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第1幕~林の町にて、、先行く二人、雨揺らぎ騒林追うは一人と、また一人
優れた人材は国宝にも勝るッ、なのですッ。誰かッ、二人の行き先を知る者は居ないのですかッ
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《林のフォリンズ》の町から、距離はそれほど離れていない。
小川が流れる、支流だった。
特に、呼ばれるような名も無い川で、フォリンズの町人からは、近くの川、と素っ気ない呼ばれ方をしている。
《ニチリア平原》を流れる、《ニチリアの沃水》と呼ばれる大河から流れる、数多くある支流の一つらしかった。
川で水を飲んでいるのは、二頭の【ニチリア紅毛】と呼ばれる馬で、ルルヒラとユエリが宿の馬小屋に預けておいたものだ。
昨日、冒険者組合からルルヒラが宿に戻った時には、ユエリは既に目を覚ましていた。
しかし、その後も簡単な食事を済ませて寝入ってしまい、起きた時間は、まだ日が昇る前の薄暗い未明の時刻だったようだ。
そして、寝起き早々のルルヒラを連れ朝の早駆け、と二頭の馬を駆らせて、近くの川、のほとりで弁当を食べるといった所だった。
「いい朝日ねえ、、
紅毛ちゃんも久々に走れて良かったわ」
くれげちゃん、とは王都を出る際、購入したばかりの二頭に対する、便宜上のあだ名のようなものだとルルヒラは考えている。
今後、二頭が名で呼ばれる事があるのかは少々、疑問だった。
「あー、しかし、、
まだ眠いんだがな、、」
言いながら、ユエリが作った弁当を口にする。
イッキツツキの卵を茹で砕いたものと、コダチリ草の茎のみじん切りを混ぜ合わせ、宿に置いてあった甘酢ドレッシングで味付けされた具材らしい。
それをパンに挟んだらしく、朝食としてはまずまずの出来だった。
次いでに言うと二人が宿泊する宿は、適当な食材が置かれていて、好きに使ってもよいセルフ式だった。
「さあて、、
これね」
そう言って、本を取り出す。
‐〈ハーブ、薬草になる四百の雑草〉
ニチリア平原に群生する雑草を挿絵付きで紹介した本。
雑草をハーブ、薬草として利用する際の要点が纏められていて、毒草を安全に利用する際の注意点等も載せられている優れもの。著者は魔術の女王として名高い、旧王国時代のソランナ二世との説がある。魔法薬について言及した記述も多く、研究資料としての価値も高い‐
ユエリは分厚い本をパラパラめくっている。
「んー?調味料探しか、、」
「まあね、、
新しい味付け探しよ」
現在、【念動】切れの彼女は操気術を使えず…だが、特に気に病まれる事も無く、至って呑気にも実用を兼ねた趣味のハーブ類の充実を図るようだ。
分厚い本を片手に、そこかしこにしゃがみ込んでは本の挿絵と、足元の雑草を見比べている。
「この葉っぱ、、
この白い花のやつよね?
でも、形がちょっと違うのよ、、」
まだ時節で無いのか、白い花は咲いてない。
「んー?さてな?
その葉っぱなら、、
こっちの絵の方だな、たぶん」
種類ごとに項が分けられていて、彼女が開いたページには似たような雑草の絵が幾つかある。
「ああ、、
これだわ、これ、、
酢に一夜漬け込んで、煙で炙ったあと、、
西日で三日の間、干すとあるわね」
どこか怪しげな記述も多い。
しかしながら、著者とされる魔術の女王ソランナ二世の用法はどういうわけか、効果の実証されたものも比較的多いらしかった。
因みに言えば、ソランナ二世はユエリが昨日扱った【天変地異】の術を行使した、史上少ない一人としても知られている。
「あー、それで、、
どんな効能があるんだ?」
「そうねえ、、
魚の脂と併せる事で、内臓の病を癒す、、
また、プセラ根と併せれば、、
若返りの秘薬の材料になる、、
、、と、あるわね」
「、、んー?魔法薬か、、」
「、、そうみたいよ?
でも、他の材料が分からないのよねえ、、
何処かに載ってないかしら、、?」
パラパラとページをめくる。
こんな調子で朝から昼前まで、雑草と分厚い本に首を巡らせながら、目星の付いた雑草を刈り取っていった。
《ニチルイン王国》の首都。
《王都ニチリア》の郊外に、やや離れた位置に城壁を兼ねた砦がある。
王都を丸ごと囲う城壁は検問所も兼ねていて、犯罪者の取り締まり、違法な密売品の精査、他国からの間諜の監視、等…。
人や物の出入りに厳しい目を光らせているはずだった。
「ちょうど七日前なのですッ
一体なぜッ、二人は黙って抜け出したのですッ
誰かッ、このソランナ五世に説明して欲しいのですッ」
まだ若い、金髪碧眼の絵に書いたような、お伽話に登場する役柄にそっくりだ。
白い豪華なドレスはもちろんの事。
肩にかかる毛先のカール具合は、期待を裏切らないほどの巻き毛だ。
その上、頭には瞳の色と同じ色の宝石が付いたティアラまでしてるのだから、誰が見ても…どう見たって、お伽話の登場人物だった。
つまるところ国王のご息女。
旧王国時代の魔術の女王の名を襲名した、お姫様その人だった。
「ッええ、分かっていますともッ
あのユエリさんッ、それにルルヒラさんッ
あの二人がいい雰囲気だった事ぐらいッ
このソランナ五世にだって十分に分かっていますともッ」
お姫様はどうやら、大変にご立腹らしい。
「でもッ、なのですッ」
一人だけ異世界に居るような格好で目の前の、軍議用の無骨な砦らしいテーブルに、掌を勢いよく叩きつけた。
「なにもッ、なにもですッ
このわたくしにッ、黙って王都を出るなどッ」
このお姫様。
ゴージャスな衣装が、それなりに迫力を引き立たせている。
「一言ッ、一言ですッ
一言あっても良かったのですッ」
バシン…と、また軍議テーブルを叩いた。
つまり、歩けば噂の付き纏うこのお姫様の近辺から、若鳥二羽が旅立ったと言う話らしかった。
どちらの若鳥も、耳にした事のある名前だ。
特に、目を付けていた若白髪の若者は、《ニチルイン王立士官候補生学術教習所》と、やたら長い名前の教習所に特別講師として呼ばれた際、目を引いたものだった。
金箔のラインが無骨な鉄色に映える、全身鎧を着た壮年が考えた事はそれだった。
「そこの禁軍長ッ、このソランナ五世に二人の動向を説明して下さいッ
いますぐですッ」
ビシッと、全身鎧が指差される。
酷い無茶振りだった。
「なるほどねぇ、、
要するに、お姫様は二人を連れ戻したいとぉ?
しかし、民間の出入りまでは、、
逐一こっちも把握してないんでねぇ、、
、、それがねぇ」
この王都の治安、防備を預かる近衛禁軍長と言えども、犯罪者や組織的な動向の怪しい者以外の、民間の出入りなどはいちいち把握して無かった。
「そこを何とかするのがッ
近衛禁軍の職分なのですッ」
断りを入れたつもりだったが、押しの強いお姫様だ。
「そうだねぇ、、
試しに指名手配でもするかねぇ?
それなら、こっちも動きようがあるんだけどねぇ、、」
もちろん、冗談の類だ。
民間の特に犯罪歴も無い…士官教習所を卒業したてのホヤホヤの、たかだか二名を指名手配する理由など何処を探しても見付からない。
もし仮に、指名手配などしようものなら、職権乱用もいいところだ。
「指名手配などッ、言語道断ですッ」
どうやら、お姫様は意見をこちらに等しくして頂けたらしく、そこは安堵した所だ。
この無茶振りで良識が欠如してるとあっては、《ニチルイン王国》の将来が危ぶまれるところだった。
「それならねぇ、、
教習長にでも、聞いてみる事だねぇ?」
むしろ、士官教習所の卒業生の動向なら、若鳥の片割れと親しいはずの教習長にでも聞くべき案件だった。
「もう聞いたのですッ
あの教習長にッ、はぐらかされたのですッ」
若鳥二名がどのように思って、このお姫様の元を去ったのかは、判断をつけかねる。
ただ、少し察しようものなら、お姫様を取り巻く環境との折り合いが悪かったとも考えられれば、単に日頃の無茶振りに辟易したとも考えられた。
特に噂話を信用するなら、若鳥の片割れの出世は将来確約されたようなものだったのだろう。
このお姫様に黙って王都を去ったとなれば別段、それほど野心的でも無いらしかった。
おそらく教習長も、そのように判断したかは察せられない事だが、似たような気分ではぐらかしたのだと思えた。
「それならねぇ、、
拙者に言える事は無いねぇ?
、、残念ながらねぇ」
王都を去ったとなれば、あの若白髪の若者の才能も王国軍から取り零されたと思ってよい。
多少、残念な気分はこの近衛禁軍長にもあった。
「そうッ、残念なのですッ
何とかッ、二人を呼び戻す画策をしなければッ
禁軍長ッ
何か分かりましたら、わたくしにッ」
そう言って、この人騒がせなお姫様は無骨な軍議テーブルの部屋を去った。
若鳥二人の前途に、やや不安を感じたものの、特にそれをお姫様に指摘する事も無い禁軍長だった。
小川が流れる、支流だった。
特に、呼ばれるような名も無い川で、フォリンズの町人からは、近くの川、と素っ気ない呼ばれ方をしている。
《ニチリア平原》を流れる、《ニチリアの沃水》と呼ばれる大河から流れる、数多くある支流の一つらしかった。
川で水を飲んでいるのは、二頭の【ニチリア紅毛】と呼ばれる馬で、ルルヒラとユエリが宿の馬小屋に預けておいたものだ。
昨日、冒険者組合からルルヒラが宿に戻った時には、ユエリは既に目を覚ましていた。
しかし、その後も簡単な食事を済ませて寝入ってしまい、起きた時間は、まだ日が昇る前の薄暗い未明の時刻だったようだ。
そして、寝起き早々のルルヒラを連れ朝の早駆け、と二頭の馬を駆らせて、近くの川、のほとりで弁当を食べるといった所だった。
「いい朝日ねえ、、
紅毛ちゃんも久々に走れて良かったわ」
くれげちゃん、とは王都を出る際、購入したばかりの二頭に対する、便宜上のあだ名のようなものだとルルヒラは考えている。
今後、二頭が名で呼ばれる事があるのかは少々、疑問だった。
「あー、しかし、、
まだ眠いんだがな、、」
言いながら、ユエリが作った弁当を口にする。
イッキツツキの卵を茹で砕いたものと、コダチリ草の茎のみじん切りを混ぜ合わせ、宿に置いてあった甘酢ドレッシングで味付けされた具材らしい。
それをパンに挟んだらしく、朝食としてはまずまずの出来だった。
次いでに言うと二人が宿泊する宿は、適当な食材が置かれていて、好きに使ってもよいセルフ式だった。
「さあて、、
これね」
そう言って、本を取り出す。
‐〈ハーブ、薬草になる四百の雑草〉
ニチリア平原に群生する雑草を挿絵付きで紹介した本。
雑草をハーブ、薬草として利用する際の要点が纏められていて、毒草を安全に利用する際の注意点等も載せられている優れもの。著者は魔術の女王として名高い、旧王国時代のソランナ二世との説がある。魔法薬について言及した記述も多く、研究資料としての価値も高い‐
ユエリは分厚い本をパラパラめくっている。
「んー?調味料探しか、、」
「まあね、、
新しい味付け探しよ」
現在、【念動】切れの彼女は操気術を使えず…だが、特に気に病まれる事も無く、至って呑気にも実用を兼ねた趣味のハーブ類の充実を図るようだ。
分厚い本を片手に、そこかしこにしゃがみ込んでは本の挿絵と、足元の雑草を見比べている。
「この葉っぱ、、
この白い花のやつよね?
でも、形がちょっと違うのよ、、」
まだ時節で無いのか、白い花は咲いてない。
「んー?さてな?
その葉っぱなら、、
こっちの絵の方だな、たぶん」
種類ごとに項が分けられていて、彼女が開いたページには似たような雑草の絵が幾つかある。
「ああ、、
これだわ、これ、、
酢に一夜漬け込んで、煙で炙ったあと、、
西日で三日の間、干すとあるわね」
どこか怪しげな記述も多い。
しかしながら、著者とされる魔術の女王ソランナ二世の用法はどういうわけか、効果の実証されたものも比較的多いらしかった。
因みに言えば、ソランナ二世はユエリが昨日扱った【天変地異】の術を行使した、史上少ない一人としても知られている。
「あー、それで、、
どんな効能があるんだ?」
「そうねえ、、
魚の脂と併せる事で、内臓の病を癒す、、
また、プセラ根と併せれば、、
若返りの秘薬の材料になる、、
、、と、あるわね」
「、、んー?魔法薬か、、」
「、、そうみたいよ?
でも、他の材料が分からないのよねえ、、
何処かに載ってないかしら、、?」
パラパラとページをめくる。
こんな調子で朝から昼前まで、雑草と分厚い本に首を巡らせながら、目星の付いた雑草を刈り取っていった。
《ニチルイン王国》の首都。
《王都ニチリア》の郊外に、やや離れた位置に城壁を兼ねた砦がある。
王都を丸ごと囲う城壁は検問所も兼ねていて、犯罪者の取り締まり、違法な密売品の精査、他国からの間諜の監視、等…。
人や物の出入りに厳しい目を光らせているはずだった。
「ちょうど七日前なのですッ
一体なぜッ、二人は黙って抜け出したのですッ
誰かッ、このソランナ五世に説明して欲しいのですッ」
まだ若い、金髪碧眼の絵に書いたような、お伽話に登場する役柄にそっくりだ。
白い豪華なドレスはもちろんの事。
肩にかかる毛先のカール具合は、期待を裏切らないほどの巻き毛だ。
その上、頭には瞳の色と同じ色の宝石が付いたティアラまでしてるのだから、誰が見ても…どう見たって、お伽話の登場人物だった。
つまるところ国王のご息女。
旧王国時代の魔術の女王の名を襲名した、お姫様その人だった。
「ッええ、分かっていますともッ
あのユエリさんッ、それにルルヒラさんッ
あの二人がいい雰囲気だった事ぐらいッ
このソランナ五世にだって十分に分かっていますともッ」
お姫様はどうやら、大変にご立腹らしい。
「でもッ、なのですッ」
一人だけ異世界に居るような格好で目の前の、軍議用の無骨な砦らしいテーブルに、掌を勢いよく叩きつけた。
「なにもッ、なにもですッ
このわたくしにッ、黙って王都を出るなどッ」
このお姫様。
ゴージャスな衣装が、それなりに迫力を引き立たせている。
「一言ッ、一言ですッ
一言あっても良かったのですッ」
バシン…と、また軍議テーブルを叩いた。
つまり、歩けば噂の付き纏うこのお姫様の近辺から、若鳥二羽が旅立ったと言う話らしかった。
どちらの若鳥も、耳にした事のある名前だ。
特に、目を付けていた若白髪の若者は、《ニチルイン王立士官候補生学術教習所》と、やたら長い名前の教習所に特別講師として呼ばれた際、目を引いたものだった。
金箔のラインが無骨な鉄色に映える、全身鎧を着た壮年が考えた事はそれだった。
「そこの禁軍長ッ、このソランナ五世に二人の動向を説明して下さいッ
いますぐですッ」
ビシッと、全身鎧が指差される。
酷い無茶振りだった。
「なるほどねぇ、、
要するに、お姫様は二人を連れ戻したいとぉ?
しかし、民間の出入りまでは、、
逐一こっちも把握してないんでねぇ、、
、、それがねぇ」
この王都の治安、防備を預かる近衛禁軍長と言えども、犯罪者や組織的な動向の怪しい者以外の、民間の出入りなどはいちいち把握して無かった。
「そこを何とかするのがッ
近衛禁軍の職分なのですッ」
断りを入れたつもりだったが、押しの強いお姫様だ。
「そうだねぇ、、
試しに指名手配でもするかねぇ?
それなら、こっちも動きようがあるんだけどねぇ、、」
もちろん、冗談の類だ。
民間の特に犯罪歴も無い…士官教習所を卒業したてのホヤホヤの、たかだか二名を指名手配する理由など何処を探しても見付からない。
もし仮に、指名手配などしようものなら、職権乱用もいいところだ。
「指名手配などッ、言語道断ですッ」
どうやら、お姫様は意見をこちらに等しくして頂けたらしく、そこは安堵した所だ。
この無茶振りで良識が欠如してるとあっては、《ニチルイン王国》の将来が危ぶまれるところだった。
「それならねぇ、、
教習長にでも、聞いてみる事だねぇ?」
むしろ、士官教習所の卒業生の動向なら、若鳥の片割れと親しいはずの教習長にでも聞くべき案件だった。
「もう聞いたのですッ
あの教習長にッ、はぐらかされたのですッ」
若鳥二名がどのように思って、このお姫様の元を去ったのかは、判断をつけかねる。
ただ、少し察しようものなら、お姫様を取り巻く環境との折り合いが悪かったとも考えられれば、単に日頃の無茶振りに辟易したとも考えられた。
特に噂話を信用するなら、若鳥の片割れの出世は将来確約されたようなものだったのだろう。
このお姫様に黙って王都を去ったとなれば別段、それほど野心的でも無いらしかった。
おそらく教習長も、そのように判断したかは察せられない事だが、似たような気分ではぐらかしたのだと思えた。
「それならねぇ、、
拙者に言える事は無いねぇ?
、、残念ながらねぇ」
王都を去ったとなれば、あの若白髪の若者の才能も王国軍から取り零されたと思ってよい。
多少、残念な気分はこの近衛禁軍長にもあった。
「そうッ、残念なのですッ
何とかッ、二人を呼び戻す画策をしなければッ
禁軍長ッ
何か分かりましたら、わたくしにッ」
そう言って、この人騒がせなお姫様は無骨な軍議テーブルの部屋を去った。
若鳥二人の前途に、やや不安を感じたものの、特にそれをお姫様に指摘する事も無い禁軍長だった。
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