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第1幕~林の町にて、、先行く二人、雨揺らぎ騒林追うは一人と、また一人
お値段聞くのが、恐ろしいわ、、きっと、お高いんでしょうよ、、
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この【林のフォリンズ】の町で一番の鍛冶工房…どころか、この【ニチルイン王国】でも有数の職人を輩出してきたのが、この【フォリンズの種火】らしかった。
職人達は【ニチルイン王国】の各地へ修行に出、修行先で店舗を開いては、町の技術力の躍進の一助となり、国内の技術の水準を一段二段上げたという。
そんな職人を輩出してきた背景には、ちょっとした秘密があるらしい。
「そいつァな、こォれよ」
言って、カガシンは火釜から火箸で木炭を挟み、取り出した。
【クアッキ・ブナ】と呼ばれる丈夫な木で、木炭にすると高温でよく燃えるとの事だった。
「ふうん、それで、、
トントン、カンカンやってるわけね
期待して良さそう?」
「んー、だな
【フォリンズの種火】は確か、、
軍の発注も請け負ってるんだったな?」
「へェ、、
兄ィちゃん、詳しィねェ?」
鼻の高そうな強面だ。
「そうですね…頭の方はちょっとあれなんですが、、
腕は保証しますよ?」
娘の後押しで、ますます小鼻を膨らませるカガシンだ。
「あァ、おらァの腕ェにかからァな?
剣でも鎧でも、ちィとした攻城兵器だってェ作れるんだぜェ?」
「それでそれで…国一番の腕前とか、、
そう、のたまうわけなんです
…おかしいんですよ
あんまり間に受けないで下さいね?お二人とも…」
サクイヤの父評は辛口だった。
「ふうん、なるほどねえ、、
で、店はどこよ?」
「あ…案内しますよ
付いてきて下さい」
そう言い、二人を手招いた。
どうやら、カガシンは仕事の続きでもするらしく、残るとの事だ。
この工房、かなり広い。
外から見えた一帯は、この【フォリンズの種火】の敷地で、裏手の通路で繋がっている。
通路を曲がり、並ぶドアの一つを開けると質の良さそうな品が幾つも並ぶ、店内だった。
脇に目を向ければカウンターに店員が居て、どうやら裏手口から入ったようだ。
「どうぞ…いい品揃えてますよ
お二人は、どんな品を探してるので?」
小慣れているのは、おそらく幼少より店舗を知り尽くしているせいだろう。
「そうねえ、、
ローブドレス、杖、それから、、
この帽子に似たやつね
全体的に魔女っぽく」
「やはり…ユエリさんは外気法を?」
彼女の格好を見れば、これ以上分かり易いものもない。
全身で【外気法】を使います…と、宣言しているようなものだった。
「そうよ、、
分かり易いでしょう?」
「…ですね
それで、ルルヒラさんは?」
「んー、俺か、、
そうだな、ひとまず剣、、
動きを阻害しない程度の鎧に、だな
あとは、蒸れにくい衣類も欲しいところだな
これぐらいか?たぶん」
運動性を重視するのは、前衛を自認する者の性と言ってよい。
かと言って、あまりにも軽装にこだわると怪我を負うのは自明で、要はバランスが肝要だ。
「でしたら…そうですね
順に回ってみますか」
サクイヤの案内に従う。
衣類の区間は男性用、女性用とで分けられている。
「んー、チェインメイルか」
「ですね…蒸れにくさにこだわったものもありますよ
ここにあるのは、下着用です
着心地のいい肌触りのいいもの、、
なんて…どうですか?」
「ふうん、なるほど、、
裏地は【ニチリア・ウール】ね
、、でも、蒸れそうよ?」
【ニチリア・ウール】は保温、強度、肌触りの面では優れるが、蒸れにくさの点では一段落ちる。
「では…裏地はベナンドアン産の【ベナンド・リネン】なんて、いいかもしれませんね?」
「んー、初めて聞くな」
「あ…そうですか?
小国ですよ
植物から取れるとの事で…
これですね」
言って、吊るされていたチェインメイルの一つを、手に取る。
裏地は少し粗いが、丈夫で長く使えそうだった。
「んー、そう言えば、、
値段の方はどうなんだ?」
「ふふ…安くしておきますよ
次、行きますか」
サクイヤの案内で、次は…何やら、オドロオドロしい区間へと入る。
「見て下さい…ふふ
特設の魔女コーナーですよ」
「へえ、、
なかなか、やるわね【フォリンズの種火】…」
感心したのか、嬉しそうなユエリだ。
ローブ類に、杖、空の薬瓶、とんがり帽子から、なにやら怪しげな宝石、マントに壺、水晶など多彩な品揃えだった。
「そうなんです…外気法を利用する品なんて、どうです?
例えば、これ…」
ドクロを模した、模型だ。
「さ…後頭部の所に穴がありますよね?
気を流し込んでみて下さい
あ…軽くでいいですからね?」
「ううん?こう、、
かしら?」
途端、ドクロの両目の窪みが光り、火を吹いた。
そのまま、軽く宙を浮き上がったから驚く。
「なるほどねえ、、
魔銀で出来てるわけね
気応石もかしら?ふうん、、」
クイッと、指を動かすとそれに合わせて、ドクロも向きを変える。
「ね…驚きですよね?
アーティファクトを参考に、父が作ったんです
これは試作品ですけどね」
「むー、魔銀か、、
無理だな」
金貨より、更に価値があるとされる貨幣の一つが魔銀貨だ。
そんな魔銀を使ったドクロなど、手が届くとも思えない。
「魔銀ねえ、、
もしかして、このドクロ全部がそうなのかしら?」
浮かせたドクロをキャッチし、手に取り眺める。
「いえ…ごく少量だそうで…
鋳造の際、少しだけ流し込むんです」
【魔銀】を特定の材質と合わせたものは【ミスリル】とも呼ばれ、【プラーナ操気術】で気を通しやすく、変わった品を作る職人が時折、居る。
【魔銀】を扱った装備を身に付ける冒険者が居れば、大体は一流と見做しても良い。
ユエリはドクロを元の棚へ戻した。
「手が届きそうにないわ、、」
「あ…そうですか?
いえいえ、遠慮なさらずに…」
そう言って、サクイヤは戻されたドクロを、再び手に取り向かう先は、ローブ類の棚だ。
「いいのかしら、、?」
「あー、いや、、
高く付きそうだな、なんとなく、、」
足取りの軽いサクイヤと違って、どうにも気が重くなってきた二人だ。
「ふふ…そうですね
組合の依頼で、いつか、、
わたしからの依頼を、無料で請け負って貰うのはどうですか?」
ローブを触り確かめながら、言った。
「無料ねえ、、
どんな依頼?」
ユエリも、ローブに手をかけ、あれこれ覗いている。
ルルヒラは背後で、棚のローブ類を眺め見やっている所だ。
「いえ…特に決めてませんね
いつか、、ですよ?」
「いつかねえ、、
まあ、いいわ、、
ああ、丈の長いやつね、この辺りかしら?」
「…今着てるようなのですよね?」
「そうそう、足元のシュッとしたやつね」
彼女曰く、全体的にボサッとしたローブは微妙なんだとか…。
スッキリしたデザインの、袖口、膝下が大きく広がらないものが好みらしい。
「そうですね…それなら、、
この肩口の開いたものなんて、、
いいと思いませんか?」
「ああ、いいわね、それ
でも、こっちと悩むわ、、」
ユエリが手に取っているのは今、彼女が着ている足元から切れ目の入った、スリット入りのローブドレスと似たものだった。
「なるほど…スリット入りですか、、
それなら、こちらのものを仕立て直すのもありですね」
「え、いいのかしら?」
「はい…構いませんよ?」
そんなこんなで、次は帽子の棚だ。
「んー、先の尖った帽子か
ツバ付きだったな?」
「そうそう、ツバ付きね
でも、帽子は今度にするわ」
「…そうですか?
見た所、新調仕立てに見えますね?」
「王都で買ったのよねえ、、
この帽子、、
さて、次ね」
「んー、あとは鎧と剣か」
向かったのは鎧の区間だ。
中央に全身鎧が立て掛けられていて、鎧の各部位ごとに棚が設けてあった。
手足を覆うガントレット、グリーヴ、腰に巻くタセット、胴を守るアーマーから、肩に掛かるポールドロン、頭にかぶるヘルム等…。
彼、ルルヒラが身に付けているものは簡素なもので、手足にガントレット、グリーヴの他、胴にアーマーぐらいの、在学生時代の支給品をそのまま流用しているだけだった。
「…ルルヒラさんは
盾は使わないんですか?」
彼の長く使っていたらしい、へこみの目立つガントレットを見て言う。
「あー、そうだな、盾か、、
いや、視界を閉ざすのはちょっとな?」
戦闘中、視界が盾で隠れたを機に防戦一方となり、反撃の芽を掴めぬまま、敗北を喫した事がある。
「教官相手だったわね
ひよっこ時代の汚点、、
ってやつかしら?」
「なるほど…負けたんですね
ルルヒラさん?」
女二人は、弱みを見付けたのが可笑しそうに笑っている。
「あー、いや、、
さっさと見てくか、、
今回は籠手だけでいいな」
都合の悪い話なのか、ガントレットが並ぶ棚へ早足のルルヒラだ。
「ああ、逃げたわ
追っかけましょう」
そうして、安価な鉄を使ったものの棚へ向かった三人だ。
ルルヒラは既に、幾つかを手に取り眺めては試着し、重さを確かめているのか、軽く腕を動かしている。
「んー、まずは、、
指先まで覆うものは、、
、、駄目か、やはり」
指を軽く動かしてみて、具合が悪かったのか、指の付け根までを覆った品の棚へと歩を進める。
「では…このあたりですね
重さはどれぐらいで?」
「んー、多少はあった方がいいな」
あまり軽過ぎても、剣速、打ち込みの重さのバランスに支障が出る。
一つ一つ確かめつつ目処が付いたのか、肘先まで覆うものと、指の付け根部分にスパイクが付いたものを前に、しばらく硬直していた。
「なるほど…体技を重視するか、、
それとも守りを重視するかですね」
スパイク付きの方は殴打の際の衝撃に補強があり、肘先まで覆うものは当然、守りに適している。
「んー、こっちの方が無難か、、」
そう言って、指の付け根から肘先まで覆うガントレットを持つ。
「決まったわね
次は剣よね」
「では…一度、店を出ますか」
店のカウンターへと戻り、サクイヤは店員にローブドレスにスリットを入れるよう指示を出していた。
その後、カウンター脇の裏手口を回り、武器の店舗へ向かうらしかった。
職人達は【ニチルイン王国】の各地へ修行に出、修行先で店舗を開いては、町の技術力の躍進の一助となり、国内の技術の水準を一段二段上げたという。
そんな職人を輩出してきた背景には、ちょっとした秘密があるらしい。
「そいつァな、こォれよ」
言って、カガシンは火釜から火箸で木炭を挟み、取り出した。
【クアッキ・ブナ】と呼ばれる丈夫な木で、木炭にすると高温でよく燃えるとの事だった。
「ふうん、それで、、
トントン、カンカンやってるわけね
期待して良さそう?」
「んー、だな
【フォリンズの種火】は確か、、
軍の発注も請け負ってるんだったな?」
「へェ、、
兄ィちゃん、詳しィねェ?」
鼻の高そうな強面だ。
「そうですね…頭の方はちょっとあれなんですが、、
腕は保証しますよ?」
娘の後押しで、ますます小鼻を膨らませるカガシンだ。
「あァ、おらァの腕ェにかからァな?
剣でも鎧でも、ちィとした攻城兵器だってェ作れるんだぜェ?」
「それでそれで…国一番の腕前とか、、
そう、のたまうわけなんです
…おかしいんですよ
あんまり間に受けないで下さいね?お二人とも…」
サクイヤの父評は辛口だった。
「ふうん、なるほどねえ、、
で、店はどこよ?」
「あ…案内しますよ
付いてきて下さい」
そう言い、二人を手招いた。
どうやら、カガシンは仕事の続きでもするらしく、残るとの事だ。
この工房、かなり広い。
外から見えた一帯は、この【フォリンズの種火】の敷地で、裏手の通路で繋がっている。
通路を曲がり、並ぶドアの一つを開けると質の良さそうな品が幾つも並ぶ、店内だった。
脇に目を向ければカウンターに店員が居て、どうやら裏手口から入ったようだ。
「どうぞ…いい品揃えてますよ
お二人は、どんな品を探してるので?」
小慣れているのは、おそらく幼少より店舗を知り尽くしているせいだろう。
「そうねえ、、
ローブドレス、杖、それから、、
この帽子に似たやつね
全体的に魔女っぽく」
「やはり…ユエリさんは外気法を?」
彼女の格好を見れば、これ以上分かり易いものもない。
全身で【外気法】を使います…と、宣言しているようなものだった。
「そうよ、、
分かり易いでしょう?」
「…ですね
それで、ルルヒラさんは?」
「んー、俺か、、
そうだな、ひとまず剣、、
動きを阻害しない程度の鎧に、だな
あとは、蒸れにくい衣類も欲しいところだな
これぐらいか?たぶん」
運動性を重視するのは、前衛を自認する者の性と言ってよい。
かと言って、あまりにも軽装にこだわると怪我を負うのは自明で、要はバランスが肝要だ。
「でしたら…そうですね
順に回ってみますか」
サクイヤの案内に従う。
衣類の区間は男性用、女性用とで分けられている。
「んー、チェインメイルか」
「ですね…蒸れにくさにこだわったものもありますよ
ここにあるのは、下着用です
着心地のいい肌触りのいいもの、、
なんて…どうですか?」
「ふうん、なるほど、、
裏地は【ニチリア・ウール】ね
、、でも、蒸れそうよ?」
【ニチリア・ウール】は保温、強度、肌触りの面では優れるが、蒸れにくさの点では一段落ちる。
「では…裏地はベナンドアン産の【ベナンド・リネン】なんて、いいかもしれませんね?」
「んー、初めて聞くな」
「あ…そうですか?
小国ですよ
植物から取れるとの事で…
これですね」
言って、吊るされていたチェインメイルの一つを、手に取る。
裏地は少し粗いが、丈夫で長く使えそうだった。
「んー、そう言えば、、
値段の方はどうなんだ?」
「ふふ…安くしておきますよ
次、行きますか」
サクイヤの案内で、次は…何やら、オドロオドロしい区間へと入る。
「見て下さい…ふふ
特設の魔女コーナーですよ」
「へえ、、
なかなか、やるわね【フォリンズの種火】…」
感心したのか、嬉しそうなユエリだ。
ローブ類に、杖、空の薬瓶、とんがり帽子から、なにやら怪しげな宝石、マントに壺、水晶など多彩な品揃えだった。
「そうなんです…外気法を利用する品なんて、どうです?
例えば、これ…」
ドクロを模した、模型だ。
「さ…後頭部の所に穴がありますよね?
気を流し込んでみて下さい
あ…軽くでいいですからね?」
「ううん?こう、、
かしら?」
途端、ドクロの両目の窪みが光り、火を吹いた。
そのまま、軽く宙を浮き上がったから驚く。
「なるほどねえ、、
魔銀で出来てるわけね
気応石もかしら?ふうん、、」
クイッと、指を動かすとそれに合わせて、ドクロも向きを変える。
「ね…驚きですよね?
アーティファクトを参考に、父が作ったんです
これは試作品ですけどね」
「むー、魔銀か、、
無理だな」
金貨より、更に価値があるとされる貨幣の一つが魔銀貨だ。
そんな魔銀を使ったドクロなど、手が届くとも思えない。
「魔銀ねえ、、
もしかして、このドクロ全部がそうなのかしら?」
浮かせたドクロをキャッチし、手に取り眺める。
「いえ…ごく少量だそうで…
鋳造の際、少しだけ流し込むんです」
【魔銀】を特定の材質と合わせたものは【ミスリル】とも呼ばれ、【プラーナ操気術】で気を通しやすく、変わった品を作る職人が時折、居る。
【魔銀】を扱った装備を身に付ける冒険者が居れば、大体は一流と見做しても良い。
ユエリはドクロを元の棚へ戻した。
「手が届きそうにないわ、、」
「あ…そうですか?
いえいえ、遠慮なさらずに…」
そう言って、サクイヤは戻されたドクロを、再び手に取り向かう先は、ローブ類の棚だ。
「いいのかしら、、?」
「あー、いや、、
高く付きそうだな、なんとなく、、」
足取りの軽いサクイヤと違って、どうにも気が重くなってきた二人だ。
「ふふ…そうですね
組合の依頼で、いつか、、
わたしからの依頼を、無料で請け負って貰うのはどうですか?」
ローブを触り確かめながら、言った。
「無料ねえ、、
どんな依頼?」
ユエリも、ローブに手をかけ、あれこれ覗いている。
ルルヒラは背後で、棚のローブ類を眺め見やっている所だ。
「いえ…特に決めてませんね
いつか、、ですよ?」
「いつかねえ、、
まあ、いいわ、、
ああ、丈の長いやつね、この辺りかしら?」
「…今着てるようなのですよね?」
「そうそう、足元のシュッとしたやつね」
彼女曰く、全体的にボサッとしたローブは微妙なんだとか…。
スッキリしたデザインの、袖口、膝下が大きく広がらないものが好みらしい。
「そうですね…それなら、、
この肩口の開いたものなんて、、
いいと思いませんか?」
「ああ、いいわね、それ
でも、こっちと悩むわ、、」
ユエリが手に取っているのは今、彼女が着ている足元から切れ目の入った、スリット入りのローブドレスと似たものだった。
「なるほど…スリット入りですか、、
それなら、こちらのものを仕立て直すのもありですね」
「え、いいのかしら?」
「はい…構いませんよ?」
そんなこんなで、次は帽子の棚だ。
「んー、先の尖った帽子か
ツバ付きだったな?」
「そうそう、ツバ付きね
でも、帽子は今度にするわ」
「…そうですか?
見た所、新調仕立てに見えますね?」
「王都で買ったのよねえ、、
この帽子、、
さて、次ね」
「んー、あとは鎧と剣か」
向かったのは鎧の区間だ。
中央に全身鎧が立て掛けられていて、鎧の各部位ごとに棚が設けてあった。
手足を覆うガントレット、グリーヴ、腰に巻くタセット、胴を守るアーマーから、肩に掛かるポールドロン、頭にかぶるヘルム等…。
彼、ルルヒラが身に付けているものは簡素なもので、手足にガントレット、グリーヴの他、胴にアーマーぐらいの、在学生時代の支給品をそのまま流用しているだけだった。
「…ルルヒラさんは
盾は使わないんですか?」
彼の長く使っていたらしい、へこみの目立つガントレットを見て言う。
「あー、そうだな、盾か、、
いや、視界を閉ざすのはちょっとな?」
戦闘中、視界が盾で隠れたを機に防戦一方となり、反撃の芽を掴めぬまま、敗北を喫した事がある。
「教官相手だったわね
ひよっこ時代の汚点、、
ってやつかしら?」
「なるほど…負けたんですね
ルルヒラさん?」
女二人は、弱みを見付けたのが可笑しそうに笑っている。
「あー、いや、、
さっさと見てくか、、
今回は籠手だけでいいな」
都合の悪い話なのか、ガントレットが並ぶ棚へ早足のルルヒラだ。
「ああ、逃げたわ
追っかけましょう」
そうして、安価な鉄を使ったものの棚へ向かった三人だ。
ルルヒラは既に、幾つかを手に取り眺めては試着し、重さを確かめているのか、軽く腕を動かしている。
「んー、まずは、、
指先まで覆うものは、、
、、駄目か、やはり」
指を軽く動かしてみて、具合が悪かったのか、指の付け根までを覆った品の棚へと歩を進める。
「では…このあたりですね
重さはどれぐらいで?」
「んー、多少はあった方がいいな」
あまり軽過ぎても、剣速、打ち込みの重さのバランスに支障が出る。
一つ一つ確かめつつ目処が付いたのか、肘先まで覆うものと、指の付け根部分にスパイクが付いたものを前に、しばらく硬直していた。
「なるほど…体技を重視するか、、
それとも守りを重視するかですね」
スパイク付きの方は殴打の際の衝撃に補強があり、肘先まで覆うものは当然、守りに適している。
「んー、こっちの方が無難か、、」
そう言って、指の付け根から肘先まで覆うガントレットを持つ。
「決まったわね
次は剣よね」
「では…一度、店を出ますか」
店のカウンターへと戻り、サクイヤは店員にローブドレスにスリットを入れるよう指示を出していた。
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