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四章:大人になったラスと真実を知った私
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険しい獣道を無心で歩いて行く。
ラスには「考える時間が欲しい」と言ったが、頭の中はぐちゃぐちゃでまともに思考できる状態ではなかった。
『考えすぎだよ』と呆れる自分もいれば、『絶対ユーグが何かしたんだよ! こんなのおかしい!』とわめき立てる私もいる。
今はただ、本当のことが知りたかった。
ようやくユーグの家にたどり着く。
通い慣れた道なのに、今日はやけに躓いた。膝はすりむいているし、つま先がジンジン痛むが、それどころではない。
ドンドンドン。
強く玄関の扉を叩くと、いつものようにのんびりとした様子でユーグが姿を見せた。
「あれ? どうしたの、ミカ」
すぐには言葉が出なかった。
きつく唇を噛み締め、ユーグを見つめる。
彼の笑みが徐々に消えていく。
ユーグはやがて真顔になり、長いため息を吐いた。
「……ずいぶん遅かったね」
今日の訪問について言ったんじゃない。
気づくのが遅かった、とユーグは言ったのだ。
私は何故か確信していた。
胸の奥でくすぶっていた絶望が、一瞬のうちに心を覆い尽くしていく。
信じたくない、と思ってたんだよ。
あなたがこんな事をするなんて。
だって、ユーグはずっと私に親切で、ずっと私の味方をしてくれた。
まるで手に取るように、私の気持ちを理解してくれた。
私が最も恐れているものを、彼は知っていると思っていた。
「――……私の時を止めたの?」
やけに静かな声が出た。
全く言葉の足りない問いかけだったが、ユーグは無言で小さく頷いた。
「私だけが、また皆に、置いていかれる、ということ?」
腹から突き上げてきた激情のせいで、唇がぶるぶる震える。
ひと言ひと言を、血を吐くように口にした。
修学旅行のお土産を選ぶのには、とても時間がかかった。
ああでもない、こうでもない、と沢山のお店を見て回った。
結局、お父さんには湯呑、お母さんにはハンカチを買って、自分の分は3人お揃いのお箸にした。
喜ぶだろうなあ、とワクワクしながら貸切バスを降りた私を出迎えたのは、両親ではなく警察だった。
「そうだよ。私は、君の時をこの世界から切り離した。君はもう年を取らない」
平板な声で、ユーグさんは私の穏やかな日常をひっくり返した。
彼は全く悪びれていない。
自分が何をしたか、分かっていないのだ。
満面の笑みを浮かべたダンさんの顔が浮かんだ。
嬉しそうに私に向かって手を振るベネッサさんの顔も。
それから。それから――。
『ミカ。ミカ、どこにいるの?』
甘く響く優しい声で私を求めるラスの顔が。
この世界でようやく見つけた私の家族。
みんなが弱り年老いていく中、私だけが今のままの姿で残される。
私だけが残される。
愛する家族が消えた後も、この世界に一人だけ。
「……うわああああああ!!!!!!」
私はユーグさんに飛びかかり、しゃにむに彼を拳で殴りつけた。
滂沱の涙がほとばしり、視界を曇らせる。
心がびりびりに千切れ、激しい苦痛に息が上がる。
私は生まれて初めて、殺意を覚えた。
「あんたは!! あんたは何も分かってないっ!! だからこんな残酷なことが出来るのよっ!! 一人で、一人きりでまた残されるのなら、今ここで死んだ方がまし!! 戻して!! 私の時間を戻せえええええ!!!!」
あんまり激しく殴ったので、細身とはいえ私より大きな彼が、とうとう床に倒れ込む。
ユーグさんが無抵抗だったことも、私の狂乱をさらに煽った。
もはや言葉にならない咆哮を上げながら、私は彼に馬乗りになって、痛む拳を叩きつけた。
発狂寸前の私の耳に、小さな声が届く。
「どうしても、死なせたくなかった」
ユーグさんは確かにそう言った。
意味が分からなくて、体が固まる。
一端止まってしまえば、再び暴力で同じ痛みを感じる人間を蹂躙することは、もう出来なかった。
ユーグさんのローブの胸元ははだけ、シャツのボタンは私に引きちぎられている。
肌が赤く擦れ、ところどころは痣になりそうだ。
酷いことをしてしまった。
泣きすぎて霞む頭で、それでも冷静に状況を捉えられるようになると、また泣けてきた。
こんなこと、したくなかった。
彼と過ごす時間はとても楽しかった。
私の大切な友人だったのに。
「……本当のことを言って……。ただびとって何なの? 私はどうなるの? お願いだから、全部言って……っ!」
しゃくり上げながら必死に訴える。
ユーグさんは私の頭を抱え、自分の胸に引き寄せた。
トクン、トクン、とユーグさんの心音が聞こえる。
生きている人の温もりと鼓動に、また狂おしいほどの悲しみが湧いてきた。
「この世界に落ちてくるただびとは、健康な未婚女性に限られている」
私を胸に抱えたまま、ユーグは話し始める。
「子供が増えなくなったこの世界を哀れんだ女神たちが、異世界から招いて下さっているのだと、いつからか人々は言い始めた。だけどただびとの大半は、この世界に上手く順応出来ない。初めて会った時に私がそう言ったのを、覚えてる?」
「……うん。ダンさんからも、聞いた」
ひび割れた声で答える。
ユーグがついに真実を打ち明ける覚悟を決めたのだと思うと、少し心が落ち着いた。
「本当なの? ただびとは、落ちてきた季節に誰かと番わないと、死ぬの?」
私の問いに、ユーグは頷いた。
「ああ、そうだ。そのことが分かったのは、ただびとがこの世界に現れ始めて随分経ってからだった。どうにかして生き延びさせたいと、サリムの若者はただびとを必死に口説くんだけど、大半の娘がそれを拒む。考えてみれば、当然だよね。いきなり異世界に飛ばされて、すぐに誰かに抱かれろ、なんてあまりに酷な話だ。生き延びられるのは、偶然好きな相手に巡り会えた運のいい娘か、保護者となったサリム人に凌辱されてしまった運の悪い娘だけ。運の悪い娘は、長生きしない。何故かは分かるだろう?」
あまりに残酷な話に、感情が麻痺する。
私はのんびり西の島での暮らしを楽しんできたけれど、多くの同胞は苦しみながら死んでいった。
そういうことだよね……?
今までユーグが話さなかったのは、衝撃が強すぎると判断したからだろう。
この世界の人にとって、確かにただびとは女神の祝福かもしれない。
だけど、飛ばされた異世界人にとっては強烈な死の呪いだ。
「ミカが落ちたのは晴れの時期で、ここは西の島だった。分かるかな、発情期じゃない晴れの時期だったんだよ。タリムの男は、発情期にしか女を抱けない。もし可能だったとしても、君は頑として拒んだだろうね。だから、私は選んだ。魔法で君を生かすことを」
ユーグが何故そうしたのかは、分かった。
でも――。
「見捨ててくれて、よかったのに」
彼の長い話を聞いて、真っ先に思ったのはそれだった。
あのまま弱って死ねたなら、今のこの苦しみは味合わなくて済んだのだ。
言葉にした瞬間、また家族の顔が浮かんでくる。
本当に、そう思う?
ダンさんやベネッサさんやユーグと過ごしたこの5年間は、私にとってかけがえのない煌めいた時間じゃなかった?
ラスとの思い出全てが無かったとしたら、私の人生は本当に味気ないままで終わったんじゃない?
私の心の揺れを読み取ったのか、ユーグは小さく微笑んだ。
「強がりだな、ミカは。私がミカを死なせたくなかった理由は、一つだけ。君が私と同じだったからだよ」
「……意味が分からない」
私はぐらつく頭を押さえながら、何とか身体を起こした。
這うようにしてユーグの上から退き、床にへたり込む。
癇癪を爆発させたのは、これが生まれて初めてだ。
ドラマなんかでヒロインが相手役を詰って激昂する場面を暢気に鑑賞していた時には、こんなに疲れるものだとは思わなかった。
頭の芯が痺れたように痛む。全身の気力を削がれた感覚だった。
ラスには「考える時間が欲しい」と言ったが、頭の中はぐちゃぐちゃでまともに思考できる状態ではなかった。
『考えすぎだよ』と呆れる自分もいれば、『絶対ユーグが何かしたんだよ! こんなのおかしい!』とわめき立てる私もいる。
今はただ、本当のことが知りたかった。
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通い慣れた道なのに、今日はやけに躓いた。膝はすりむいているし、つま先がジンジン痛むが、それどころではない。
ドンドンドン。
強く玄関の扉を叩くと、いつものようにのんびりとした様子でユーグが姿を見せた。
「あれ? どうしたの、ミカ」
すぐには言葉が出なかった。
きつく唇を噛み締め、ユーグを見つめる。
彼の笑みが徐々に消えていく。
ユーグはやがて真顔になり、長いため息を吐いた。
「……ずいぶん遅かったね」
今日の訪問について言ったんじゃない。
気づくのが遅かった、とユーグは言ったのだ。
私は何故か確信していた。
胸の奥でくすぶっていた絶望が、一瞬のうちに心を覆い尽くしていく。
信じたくない、と思ってたんだよ。
あなたがこんな事をするなんて。
だって、ユーグはずっと私に親切で、ずっと私の味方をしてくれた。
まるで手に取るように、私の気持ちを理解してくれた。
私が最も恐れているものを、彼は知っていると思っていた。
「――……私の時を止めたの?」
やけに静かな声が出た。
全く言葉の足りない問いかけだったが、ユーグは無言で小さく頷いた。
「私だけが、また皆に、置いていかれる、ということ?」
腹から突き上げてきた激情のせいで、唇がぶるぶる震える。
ひと言ひと言を、血を吐くように口にした。
修学旅行のお土産を選ぶのには、とても時間がかかった。
ああでもない、こうでもない、と沢山のお店を見て回った。
結局、お父さんには湯呑、お母さんにはハンカチを買って、自分の分は3人お揃いのお箸にした。
喜ぶだろうなあ、とワクワクしながら貸切バスを降りた私を出迎えたのは、両親ではなく警察だった。
「そうだよ。私は、君の時をこの世界から切り離した。君はもう年を取らない」
平板な声で、ユーグさんは私の穏やかな日常をひっくり返した。
彼は全く悪びれていない。
自分が何をしたか、分かっていないのだ。
満面の笑みを浮かべたダンさんの顔が浮かんだ。
嬉しそうに私に向かって手を振るベネッサさんの顔も。
それから。それから――。
『ミカ。ミカ、どこにいるの?』
甘く響く優しい声で私を求めるラスの顔が。
この世界でようやく見つけた私の家族。
みんなが弱り年老いていく中、私だけが今のままの姿で残される。
私だけが残される。
愛する家族が消えた後も、この世界に一人だけ。
「……うわああああああ!!!!!!」
私はユーグさんに飛びかかり、しゃにむに彼を拳で殴りつけた。
滂沱の涙がほとばしり、視界を曇らせる。
心がびりびりに千切れ、激しい苦痛に息が上がる。
私は生まれて初めて、殺意を覚えた。
「あんたは!! あんたは何も分かってないっ!! だからこんな残酷なことが出来るのよっ!! 一人で、一人きりでまた残されるのなら、今ここで死んだ方がまし!! 戻して!! 私の時間を戻せえええええ!!!!」
あんまり激しく殴ったので、細身とはいえ私より大きな彼が、とうとう床に倒れ込む。
ユーグさんが無抵抗だったことも、私の狂乱をさらに煽った。
もはや言葉にならない咆哮を上げながら、私は彼に馬乗りになって、痛む拳を叩きつけた。
発狂寸前の私の耳に、小さな声が届く。
「どうしても、死なせたくなかった」
ユーグさんは確かにそう言った。
意味が分からなくて、体が固まる。
一端止まってしまえば、再び暴力で同じ痛みを感じる人間を蹂躙することは、もう出来なかった。
ユーグさんのローブの胸元ははだけ、シャツのボタンは私に引きちぎられている。
肌が赤く擦れ、ところどころは痣になりそうだ。
酷いことをしてしまった。
泣きすぎて霞む頭で、それでも冷静に状況を捉えられるようになると、また泣けてきた。
こんなこと、したくなかった。
彼と過ごす時間はとても楽しかった。
私の大切な友人だったのに。
「……本当のことを言って……。ただびとって何なの? 私はどうなるの? お願いだから、全部言って……っ!」
しゃくり上げながら必死に訴える。
ユーグさんは私の頭を抱え、自分の胸に引き寄せた。
トクン、トクン、とユーグさんの心音が聞こえる。
生きている人の温もりと鼓動に、また狂おしいほどの悲しみが湧いてきた。
「この世界に落ちてくるただびとは、健康な未婚女性に限られている」
私を胸に抱えたまま、ユーグは話し始める。
「子供が増えなくなったこの世界を哀れんだ女神たちが、異世界から招いて下さっているのだと、いつからか人々は言い始めた。だけどただびとの大半は、この世界に上手く順応出来ない。初めて会った時に私がそう言ったのを、覚えてる?」
「……うん。ダンさんからも、聞いた」
ひび割れた声で答える。
ユーグがついに真実を打ち明ける覚悟を決めたのだと思うと、少し心が落ち着いた。
「本当なの? ただびとは、落ちてきた季節に誰かと番わないと、死ぬの?」
私の問いに、ユーグは頷いた。
「ああ、そうだ。そのことが分かったのは、ただびとがこの世界に現れ始めて随分経ってからだった。どうにかして生き延びさせたいと、サリムの若者はただびとを必死に口説くんだけど、大半の娘がそれを拒む。考えてみれば、当然だよね。いきなり異世界に飛ばされて、すぐに誰かに抱かれろ、なんてあまりに酷な話だ。生き延びられるのは、偶然好きな相手に巡り会えた運のいい娘か、保護者となったサリム人に凌辱されてしまった運の悪い娘だけ。運の悪い娘は、長生きしない。何故かは分かるだろう?」
あまりに残酷な話に、感情が麻痺する。
私はのんびり西の島での暮らしを楽しんできたけれど、多くの同胞は苦しみながら死んでいった。
そういうことだよね……?
今までユーグが話さなかったのは、衝撃が強すぎると判断したからだろう。
この世界の人にとって、確かにただびとは女神の祝福かもしれない。
だけど、飛ばされた異世界人にとっては強烈な死の呪いだ。
「ミカが落ちたのは晴れの時期で、ここは西の島だった。分かるかな、発情期じゃない晴れの時期だったんだよ。タリムの男は、発情期にしか女を抱けない。もし可能だったとしても、君は頑として拒んだだろうね。だから、私は選んだ。魔法で君を生かすことを」
ユーグが何故そうしたのかは、分かった。
でも――。
「見捨ててくれて、よかったのに」
彼の長い話を聞いて、真っ先に思ったのはそれだった。
あのまま弱って死ねたなら、今のこの苦しみは味合わなくて済んだのだ。
言葉にした瞬間、また家族の顔が浮かんでくる。
本当に、そう思う?
ダンさんやベネッサさんやユーグと過ごしたこの5年間は、私にとってかけがえのない煌めいた時間じゃなかった?
ラスとの思い出全てが無かったとしたら、私の人生は本当に味気ないままで終わったんじゃない?
私の心の揺れを読み取ったのか、ユーグは小さく微笑んだ。
「強がりだな、ミカは。私がミカを死なせたくなかった理由は、一つだけ。君が私と同じだったからだよ」
「……意味が分からない」
私はぐらつく頭を押さえながら、何とか身体を起こした。
這うようにしてユーグの上から退き、床にへたり込む。
癇癪を爆発させたのは、これが生まれて初めてだ。
ドラマなんかでヒロインが相手役を詰って激昂する場面を暢気に鑑賞していた時には、こんなに疲れるものだとは思わなかった。
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