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西 竜牙~西を治める者~
~西 竜牙~
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「最近、東さん…顔出さないっすね」
片手に竹刀を持った少年は、不思議そうに下っ端に問う。
「なんでも、秋川高校の教師に飼い慣らされた、とか……」
下っ端の中でも格が上の男が言う。
それを聞いた彼は竹刀を地面に叩き付けると、不快な表情をあからさまに顔に出す。
「そう、っすか。てか、秋川って東さんの高校じゃないっすか。自分の通う学校のセンコーの犬に成り下がる、なんて…」
下っ端達の顔に焦りが生じる。東区を治める東龍牙は、裏界のボスである。だが、本当に怖いのは、権力は東に劣るが何をしでかすか分からない、西竜牙だ。彼は、後先考えず自分の軍以外の仲間は切り捨てる薄情者でもある。
そんな彼がボスの裏切りに、あるいは失望感から、怒っているのだ。
それに、竜牙にとって東龍牙は、憧れの存在でもあった。自分とは違い、格好の良い体格、顔つき、思い切りのいいところや、カリスマ性にも憧れていた。そんな彼が教師に劣っているという事実に腹を立てるどころの話ではない。
「おい、テメェら……」
いつもより低い声音にその場にいた全員の背筋が自然と伸びる。
「テメェらの代わりに俺が仇を取って、東さんの身を取り戻しに行くっす…だから、俺は暫くここを離れて東区に向かう」
西竜牙の瞳から、力強いエネルギーが放たれている。もはや、固唾を飲んで受け止めるしか無かった。
「その間は、南の言うことを聞くように、お願いするっす。尚、あいつはマトモにやり合えば俺も勝てっか分からないくらいっすから、怒らせは禁物で、じゃあ」
西は片手を上げて挨拶すると、土管から飛び降りて竹刀を肩に添えながら歩いて行った。
「南って…あの南区の?」
「正直あそこが1番荒れてるよな」
下っ端達の前に、一つの影が現れたが、彼らは気付くことなく噂をし合う。
気付かれずに数分経過し、痺れを切らした少年は咳払いをした。
そしてやっと彼らは前を向く。目を見開いた。
そこには、どこからどう見ても頭の良さそうな美少年がウンザリした表情をし、メガネフレームをゆっくりと上げていたからだ。学ランにメガネ、そして片手には本……。
下っ端達は理解出来なかった。あまりにも荒れ果てた南区の印象と、その長が掛け離れたものだったからだ。
「私は南遼。一様南区を治める、という任務を預かってますが、基本興味は無いので…」
あからさまに不機嫌そうだ。下っ端達は、雰囲気で怒らせてはいけないと悟った。
「西君が帰ってくるまで、この西区も面倒を見ます…とても面倒ですが」
だが、その態度に下っ端の中くらいの奴が声を上げた。
「南区って大分荒れてるみたいじゃないですか、西区もそんなんになっちゃうんですか?」
その質問に、眉にシワを寄せて彼は返答した。
「なるでしょうか?それはあなた方次第でしょうね…私は監督であって、見回りを命じられた訳ではない。私が直接手を下すのは、処分する時です」
「じゃあ何で、南区は…」
「あそこはあの様な区という形成で成り立っています。口を挟まないで頂きたい」
そう言うと、南は話すことはもう無いと言わんばかりに踵を返し、歩き出した。
「あ、あの、明日から俺らはどうしたら良いんですか…?」
歩き出した足を止め、静かに言った。
「あなた方は駒ではない、自分達で西区を作り、間違っていれば訂正しなさい。先程も言いましたが、私はただの監督であって見回りはしません」
そう言うと、また歩き出した。
「南さんは何をするんですか?」
下っ端の声に、南は悪気もなく言った。
「私はこれからデートです。勿論、明日も、明後日も」
下っ端達は色んな意味でやばいやつだと確信した。
「た、たっ、大変ですぞ!紅月先生!!」
バタバタと足音が聞こえたと思うが、すぐにノック無しにドアが開いた。
棚が入り組んだ物理学準備室は、少し入り、棚を避けないと向こう側は見えない。この配置は、紅月が万が一の事も考え、作ったのだった。
「何ですか」
紅月は、急いでエロ本を隠しながらいかにも不快な声音で言う。
「実は、東が大人しくなったと思ったら、次は…西がっ」
飛んできたからか、バーコードは息を切らしていた。
「そーですか、賑やかで良いですね、飽きなそうだ」
紅月は興味無さそうに欠伸をし、バーコードに背を向けた。
「紅月先生ぇ!先生にしか頼めないんです!何とかして下さいー!」
紅月はため息を吐くと、言った。
「貴方は俺が断らない事を知っている。なら、頼みに来るのと同時になぜ資料を持ってこない?」
紅月の言葉に、バーコードは茶封筒を渡した。
「その言葉を待ってました!」
「どうやら貴方の方が上だった様ですね…」
紅月は、バーコードを追い出すと、資料に目を通した。
「ありゃ、俺と被ってんじゃんS×Sはあんまし好まないな」
そんな文句を言いながらも、紅月は資料を読んでいった。
暫くすると、まるっきりノックも足音も無しにドアが開いた。
「紅月!居るな?」
その声音から、瞬時に龍牙だと理解する紅月。資料を残さず引き出しに仕舞う。
龍牙に個別教育をして、半月経つくらいだろうか?彼はたまに顔を出し、紅月が意図的にライオンからネコへ成り下げる。だが、龍牙はバレてはいけないことをしていると分かっているのか、それが逆に楽しさを増やした。
そーいえば、龍牙関連で西竜牙が釣れてんだっけ?何か聞き出せっかな?
「何だよ、またエッチしに来たのか?」
紅月の言葉に、龍牙はベッドにどかっと座る。
「西が動き出したな」
そうつぶやく彼に、紅月は彼に顔を向けた。
「あ、俺が紅月の所に行ってた時間は、大体西区の西に会いに行って活動してたからな、可笑しいと思った西は…たぶん、近頃ココを訪ねるだろうな」
龍牙は、自分の話題に紅月があいずちをしない事を疑問に思った。
「紅月?」
彼の名を呼ぶが、何だか視界がボヤけてくる…。
この感覚は……っ!
「東龍牙、おまえは本当に、馬鹿だな?」
「ふざけんな…っ!」
聞いた瞬間、龍牙は理解した。また、薬かなんかを教室に充満させていたのだろう。
ベッドに押し倒され、紅月の指は無駄のない動きで、ボタンを外していく。シャツから、東の肌がはだけると、耳元に口を近づけ囁く。
「それでいて、可愛い」
龍牙は赤面になるが、紅月はそれを眺めながら露出した肌に指を滑らす。
「西がココに来ると何か不都合でも?」
「ある、アイツは危ない。何をしでかすか分からない、俺だって勝てるか…」
龍牙の言葉に、紅月は言った。
「俺が取られるのが嫌なんだ?」
図星だからなのか、彼は一層顔を赤くした。
「本当に、東は可愛いなぁ…」
紅月がシャツ越しに、龍牙の突起に触れた時だった。
「ごめんくだせー」
聞いたことのない声が、ドアが開かれると共に聞こえた。紅月は、ベッドの下に素早く東を押し入れる。ベッドを整え、紅月は心の内で舌打ちをしながら、パソコンに向かった。
「何だ?てか、誰だ。何年何組かを言え」
紅月の声に、棚越しからやる気の無さそうな声が聞こえた。
「俺はこの学校の人間じゃないんですわ…で、聞きたいんですが…」
「話を続けるなら、顔を見せろ…こっちに来い」
その言葉に足音が聞こえ、声の主は姿を表した。紅月も振り向く。
手には竹刀を持ち、それの先を地面に当てたりしている。
「お前はどこかの指導者か」
紅月のツッコミに、少年は楽しそうに言った。
「俺は西区を治める西竜牙っす。東さんがアンタに飼い慣らされたって聞いてんですが、その情報は本当で?」
「確信してんなら、仲間もっと連れてくれば良かったんじゃないのか?」
「複数いれば、いいってもんじゃない。アンタはあの東さんを手なずけた。なら、一筋縄ではいかず、ただモンじゃない、だから単品で来たんすよ」
西は余裕のある表情だった。だが、彼の身体はベッドの下でハラハラしている龍牙と変わらず、薬に蝕まれている。
勿論、耐性がついていると言っても、それは紅月も同じだった。
「なに、俺死刑?磔刑?カスピ海にでも捨てられんの?」
「それは、アンタ次第です…東さんに近付かないとお約束していただけやせんか?」
「無理だね…生徒だし。見捨てられないし」
おしい人材を脅されただけで返したら、かっこ悪い。
いや、かっこいい悪いの話ではないのだが。
「即答っすか?まぁ、別に構いませんが……」
そこで西はやっと自分の身体の異変に気が付いた。
カタンッ
竹刀が手からするりと抜け、落ちた。
自分の手のひらを見る、震えているように思えた…。
竹刀を握る手の握力が弱くなっていた?
「俺、どうされちゃうんですかねぇ?」
龍牙は、西が入場してきてからの紅月が、いつもより大人しく受身な事に気が付いた。
「どうして欲しいっすか?」
無邪気に問う西を前に、紅月はベッドに腰掛けた。
「?」
そのまま、伸びをすると白衣のボタンに手を掛ける。西は何故か、彼の指先から、視線を逸らせなかった。
「暑いな、暖房でも掛かってるんじゃないか?」
紅月の言葉に、西は自分の身体も熱を帯びていることに気付いた。
「な、何をした…」
「一様自己紹介ね、俺は秋川高校の物理学を教える紅月鎧、んで噂の東龍牙の飼い主ね…」
紅月の自己紹介に、西は目を見開く。自分の憧れていた人物を、呼び捨てにし、飼い慣らしたと言わんばかりの言い草。
「お前……」
西は余裕さを全くなくした瞳で、紅月を睨みつけた。
「紅月、俺はお前を……」
紅月は、その後に続く言葉を待っていた。彼の唇を凝視して。
「……犯してやる…!」
当初の龍牙と同じく、紅月の胸ぐらを掴むと、ベッドに押し付ける。
紅月は、資料を思い出し、やはり受け身が彼には良いとわかった。だが、彼に良くても自分にとってはあまり好ましくない。何故なら、紅月は攻めしか経験が無いからだ。
「そんなに暑いなら、もっと暑くしてやるよ!」
西は、興奮気味に言うと紅月に跨り、シャツのボタンを取っていく。
「っ」
ベッドが軋む度、下に潜っている龍牙は不安が募る。犯してやると言ったのは、西の声だった。
やはり紅月は最初から受けで行くつもりだったのか?だとしたら、この短時間で西の理性を飛ばしてしまう、この教室に充満している薬はだいぶ強力だ。
龍牙の知る限り、西はそんな簡単に男を襲ったりはしないはずだ。だが、龍牙自身も、最初は頭がクラクラしてきて、段々理性が飛んでいった。
「あぁっ……!」
あのSっけしか無さそうな、紅月が呻き声を上げている。龍牙はいつもと違う紅月に、興奮していた。
「紅月って言ったか?なぁ、男に犯される今の心境はどうだ?」
西の問いに、紅月は自分は受けでもいけると思った。
というか、どっちでも対応できる自分に驚いた。
「ぁ、どう、だろうなぁ?」
西ははだけた紅月の上半身に唇を押し付け、味わう様に動かした。やがて、彼は突起に当たりそこを舌で転がすように舐める。
「んぁ」
紅月は、自分から出た声に驚いていた。人の愛撫ででここまで感じてしまうとは…。
「もっと、もっと啼いてみろ」
西は言うと、もう片方の突起を指で摘んだり、指の腹で捏ねたりしている。
「は、ぁ。こんなんで、俺が」
「東さんの事も、こうやって狂わせたんすか?ヤラシイ教師だ」
龍牙が受けであることを、彼は想像しないのだろうか?
「ぁっ、くっ、や、めぇ」
「やめて欲しいとか、思ってないのに言うなよ?」
彼は紅月の身体から顔を持ち上げると、イヤらしく微笑む。まるでどうしてやろうかと交錯している様だ。
「次は、ココか…?」
片手で紅月の両腕を掴むと、西はズボンのチャックへと手を向かわせた。
「これからが本番っすよ」
彼の瞳に更なる光が宿った時だった。
足音が次第に大きくなり、扉がノックされ、ゆっくりと扉が開く。
「紅月先生!今日の授業でお伺いしたい事がありまして」
生徒の声に、紅月はため息をつくと言った。
「分かった、すぐ準備する物理室に居ろ」
「分かりました!」
そう言うと、生徒は静かに扉を閉めバタバタと走っていった。
「なぁーんだ、今日はオシマイっすか…」
つまらなそうに紅月の上から退き、口を尖らせる。
「早く帰れ」
紅月は、シャツのボタンを閉める。
「また来やす、今度は……」
西は紅月の耳に囁いた。
「もっと激しく」
そう言うと、床に落ちていた木刀を拾い扉を乱暴に開けると、閉めずに帰って行った。
「二度と来んな」
紅月の言葉は聞こえるわけがなかった。だが、足元に違和感が生じた。もぞもぞと、龍牙が出てきたのだ。
彼は、じっと隠れていたからか、顔が赤い。
「大丈夫か?」
紅月は、そんな龍牙に問う、彼は恥ずかしそうに目を逸らす……が、紅月に視線を戻した時、小馬鹿にしたように言った。
「ボタン、掛け間違えてるぞ」
紅月は、2番目と3番目の掛け間違いに気が付き、礼も言わず直す。
「また来るな」
そう言って、いつの間にか制服の乱れを直していた龍牙は立ち上がった。
「来んな」
そんな毒舌は、耳に入っても反応しない。何故なら、そんなことを言う紅月が1番龍牙達との淫乱を求めていると分かっているからだ。
片手に竹刀を持った少年は、不思議そうに下っ端に問う。
「なんでも、秋川高校の教師に飼い慣らされた、とか……」
下っ端の中でも格が上の男が言う。
それを聞いた彼は竹刀を地面に叩き付けると、不快な表情をあからさまに顔に出す。
「そう、っすか。てか、秋川って東さんの高校じゃないっすか。自分の通う学校のセンコーの犬に成り下がる、なんて…」
下っ端達の顔に焦りが生じる。東区を治める東龍牙は、裏界のボスである。だが、本当に怖いのは、権力は東に劣るが何をしでかすか分からない、西竜牙だ。彼は、後先考えず自分の軍以外の仲間は切り捨てる薄情者でもある。
そんな彼がボスの裏切りに、あるいは失望感から、怒っているのだ。
それに、竜牙にとって東龍牙は、憧れの存在でもあった。自分とは違い、格好の良い体格、顔つき、思い切りのいいところや、カリスマ性にも憧れていた。そんな彼が教師に劣っているという事実に腹を立てるどころの話ではない。
「おい、テメェら……」
いつもより低い声音にその場にいた全員の背筋が自然と伸びる。
「テメェらの代わりに俺が仇を取って、東さんの身を取り戻しに行くっす…だから、俺は暫くここを離れて東区に向かう」
西竜牙の瞳から、力強いエネルギーが放たれている。もはや、固唾を飲んで受け止めるしか無かった。
「その間は、南の言うことを聞くように、お願いするっす。尚、あいつはマトモにやり合えば俺も勝てっか分からないくらいっすから、怒らせは禁物で、じゃあ」
西は片手を上げて挨拶すると、土管から飛び降りて竹刀を肩に添えながら歩いて行った。
「南って…あの南区の?」
「正直あそこが1番荒れてるよな」
下っ端達の前に、一つの影が現れたが、彼らは気付くことなく噂をし合う。
気付かれずに数分経過し、痺れを切らした少年は咳払いをした。
そしてやっと彼らは前を向く。目を見開いた。
そこには、どこからどう見ても頭の良さそうな美少年がウンザリした表情をし、メガネフレームをゆっくりと上げていたからだ。学ランにメガネ、そして片手には本……。
下っ端達は理解出来なかった。あまりにも荒れ果てた南区の印象と、その長が掛け離れたものだったからだ。
「私は南遼。一様南区を治める、という任務を預かってますが、基本興味は無いので…」
あからさまに不機嫌そうだ。下っ端達は、雰囲気で怒らせてはいけないと悟った。
「西君が帰ってくるまで、この西区も面倒を見ます…とても面倒ですが」
だが、その態度に下っ端の中くらいの奴が声を上げた。
「南区って大分荒れてるみたいじゃないですか、西区もそんなんになっちゃうんですか?」
その質問に、眉にシワを寄せて彼は返答した。
「なるでしょうか?それはあなた方次第でしょうね…私は監督であって、見回りを命じられた訳ではない。私が直接手を下すのは、処分する時です」
「じゃあ何で、南区は…」
「あそこはあの様な区という形成で成り立っています。口を挟まないで頂きたい」
そう言うと、南は話すことはもう無いと言わんばかりに踵を返し、歩き出した。
「あ、あの、明日から俺らはどうしたら良いんですか…?」
歩き出した足を止め、静かに言った。
「あなた方は駒ではない、自分達で西区を作り、間違っていれば訂正しなさい。先程も言いましたが、私はただの監督であって見回りはしません」
そう言うと、また歩き出した。
「南さんは何をするんですか?」
下っ端の声に、南は悪気もなく言った。
「私はこれからデートです。勿論、明日も、明後日も」
下っ端達は色んな意味でやばいやつだと確信した。
「た、たっ、大変ですぞ!紅月先生!!」
バタバタと足音が聞こえたと思うが、すぐにノック無しにドアが開いた。
棚が入り組んだ物理学準備室は、少し入り、棚を避けないと向こう側は見えない。この配置は、紅月が万が一の事も考え、作ったのだった。
「何ですか」
紅月は、急いでエロ本を隠しながらいかにも不快な声音で言う。
「実は、東が大人しくなったと思ったら、次は…西がっ」
飛んできたからか、バーコードは息を切らしていた。
「そーですか、賑やかで良いですね、飽きなそうだ」
紅月は興味無さそうに欠伸をし、バーコードに背を向けた。
「紅月先生ぇ!先生にしか頼めないんです!何とかして下さいー!」
紅月はため息を吐くと、言った。
「貴方は俺が断らない事を知っている。なら、頼みに来るのと同時になぜ資料を持ってこない?」
紅月の言葉に、バーコードは茶封筒を渡した。
「その言葉を待ってました!」
「どうやら貴方の方が上だった様ですね…」
紅月は、バーコードを追い出すと、資料に目を通した。
「ありゃ、俺と被ってんじゃんS×Sはあんまし好まないな」
そんな文句を言いながらも、紅月は資料を読んでいった。
暫くすると、まるっきりノックも足音も無しにドアが開いた。
「紅月!居るな?」
その声音から、瞬時に龍牙だと理解する紅月。資料を残さず引き出しに仕舞う。
龍牙に個別教育をして、半月経つくらいだろうか?彼はたまに顔を出し、紅月が意図的にライオンからネコへ成り下げる。だが、龍牙はバレてはいけないことをしていると分かっているのか、それが逆に楽しさを増やした。
そーいえば、龍牙関連で西竜牙が釣れてんだっけ?何か聞き出せっかな?
「何だよ、またエッチしに来たのか?」
紅月の言葉に、龍牙はベッドにどかっと座る。
「西が動き出したな」
そうつぶやく彼に、紅月は彼に顔を向けた。
「あ、俺が紅月の所に行ってた時間は、大体西区の西に会いに行って活動してたからな、可笑しいと思った西は…たぶん、近頃ココを訪ねるだろうな」
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「紅月?」
彼の名を呼ぶが、何だか視界がボヤけてくる…。
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「ふざけんな…っ!」
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「それでいて、可愛い」
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「西がココに来ると何か不都合でも?」
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「俺が取られるのが嫌なんだ?」
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「本当に、東は可愛いなぁ…」
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「ごめんくだせー」
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「何だ?てか、誰だ。何年何組かを言え」
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「俺はこの学校の人間じゃないんですわ…で、聞きたいんですが…」
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手には竹刀を持ち、それの先を地面に当てたりしている。
「お前はどこかの指導者か」
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「俺は西区を治める西竜牙っす。東さんがアンタに飼い慣らされたって聞いてんですが、その情報は本当で?」
「確信してんなら、仲間もっと連れてくれば良かったんじゃないのか?」
「複数いれば、いいってもんじゃない。アンタはあの東さんを手なずけた。なら、一筋縄ではいかず、ただモンじゃない、だから単品で来たんすよ」
西は余裕のある表情だった。だが、彼の身体はベッドの下でハラハラしている龍牙と変わらず、薬に蝕まれている。
勿論、耐性がついていると言っても、それは紅月も同じだった。
「なに、俺死刑?磔刑?カスピ海にでも捨てられんの?」
「それは、アンタ次第です…東さんに近付かないとお約束していただけやせんか?」
「無理だね…生徒だし。見捨てられないし」
おしい人材を脅されただけで返したら、かっこ悪い。
いや、かっこいい悪いの話ではないのだが。
「即答っすか?まぁ、別に構いませんが……」
そこで西はやっと自分の身体の異変に気が付いた。
カタンッ
竹刀が手からするりと抜け、落ちた。
自分の手のひらを見る、震えているように思えた…。
竹刀を握る手の握力が弱くなっていた?
「俺、どうされちゃうんですかねぇ?」
龍牙は、西が入場してきてからの紅月が、いつもより大人しく受身な事に気が付いた。
「どうして欲しいっすか?」
無邪気に問う西を前に、紅月はベッドに腰掛けた。
「?」
そのまま、伸びをすると白衣のボタンに手を掛ける。西は何故か、彼の指先から、視線を逸らせなかった。
「暑いな、暖房でも掛かってるんじゃないか?」
紅月の言葉に、西は自分の身体も熱を帯びていることに気付いた。
「な、何をした…」
「一様自己紹介ね、俺は秋川高校の物理学を教える紅月鎧、んで噂の東龍牙の飼い主ね…」
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「お前……」
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紅月は、その後に続く言葉を待っていた。彼の唇を凝視して。
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「っ」
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西の問いに、紅月は自分は受けでもいけると思った。
というか、どっちでも対応できる自分に驚いた。
「ぁ、どう、だろうなぁ?」
西ははだけた紅月の上半身に唇を押し付け、味わう様に動かした。やがて、彼は突起に当たりそこを舌で転がすように舐める。
「んぁ」
紅月は、自分から出た声に驚いていた。人の愛撫ででここまで感じてしまうとは…。
「もっと、もっと啼いてみろ」
西は言うと、もう片方の突起を指で摘んだり、指の腹で捏ねたりしている。
「は、ぁ。こんなんで、俺が」
「東さんの事も、こうやって狂わせたんすか?ヤラシイ教師だ」
龍牙が受けであることを、彼は想像しないのだろうか?
「ぁっ、くっ、や、めぇ」
「やめて欲しいとか、思ってないのに言うなよ?」
彼は紅月の身体から顔を持ち上げると、イヤらしく微笑む。まるでどうしてやろうかと交錯している様だ。
「次は、ココか…?」
片手で紅月の両腕を掴むと、西はズボンのチャックへと手を向かわせた。
「これからが本番っすよ」
彼の瞳に更なる光が宿った時だった。
足音が次第に大きくなり、扉がノックされ、ゆっくりと扉が開く。
「紅月先生!今日の授業でお伺いしたい事がありまして」
生徒の声に、紅月はため息をつくと言った。
「分かった、すぐ準備する物理室に居ろ」
「分かりました!」
そう言うと、生徒は静かに扉を閉めバタバタと走っていった。
「なぁーんだ、今日はオシマイっすか…」
つまらなそうに紅月の上から退き、口を尖らせる。
「早く帰れ」
紅月は、シャツのボタンを閉める。
「また来やす、今度は……」
西は紅月の耳に囁いた。
「もっと激しく」
そう言うと、床に落ちていた木刀を拾い扉を乱暴に開けると、閉めずに帰って行った。
「二度と来んな」
紅月の言葉は聞こえるわけがなかった。だが、足元に違和感が生じた。もぞもぞと、龍牙が出てきたのだ。
彼は、じっと隠れていたからか、顔が赤い。
「大丈夫か?」
紅月は、そんな龍牙に問う、彼は恥ずかしそうに目を逸らす……が、紅月に視線を戻した時、小馬鹿にしたように言った。
「ボタン、掛け間違えてるぞ」
紅月は、2番目と3番目の掛け間違いに気が付き、礼も言わず直す。
「また来るな」
そう言って、いつの間にか制服の乱れを直していた龍牙は立ち上がった。
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