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逆転の者
6.
しおりを挟む「あんな危険な事を、ずっと君ひとりで?」
「…はい。でも、胡蝶が付いていますし…」
敦宣が弁解するように言う。
「最近、あのあやかしが内裏で頻繁に現れるようになったのです。胡蝶が言うには内裏の『陰』の気が乱れているそうです。実害がないのがまだ救いですが、いつひとを襲い出すかわかりません。だからわたくしが内裏に忍び込んで祓っているのです」
「そんなの危ないよ! それに敦宣たったひとりでなんてさ。陰陽師にやってもらった方が良いんじゃないの」
親しい友人が夜な夜な危険と隣合せの状態にある。そんなの黙っていられない。範子が我が事のように必死になって抗議するも、張本人たる敦宣は困ったように笑うだけだ。
彼に代わって言うのは胡蝶だ。
「陰陽師なんて皆男でしょうが。陽の気を持つ男共が、陰の気に集まってるあやかし共の存在に気付けると思う? アンタ、内裏で陰陽師があやかしを視たって言ってんの聞いたことある? その仲間内で聞いた?」
「…ない」
「あいつらを祓うことが出来るのは敦宣だけなのよ」
敦宣も胡蝶に賛同する。
「出来る人間が限られているのならば、出来る人間がするしかありませんから」
「なら、私も付いてく!」
「え?」
「付いてって、私が敦宣を守る!」
これには敦宣が驚いて言葉をなくした。
「範子さまこそ、先程恐ろしい目に遇ったばかりでしょうに…」
「だからこそだよ! ね、いいでしょ、胡蝶。危なくなったらまた私の気でもなんでも敦宣に渡せばいいんだし」
「そうねえ…」と思案するように室内を旋回していた胡蝶が範子の手に舞い降りた。
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