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内裏に現るる怪奇の真実
2.
しおりを挟むだが…。
かつて胡蝶が言ったことには、“陽”の気と性質を持つ陰陽生たちではあやかしの姿を捉えることさえ難しいらしい。“陰陽”の気をどちらも持つ“逆転の者”でなければ迎え撃つのも難しいとも。
更には破魔の力を持つのは敦宣だけときた。
もしも陰陽寮が本腰を入れたとしても、結果は自ずと見えている。
やはり、この怪異の元凶を絶たなければ問題は解決しないか…。
物思いに耽っていた時の、いきなりのことだった。
――――くるしい…
歩んでいた脚が止まった。
隣を行っていた女房が不思議そうに此方を窺ってくる。
けれど、それに反応を返す余裕はなかった。
「いまの…」
呟いたそばから、また小さな声が聞こえてきた。隣の平然としている女房の様子を見るに、これは範子にしか聞こえていないようだ。
ともすれば聞き逃しそうな程にか弱い声を、その痕跡を辿る。
彼方かと振り仰いだ先に何があるのか認識した瞬間、範子は踵を返していた。女房が驚いた様子で範子を呼ぶ。
「ごめん! 姉上には急用があって伺えないって伝えておいて!」
姉上…。女房が呆気に取られたように呟いた。
公の場では姉の事は『梨壷の更衣』と呼ぶ範子が、それさえすっぽ抜けて足音も荒く慌てて駆けていく。
これは大変な事があったに違いないと思われていたのだが、勿論それは範子の預かり知らぬ事である。
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