婚約者は男で姫でした~とりかえあやかし奇譚~

あさの

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内裏に現るる怪奇の真実

5.

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宿直所では休息とばかりに若衆が同僚たちと雑談に花を咲かせていた。
呵々と明るい笑声が止むと、俄にばたばたと忙しない足音が室内にも聞こえてきた。だんだんと近付いてくる。

なんだなんだと一同が顔を見合わせていると、大きな音を立てて宿直所の妻戸が開け放たれた。駆け込んできた姿を認め、彼等は更に驚くこととなった。何時もは泰然自若、優雅でありながら気さくな侍従の君が息を荒らげ、その面もまるで鬼気迫ったよう。

「侍従の君!?」

すっとんきょうな声をあげた同僚のひとり、右馬頭に狙いを定め、侍従の君は詰め寄らんばかりに距離を詰めてきた。

「なあ! あの話詳しく教えてくれないか!?」

「おお、なんの話!?」

「前に! ここで話してただろう!? 内裏の怪談話だよ!」

「ああ…あれか! …って、興味なかったんじゃねえのかよ」

「いいから! 大内裏で怪談の話がされるようになったのはいつからなんだ?!」

「わかったわかったから! 落ち着けって!」

勢いに押されていた右馬頭がどうどうと馬のように侍従の君を制してふうと息をついた。

「怪異が何時からだって? …そうさな、確か…如月の頃か」

「如月…、梅壷の女御様が里下がりされた時分か」

ぼそりと侍従の君が独り言つ。
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