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第一章 僕の外れスキルは『うし改』 ~タウラス公国のアルデバランの場合

第08話 崩壊の飛躍

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 そのエルフは人間の姿の僕に向けて矢を放って来た。

「なっ!? 『ガードタウロス』!」

 僕はすかさず『ガードタウロス』に変わると放たれた矢を掴む――が掴み損ねて矢が腕に刺さった。『痛っ』、体毛のおかげで貫通はせず、矢尻の部分が少し刺さっただけだったけど、痛い物は痛い。腕から矢を抜き、そのエルフを睨みつけた。

「へー、主人を庇うとか、良く調教された魔物だね、それよりボクの矢を止めた事を褒めてあげるよ、じゃあこれならどうかな? 『風魔法付加』、喰らえ!」 

 どうやら僕がミノタウロスだとは思っていないらしいが、先程度以上の速さで矢が飛んできた。

「『クイックタウロス』!」

 パシッ

 僕はその放たれた矢を片手で掴みへし折る。

「なっ!? 二体目のミノタウロスだと? しかもその色、まっ黒な……まるで冒険者殺しじゃないか」

「……二体ちがう、魔物一体、変化した」

「何だって!? おい、ガキも居ないぞ?」

 エルフ族って皆こんな奴等なのかな? 苦労して作った家を吹き飛ばすぞとか脅してくるし、いきなり矢を放ってくるし、僕じゃ無かったら普通死んでいるよね。

 これは怒っていいよね、怒ったぞ、そうだ! 新しく覚えた能力の実験台になって貰おう。いいよね、先に仕掛けて来たのはあいつ等だし。

 エルフがまた弓を構えようとしたので、僕はそのエルフの視界から外れるように高速で移動した。

「なっ!? 消えた?」

 そしてそのエルフの背後から『クイックタウロス』の持つ長い腕で頭を掴んだ。

「がっ!? な、何だ!?」

「僕の番だよ、『パワータウロス』!」

 僕はその状態で巨漢の『パワータウロス』に変わり、鷲掴みにしていた頭を持ち上げ――そのままグシャリと握りつぶした。

「なっ!? 今度は赤黒いミノタウルス? 何だ、お前は一体どこから現れた?」

 ≪ピコン! 『解放条件 別種族を1人殺す』を達成した事によりレベルが1つ上がりました。それにより『リカバータウロス』への変化が可能になりました≫

 また、声が僕の頭の中に聞こえた。
 なるほど別種族を殺すのが解放条件だったのか、これはこのお兄さん達にお礼をしないとね……。
―――――――――――――
『リカバータウロス』:身長1.8m。全身まっ白な体で、細長い2本の角が生えている。その角を生物の心臓に突き刺し生命力を吸い取れる回復特化型の牛の魔獣になる事が出来る。意識を失うか解除したいと思えば元に戻れる。
―――――――――――――
 詳細が僕の頭の中に入って来た。

「……おれ、見えなかった、『精霊魔法風の――』」

――僕は腕を伸ばし何かをしようとしていた、もう一人のエルフの口を塞ぐように鷲掴みにした。

「の……は、離せ、この、バケ、モノ――」

――僕はそのエルフを持ち上げ、上空に放り投げた。

「『リカバータウロス』!」

「グハッ」

 そして落ちてきたそのエルフの胸を『リカバータウロス』の細長い角で貫いた。
 突き刺した角は青白く輝き始め、まるで生き物の様にうごめき、心臓から生命力を吸い取っていく。暫くするとそのエルフだった物・・・・・・・は干からびてしまった。すごい、さっき矢で刺された腕の傷が治っているぞ。そして角に刺さっているを投げ捨てて、残っているエルフを観た。

『な、なんなんだお前は、分かった、俺の負けだ! 降参だ! おい! 人間のガキ、聞こえるか! こいつを止めろ、悪かった、このドラゴンもお前にやるから』

…………

「おい! 聞こえないのか、高貴なエルフ族の俺が頼んでいるんだぞ」

「そのガキとは僕の事かい?」

 僕は人間の姿に戻った。

「なっ!? そうかお前は『テイマー』じゃなくて『獣化』いや『魔獣化』スキル持ちか!」

「うーん、ちょっと違うけどね」

「そ、そうなのか? それより、俺が悪かった……見逃してくれ、そ、そもそも俺はお前に攻撃していないだろ、死んだあいつらが勝手にやったことだ」

 うーん、そういえばそうだったかなぁ。じゃあ見逃してやろうかな。

「いいよ、ドラゴンの事も教えて貰ったし今回は見逃してあげるよ、その代わり僕の事やこの場所の事は秘密にしておいてね」

「わ、わかった、約束するよ」

 僕はそのエルフを見逃し、後ろを向きドラゴンの死骸に向かって歩いていった。

「へっ、誰が逃げるかよ! このままおめおめと森に帰ったら毎年狩り大会で優勝している俺達エレクトラ班は村中の笑いものになっちまう」

 やっぱりそういう奴等なんだよなぁ、僕は背中越しに弓を構えているエルフを観た。

「善なる風よ、悪しき者を貫け『ウインドアロー』! 『ウインドアロー』! 『ウインドアロー』! 更におまけだ、死ね『五月雨撃さみだれうち』! 避けられるものなら避けてみやがれ!」

 そう言い、数発の魔法の矢と大量の本物の矢を僕に向けて放った。
 丁度良かったよ、まだ試していない能力もあったし。

「『マジックタウロス』、『ライトホーンファイヤー』!」

 僕は『マジックタウロス』に変わるとすかさず、矢に向けて右の角から炎魔法を放った。

 魔法の矢は魔力が拡散して威力が弱まり、本物の大量の矢は燃えだした。更に続けて、『レフトホーンアイス』!

 魔法の矢は魔力が更に拡散して消えてなくなり、本物の大量の焦げた矢は凍りつき地面に落ちた。僕はエルフに近づいて行った。

「ば、馬鹿な!? 俺の必勝技が効かない……来るな! ま、まて、待ってく――」

「――『レフトホーンアイス』!『ライトホーンファイヤー』! 次にエルフ族に会う事があるのなら、お前等みたいな奴で無いことを願っているよ」

 二つの魔法攻撃を食らったエルフは炭となった。終わったか、それよりドラゴンの死骸どうしようかな? 毒を抜かないと食べられないし、またスープにするか。でも早く食べないとまた腐っちゃうよな。
 
 僕はドラゴンの死骸を見上げながら考える。あっそうだ!

「『レフトホーンアイス』!」

 凍らせておけば大丈夫だろ。

 それにしても僕ってもしかしなくてもかなり強くなっているよね。
 これならあの領主、いや金色と銀色の騎士に勝てるかも。
 あいつら言っていたよね、『祝福の儀』を受け終わった子供達の中で有能な『ジョブ』や『スキル』を授かった子供を部下として雇い入れる為に領地内の町や村を回ることを、毎年恒例・・・・にするって――。
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