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第二章 俺の外れスキルは『ものマネ』 ~ジェミニ王国のディオの場合
第22話 ジェミニ王国その後の人々(ざまぁ回その弐)
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屋敷の中から当主の怒鳴り声が聞こえてきた。
屋敷の使用人達は『結局何も変わらない、前と一緒』とクスクスと笑っていた。
~領主ポルックス家の屋敷 スクロイ視点side
「スクロイ! 貴様のせいで私は、ポルックス家は恥をかいたぞ! 王都まで出向いてやっとディオの婚約者の件が片付いたと言うのに」
現領主でもある親父のアパレウスが怒鳴りつける。
「貴様『プロプスダンジョン』で色々悪事を働いていた闇ギルドの奴らとつるんでいたようだな、ダンジョン管理ギルドの奴らが来て『どんな教育をしているんですか』、『ちゃんとお友達は選ぶように言い聞かせてください』とこの私に散々嫌味を言って来たぞ」
「……」
「ただその悪事には直接お前が係わっていないからと、今回は勧告だけで済んだが――この件に関してはな……」
まずいな、ゴクリと唾を飲んだ。
「そいつらはプロプスの領主からの手紙を預かっていてな……なんて書いてあったと思う? 【跡目争いに受付嬢や国から派遣されている騎士を巻き込みあまつさえ殺害しようとした】と書かれていたんだぞ!」
くそっ、あのダンジョンの窓口の女やディオと一緒に居たレダとかいう女騎士がチクったのか。
「聞いているのかスクロイ! どういう事だ? 貴様ポルックス家から追放した兄のディオをわざわざ『プロプスダンジョン』まで出向いて殺そうとしたのか?」
「いや、俺、私はそういうつもりではなく――」
「ただ本来なら貴様は投獄されるところだが、その巻き込まれた騎士が【今回は未遂なので、大事にしたくないと。なぜか貴殿のご子息を庇い立てした】とも書かれていた」
「そ、そうです、その騎士は、きっと兄貴に騙されていた事に気づいたから」
「だまれ! その他にもあるぞ。この街のギルマスからも連絡があった。確かに私はディオを勘当した、が別にギルドにその旨を伝えるつもりは無かった……だがどこの誰かがわざわざポルックス家の家紋で封蝋した手紙まで用意し、しかも【冒険者になれない様便宜を図れ】などと戯言を付け加えてな!」
「い、いえ、それは、追放されたと言ってもポルックス家の人間が、冒険者などと言う野蛮な仕事をするのは恥だと思ったので――」
トントン
「失礼します」
と見たことのない男が入ってきて、ボソボソと親父に耳打ちをした。
「……はぁ、そんなにもか……そうだ、スクロイ紹介しよう、この者はこの屋敷を管理する為新しく雇った信頼できる男だ。勿論前の奴は首にしてな。それで調べてもらったんだが屋敷の中の美術品や高価な食器、高級ワインに魔道具、武器、その他諸々無くなっている、もしくは偽物や安物とすり替わっているそうだ、どういう事だろうな? 何か心当たりはあるか?」
チッ、全部ばれてやがる。
「そうそう、まだあったぞ、貴様、勝手に剣術の先生を首にしたな」
「えっいや、違います! そうだ! 先生が屋敷の物を盗んでいる現場を偶然見まして、だから私が追い出したんです」
「ほう、そうか……ところで、私が居ない間に貴様に頼んでおいた、領地内の魔物調査や討伐はどれくらい進んでおる?」
「そ、それは……わ、私の部下に任せております」
「部下? 部下と言うと、貴様といつも一緒に居たゴロツキ共の事か?」
「そ、そうです」
「実はな、屋敷の物を闇市に売りに来た奴がそのゴロツキ共にそっくりだったと情報があってな」
クソッ、どうする? なにかいい手は……。
「そ、そうだ! 実は兄貴が全ての主犯で先生やゴロツキ共を使って屋敷の物を闇市に売り捌いていたんです。そしてその証拠を掴んだ有能な私はわざわざダンジョンまで行って兄貴に自首するように勧めに行ったんです、殺そうとした訳ではないんです。手紙だって兄貴の自作自演で俺を犯人に仕立てる為の罠です。そう、そうだよ、皆グルで全部ディオが悪いんです! 俺は悪くない、間違っていない!」
…………
「貴様本当に……まさかここまで酷いとはな……、どうやら私はお前の育て方を、選択を間違えたようだ――スクロイ貴様も勘当だ……ディオは勘当するべきでは無かったわ……魔物が異常発生しているこの忙しい時に、また王都まで出向いて今度はお前の婚約者の件を無かった事にして来なければならない!」
ガタンッ、立ち上がって親父に向かって叫んだ!
「俺様を勘当するだって!? ディオを勘当したのは間違いだって!? それじゃあ何も変わってないじゃないか!」
チャリンと親父は俺の前に何かの入った袋を放り投げた。
「なんです、これは?」
「手切れ金だ」
中を見てみると数十枚の銀貨が入っていた。
「なっ? たったこれっぽっち? これじゃディオに斬られた腕は直せないじゃないか!」
そう今も俺様の右腕は肘から下がすっぽりと無くなっている。
「何を言っている、貴様はどれだけ屋敷の物を売り払ったと思っているんだ」
「ぐっ、そうだ、ポルックス家は? ポルックス家はどうするんだ! ディオも俺様も居なくなったら……」
「心配するな、何とかなる」
使用人達が前に噂話していたことを思い出した。親父にはディオや俺様の腹違いの子共が、まだ小さいようだが何人か居るって。まぁ最悪養子でも貰えばいいのか……俺様より優秀な。
「スクロイ、ちなみにその手切れ金はお前の兄、ディオに渡したのと同じ金額だ」
ディオは上手くやっているのにお前は出来ないのかって事か――いや違う、親父はディオと、兄貴と俺様、俺を同等に扱ってくれているんだ!
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
もし母上が生きていたなら…少しは違ったのだろうか……。
数年前に病で亡くなった母との思い出を振り返り、十五年間住んでいた屋敷の門を出た。勿論見送りなど一人もいない。そうか俺には死んだあいつら三人しか慕ってくれる奴らはいなかったな――いやあいつらは別に俺を慕っている訳ではなかったか……。
さてと、これからどうするかな? 急だったので何も考えてない。親父から貰った金でどれくらい生活できるのだろうか?
勘当されて貴族じゃなくなった――いや自由になったんだ。そうだ! 冒険者で成り上がってやる。腕を治せる金を稼いで俺はもう一度返り咲いてやる。兄貴と違って俺のは外れスキルじゃないからできるさ!
俺は自由だ! 俺は強い! もっと強くなれる。だって鏡を見るたびに俺の顔を真似ている兄貴を思い出せるから恨みを、いや目標を忘れずに強くなれる。そして強くなって会いに行こう。きっとびっくりするだろうなぁ――いきなり剣で突き刺したら。ぎゃはははははははは。
よし早速冒険者ギルドに行こう。まずはその前に――。
「『ステータス』!」
『ジェミニ王国』編 【完】
屋敷の使用人達は『結局何も変わらない、前と一緒』とクスクスと笑っていた。
~領主ポルックス家の屋敷 スクロイ視点side
「スクロイ! 貴様のせいで私は、ポルックス家は恥をかいたぞ! 王都まで出向いてやっとディオの婚約者の件が片付いたと言うのに」
現領主でもある親父のアパレウスが怒鳴りつける。
「貴様『プロプスダンジョン』で色々悪事を働いていた闇ギルドの奴らとつるんでいたようだな、ダンジョン管理ギルドの奴らが来て『どんな教育をしているんですか』、『ちゃんとお友達は選ぶように言い聞かせてください』とこの私に散々嫌味を言って来たぞ」
「……」
「ただその悪事には直接お前が係わっていないからと、今回は勧告だけで済んだが――この件に関してはな……」
まずいな、ゴクリと唾を飲んだ。
「そいつらはプロプスの領主からの手紙を預かっていてな……なんて書いてあったと思う? 【跡目争いに受付嬢や国から派遣されている騎士を巻き込みあまつさえ殺害しようとした】と書かれていたんだぞ!」
くそっ、あのダンジョンの窓口の女やディオと一緒に居たレダとかいう女騎士がチクったのか。
「聞いているのかスクロイ! どういう事だ? 貴様ポルックス家から追放した兄のディオをわざわざ『プロプスダンジョン』まで出向いて殺そうとしたのか?」
「いや、俺、私はそういうつもりではなく――」
「ただ本来なら貴様は投獄されるところだが、その巻き込まれた騎士が【今回は未遂なので、大事にしたくないと。なぜか貴殿のご子息を庇い立てした】とも書かれていた」
「そ、そうです、その騎士は、きっと兄貴に騙されていた事に気づいたから」
「だまれ! その他にもあるぞ。この街のギルマスからも連絡があった。確かに私はディオを勘当した、が別にギルドにその旨を伝えるつもりは無かった……だがどこの誰かがわざわざポルックス家の家紋で封蝋した手紙まで用意し、しかも【冒険者になれない様便宜を図れ】などと戯言を付け加えてな!」
「い、いえ、それは、追放されたと言ってもポルックス家の人間が、冒険者などと言う野蛮な仕事をするのは恥だと思ったので――」
トントン
「失礼します」
と見たことのない男が入ってきて、ボソボソと親父に耳打ちをした。
「……はぁ、そんなにもか……そうだ、スクロイ紹介しよう、この者はこの屋敷を管理する為新しく雇った信頼できる男だ。勿論前の奴は首にしてな。それで調べてもらったんだが屋敷の中の美術品や高価な食器、高級ワインに魔道具、武器、その他諸々無くなっている、もしくは偽物や安物とすり替わっているそうだ、どういう事だろうな? 何か心当たりはあるか?」
チッ、全部ばれてやがる。
「そうそう、まだあったぞ、貴様、勝手に剣術の先生を首にしたな」
「えっいや、違います! そうだ! 先生が屋敷の物を盗んでいる現場を偶然見まして、だから私が追い出したんです」
「ほう、そうか……ところで、私が居ない間に貴様に頼んでおいた、領地内の魔物調査や討伐はどれくらい進んでおる?」
「そ、それは……わ、私の部下に任せております」
「部下? 部下と言うと、貴様といつも一緒に居たゴロツキ共の事か?」
「そ、そうです」
「実はな、屋敷の物を闇市に売りに来た奴がそのゴロツキ共にそっくりだったと情報があってな」
クソッ、どうする? なにかいい手は……。
「そ、そうだ! 実は兄貴が全ての主犯で先生やゴロツキ共を使って屋敷の物を闇市に売り捌いていたんです。そしてその証拠を掴んだ有能な私はわざわざダンジョンまで行って兄貴に自首するように勧めに行ったんです、殺そうとした訳ではないんです。手紙だって兄貴の自作自演で俺を犯人に仕立てる為の罠です。そう、そうだよ、皆グルで全部ディオが悪いんです! 俺は悪くない、間違っていない!」
…………
「貴様本当に……まさかここまで酷いとはな……、どうやら私はお前の育て方を、選択を間違えたようだ――スクロイ貴様も勘当だ……ディオは勘当するべきでは無かったわ……魔物が異常発生しているこの忙しい時に、また王都まで出向いて今度はお前の婚約者の件を無かった事にして来なければならない!」
ガタンッ、立ち上がって親父に向かって叫んだ!
「俺様を勘当するだって!? ディオを勘当したのは間違いだって!? それじゃあ何も変わってないじゃないか!」
チャリンと親父は俺の前に何かの入った袋を放り投げた。
「なんです、これは?」
「手切れ金だ」
中を見てみると数十枚の銀貨が入っていた。
「なっ? たったこれっぽっち? これじゃディオに斬られた腕は直せないじゃないか!」
そう今も俺様の右腕は肘から下がすっぽりと無くなっている。
「何を言っている、貴様はどれだけ屋敷の物を売り払ったと思っているんだ」
「ぐっ、そうだ、ポルックス家は? ポルックス家はどうするんだ! ディオも俺様も居なくなったら……」
「心配するな、何とかなる」
使用人達が前に噂話していたことを思い出した。親父にはディオや俺様の腹違いの子共が、まだ小さいようだが何人か居るって。まぁ最悪養子でも貰えばいいのか……俺様より優秀な。
「スクロイ、ちなみにその手切れ金はお前の兄、ディオに渡したのと同じ金額だ」
ディオは上手くやっているのにお前は出来ないのかって事か――いや違う、親父はディオと、兄貴と俺様、俺を同等に扱ってくれているんだ!
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
もし母上が生きていたなら…少しは違ったのだろうか……。
数年前に病で亡くなった母との思い出を振り返り、十五年間住んでいた屋敷の門を出た。勿論見送りなど一人もいない。そうか俺には死んだあいつら三人しか慕ってくれる奴らはいなかったな――いやあいつらは別に俺を慕っている訳ではなかったか……。
さてと、これからどうするかな? 急だったので何も考えてない。親父から貰った金でどれくらい生活できるのだろうか?
勘当されて貴族じゃなくなった――いや自由になったんだ。そうだ! 冒険者で成り上がってやる。腕を治せる金を稼いで俺はもう一度返り咲いてやる。兄貴と違って俺のは外れスキルじゃないからできるさ!
俺は自由だ! 俺は強い! もっと強くなれる。だって鏡を見るたびに俺の顔を真似ている兄貴を思い出せるから恨みを、いや目標を忘れずに強くなれる。そして強くなって会いに行こう。きっとびっくりするだろうなぁ――いきなり剣で突き刺したら。ぎゃはははははははは。
よし早速冒険者ギルドに行こう。まずはその前に――。
「『ステータス』!」
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