せかぐるっ

天ぷら盛り

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第1幕~林の町にて、、先行く二人、雨揺らぎ騒林追うは一人と、また一人

お、おいッ!や、やんのかよッ!このハゲ極道めッ!

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 コダチリ草の回収を終え、組合支給の大袋が四つ。
 受けた依頼の内の一つ、〈コダチリ草集め〉はまだ早い時間帯にも関わらず、早くも終了の運びとなった。
「んー、しかしな
動きにくいな、、」
 大袋の紐を三つ、肩にかけ歩くルルヒラは言う。
 大袋の内、一つを持つのはサクイヤ。
 まだ中身の少ない、キノコ、兎の入った袋を持つのはユエリだ。
 他に、それぞれ荷袋などに必要なものを持ち、一行の積載量は早くも過重と化している。
「そうですね…周る順番がまずかったようで…
帰りがけの方が良かったですか…」
「あー、確かにな、、」
 やはり、切り過ぎたのがいけなかったらしい。
 サクイヤの当初の見積もりでは、大袋に二つほど詰めていく予定だったようだ。
「そうねえ、、
一度、町に戻るのも、ありかしら?」
 この《ニチリア、西の深木林》から、《林のフォリンズ》までは、さほど距離が無い。
「ですね…そうしますか」
 ダンジョンマップに記された慣らされた道へと戻り、入り口に差し掛かった時だ。
「あ、冒険者だ
ヤバいよ、、」
「えっ、ぼうけんしゃっ?うそっ?!」
 子供が三人。
 男の子が二人に女の子が一人だ。
「何だよッ!まだ、入ったばっかだろッ、この野郎ッ!」
 背の高い、つり目の方の男の子が、小枝を投げかけてきた。
 向かう先はユエリの足元だ。
「ちょっと、、
危ないわね…」
 コントロールがいいのか、意外と正確な狙いだ。
「あっちの白髪
強そう、ヤバい、、」
「ラキくん、にげよっ?!」
 小さい方の男の子と女の子が、ラキくん…と、呼ばれた背の高い男の子の裾を掴んでいる。
「くそッ!俺なら、あんな奴らッ!くそッ!」
 今度は石を投げ込んできた。
 けっこうな速さで迫る石を、身を屈めかわしたルルヒラだ。
「んー、あれだな?
依頼の、、」
 どうやら、子供達は分が悪いと判断したのか、撤退するつもりらしい。
 森の奥へ駆け込もうかという所だ。
「ですね…追います」
 ドサッ…と、大袋を足元へ落とし、サクイヤは駆けた。
 脚部が一瞬、揺らいだ事から【身体強化】を使ったのは明白だ。
 サクイヤの落とした大袋を拾い、二人も後に続く。
「あ、ヤバいよ
あのお姉ちゃん、、」
「はやいよ!?ちょっと、はやすぎるよっ!?」
 はやすぎると、女の子に評される通り、サクイヤ嬢はみるみる内に距離を詰めていく。
「ふざけやがってッ!くそ女めッ!この野郎ッ!」
 つり目の男の子は駆けながら一瞬振り返り、またもや小枝を拾いあげ、投げる。
 狙いはやはり正確で、片刃斧で防がなければ顔面に命中してる所だった。
 それを追う、ユエリは杖を構える。
「はあ、前方不注意に気をつけてねえ、、?」
 駆ける子供達の目前で、地面が盛り上がった。
 一瞬で出来た小山に勢いよく突っ伏したのは、小さい方の男の子と女の子。
【土操術】だ。
「あぐ、、
っタイよ、ヤバい」
「ううっ、うそっ!?なにっ!?」
 転んだ男の子と女の子を横目に、背の高い男の子は立ち止まって振り返る。
 手には、短剣が握られていた。
「操気術者かッ、くそッ!舐めやがってッ!」
 つり目を怒らせ喚く男の子は、追いついたサクイヤと対峙している。
「さて…逃げないんですか?」
「何で俺が逃げんだよッ!くそ女めッ!」
 短剣を片手に、小石を投げてきた。
 至近距離から放った小石はしかし、斧で弾かれたが…短剣を向け突進してくる。
「もう…危ないですよ、本当に、、」
 半身を引き、短剣をかわす。
 勢いよく、前のめりになった男の子の足を払い、腕を掴んで背に膝をつけたまま、押し倒した。
「これは…没収ですね」
 言って、短剣を奪うサクイヤに罵声を飛ばす男の子だ。
「ふざけんなよッ!くそッ、返せッ!この、、」
 もう一方の男の子、女の子もルルヒラ、ユエリに捕まっている。
 こちらは比較的、大人しい。
「ラキ君、、
どうしよう、ヤバい」
「ええっ、きょうはおわりっ?なんで?!」
 女の子が少々、やかましいが暴れ出すほどではない。
「さあて、、
一旦帰りましょうよ?
ああ、これ以上暴れたら燃やすからね?」
 背後のドクロから、火を吹かせ軽く脅しておくのは、ユエリがやはり、孤児院育ちで子供の扱いに馴れているせいだろうか?
 浮くドクロに不気味さを感じたのか、つり目の男の子も大人しくなった。
「それで…ラキタ君、、
で…間違いないですよね?」
 子供三人を連れ歩き、入り口へと向かう。
「まー、合ってるだろうな
ちょうど、三人いるしな?」
 依頼で受けた〈ラキタ及び、他二名の捕捉〉の、ラキタで間違いなさそうだった。
 他に、子供が森をうろついているとも思えない。
 当のラキタ少年は脅しが効いたのかどうか、押し黙っている。
「ねえっ?!ラキくん、おねえちゃんたちよんでるっ!」
「あ、名前出すの
ヤバいよ、、」
 今更だった。



 冒険者組合の建物で丸テーブルを前に、ラキタ少年グループと、ユエリ、サクイヤは座っている。
 ルルヒラはひとまず、〈コダチリ草集め〉〈ラキタ及び、他二名の捕捉〉の報告を済ませに、受付前だ。
「それでねえ、、
何してたのよ?あなた達は、、
冒険者ごっこかしら?」
「ごっこじゃねえよッ!このドクロ女めッ!」
 既に脅しの効果が切れたのか、罵倒のオマケ付きだった。
 ラキタ少年に続き、男の子と女の子も続く。
「お金、ヤバいよ
院長が言ってた、、」
「キノコっ!キノコとってみんなでたべるのっ!」
 経営が苦しいのは、孤児院で万国共通する悩みの種らしい。
 次いでに言うなら、ユエリ、ルルヒラの故郷での身寄りの無い子供達が多い事も、隣国の侵攻の煽りを受けたせいで、どうもそれに起因すると思われた。
 この三人の子供達も戦災孤児というやつだろうか?
「なるほど…それで、、
あ…ルルヒラさん、終わりました?
、、それと、お父さんはまた冷やかしですか…」
 報告を済ませたルルヒラが席につき、何故か…隣にカガシンも居る。
「あー、で、、
どうして、カガシンがここに居るんだ?」
 髭面スキンヘッドの強面を見やり言う。
「あァ、そいつァな?
組合長代理、ってェ奴だァな」
【フォリンズの種火】の工房長にして、冒険者組合の組合長代理と、何かと肩書きが多い。
「まァ、ガキィ共の世話ァな
おらァに任せてェおけやァ、、
こっからァは大人の仕事なんだァぜェ?」
 ラキタ少年の頭をポンポンと叩く。
「おいッ!何だよッ!このハゲ親父ッ!」
「ヤバいよ、、
極道だよ、絶対」
「こわいひとっ?!ねえっ、こわいひと?!」
 極道などと評されるカガシンと、人相の悪さに怯える子供達をあとにして、組合を出るのだった。
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