感染し、彼女は僕を、

秋村篠弥

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彼女の魅力

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「おはよぅ!」
 ハッキリと聞こえたフワフワとした声。その声に、僕は機敏に反応してしまう。
「お、おはよう!」
 僕の挨拶に、彼女はくすくすと笑う。その不意に溢れる笑みは、可愛い。
 そう思ってしまうのは、僕が彼女に恋心を抱いているからに違いない。でなければ、彼女には恋人が何人も居るだろうし、何より僕が出会ってすぐに目を引くだろう。
 いつ、どこで、何がきっかけか、なんて分からないし、検討をつけようとも思わない。それを知ったところで、今、彼女を心の底から愛している事実は揺るがないし、彼女に魅了されているのも事実だからだ。
 でも、強いて好きな箇所をあげろと言われればもちろん、無理ではない。
「何かボーっとしてる?」
 そう言われ、顔を覗き込まれる。顔が熱を持つのが分かる。
「え、あ、うぅん。君は可愛いなって、そう思ってただけだよ」
「へぇええ?きょ、今日はエイプリルフールじゃないよぉ?」
 そう言って驚く姿も、本当に愛らしい。僕の中で、付き合ってもいないのに、彼女への嫉妬心と独占欲が沸いてくるのが感じる。
 その二つは、僕を容赦なく蝕む。
 痛い……痛い、どうしようもできない現状に、辛さを感じる。
 でも、それを感じるのは、きっと自分に自信が無いからだと思う。
「知ってるよ。嘘なんか言ってどうするの」
「そ、それは私が聞きたいですぅ!もうっ」
 赤面で教室へ逃げていった彼女、それを追いかける勇気もなかった。
 そう、僕らはまだ、付き合っていないのだ。彼女が誰かに取られてしまう可能性もある……いや、すでに恋人がいる可能性ももちろん、ある。
 だから、束縛なんて出来ない。
 僕は恋人の有無を知るべく、帰り道、彼女を捕まえた。と言っても彼女が来るまで校門で待機していただけだが。
「わっ、どうしたの?」
 彼女は、今朝の事があってか校門で待ち伏せしていた僕を見て、彼女はそう言い驚いた。
「あの、聞きたいことがあって…というか、どうしても君と話したくて」
 僕の言葉に、一段と驚くが、嬉しかったのか微笑んだ。その微笑みが、今日一日の疲れのほとんどを消化させた。
 彼女のひょこひょことした可愛い足取りに歩を合わせる。彼女の表情は、どこか明るげだった。何か嬉しいことでもあったのだろうか?
 すると聞いてもいないのに、彼女は話し出した。
「あのね、今日ね、告白されたの」
「えっ」
 思わず声を上げてしまった。でも、そんな事はお構いなしに、彼女は続ける。僕は、彼女のご機嫌から告白を承諾したんだな、と悟り彼女とは対照的な気分になる。これからは、彼女に好意を抱いてはいけないという理性が僕をそうさせる。
「でもね、私好きな人が居るから、断っちゃった~」
「えっ?」
 断っておいて上機嫌な事にも疑問を抱くが、何より彼女が好意を抱いている人間がいるとは、考えていなかった。
「彼には悪いけど、でも、私に好意を持ってくれる人がいるんだって、実感したら嬉しくなっちゃって…そう考えたら、私も告白しようって。そう思えたの」
「そう、なんだ」
  僕は逃げ出したかった。これから、彼女はその人に告白して、きっと付き合って、その人からの愛しか受け取らなくなる。そしたら、僕は惨めな思いをする。だから、早くこの思いを消し去りたかった。
「もし、断られても、私みたいに自分に好意を持ってくれてる人が居るって事を、自信にして欲しいんだ、だから…」
 彼女は足を止めた。その気配に気が付き、僕は振り向いた。その時に合った目は、まっすぐと、他の誰でもない僕を見ていた。
「?」
 僕は彼女の意図が理解出来なくて、見返すが、答えは返ってこない。
 すると、しばらくして彼女は口を動かした。
「だから、私と付き合って欲しい…」
 語尾は消えそうなほどだったが、それでも僕の心には何度もその言葉が響いた。最初はその言葉の、文の意味が分からなかった。だから、誰が、何を、どうしたい?
 考え始めて、数分間…彼女の顔をジッと見てしまっていたが、意味がだんだん分かってくると、二人で赤面だった。
「本当は、電話でもして公園にきてもらおうかと思って…、でも君が校門で待っててくれたから、その手間が省けたよ」
 彼女はそう言っていつもの笑みで、僕の心を温めた。
 改めて、僕は彼女の天使の笑みに惹かれたのだろう。だが、彼女は僕の声、そして口説き文句が好きらしい。
 きっと彼女は、僕が好意を持っていることを知っていたのだろうな。
 先を越された、そんな想いが嬉しさにむず痒さを加えた。







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