしまう。
「…い、……いと!」
次の瞬間、身体を揺すられて瞼を開けた。
「たいと!大翔!起きろ!」
「ん、おはよぉ」
僕は目を擦りながら、欠伸をする。頬に何かが当たる。
「なっ!」
龍都は起きたばかりの僕の頬にキスした。その事に気が付いた時には、彼は顔を離し微笑んでいた。
僕は当たりを見回す。決して、龍都の家ではない。勿論、僕の家でも。
「がっ、学校でそんな事やめろ!」
赤面になっているのか、顔が熱を帯びているのが分かる。
「大丈夫だ、掃除を受け持つから、コイツを寝かせたままにしておいてくれって言ったら、皆帰ったよ…しかも学校から逃げる様にして」
「そうか……」
じゃない!
「外では僕が女装をしている時以外止めてくれ」
目を逸らす僕に、龍都はニヤニヤしながら問う。
「何でだ?」
「ケジメが付かなくなるだろ」
彼から視線を逸らしたのが、間違いだった。彼は、言葉で言っても聞かない奴だと、分かっていたはずなのに。
「んッ」
「はくっ」
唐突で、驚いたのだがやはり、彼を求めていたのは僕だった。そうされると分かっていて視線を背け、スキを与え誘ったのだ。
どこまでも絡み付いてくる彼の舌に、逃げ場を失う。だが、苦しくなっても僕は止めない。彼の気持ちに答えると決意してから、愛おしくなったのは僕の方だった。
すると、珍しく彼の方から舌を抜いた。
「ははっ、今日はいつにも増して気合入ってるな」
僕はその言葉に、恥ずかしくなり言う。
「そ、掃除やらないとっ」
口の中にまだ残っている彼の温もりを掻き集めて飲み、立ち上がる。
「あ、そんなもん俺がさっき済ませたよ、別にお前に付き合わせる意味も無いし」
彼は、僕に笑みを見せると言った。
「それに、お前との時間を掃除なんかに取られたくなかったからな」
「ありがとう……?で、良いのか?」
何だか自分の気持ちが分からない。大切にされている気はするのだが…。
「けどよ、放課後って良いよな?」
「何でだ?」
「完全に教室って空間で2人きりだからに決まってんだろ」
彼は、本当に嬉しそうだった。
「はは、確かに」
普段生活している空間を、2人のものにしてしまえるなんて……凄い。
「今日は何をしたいんだ?」
「何って、いつも龍都が好きな様に僕を弄ってるだけじゃん」
「弄られて喜んでんのは誰だ?」
その言葉に何も言えず、僕は唸った。
「否定しないところが可愛い」
最初は抵抗のあった可愛いという言葉も、最近では龍都に言われると嬉しく感じるのだ。
グゥー
とここで龍都の腹が鳴る。何とも情けない間抜けな音だ。思わず、頬がゆるんだ。
「ははっ、する事ねぇし、帰るか」
僕は頷く。彼は、鞄を持つと立ち上がりドアに向かう。僕も彼の後に続いて教室を出ようとする。
ドアを開けようとした彼が、振り向く。その顔は、イヤらしく歪んでいた。
「ど、どうした?」
驚く僕を無視し、彼は僕をドア側に寄せると壁ドンをしてきた。
「やる事、あったかな」
そう言うと、僕の瞳をじっと見た。
「か、壁ドンしたかったのか!」
「シーっ、あんまり煩くすると……人来ちゃうよ?」
何も言い返せない歯痒さと、彼の視線にまた赤面になる。だが、今は顔を背けない。彼の瞳の奥に、吸い込まれているからだろうか?
「龍都は、いつから僕をこんな風に見ていたんだ?」
突如出た言葉に、彼は少し身を引くと考える素振りをする。
「隙あり!」
僕は壁に着いていた腕を取り、立場を逆転させた。別にこんな事がしたくて聞いたわけじゃない。ただ、やられっぱなしは面白くない。
「ふっ、反撃してきた」
だが、彼は楽しそうに笑みを浮かべるのだった。どちらかというと、この後どうされるのかワクワクしている様にも見える。
「どうして欲しい?」
僕は強気に、彼の言葉を真似る。すると、彼はどうしたい?と聞いてきた。
「龍都をめちゃくちゃにしたい。僕だけの……」
その時だった。いきなり腕を着いていた壁が、スライドされた。
「うわぁ」
「なっ、」
僕は龍都の上に倒れた。たくましい胸板に倒れ、改めて自分との体付きの違いを感じる。
「わっ、ご、ごめんね!」
ドアを開けた張本人、立っていたのは、龍都の元カノ美保だった。彼女は怯えるように、走り出そうとしていた。
「待て!」
龍都は、美保の腕を掴んだ。
「ひ、ご、ゴメンなさい!まさか、寄りかかってるとは思わなくて、いつもよりドアが重いとは思ったんだけど!」
口走ると、彼女は龍都を見た。何だかその眼差しには、未練がありそうに感じた。
「謝るなよ、俺の方こそ……悪かった」
龍都が謝ると、美保は静かに言った。
「新しい彼女さんとは……上手くいってる?」
僕はその言葉に、驚いた。彼に、恋人がいる?僕以外の、しかも異性の。
「うるせぇ、お前には関係ないだろ」
龍都はそう言うと、僕の腕を掴み歩き出した。その場に取り残された美保は、何が癇に障ったのか、理解出来なかった。
校門を出て、僕は聞いた。
「彼女って?龍都は、好きな人が出来たから、美保さんをフッたのか?」
僕の問いに、龍都は言う。
「そうだ」
僕はその言葉に、掴まれたままの腕を振り払う。
「恋人がいたのに、僕で遊んでたのか…両手に花束だな」
「違う!俺は、お前の事がっ!」
龍都は、目を逸らす。外だということに気が付いたのか、正気になったのだろう。
「早く帰るぞ、お前の誤解を早く解きたい」
龍都のそんな横顔に、僕は笑った。
「ははっ」
「何笑ってんだよ!」
「知ってるよ、雰囲気でわかった」
僕は龍都を見ると、微笑む。
「僕に本気になってくれたから、美保さんをフッたんだろ?」
龍都は、ただ頷いた。
「お前、俺の慌てぶりを見たかっただけだろ…」
「恥ずかしいか?」
目の前にいる龍都は、珍しく赤面だった。だが、こちらを見た彼の目は…。
「帰ったら、覚えてろよ」
「何をだ?」
惚けた僕に追い打ちをかける。
「飯ごと食ってやる」
「楽しみにしてる」
「今日は加減しないからな」
僕は彼の事が好きだ。たぶん、恋人でも友人でも。
誰かの声が聞こえる。脳内に反響して、またどこかに行ってしまう。
「…い、……いと!」
次の瞬間、身体を揺すられて瞼を開けた。
「たいと!大翔!起きろ!」
「ん、おはよぉ」
僕は目を擦りながら、欠伸をする。頬に何かが当たる。
「なっ!」
龍都は起きたばかりの僕の頬にキスした。その事に気が付いた時には、彼は顔を離し微笑んでいた。
僕は当たりを見回す。決して、龍都の家ではない。勿論、僕の家でも。
「がっ、学校でそんな事やめろ!」
赤面になっているのか、顔が熱を帯びているのが分かる。
「大丈夫だ、掃除を受け持つから、コイツを寝かせたままにしておいてくれって言ったら、皆帰ったよ…しかも学校から逃げる様にして」
「そうか……」
じゃない!
「外では僕が女装をしている時以外止めてくれ」
目を逸らす僕に、龍都はニヤニヤしながら問う。
「何でだ?」
「ケジメが付かなくなるだろ」
彼から視線を逸らしたのが、間違いだった。彼は、言葉で言っても聞かない奴だと、分かっていたはずなのに。
「んッ」
「はくっ」
唐突で、驚いたのだがやはり、彼を求めていたのは僕だった。そうされると分かっていて視線を背け、スキを与え誘ったのだ。
どこまでも絡み付いてくる彼の舌に、逃げ場を失う。だが、苦しくなっても僕は止めない。彼の気持ちに答えると決意してから、愛おしくなったのは僕の方だった。
すると、珍しく彼の方から舌を抜いた。
「ははっ、今日はいつにも増して気合入ってるな」
僕はその言葉に、恥ずかしくなり言う。
「そ、掃除やらないとっ」
口の中にまだ残っている彼の温もりを掻き集めて飲み、立ち上がる。
「あ、そんなもん俺がさっき済ませたよ、別にお前に付き合わせる意味も無いし」
彼は、僕に笑みを見せると言った。
「それに、お前との時間を掃除なんかに取られたくなかったからな」
「ありがとう……?で、良いのか?」
何だか自分の気持ちが分からない。大切にされている気はするのだが…。
「けどよ、放課後って良いよな?」
「何でだ?」
「完全に教室って空間で2人きりだからに決まってんだろ」
彼は、本当に嬉しそうだった。
「はは、確かに」
普段生活している空間を、2人のものにしてしまえるなんて……凄い。
「今日は何をしたいんだ?」
「何って、いつも龍都が好きな様に僕を弄ってるだけじゃん」
「弄られて喜んでんのは誰だ?」
その言葉に何も言えず、僕は唸った。
「否定しないところが可愛い」
最初は抵抗のあった可愛いという言葉も、最近では龍都に言われると嬉しく感じるのだ。
グゥー
とここで龍都の腹が鳴る。何とも情けない間抜けな音だ。思わず、頬がゆるんだ。
「ははっ、する事ねぇし、帰るか」
僕は頷く。彼は、鞄を持つと立ち上がりドアに向かう。僕も彼の後に続いて教室を出ようとする。
ドアを開けようとした彼が、振り向く。その顔は、イヤらしく歪んでいた。
「ど、どうした?」
驚く僕を無視し、彼は僕をドア側に寄せると壁ドンをしてきた。
「やる事、あったかな」
そう言うと、僕の瞳をじっと見た。
「か、壁ドンしたかったのか!」
「シーっ、あんまり煩くすると……人来ちゃうよ?」
何も言い返せない歯痒さと、彼の視線にまた赤面になる。だが、今は顔を背けない。彼の瞳の奥に、吸い込まれているからだろうか?
「龍都は、いつから僕をこんな風に見ていたんだ?」
突如出た言葉に、彼は少し身を引くと考える素振りをする。
「隙あり!」
僕は壁に着いていた腕を取り、立場を逆転させた。別にこんな事がしたくて聞いたわけじゃない。ただ、やられっぱなしは面白くない。
「ふっ、反撃してきた」
だが、彼は楽しそうに笑みを浮かべるのだった。どちらかというと、この後どうされるのかワクワクしている様にも見える。
「どうして欲しい?」
僕は強気に、彼の言葉を真似る。すると、彼はどうしたい?と聞いてきた。
「龍都をめちゃくちゃにしたい。僕だけの……」
その時だった。いきなり腕を着いていた壁が、スライドされた。
「うわぁ」
「なっ、」
僕は龍都の上に倒れた。たくましい胸板に倒れ、改めて自分との体付きの違いを感じる。
「わっ、ご、ごめんね!」
ドアを開けた張本人、立っていたのは、龍都の元カノ美保だった。彼女は怯えるように、走り出そうとしていた。
「待て!」
龍都は、美保の腕を掴んだ。
「ひ、ご、ゴメンなさい!まさか、寄りかかってるとは思わなくて、いつもよりドアが重いとは思ったんだけど!」
口走ると、彼女は龍都を見た。何だかその眼差しには、未練がありそうに感じた。
「謝るなよ、俺の方こそ……悪かった」
龍都が謝ると、美保は静かに言った。
「新しい彼女さんとは……上手くいってる?」
僕はその言葉に、驚いた。彼に、恋人がいる?僕以外の、しかも異性の。
「うるせぇ、お前には関係ないだろ」
龍都はそう言うと、僕の腕を掴み歩き出した。その場に取り残された美保は、何が癇に障ったのか、理解出来なかった。
校門を出て、僕は聞いた。
「彼女って?龍都は、好きな人が出来たから、美保さんをフッたのか?」
僕の問いに、龍都は言う。
「そうだ」
僕はその言葉に、掴まれたままの腕を振り払う。
「恋人がいたのに、僕で遊んでたのか…両手に花束だな」
「違う!俺は、お前の事がっ!」
龍都は、目を逸らす。外だということに気が付いたのか、正気になったのだろう。
「早く帰るぞ、お前の誤解を早く解きたい」
龍都のそんな横顔に、僕は笑った。
「ははっ」
「何笑ってんだよ!」
「知ってるよ、雰囲気でわかった」
僕は龍都を見ると、微笑む。
「僕に本気になってくれたから、美保さんをフッたんだろ?」
龍都は、ただ頷いた。
「お前、俺の慌てぶりを見たかっただけだろ…」
「恥ずかしいか?」
目の前にいる龍都は、珍しく赤面だった。だが、こちらを見た彼の目は…。
「帰ったら、覚えてろよ」
「何をだ?」
惚けた僕に追い打ちをかける。
「飯ごと食ってやる」
「楽しみにしてる」
「今日は加減しないからな」
僕は彼の事が好きだ。たぶん、恋人でも友人でも。
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる