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内裏に現るる怪奇の真実
8.
しおりを挟む彼女の足音がすっかり遠退いた頃。
範子は気配を気取られぬよう静かに敦宣の対屋を後にした。
梅壷の局でみた、白昼夢の中の敦宣がどんな表情を浮かべていたのかはわからない。そも、あれが現実のものかもわからぬ。
けれどあの時、範子には彼の想いが流れ込んできていた。
憤りや怒り。
姉を思いやる気持ちの中に、それは確かに存在していた。
そして、同僚が言っていた噂話の背景と、梅壺の局で聞こえてきた声ならぬ助けを請う声。
…どうか。
どうか、思い過ごしであってほしい。
そう願いながらも、範子は過日、横目に通り過ぎた対屋に脚を運んだ。
――――右大臣の三の姫、梅壺の女御の対屋へ。
渡廊の先、妻戸は固く閉じられていた。妻戸だけではなく蔀戸も。
差し込む月影。整然と整えられた庭園。白昼夢でみたままの景色があった。
やはりと思う。
敦宣が佇んでいたのは、梅壺の女御の対屋だったのだ。
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