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発露
5.
しおりを挟む僅かの沈黙があった。
重さを感じる如くの静寂に「出来ない」と再び範子が言う。
「だってそんなのは君の本心じゃないもの」
敦宣が視線をそらす。
「いいえ、本心です。本当にそう思っています」
「嘘だよ」
「…あなたに何がわかる」
「わかるよ! 友だちだから」
その瞬間、範子に掛かっていた束縛が解けた。
誰よりもわかったのだろう 「あ…」と、ほとんど絶望したような吐息が敦宣から漏れた。
ぎくしゃくと後退り、範子から距離を取ろうとする。
明らかに動揺している彼は、再び範子を拘束しようとしない。
「もう一度言う。君はそんなこと思ってない」
真っ向から言い放ち、範子は静かに立ち上がった。束縛されていたものの、身体の感覚に違和感はない。
「…こないでください」
なおも後退る敦宣が範子から離れようとする。灯りの届かなくなった暗がりから、彼の拒絶が聞こえる。
聞き届けることが出来ない範子は「ごめん」と言うほかない。
「どうして君がそんなことを言うのか、君の言う通り私にはわからないけど、でも君をひとりには出来ない」
敦宣に歩み寄り屈み込む。
「一緒に君の姉君を助けよう」
恐らくその言葉が決定打だった。
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