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第二章 俺の外れスキルは『ものマネ』 ~ジェミニ王国のディオの場合
第01話 追放
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ここはこの世界の南西に位置する国で人間族が支配している国の中では一番大きな国土を持つ国『ジェミニ王国』
~領主ポルックス家の屋敷
ここ『辺境の街イーダース』の領主であるポルックス家にも今年十五歳になる双子の息子達がいた。兄のディオは勉強も剣術も才能が有り、次期領主として期待されている存在だった。弟のスクロイは兄に勉強も剣術も勝てないことを悟ると、数年前から稽古をさぼりがちになり最近ではガラの悪い連中とつるんでいた。
屋敷の中から当主の怒鳴り声が聞こえてきた。
屋敷の使用人達はまたいつものように出来の悪い弟のスクロイが怒られているものだと思っていただろう――。
「ディオ! 貴様のせいで私は、ポルックス家は恥をかいたぞ!」
現領主でもある父のアパレウスが俺を怒鳴りつける。
「それに比べ、スクロイよ、流石私の自慢の息子だ!」
「はい! 当然の結果ですよ。父上」
そう言い隣に座っている弟がニヤリと笑い、俺を横目で見ながら嬉しそうに答える。
俺とスクロイは双子の兄弟だ。俺は兄、スクロイは弟だ。顔は……まあ似ていると言えば似ている。
『祝福の儀』の結果、弟のスクロイはジョブが『剣豪』、スキルは『剛剣』という、ジョブもスキルも上位に入る戦闘系のレアな能力を授かった。
代々近くの森に住まう魔物を退治して領民を守ってきたポルックス家には欲しかった能力の一つだ。
現に父であるアパレウスもジョブが『上級剣士』、スキルは『上級剣術』だ。弟ほどレアではないが戦闘系に特化した強力な上位能力だ。
そしてこの俺ディオは……俺が授かったジョブは『ものマネ士』。スキルは……『ものマネ』だ。
ジョブもスキルも今まで聞いた事が無いが、まあ見てそのまま……ものまねをする能力なのだろう……。
「ディオよ、貴様は勘当だ! 次期領主はスクロイとする。貴様は今日中に荷物をまとめて屋敷を出て行け!」
「なっ……待ってください俺っ、私は今までスクロイと一緒に稽古をして一度も遅れを取ったことは無い! 模擬戦だって……圧勝とは言わないが全部勝っている! それなのに私を追い出すのですか!?」
「テイトよ、貴様は何も分かっていないな……とっとと出て行け!」
「ち、父上! 私が授かったこの『ものマネ』スキルは、今までの記録に無かったスキルです。確かに期待できるようなスキル名ではないですが、もしかしたらすごい能力かも……なのでしばらく時間をください!――」
「――何度も言わせるな、とっとと出て行け!」
これ以上は何を言っても無駄か……。
「くっくっくっ、そういえば確かスキル技が『声マネ』とか言っていたよな。さっき犬の鳴き声が聞えたけど、実は兄貴が犬のマネをして鳴いていたんじゃないのか? くっくっくっ、さようなら、あに――いやディオ、ポルックス家の事は優秀なジョブとスキルを授かった俺様にまかせておけばいいんだよ」
急に呼び捨てか、まあ今まで俺と比べられて随分肩身が狭かったようだし、俺には居なくなって欲しいのだろ。いや、殺したいほど怨んでいるのだろうな。普段は剣の稽古を怠けるくせに、模擬戦だけは俺を殺す勢いで向かって来ていたから。
「わかりました……出て行きます」
「へっ、ざまぁないな! 少し早く生まれただけで兄貴ヅラしやがって! とっとと出て行けや! この外れスキル野郎が!」
「スクロイもういい……ディオ、手切れ金くらいは少し渡してやろう」
「ありがとうございます……」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
もし母上が生きていたなら……少しは違ったのだろうか……。
俺は数年前に病で亡くなった母との思い出を振り返り、屋敷の門を出て行こうとした。
そこへ一人の老人が屋敷から俺を追うように出てきた。
幼いころからずっと俺とスクロイに剣の稽古を付けてくれていた先生だ。
「先生! いらっしゃっていたんですか」
「話はアパレウス殿から聴きましたぞ、まさかこんな結果になるとはのぅ……それにしても誰も見送りに来んとは……」
「いいんですよ、どうせ父上やスクロイの顔色をうかがっているのでしょう」
「それにしてもじゃな……まぁ仕方がないかのぅ、ただお主の父、アパレウス殿をあまり悪く思わないでくれ」
「えっ?」――この人も結局は向う側の人間か……。
「期待していた分、落胆も大きくてついカッとなってしまった事は否めないが、それ以上にディオよ、お主はまだ分かっていないのじゃよ」
「父上もそのような事言っていましたけど、何が分かっていないのでしょうか?」
「ジョブやスキルの事じゃよ」
「えーと、ジョブやスキルの事は色々と習いましたが……」
「ジョブやスキルの能力の強さは圧倒的なんじゃよ。お主が思っている以上にな。 剣術だけで言うならば十年そこら修行したところで、全く修行も努力もしていないジョブやスキルだけが優秀な者に――手も足も出ないんじゃよ」
先生はどこか遠くを見るような、そんなやるせなさそうな目をして俺に答えた。
「お主達には『祝福の儀』が終わってから詳しく教えようと思っていたんじゃが、ジョブのランクは『下級職』、『中級職』、『上級職』、そしてその更に上、通称『覚醒職』と呼ばれるジョブの四段階があり、そのランクに応じたステータス補正が付くことは知っておるじゃろ?」
「はい」
「そしてそれが戦闘系のジョブに限った事で言うならば、ジョブを授かっていない者と比べると『下級職』の者でも感覚的には大体二倍のステータス補正が付くと言われておる」
「にっ、二倍ですか? 強くなるとは聞いていましたがそれほどとは」
「そうじゃ、『中級職』は三倍、『上級職』は五倍、そして『覚醒職』にいたっては……十倍以上とも言われておる」
「えっ!? じゃあ毎日剣の稽古していた意味は……」
「身体や精神も鍛えられるから、剣を振って毎日努力する事自体は無駄ではない、ただそれは相手も同じ条件だった場合。例えば『祝福の儀』を受けていないとか、同じランクのジョブだとかのぅ、だから『祝福の儀』を受ける前にこの話をしてしまうと、稽古に身が入らないから詳しい説明をせんかったのじゃよ」
「……」
「お主の授かった能力はどう見ても戦闘系の……剣術系や攻撃魔法系のものではないのじゃろ?」
俺は『祝福の儀』の時に見た自分のステータスを思い出した。
「そう……ですね……」
「それに比べお主の弟のスクロイのジョブは上級職の『剣豪』。ステータス補正が付き昨日より五倍以上は強くなっておるはずじゃ……あやつは最近ずっと稽古を怠けていたのにのぅ、納得いかんじゃろ? しかしそれがジョブの効果じゃよ」
「五倍……か」
「他の街と違い、魔物の森が近くにあるここの領主になるには、頭の良さや性格よりどれだけ強い魔物と戦えるかの方が重要になっておる」
「はい……」
「アパレウス殿もきっとこのままお主がここに居ても、今までの恨みを晴らすかのように次期領主になる弟のスクロイにこき使われるのが不憫と思ったのじゃろう」
「……」
「おっと忘れておったわ。儂はこれをお主に渡しに来たんじゃった」
先生は一本の剣を差し出した。それは先生がいつも腰にぶら下げていた『黒鉄の長剣』だった
「先生これは?」
「儂からの餞別じゃ」
「でも先生の剣が無くなってしまうのでは?」
「もう儂には必要無いのじゃよ、お主の弟のスクロイはもう儂から稽古を付けて貰おうとは思わんじゃろ」
「確かにスクロイは今までまともに稽古していませんでしたが、次期領主となったからにはきっと……」
「じゃがスクロイは儂より各上の能力を得た。自分より弱いものから教えを乞う性格では無いじゃろ? もう儂は用済みじゃよ。田舎で隠居生活でも始めるかのぅ、わっはっはっ」
「先生、わかりました、ありがとうございます。この剣は大切にします」
「剣は使われてなんぼじゃぞ」
その後しばらく思い出話しをして、先生にお別れを言い十五年間生まれ住んでいた屋敷の門を出た。
先生と話をして少し気が楽になったな。さてと、これからどうしようかな? 急だったので何も考えてないんだよなぁ。うーん、父上から貰ったお金じゃ二週間も持たないだろうし。
まあ勘当されて貴族じゃなくなった以上、自分が授かったジョブに関連する仕事につかなければならない決まりも無いし、自由に生きられるな。ただ、どこかの店で雇ってもらうか、冒険者になるくらいしか思いつかないけど……。うーん。
よし決めた! 冒険者ギルドに行って冒険者になろう。まずはその前に――。
「『ステータス』!」
―――――――――――――
ディオ・ポルックス (男、15歳)
種族:人間族
ジョブ:ものマネ士
スキル:ものマネ Lv1:『声マネ』
―――――――――――――
名前や年齢に種族、ジョブ、スキル、スキル技などの自分の情報が頭の中に流れ込んできた。
なるほどこれが『祝福の儀』を受けた者なら唯一誰でも使えるようになる、自分の情報を知ることができる『ステータス』という魔法か。
そして自分の情報だけは『鑑定スキル』など持っていなくても詳細が分かる。
―――――――――――――
『ものマネ士』:マネしたいと強く願う事でマネていく事が出来るジョブ。
『声マネ』:対象となるもの1人または1つの声、音をマネることができる。ただし対象となるものを一度実際に見て声、音を聴かなければならない。効果は自ら解除するか意識を失うまで有効。
―――――――――――――
と更に頭の中に情報が入って来た。
~領主ポルックス家の屋敷
ここ『辺境の街イーダース』の領主であるポルックス家にも今年十五歳になる双子の息子達がいた。兄のディオは勉強も剣術も才能が有り、次期領主として期待されている存在だった。弟のスクロイは兄に勉強も剣術も勝てないことを悟ると、数年前から稽古をさぼりがちになり最近ではガラの悪い連中とつるんでいた。
屋敷の中から当主の怒鳴り声が聞こえてきた。
屋敷の使用人達はまたいつものように出来の悪い弟のスクロイが怒られているものだと思っていただろう――。
「ディオ! 貴様のせいで私は、ポルックス家は恥をかいたぞ!」
現領主でもある父のアパレウスが俺を怒鳴りつける。
「それに比べ、スクロイよ、流石私の自慢の息子だ!」
「はい! 当然の結果ですよ。父上」
そう言い隣に座っている弟がニヤリと笑い、俺を横目で見ながら嬉しそうに答える。
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代々近くの森に住まう魔物を退治して領民を守ってきたポルックス家には欲しかった能力の一つだ。
現に父であるアパレウスもジョブが『上級剣士』、スキルは『上級剣術』だ。弟ほどレアではないが戦闘系に特化した強力な上位能力だ。
そしてこの俺ディオは……俺が授かったジョブは『ものマネ士』。スキルは……『ものマネ』だ。
ジョブもスキルも今まで聞いた事が無いが、まあ見てそのまま……ものまねをする能力なのだろう……。
「ディオよ、貴様は勘当だ! 次期領主はスクロイとする。貴様は今日中に荷物をまとめて屋敷を出て行け!」
「なっ……待ってください俺っ、私は今までスクロイと一緒に稽古をして一度も遅れを取ったことは無い! 模擬戦だって……圧勝とは言わないが全部勝っている! それなのに私を追い出すのですか!?」
「テイトよ、貴様は何も分かっていないな……とっとと出て行け!」
「ち、父上! 私が授かったこの『ものマネ』スキルは、今までの記録に無かったスキルです。確かに期待できるようなスキル名ではないですが、もしかしたらすごい能力かも……なのでしばらく時間をください!――」
「――何度も言わせるな、とっとと出て行け!」
これ以上は何を言っても無駄か……。
「くっくっくっ、そういえば確かスキル技が『声マネ』とか言っていたよな。さっき犬の鳴き声が聞えたけど、実は兄貴が犬のマネをして鳴いていたんじゃないのか? くっくっくっ、さようなら、あに――いやディオ、ポルックス家の事は優秀なジョブとスキルを授かった俺様にまかせておけばいいんだよ」
急に呼び捨てか、まあ今まで俺と比べられて随分肩身が狭かったようだし、俺には居なくなって欲しいのだろ。いや、殺したいほど怨んでいるのだろうな。普段は剣の稽古を怠けるくせに、模擬戦だけは俺を殺す勢いで向かって来ていたから。
「わかりました……出て行きます」
「へっ、ざまぁないな! 少し早く生まれただけで兄貴ヅラしやがって! とっとと出て行けや! この外れスキル野郎が!」
「スクロイもういい……ディオ、手切れ金くらいは少し渡してやろう」
「ありがとうございます……」
▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽ ▽
もし母上が生きていたなら……少しは違ったのだろうか……。
俺は数年前に病で亡くなった母との思い出を振り返り、屋敷の門を出て行こうとした。
そこへ一人の老人が屋敷から俺を追うように出てきた。
幼いころからずっと俺とスクロイに剣の稽古を付けてくれていた先生だ。
「先生! いらっしゃっていたんですか」
「話はアパレウス殿から聴きましたぞ、まさかこんな結果になるとはのぅ……それにしても誰も見送りに来んとは……」
「いいんですよ、どうせ父上やスクロイの顔色をうかがっているのでしょう」
「それにしてもじゃな……まぁ仕方がないかのぅ、ただお主の父、アパレウス殿をあまり悪く思わないでくれ」
「えっ?」――この人も結局は向う側の人間か……。
「期待していた分、落胆も大きくてついカッとなってしまった事は否めないが、それ以上にディオよ、お主はまだ分かっていないのじゃよ」
「父上もそのような事言っていましたけど、何が分かっていないのでしょうか?」
「ジョブやスキルの事じゃよ」
「えーと、ジョブやスキルの事は色々と習いましたが……」
「ジョブやスキルの能力の強さは圧倒的なんじゃよ。お主が思っている以上にな。 剣術だけで言うならば十年そこら修行したところで、全く修行も努力もしていないジョブやスキルだけが優秀な者に――手も足も出ないんじゃよ」
先生はどこか遠くを見るような、そんなやるせなさそうな目をして俺に答えた。
「お主達には『祝福の儀』が終わってから詳しく教えようと思っていたんじゃが、ジョブのランクは『下級職』、『中級職』、『上級職』、そしてその更に上、通称『覚醒職』と呼ばれるジョブの四段階があり、そのランクに応じたステータス補正が付くことは知っておるじゃろ?」
「はい」
「そしてそれが戦闘系のジョブに限った事で言うならば、ジョブを授かっていない者と比べると『下級職』の者でも感覚的には大体二倍のステータス補正が付くと言われておる」
「にっ、二倍ですか? 強くなるとは聞いていましたがそれほどとは」
「そうじゃ、『中級職』は三倍、『上級職』は五倍、そして『覚醒職』にいたっては……十倍以上とも言われておる」
「えっ!? じゃあ毎日剣の稽古していた意味は……」
「身体や精神も鍛えられるから、剣を振って毎日努力する事自体は無駄ではない、ただそれは相手も同じ条件だった場合。例えば『祝福の儀』を受けていないとか、同じランクのジョブだとかのぅ、だから『祝福の儀』を受ける前にこの話をしてしまうと、稽古に身が入らないから詳しい説明をせんかったのじゃよ」
「……」
「お主の授かった能力はどう見ても戦闘系の……剣術系や攻撃魔法系のものではないのじゃろ?」
俺は『祝福の儀』の時に見た自分のステータスを思い出した。
「そう……ですね……」
「それに比べお主の弟のスクロイのジョブは上級職の『剣豪』。ステータス補正が付き昨日より五倍以上は強くなっておるはずじゃ……あやつは最近ずっと稽古を怠けていたのにのぅ、納得いかんじゃろ? しかしそれがジョブの効果じゃよ」
「五倍……か」
「他の街と違い、魔物の森が近くにあるここの領主になるには、頭の良さや性格よりどれだけ強い魔物と戦えるかの方が重要になっておる」
「はい……」
「アパレウス殿もきっとこのままお主がここに居ても、今までの恨みを晴らすかのように次期領主になる弟のスクロイにこき使われるのが不憫と思ったのじゃろう」
「……」
「おっと忘れておったわ。儂はこれをお主に渡しに来たんじゃった」
先生は一本の剣を差し出した。それは先生がいつも腰にぶら下げていた『黒鉄の長剣』だった
「先生これは?」
「儂からの餞別じゃ」
「でも先生の剣が無くなってしまうのでは?」
「もう儂には必要無いのじゃよ、お主の弟のスクロイはもう儂から稽古を付けて貰おうとは思わんじゃろ」
「確かにスクロイは今までまともに稽古していませんでしたが、次期領主となったからにはきっと……」
「じゃがスクロイは儂より各上の能力を得た。自分より弱いものから教えを乞う性格では無いじゃろ? もう儂は用済みじゃよ。田舎で隠居生活でも始めるかのぅ、わっはっはっ」
「先生、わかりました、ありがとうございます。この剣は大切にします」
「剣は使われてなんぼじゃぞ」
その後しばらく思い出話しをして、先生にお別れを言い十五年間生まれ住んでいた屋敷の門を出た。
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そして自分の情報だけは『鑑定スキル』など持っていなくても詳細が分かる。
―――――――――――――
『ものマネ士』:マネしたいと強く願う事でマネていく事が出来るジョブ。
『声マネ』:対象となるもの1人または1つの声、音をマネることができる。ただし対象となるものを一度実際に見て声、音を聴かなければならない。効果は自ら解除するか意識を失うまで有効。
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と更に頭の中に情報が入って来た。
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