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内裏に現るる怪奇の真実
12.
しおりを挟む「あなたの言う通りですよ」
敦宣が応えた。
自ら問い詰めておきながら、範子は頭をがつんと殴られた心地となった。
「どうして…っ! 私も協力すると言ったじゃないか。何か訳があるんだろう?」
衝動のまま、なおも背を向けたままの敦宣に詰め寄る。敦宣はやはり何も言わない。
「ねえ、敦宣!」
肩を掴んで、此方に向かせようとする。
その瞬間、伸びてきた敦宣の手が、がっと音を立てそうな程に強く範子の手首を掴み返した。
「…あ、」
途端、範子の視界が大きくぶれる。
どさりと音がして、やっと範子は自身が床に倒れ付したのだと気付いた。
「あなたに、何がわかるのですか」
範子の腕を引き掴んだ先で、平坦なけれど隠しきれない憎しみを滲ませた声が降る。これは誰のものだろう。
「いいえ、わかるものか。わたくしにはないものを全て持つあなたになど」
身体に力が入らない。
金縛りにあったように身じろぎもできない範子に、聞き慣れたはずなのに知らない声が聴こえた。
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