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第三章 私の外れスキルは『せんい』 ~アリエス共和国のヘレの場合
第04話 悪役令嬢はゴーレムがお好き
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次の日の朝、私は珍しくアリアに起こされる前に目が覚めた。時計を観ると九時……いつもなら七時にはアリアが朝食を持って起こしに来るのに――。
「アリア!」
私は急に不安になり大きな声で呼んでみたがアリアはやってこない。廊下に出て他の使用人に聞いてみる。
「ちょっとそこの貴方、アリアは見なかったかしら」
「アリア……ですか? 私は存じ上げませんが」
「そう……ありがとう」
その後も数人の使用人に聞いてみたがみんな同じような答えだった。仕方がないのでアリアの部屋に向かった。基本的にはうちの使用人は数人で一部屋を使っているけど、アリアは私専属で特別な為、一人で一部屋使っている。ただ元々は物置として使っていた小さな部屋だけど。
ガチャ 「アリアいるかしら?」 返事を待たずに私はドアを開けた。
中は蛻の殻だった――が床に一枚の置手紙があった。【故郷に問題が起こりましたのでお暇をいただきたく存じます】と。
故郷? たしかアリアの生まれた村はこの国との戦争で無くなったと本人から聞いたけど。それに私に何も断りもなく出て行くなんて……はっ!? まさかお父様に追い出されたのでは?
私はその手紙を持ってお父様が居るであろう書斎へと走り出した。
「お父様! アリアは? アリアに何をおっしゃったのですか?」
「ヘレ!? ノックもせずに部屋に入ってくるとは何事だ!?」
「申し訳ございません、それよりアリアをなぜ追い出したんですか?」
「アリアだと? ああ、お前の連れて来たメイドだったか? 儂は知らんぞ、追い出してなぞおらん!」
「嘘よ!」
「貴様! 儂を嘘つき呼ばわりするつもりか!」
「……分かりました、申し訳ございません、失礼します」
私は書斎を飛び出した。じゃあなんでアリアは居なくなったの? 私の事が嫌いになった? まさかアリアに似せたぬいぐるみが豚に似ていたから……違うわ、そうよ! お父様がほんとの事言うはずないわよね。お父様が追い出したのよ。それ以外考えられないわ。だってお父様は獣人族が、いえ亜人が大嫌いだから。兎に角アリアを急いで追わないと。
私は急いで自分の部屋に戻り、深さは全くないが口だけは10mはあるマジックバックを作り、着替えや魔道具など旅に必要なものを中に入れた。多分アリアを追いかけて屋敷を出たらもう戻っては来られないから。お父様は許さないだろうし、もし許されたとしてもお父様の傀儡となるしかないから。いえ、今も既に傀儡か。
路銀も持ったし、後は……妹のバラニーにだけはお別れを言いたかったけど使用人もいるし無理よね。私はその後、敷地内にある倉庫に向かった。
その倉庫の中には色々今の私に必要なものが眠っていたはず。大事なものが保管されているのに見張りは一人もいない。なぜなら鍵は掛かっているし、更には結界も張ってあるからだ。
まずはこの結界をどうにかしなくちゃね。
「『ソーイング戦意』! それから『次元属性』ですわ!」
張られている結界に次元属性を持った針と糸で私が通れるくらいの大きさの穴を縫っていく。縫られた結界のその部分は別の次元にでもいってしまったのか、その部分だけポツリと穴が開き、中に入れるようになった。地面の土をマジックバックに入れて穴を掘っても良かったのだけどね。私はそこをくぐり倉庫へと近づく。
「『マリオネット戦意』ですわ!」
次に倉庫の扉に掛かっている巨大な南京錠の穴に魔法の針を入れ鍵を外すように命令を送る、するとカチャと音がし南京錠が外れた、構造が簡単だから出来る芸当ね。今度は針と糸を大きな扉に伸ばし少しだけ開けるように命令を出す。細腕の私では動かない大きくて重い扉がギギギと音を立てて開く。
中に忍び込みポーチからランタンを出し明かりをつけた。相変わらず広いし色んな物が保管してある。お爺様が生きていた頃はよくこの倉庫の中に連れて来てもらったけど、亡くなってからは一度も来たことが無かった。
一番奥まで行くと目的の物があった。高さ3mはあるその目的の物に黒い布が被せてあった。その布を取ると中から青白い水晶で出来た一体の座っているゴーレムが姿を現した。『オリハルコンゴーレム』である。この世界で五本の指に入る特殊で貴重な金属オリハルコンで作ったゴーレム。ほとんどの攻撃魔法も効かず、物理攻撃もオリハルコン以上の素材で作った武器でないとダメージを与えられない。唯一の弱点はコアが丸見えだと言う事。
これはゴーレムマイスターのお爺様が作った最高傑作。でもお爺様が亡くなった後このゴーレムを引き継いだお父様は動かす事、いや起動させることすらできなかった為ずっとここに放置されている。
女性の一人旅は危険だし、これくらいのお供が居ないと。それに私はどうせ悪役令嬢だしいいわよね。
ポーチから先ほど作った口の大きなマジックバックを取り出しゴーレムの足を入れた。すると吸い込まれる様にゴーレムの体全部がすっぽりと入って消えた。
その後倉庫の中からめぼしい物を拝借し、扉の鍵を閉め倉庫から出た。穴が開いてある結界をくぐり、次元属性の繊維を抜くと空中で拡散され結界が元通りに塞がった。
そしてそのまま見つからない様に屋敷の門を出て、街の中の商店で食料などを購入し、街を出た。しばらく進むと森が見えた。私はその森に入り少し開けた草原まで進み辺りに誰も居ない事を確認してからマジックバックからオリハルコンゴーレムを出した。
やっぱり大きいわね、更にこれで立たせたら5mはあるのかしら? とりあえずこの青白い水晶の様な見た目は目立つわね。
「『ソーイング戦意』、『水、火、風、土、聖、闇属性』ですわ!」
私は六属性分の糸をだしゴーレムの全身を包み込める服を作った。あら? コアは隠せたけど六色使っているのに離れて観ると全身まっ黒のゴーレムに観えるのね……そうだわ、ついでに私用の服も六属性分の糸で作っちゃいましょう。
さてそろそろアリアを追わなくちゃ、取りあえず獣人の国の方へ向かってみましょう。
「『マリオネット戦意』ですわ」
右手から五本の針と糸をだしオリハルコンゴーレムに突き刺す。
「立ち上がれ! オリハルコンゴーレム!」
座った状態のゴーレムに私は魔力で出来た糸に命令を流し込む。
…………
むぅ……そうよね、実際にゴーレムに命令している訳じゃないのだから、こんな命令の仕方じゃダメよね。
「この糸に繋がっている右足の裏を地面につけなさい、この糸に繋がっている左足の裏を地面につけなさい! オリハルコンゴーレム!」
私は魔力で出来た足に繋がっている糸に命令を流し込む。するとオリハルコンゴーレムは立ち上がった。うまくいったわ。
「そうそう、毎回オリハルコンゴーレムって言うのも長いから名前を付けてあげるわ――何にしようかしら? うーん、草原に立っているゴーレム……ゴーレム、草原……そうね貴方は今日からゴレクサよ!」
まあ別に命令するのに名前を言う必要ないけどね。
「ゴレクサ、この糸に繋がっている右手を地面の近くまで降ろして」
右手を地面までつけてしまうとバランスを崩して面倒くさくなりそうだったのでこんな命令にしてみた。その後手を広げてもらいゴレクサの肩に乗せて貰った。
「ゴレクサ出発するわよ! 右足を前に、その後左足を前に――そうそういい感じね、手は……振らなくても歩けるようね、それを繰り返してどんどん進むわよ」
「アリア!」
私は急に不安になり大きな声で呼んでみたがアリアはやってこない。廊下に出て他の使用人に聞いてみる。
「ちょっとそこの貴方、アリアは見なかったかしら」
「アリア……ですか? 私は存じ上げませんが」
「そう……ありがとう」
その後も数人の使用人に聞いてみたがみんな同じような答えだった。仕方がないのでアリアの部屋に向かった。基本的にはうちの使用人は数人で一部屋を使っているけど、アリアは私専属で特別な為、一人で一部屋使っている。ただ元々は物置として使っていた小さな部屋だけど。
ガチャ 「アリアいるかしら?」 返事を待たずに私はドアを開けた。
中は蛻の殻だった――が床に一枚の置手紙があった。【故郷に問題が起こりましたのでお暇をいただきたく存じます】と。
故郷? たしかアリアの生まれた村はこの国との戦争で無くなったと本人から聞いたけど。それに私に何も断りもなく出て行くなんて……はっ!? まさかお父様に追い出されたのでは?
私はその手紙を持ってお父様が居るであろう書斎へと走り出した。
「お父様! アリアは? アリアに何をおっしゃったのですか?」
「ヘレ!? ノックもせずに部屋に入ってくるとは何事だ!?」
「申し訳ございません、それよりアリアをなぜ追い出したんですか?」
「アリアだと? ああ、お前の連れて来たメイドだったか? 儂は知らんぞ、追い出してなぞおらん!」
「嘘よ!」
「貴様! 儂を嘘つき呼ばわりするつもりか!」
「……分かりました、申し訳ございません、失礼します」
私は書斎を飛び出した。じゃあなんでアリアは居なくなったの? 私の事が嫌いになった? まさかアリアに似せたぬいぐるみが豚に似ていたから……違うわ、そうよ! お父様がほんとの事言うはずないわよね。お父様が追い出したのよ。それ以外考えられないわ。だってお父様は獣人族が、いえ亜人が大嫌いだから。兎に角アリアを急いで追わないと。
私は急いで自分の部屋に戻り、深さは全くないが口だけは10mはあるマジックバックを作り、着替えや魔道具など旅に必要なものを中に入れた。多分アリアを追いかけて屋敷を出たらもう戻っては来られないから。お父様は許さないだろうし、もし許されたとしてもお父様の傀儡となるしかないから。いえ、今も既に傀儡か。
路銀も持ったし、後は……妹のバラニーにだけはお別れを言いたかったけど使用人もいるし無理よね。私はその後、敷地内にある倉庫に向かった。
その倉庫の中には色々今の私に必要なものが眠っていたはず。大事なものが保管されているのに見張りは一人もいない。なぜなら鍵は掛かっているし、更には結界も張ってあるからだ。
まずはこの結界をどうにかしなくちゃね。
「『ソーイング戦意』! それから『次元属性』ですわ!」
張られている結界に次元属性を持った針と糸で私が通れるくらいの大きさの穴を縫っていく。縫られた結界のその部分は別の次元にでもいってしまったのか、その部分だけポツリと穴が開き、中に入れるようになった。地面の土をマジックバックに入れて穴を掘っても良かったのだけどね。私はそこをくぐり倉庫へと近づく。
「『マリオネット戦意』ですわ!」
次に倉庫の扉に掛かっている巨大な南京錠の穴に魔法の針を入れ鍵を外すように命令を送る、するとカチャと音がし南京錠が外れた、構造が簡単だから出来る芸当ね。今度は針と糸を大きな扉に伸ばし少しだけ開けるように命令を出す。細腕の私では動かない大きくて重い扉がギギギと音を立てて開く。
中に忍び込みポーチからランタンを出し明かりをつけた。相変わらず広いし色んな物が保管してある。お爺様が生きていた頃はよくこの倉庫の中に連れて来てもらったけど、亡くなってからは一度も来たことが無かった。
一番奥まで行くと目的の物があった。高さ3mはあるその目的の物に黒い布が被せてあった。その布を取ると中から青白い水晶で出来た一体の座っているゴーレムが姿を現した。『オリハルコンゴーレム』である。この世界で五本の指に入る特殊で貴重な金属オリハルコンで作ったゴーレム。ほとんどの攻撃魔法も効かず、物理攻撃もオリハルコン以上の素材で作った武器でないとダメージを与えられない。唯一の弱点はコアが丸見えだと言う事。
これはゴーレムマイスターのお爺様が作った最高傑作。でもお爺様が亡くなった後このゴーレムを引き継いだお父様は動かす事、いや起動させることすらできなかった為ずっとここに放置されている。
女性の一人旅は危険だし、これくらいのお供が居ないと。それに私はどうせ悪役令嬢だしいいわよね。
ポーチから先ほど作った口の大きなマジックバックを取り出しゴーレムの足を入れた。すると吸い込まれる様にゴーレムの体全部がすっぽりと入って消えた。
その後倉庫の中からめぼしい物を拝借し、扉の鍵を閉め倉庫から出た。穴が開いてある結界をくぐり、次元属性の繊維を抜くと空中で拡散され結界が元通りに塞がった。
そしてそのまま見つからない様に屋敷の門を出て、街の中の商店で食料などを購入し、街を出た。しばらく進むと森が見えた。私はその森に入り少し開けた草原まで進み辺りに誰も居ない事を確認してからマジックバックからオリハルコンゴーレムを出した。
やっぱり大きいわね、更にこれで立たせたら5mはあるのかしら? とりあえずこの青白い水晶の様な見た目は目立つわね。
「『ソーイング戦意』、『水、火、風、土、聖、闇属性』ですわ!」
私は六属性分の糸をだしゴーレムの全身を包み込める服を作った。あら? コアは隠せたけど六色使っているのに離れて観ると全身まっ黒のゴーレムに観えるのね……そうだわ、ついでに私用の服も六属性分の糸で作っちゃいましょう。
さてそろそろアリアを追わなくちゃ、取りあえず獣人の国の方へ向かってみましょう。
「『マリオネット戦意』ですわ」
右手から五本の針と糸をだしオリハルコンゴーレムに突き刺す。
「立ち上がれ! オリハルコンゴーレム!」
座った状態のゴーレムに私は魔力で出来た糸に命令を流し込む。
…………
むぅ……そうよね、実際にゴーレムに命令している訳じゃないのだから、こんな命令の仕方じゃダメよね。
「この糸に繋がっている右足の裏を地面につけなさい、この糸に繋がっている左足の裏を地面につけなさい! オリハルコンゴーレム!」
私は魔力で出来た足に繋がっている糸に命令を流し込む。するとオリハルコンゴーレムは立ち上がった。うまくいったわ。
「そうそう、毎回オリハルコンゴーレムって言うのも長いから名前を付けてあげるわ――何にしようかしら? うーん、草原に立っているゴーレム……ゴーレム、草原……そうね貴方は今日からゴレクサよ!」
まあ別に命令するのに名前を言う必要ないけどね。
「ゴレクサ、この糸に繋がっている右手を地面の近くまで降ろして」
右手を地面までつけてしまうとバランスを崩して面倒くさくなりそうだったのでこんな命令にしてみた。その後手を広げてもらいゴレクサの肩に乗せて貰った。
「ゴレクサ出発するわよ! 右足を前に、その後左足を前に――そうそういい感じね、手は……振らなくても歩けるようね、それを繰り返してどんどん進むわよ」
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