禁断のrainbow rose

秋村篠弥

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偽善者~染谷 あゆめ~

偽善者~染谷あゆめ~

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 童顔の小さな彼女は、俺にまたがり言った。
「私と先生が恋愛したら、びーえるになってしまいます」
「びーえるの意味は分かっているのか?」
 俺の問いに、彼女は微笑み言った。
「ボーイズラブの略しであり、それが指すものは…男性同士の恋愛です…間違いありますか?」
 彼女の表情に曇はなく、そう言い放った。
「俺は男だぞ?女性性が皆無とは言いきれないが…男だ」
「知ってます…だから、私の性別の理解をして下さい」
 彼女は、俺の胸板に指を這わせると、自分の身体を密着させる。男というものを、確かめるように。
「同一性障害なのか?」
 俺の言葉に、目だけを向けると、俺の手を取り自分のシャツを掴ませる。
「それほど疑うのであれば、どうぞご自分でお確かめ下さい」



 それは、突然だった。というか、紅月に問題が降りかかる時はいつも突如だ。
「染谷あゆめ?聞いたこともないな、成績不良者でもなければさほど高いわけでも無いな」
「えぇ?あんなに可愛い生徒に先生は目も向けないんですか?」
 同僚の女教師、空野叶は驚いて言う。
「可愛いなんて、人それぞれ基準が違いますよ」
「それじゃあ…紅月先生のタイプの人は?」
 彼女は何故か恥ずかしがりながら聞いてくる。個人的には、従順な子がいい。東みたいな……?
「そんなこと聞いてどうする?」
 正直なことが言える訳もなく、そうあしらう。すると、彼女はいつも悔しそうに引き下がるのだ。
 その原因が、メガネの奥の目つきだとは紅月は気が付いていない。
「それで、その子がどうしたから、相談してきたんだ?」
 話を変えると、彼女のテンションも普段通りに戻った。
「あ、その子……実は□※△○□の様でして…」
「は?」
 よく聞こえなかった、職員室は常にうるさいから紅月はいつも準備室にいる。そして何より落ち着かない。エロ本も読めない。
「紳士のように優しく、妖精のように癒される…素敵ですね、私も紅月先生のそんな存在に」
 空野の話しがどんどん進んでいくが、紅月は拾えていなかった。騒がしい音を拾い疲れた聴覚が悲鳴をあげる。
 俺は、喘ぎ声が好きなんだ!


 一通り言葉を浴びせて、空野は自席へ戻った。紅月は、昼食を持って準備室へ行った。
 ところで、空野先生は何が言いたかったんだ?
 出そうで出ない答えが、気持ち悪い。動力は使うが、記憶を手繰り寄せた。
「……ってことで向かわせるので、相手してください」
 理由は何としても思い出せないが、そこまで手繰り寄せた時点で紅月は、思考停止をした。
「来るのか!?」
 勢いよく立ち上がるが、何も出来ない。まず情報が何も無い。あるのは、女の空野からしても可愛いということだけ。
 最後の抵抗として、とりあえず名簿を確認する。
「全く、カウンセリングならカウンセラーが居るだろ、俺は理科専門の教師だぞ?担任さえ持てないアマチュアなのに何が出来るって言うんだ」
 そんな不満をぶちまけながら、ようやく指と目が止まった。
「はぁ、書類をいつわっての…男を馬鹿にしてんのか…」
 紅月は、生徒一人一人の書類に目を通していた。だが、彼の目の先には可愛らしい少女であるにもかからわず、その容姿とは不似合いな漢字が書かれていた。
 それは、
 ガラララッ
 いきなりドアが開くと、可愛らしい声が聞こえた。
「2年3組染谷あゆめです!今日は先生が相談に乗ってくれるというので来ました!よろしくお願いします!」
 許しが無いと入ってこないのか、気配がそこから動きそうもない。
「あぁ、入れ」
 紅月の言葉に、彼女は姿を表した。紅月は、見ていたものを机の引き出しに仕舞うのは忘れなかった。
「どうも、紅月先生!やっぱりいつ見てもイケメンだーぁ」
 そうこうし、彼女が話し続け、突如言った。
「先生のこと、とっても大好きなんです」
「そうか、そんな風に言ってくれる生徒はいないから、ありがたい」
 そう軽く流すと、彼女はムッとして言った。
「私は、言葉遊びがしたい訳では無いんです!」
「別に教師に恋心を抱いてもいいと思う。ダメなのは、関係を持ってしまうことであって、人の心の行先は自由だ」
 紅月は、わりと丁寧に返したのだが、彼女は悲しんだ顔をすると、紅月の顔をじっと見つめた。
「先生、私は苦しい…悲しい、寂しい…先生に、近づきたいです!」
 すると、彼女はイスから身を乗り出し、ベッドに腰掛けていた紅月の膝に手を置いた。
「生徒との異性交遊は認められていない」
  淡々と言う紅月を、あゆめは……押し倒した。紅月は、驚いた。男の自分がここまで抵抗しても、力が入らない体制にされ、結果として抵抗出来ないなんて。
「認められていた、としても」
 彼女は期待を高めていくように、紅月の瞳を真っ直ぐ見て訴えた。
「私と先生が恋愛したら、びーえるになってしまいます」
 彼女のその言葉に、紅月は何を言われたのか理解出来なかった。
「は?」
 紅月の反応にもめげず、彼女は分かりやすい言葉を選んだ。
「染谷あゆめは、男です。私は男なんです!」
 紅月は、鼻で笑うと言った。
「エイプリルフールでも無いのに面白くない嘘をつくな」
「先輩から、聞きました…貴方の治療法は、エッチだと」
「そんなこと言ったの誰だ」
「アズマ先輩です」
「アイツ……」
 紅月は、龍牙の顔を思い出す。アイツ、今度会ったらお仕置きだ。
「いや、尚更おかしいだろ。男だって言えばエッチ出来ると思ってんのか?てかエッチじゃない。教育だ!」
 紅月のツッコミに、あゆめはクスッと笑う。
 それから、彼女はあれやこれやと言い、ついに、
「それほど疑うのであれば、どうぞご自分でお確かめ下さい」
と言うと脱いだ。
「おまえっ!」
 だが、視界に入ったのは男子と見間違える程発達のない胸。これで女子では、可哀想だ。
「何なら私の立派なムスコも見ていただきましょうか?」
 紅月は、嫌でも認めた。
「お前は、本当に男なんだな、分かった。理解した!理解したから、帰れ!」
 「何故そうなるのですか…?私には、教育して下さらないのですか?」
 紅月は、思った。コイツをどうしても面白くないと。
「営業時間終了だ、今日は帰れ、二度と来んな」
「ひどいっ!私が校長先生に悪さしても良いんですか?」
 バーコードがいたずらされたら、大変だ。イタズラされた後に、バーコード直々に依頼しに来るに違いない。ここは何としても、何とかしなくては。
「分かった、俺の教育を受けるんだな?」
 その言葉に、あゆめの目は輝いた。
「はい!」
「俺の教育は痛いぞ?」
「や、優しくして下さい」
 ニヤリと口の端を持ち上げると言う。
「生徒が教師の根本的な教育に口出しをするな」
 その言葉を始めとし、あゆめの腕を掴むと身体を起こし、代わりにあゆめをベッドに押し付け跨る。
「立場逆転、どうなっても……知らないからな?」
 あゆめの表情に、興奮が見え隠れしている。
「最初は、相性チェックでもするか?」
 紅月は、あゆめに覆い被さると、小さくも淡いピンクに染まる唇に優しく口付けした。
「ッ!」
 あゆめは、みるみると赤面になる。だが、紅月は気にもとめず自らの舌を差し入れ、掻き回す。
「んっく、ンんっ」
 慣れていないのか、舌の動きに翻弄されあゆめは息もままならなくなった。
「あっ」
 紅月が舌を離すと、二人の間に糸が引かれた。その輝く糸はすぐ重さに耐えきれず、あゆめの胸に落ちた。
 紅月はそれを舐めとる。
「あ、紅月先生!」
 いきなり呼ばれ、紅月は顔を上げた。
「何だ?」
 まだ、舌に絡み付くあゆめの液体を飲み込むと、彼は瞳を見つめた。
「ぎ、ギブアップです!」
「はぁ?ギブアップなんてある訳ないだろ」
 紅月は、あゆめの顎に手を添えた、その時だった。
「紅月!居るか?」
 それは龍牙の声だった。
「東か、こっちくんな。来たら西にお前のエロ画像送るからな」
 そう脅すと、龍牙は、何でだよ!と不満そうに言うが、
「じゃあ、また明日来る。だから、送るなよ!」
と言い、帰って行った。
「チッ、帰れよ。だけどな、校長先生を困らせるなよ?」
 あゆめは激しく頷くと、泣き目でシャツを着ると、紅月に礼をした。
「あ、ありがとうございました」
「これ、帰って飲め」
 紅月は、ココアの缶をあゆめに投げた。あゆめは両手でキャッチすると、微笑んだ。
「どうも」
 そう言って、準備室を後にした。
 紅月は、またニヤニヤしていた。先程あゆめに渡した缶、あれは実験用のココアだった。紅月製の淫薬入りココアなのだ。
 その効果を紅月は楽しみにする事にした。

 口の中をまだ、支配している紅月の唾液、紅月の舌使いに、あゆめは恥じらいが尽きなかった。
でも、彼に跨られた時の、あの表情は、最高だった。
「ココア、まだ家じゃないけど、良いよね」
 そう言い、あゆめは紅月の意図に気がつく訳もなく、ココアを口にした。
 その後、あゆめは全身がほてり、紅月が何度もリフレインした。夢では紅月に襲われた。
 だが、原因は紅月との接触であり、ココアだとは微塵も思わなかった。



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