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第三章 私の外れスキルは『せんい』 ~アリエス共和国のヘレの場合

第03話 悪役令嬢はロリがお好き

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「『ソーイング戦意』! それから『聖属性』ですわ!」

 今日はぬいぐるみではなく、ぬいぐるみ用の服を作っている。

「ふぅ、これで六属性・・・のぬいぐるみと服が出来たわ」

「お疲れ様でした、お嬢様。そろそろいらっしゃる頃ですね」

 タッタッタッ コンコン ガチャ タァァァァ

「ヘレお姉ちゃぁぁぁん!」

 と、五歳の妹バラニーがドアを開けると同時に私の胸に飛び込んで来た。
 同級生の中でも大きめの私の胸にぐりぐりと顔を押し付ける。

 実は昨日バラニーが今と同じように飛び込んで来た時、仕舞い忘れていたぬいぐるみをみて『バラニーも欲しい』と言い出したのでどの色が欲しいか聞いたところ全色欲しいと答えたのでバラニーと同じくらいの大きさのぬいぐるみをさっきまで作っていたのだ。ついでに服も作ってみた。勿論全色。

「わぁ、可愛い! あっ? お洋服もある! やったーヘレお姉ちゃん大好き」

 そう言いバラニーは今着ている服を脱いで、水色の服を着だした。

「ヘレお姉ちゃんどう? バラニーに似合う? あれ? 何かこの服少し涼しい」

「ええ、とっても似合っているわ、それに今の時期涼しくて丁度いいでしょ」

 ほんとはぬいぐるみ用の服なのだけど……まあいいか。
 その後もバラニーファッションショーを開催し、私が『マリオネット戦意』で操作した劇を観て、満足したのか『へレお姉ちゃん、ありがとう』と言い、付き添って来たメイド達にぬいぐるみと服を持たせて自分の部屋に戻っていった。

「ふぅ」

「お嬢様、お疲れ様でした」

 この屋敷の中で外れスキルを貰った後でも、前と同じように私と接してくれるのはアリアとあの子だけ。両親や兄に姉達は勿論の事、最近は使用人達ですら何かを察したようで私と前以上に距離を置くようになった。まあ私としてはその方が楽だけど。

「そうそう、さっきのぬいぐるみ劇をしている最中にまたスキルレベルが上がったわ」

 お父様に呼ばれた日から数日経ち、学院へ行かず部屋で訓練した結果、今の私のステータスはこんな感じになっている。

―――――――――――――
ヘレ・ボイオティア (女、15歳)
種族:人間族

ジョブ:裁縫士
スキル:せんい Lv6:『ソーイング戦意』、『マリオネット戦意』、『水、火属性の繊維』、『風、土属性の繊維』、『聖、闇属性の繊維』、『次元属性の繊維』
―――――――――――――
 名前や年齢に種族、ジョブ、スキル、スキル技などの自分の情報が頭の中に流れ込んできた。
 
―――――――――――――
『風、土属性の繊維』:風、土属性を含んだ魔力で作った繊維を出す事が出来る。
『聖、闇属性の繊維』:聖、闇属性を含んだ魔力で作った繊維を出す事が出来る。
『次元属性の繊維』:次元属性を含んだ魔力で作った繊維を出す事が出来る。
―――――――――――――

「アリア、スキルレベルが6になったわ、そして六属性の次は次元属性よ」

「流石です、お嬢様。それにしても通常よりスキルが上がる速さが尋常では無い気がしますが……他のご兄弟と比べてどうなのでしょうか?」

「そうね、確かに私の兄や姉と比べると早い気がするけど、あの人達が毎日どれくらいの特訓をしていたか分からないから何とも言えないわね。もしかしたら外れスキルは成長が早いのかしら?」

「お嬢様のは外れスキルではございませんよ! だって次元属性って事はあれ・・が作れてしまうのでは?」

「あれ? ああ、あれね! 確かに作れるかもしれないわね。『ソーイング戦意』! それから『次元属性』ですわ!」

 シャキーン! シュルルル、シュルルル。

 腰にぶら下げる大きさの薄緑色のポーチを作った。そこにポーチより大きいぬいぐるみをポーチの口から無理やり入れる。すると不思議な事にポーチより大きいぬいぐるみが中にすっぽりと入ってしまった。しかもポーチはパンパンになっている訳ではない。そして次にポーチの口に私の手を入れてさっきのぬいぐるみを取り出したいと想像しながら手を引き抜くと同時にぬいぐるみも一緒に出てきた。

 これは別の空間に物を出し入れできる『次元魔法』の能力をポーチやバックに付与した『魔道具』、通称『マジックバック』と言われるものだ。ただポーチの中に入れる為にはポーチの口より小さくないとダメなようで今回は中身が綿のぬいぐるみだったから無理やり押し込んだけど。一応成功ね。

 今度はどれくらいの量が入るのか試してみる。このポーチの口が15cmくらいしかないのであまり大きい物は入れられないが、服や小物など色々入れてみた所、馬車一台分位の物が入った。それ以上入れようとしたら押し返された。

 『次元魔法』のスキルレベルが高い人が作ったマジックバックは物量も大きいと聞いた事があるが私もそうなるのだろうか?

 次に私は羊皮紙にアリアの『狐火』で火を付けて貰い、それをポーチの中に入れる。しばらくしてからそれを取り出すと羊皮紙の火は消えていて焦げ跡だけ残っていた。

 この結果、ポーチの中は時間が経過しており、酸素もない確率が高いと言う予想が出来る。まああと何回か試してはみるけど。

 そしてこのマジックバックをもっと高性能にするには、中に入れた食べ物などの腐食をさせない為、時間を止められる『時間魔法』や物の重さを変えずに形を変えてバックの口より大きな物を入れられる様になる『質量魔法』、重さを変えて制限を無くする『重力魔法』、物と言う『個』ではなく、その場所そのものに関与できる『空間魔法』、使用できる者を限定できる『契約魔法』などがあれば完璧なのだけどね。


▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽

 その夜また無視され続けている、父であるアタマス・ボイオティアに呼び出されていた。

~ボイオティア家の屋敷 当主アタマス・ボイオティアの書斎

「ヘレ、お前の婚約者の『魔法国家キャンサー』の貴族から手紙が届いてな……内容は何だったと思う? 【婚約の話は無かった事にして欲しい】だと。理由は向うの息子が『祝福の儀』で授かったスキルがどうやら外れスキルでお前の夫として相応しくないとの事だ……」

「……そうですか」

「儂はお前のスキルの事が向うの耳に入ったのでは? と読んでおる。それで断る理由をでっち上げたのではないかとな、まあどちらにせよ魔法国家キャンサーと組んで、間にある獣人国やドワーフ国を蹂躙する計画がパーだ。前までは交流があった魔法国家キャンサーと獣人国が仲たがいしている今がチャンスなんだが、練り直さねば」

「……」

「これでお前の価値が全くなくなってしまった……他の『魔法国家キャンサー』の貴族を急いで探さねば――いやお前のスキルの事は、もう他の貴族に知れ渡っておるかもしれんな、ならばあのじじいの後家にでも、いっそ次の戦争の時前線に送って兵共の士気を高めるか……まあお前の今後は後ほど伝える。それまで部屋で大人しくしておれ」

「……分かりました」

 私は部屋に戻りお父様から言われた事をアリアに話した。一瞬驚いたような顔をしたがすぐにいつもの冷静な愛らしい顔つきに戻った。
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