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第1幕~林の町にて、、先行く二人、雨揺らぎ騒林追うは一人と、また一人
あのお二人…いい新人さんです、、組合長、そう思いますよね?
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腹も膨れれば、人間誰しも眠気の一つ二つには抗い難くなるもので…。
彼、ルルヒラの動きは集中をやや、欠いている。
今も、【ダブルホーン・ラビット】を一体、素通りを許してしまった所だ。
思えば、士官生時代…特に昼飯時を過ぎて午後の講習になると、明らかにやる気の無い態度が多少、悪目立ちしていたとは言える。
彼女、ユエリの目前に迫った兎。
杖を上になぞった。
飛び上がり、二本ツノを彼女に突き刺そうかという所で…突風が兎の跳躍の勢いを伸ばした格好。
【風操術】だ。
そのまま、上昇先の枝へ二本ツノが刺さり、脚をバタつかせている。
最後に杖先を兎へ向け、火球をお見舞いした。
ルルヒラが屠ったのと合わせて、今回は五体だ。
「、、あー、すまん
一匹、逃してしまったな」
「問題無いわよ、、
まだ昼なのに、もう眠くなったのかしら?」
士官生時代、彼と組む事も多かったせいか、彼の癖のようなものは大体、把握済みだ。
空腹時の彼の動きのつもりでいると、痛い目を見るかもしれない。
要は、彼のような前衛のコンディションには常に、目を光らせておく事だった。
「あー、いや、、
眠いというほどでは無いんだがな」
「まあ、しっかりしとくのよ?
まだまだ先は長いのよ、たぶん、、」
午後になると緩みがちな、彼の気を引き締める事は忘れない。
いつも通りのやり取りと言えば、いつも通りだ。
「それでねえ、、
宝箱なんだけど、あれ違う?」
片眼鏡【望遠レンズ・モノクル】に手を当て、遠くを見やった彼女は言った。
「んー?あったのか?」
蜂の群れを迂回したのが功を奏したのだろうか?
足場の悪さに多少、嫌な思いをしつつも近づいてみる。
宝箱らしきものに近づいた途端…。
空を切るような音。
カツン…と剣で弾いた先を見れば、何処から飛んできたのか、矢が数本突き立っていた。
「んー、危ないな、、
トラップか」
「、、らしいと言えば、らしいわね、、
期待して良さそう?」
確かに宝箱がある。
そうそう、見つかるものでも無いとの話だったが考えてみれば当然で、ダンジョンマップに記されている道は大抵の者が行き来する、本道のようなものだ。
多少、脇道に逸れながら探せば、案外見つかるものだとも思えた。
宝箱に手を掛け、中身を取り出す。
中身を取り出したら、役目を終えたと自認したのかどうかは分からないが、宝箱は塵のようなものに包まれ掻き消えた。
トラップの矢も同様だった。
「不思議ねえ、、
で、それは何よ?」
薬瓶と紙切れだ。
「んー、さてな、、
‐【妖精の浮遊薬】
使用者に浮力を与える粉薬。
使用する際は、小さじ一杯を飲み込む事で半日ほど、浮遊を楽しめる事を念頭に置くべし。
なお、十回分は楽しめる模様‐
、、飛ぶのか?」
「もしかして、、
あれな薬じゃないでしょうね?」
薬瓶の中には、さらさらしたピンクと白の粉末が入っているようだ。
「、、んー?試すか?」
「そうねえ、、
判断に困るわ」
「んー、そうだな
なら、しまっておくか」
小袋に薬瓶をしまう。
それを脇に見、考え込む風のユエリ。
「あんたが持ってた、この片眼鏡、、
次いで、その妙なお薬よね、、
【アーティファクト】に、たぶん【魔法薬】かしら?」
「んー、魔法薬か、、
古い言い方だな」
「魔法ねえ、、
今でいう、【プラーナ操気術】の事よね?」
「んー、そうだろうな
おそらくな、ただ、、」
「、、ただ?」
「んー、確か、、
ニチルイン王国では、プラーナ操気術と呼んでるものだが、他所の国では魔法と呼んでいる、だったか?」
「そうねえ、、
でも、魔法か、ううん…
プラーナ操気術の扱う管轄と、魔法が取り扱う管轄って同じものなのかしら?」
「んー、さてな?
プラーナ操気術は、けっこう昔の軍の偉い奴が、確か…
気を扱う事を軸に発展させたもの、だったか?」
「そうそう、、
プラヌ・パレ=ラーナ将軍ね、女将軍で有名な、、」
「あー、そんな名前だったな
で、プラーナ操気術と魔法の扱う管轄の違い、か
さて、どうだろうな?」
「そうねえ、、
魔法は話に聞く所、唱える事で魔法が発動する仕組みなのよね?たぶん、、」
「んー、さて、どうだろうな
何せ、見た事無いからな、俺は」
「私もよ、、
これ以上は考察出来そうにも無いわね
実際に見てみないと、、」
「あー、そうだな
その辺りは、軍に詳しい奴がいるかもな」
「軍ねえ、、
まあ、いいわ
さっさと次行きましょうよ」
そんな小難しい話は一旦止め、探索を再開した。
時刻は夕暮れを過ぎ、西の深木林を切り上げた。
結局、あの後は第二の宝箱にありつくような事も無く、ほどほどに魔物を倒して帰ってきたのだった。
冒険者組合の、翼がトレードマークの建物に二人は居る。
カウンター手前で、昨日の受付嬢との対面だ。
「あ…今日もですか
精が出ますね
買い取りですか?」
「あー、これだな」
そう言い、大袋をカウンター越しに渡す。
大体、似たような時間に引き上げるのか、この時間は冒険者が多い。
カウンターの後ろでは組合員がシートを広げ、その上に大袋の中身を一つ一つ、確認していくのが見える。
「今日も…大量ですか
昨日よりも多そうですね」
「今日は朝からだったのよ
それでかしらね
そうそう、これ、、
どんなものか分かる?」
言って【妖精の浮遊薬】を取り出す。
「あ…見た事ありますよ
空飛ぶお薬ですよね?
透明の羽が生えて、こう…」
受付嬢は、両手をパタパタ動かしながら言う。
「え?羽生えるの?
それじゃ、やっぱり飛べるのかしら」
「ええ…飛べます
宝箱のですか?幸先いいですね
お二人とも…」
どうやら、飛べる事ははっきりしたらしい。
いきなり試そうにも、どうにも怪しげな薬瓶を試す気にはなれなかったのだ。
「それでしたら…
こちらで買い取らせて頂いても…」
「そうねえ、、
どうしようかしら、ルルヒラ?」
「んー、飛ぶ薬か、、
どれぐらいになるんだ?」
受付嬢に聞く。
「見た所…そうですね
未使用品なので、銀貨で十枚といった所ですか」
こういう、ダンジョン産の宝箱から出た物品は、特に相場というものが決まっていない。
流通が少なく、定価というものが無いからだ。
「サバ読んだわね?」
「あ…バレてますね
それなら銀貨で十三枚です
これ以上はまけませんよ?」
昨日に引き続き、ノリの良い受付嬢だ。
「うん、銀貨十三枚ね
どう思う?」
ニチルイン王国で一月、最低限の暮らしをしようと思えば、一人あたり銀貨三枚近くはかかると思ってよい。
次いでに言えば、銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚の価値だ。
一応、それ以上の貨幣もある事はあって、白金貨や魔銀貨などがあるが、国によって相場は大きく異なるものだった。
通常は、銅貨、銀貨、金貨で市場は動いているものだ。
それ以上の貨幣は、国家間や貴族のやり取りで扱われ、庶民にはそれほど縁はない。
「んー、銀貨十三、か、、
悪くはないな」
「そうよねえ、、
決めたわ、売る」
気合いを込めて、【妖精の浮遊薬】と紙切れをカウンターの上に置いた。
「では…買い取らせて頂きます」
何処かニンマリと笑みを浮かべる受付嬢は、相手を見てやはり、吹っかけたのかと疑わしく思える。
相手の所得、身の上を計算に置いた、ギリギリの見通しの為せる、プロの深謀であるかもしれなかった。
ちょうど、魔物の清算も終わったようで。
「それでは…魔物の方と合わせて、、
銀貨十四枚、銅貨二十五枚ですね」
ホクホク顔の受付嬢に手を振り、組合の建物を出たのだった。
彼、ルルヒラの動きは集中をやや、欠いている。
今も、【ダブルホーン・ラビット】を一体、素通りを許してしまった所だ。
思えば、士官生時代…特に昼飯時を過ぎて午後の講習になると、明らかにやる気の無い態度が多少、悪目立ちしていたとは言える。
彼女、ユエリの目前に迫った兎。
杖を上になぞった。
飛び上がり、二本ツノを彼女に突き刺そうかという所で…突風が兎の跳躍の勢いを伸ばした格好。
【風操術】だ。
そのまま、上昇先の枝へ二本ツノが刺さり、脚をバタつかせている。
最後に杖先を兎へ向け、火球をお見舞いした。
ルルヒラが屠ったのと合わせて、今回は五体だ。
「、、あー、すまん
一匹、逃してしまったな」
「問題無いわよ、、
まだ昼なのに、もう眠くなったのかしら?」
士官生時代、彼と組む事も多かったせいか、彼の癖のようなものは大体、把握済みだ。
空腹時の彼の動きのつもりでいると、痛い目を見るかもしれない。
要は、彼のような前衛のコンディションには常に、目を光らせておく事だった。
「あー、いや、、
眠いというほどでは無いんだがな」
「まあ、しっかりしとくのよ?
まだまだ先は長いのよ、たぶん、、」
午後になると緩みがちな、彼の気を引き締める事は忘れない。
いつも通りのやり取りと言えば、いつも通りだ。
「それでねえ、、
宝箱なんだけど、あれ違う?」
片眼鏡【望遠レンズ・モノクル】に手を当て、遠くを見やった彼女は言った。
「んー?あったのか?」
蜂の群れを迂回したのが功を奏したのだろうか?
足場の悪さに多少、嫌な思いをしつつも近づいてみる。
宝箱らしきものに近づいた途端…。
空を切るような音。
カツン…と剣で弾いた先を見れば、何処から飛んできたのか、矢が数本突き立っていた。
「んー、危ないな、、
トラップか」
「、、らしいと言えば、らしいわね、、
期待して良さそう?」
確かに宝箱がある。
そうそう、見つかるものでも無いとの話だったが考えてみれば当然で、ダンジョンマップに記されている道は大抵の者が行き来する、本道のようなものだ。
多少、脇道に逸れながら探せば、案外見つかるものだとも思えた。
宝箱に手を掛け、中身を取り出す。
中身を取り出したら、役目を終えたと自認したのかどうかは分からないが、宝箱は塵のようなものに包まれ掻き消えた。
トラップの矢も同様だった。
「不思議ねえ、、
で、それは何よ?」
薬瓶と紙切れだ。
「んー、さてな、、
‐【妖精の浮遊薬】
使用者に浮力を与える粉薬。
使用する際は、小さじ一杯を飲み込む事で半日ほど、浮遊を楽しめる事を念頭に置くべし。
なお、十回分は楽しめる模様‐
、、飛ぶのか?」
「もしかして、、
あれな薬じゃないでしょうね?」
薬瓶の中には、さらさらしたピンクと白の粉末が入っているようだ。
「、、んー?試すか?」
「そうねえ、、
判断に困るわ」
「んー、そうだな
なら、しまっておくか」
小袋に薬瓶をしまう。
それを脇に見、考え込む風のユエリ。
「あんたが持ってた、この片眼鏡、、
次いで、その妙なお薬よね、、
【アーティファクト】に、たぶん【魔法薬】かしら?」
「んー、魔法薬か、、
古い言い方だな」
「魔法ねえ、、
今でいう、【プラーナ操気術】の事よね?」
「んー、そうだろうな
おそらくな、ただ、、」
「、、ただ?」
「んー、確か、、
ニチルイン王国では、プラーナ操気術と呼んでるものだが、他所の国では魔法と呼んでいる、だったか?」
「そうねえ、、
でも、魔法か、ううん…
プラーナ操気術の扱う管轄と、魔法が取り扱う管轄って同じものなのかしら?」
「んー、さてな?
プラーナ操気術は、けっこう昔の軍の偉い奴が、確か…
気を扱う事を軸に発展させたもの、だったか?」
「そうそう、、
プラヌ・パレ=ラーナ将軍ね、女将軍で有名な、、」
「あー、そんな名前だったな
で、プラーナ操気術と魔法の扱う管轄の違い、か
さて、どうだろうな?」
「そうねえ、、
魔法は話に聞く所、唱える事で魔法が発動する仕組みなのよね?たぶん、、」
「んー、さて、どうだろうな
何せ、見た事無いからな、俺は」
「私もよ、、
これ以上は考察出来そうにも無いわね
実際に見てみないと、、」
「あー、そうだな
その辺りは、軍に詳しい奴がいるかもな」
「軍ねえ、、
まあ、いいわ
さっさと次行きましょうよ」
そんな小難しい話は一旦止め、探索を再開した。
時刻は夕暮れを過ぎ、西の深木林を切り上げた。
結局、あの後は第二の宝箱にありつくような事も無く、ほどほどに魔物を倒して帰ってきたのだった。
冒険者組合の、翼がトレードマークの建物に二人は居る。
カウンター手前で、昨日の受付嬢との対面だ。
「あ…今日もですか
精が出ますね
買い取りですか?」
「あー、これだな」
そう言い、大袋をカウンター越しに渡す。
大体、似たような時間に引き上げるのか、この時間は冒険者が多い。
カウンターの後ろでは組合員がシートを広げ、その上に大袋の中身を一つ一つ、確認していくのが見える。
「今日も…大量ですか
昨日よりも多そうですね」
「今日は朝からだったのよ
それでかしらね
そうそう、これ、、
どんなものか分かる?」
言って【妖精の浮遊薬】を取り出す。
「あ…見た事ありますよ
空飛ぶお薬ですよね?
透明の羽が生えて、こう…」
受付嬢は、両手をパタパタ動かしながら言う。
「え?羽生えるの?
それじゃ、やっぱり飛べるのかしら」
「ええ…飛べます
宝箱のですか?幸先いいですね
お二人とも…」
どうやら、飛べる事ははっきりしたらしい。
いきなり試そうにも、どうにも怪しげな薬瓶を試す気にはなれなかったのだ。
「それでしたら…
こちらで買い取らせて頂いても…」
「そうねえ、、
どうしようかしら、ルルヒラ?」
「んー、飛ぶ薬か、、
どれぐらいになるんだ?」
受付嬢に聞く。
「見た所…そうですね
未使用品なので、銀貨で十枚といった所ですか」
こういう、ダンジョン産の宝箱から出た物品は、特に相場というものが決まっていない。
流通が少なく、定価というものが無いからだ。
「サバ読んだわね?」
「あ…バレてますね
それなら銀貨で十三枚です
これ以上はまけませんよ?」
昨日に引き続き、ノリの良い受付嬢だ。
「うん、銀貨十三枚ね
どう思う?」
ニチルイン王国で一月、最低限の暮らしをしようと思えば、一人あたり銀貨三枚近くはかかると思ってよい。
次いでに言えば、銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚の価値だ。
一応、それ以上の貨幣もある事はあって、白金貨や魔銀貨などがあるが、国によって相場は大きく異なるものだった。
通常は、銅貨、銀貨、金貨で市場は動いているものだ。
それ以上の貨幣は、国家間や貴族のやり取りで扱われ、庶民にはそれほど縁はない。
「んー、銀貨十三、か、、
悪くはないな」
「そうよねえ、、
決めたわ、売る」
気合いを込めて、【妖精の浮遊薬】と紙切れをカウンターの上に置いた。
「では…買い取らせて頂きます」
何処かニンマリと笑みを浮かべる受付嬢は、相手を見てやはり、吹っかけたのかと疑わしく思える。
相手の所得、身の上を計算に置いた、ギリギリの見通しの為せる、プロの深謀であるかもしれなかった。
ちょうど、魔物の清算も終わったようで。
「それでは…魔物の方と合わせて、、
銀貨十四枚、銅貨二十五枚ですね」
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