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とりかえあやかし奇譚
3.
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次に目を開いた時、敦宣は陽の差す地に立ち尽くしていた。
はっきりとしない頭を振り、辺りを見渡す。
「ここは…」
段々と意識が明瞭になってきた。
そして気付いた。
間違うはずがない。
ここは自らが住む対屋の庭だ。
でも、何故? 自分は三の姉の対屋にいたはずだ。それに夜中だったはずなのに、今は燦々と白い陽が差している。
浄化に失敗してしまったのだろうか。ならば此処は彼の世か。
呆然としていると、鳥が囀ずる鳴き声に紛れて何か聞こえた気がして耳を澄ます。
「泣き声…?」
泣き声が聞こえる。誰かが泣いている。
長閑な日和に不釣合な聞く者の胸が痛くなる程に悲痛な泣き声は止む気配がない。
気にかかった敦宣はその方向へふらりと足を向けた。
それほど歩かぬ内に、彼は泣いている童を見付けることが出来た。
その子どもは広い庭にたった独りぼっちで立ち尽くしていた。わんわんと辺りに響く程に泣いているのに、誰も周りにはいない。
声を掛けようと近付き、童の容姿がはっきりと見えてはっと息を呑んだ。足が止まる。
まさかと思う。
…あれは、
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