1 / 16
Prologue
1.
しおりを挟む「いってて…っ」
強かに尻を打ち悶絶する。
痛みに涙の滲む目を開いて見渡し息を呑む。
「な……、か、隠し通路…?」
石畳の回廊が奥へ奥へと続いている。
見上げれば明かり取りの穴らしきものが点々と見え、月明かりが差し込んでいる。差し込んで光は壁に跳ね返ってより輝きを増しているように見える。
壁の石が光を反射させきらきらと星のように光っているからだ。
ただの石ではないのだろうか。
「こんなものがあったのか…」
この回廊が何処まで続いているのか知らないが、これを使えば外に出ることも可能だ。
壁づたいによろよろと進みながら、アレックスはだんだんこの状況に腹が立ってきた。
膝まづいて四つん這いになるわ、転がり落ちて全身痛いわ、全身衣服も含めて満身創痍だ。良い歳した大の大人が何をしているのかとも思う。
そもそも、この仕事だって初めからキナ臭いと思っていたのだ。なんだ子どもの監視って。己は確かに流行り病にこそ掛かりはしないだろうが、その代わりにゴリゴリ削られていくのは良心と精神力だ。
それに加えて今や身体を張っているこの状況。
「くっそー…こんなの給金に見合わん。ぜったい追加で請求してやるからな…」
痛む腰を抑え、アレックスが苦々しく呟いた。
その時、
「良く出来ているでしょ?」
不意にその声はした。
音がしそうな程勢いよく振り返る。
「秘密の抜け道だよ。有事の時に此処を通って逃げるんだって」
「ヘーゼル…さま…」
振り返った先、そこにはヘーゼルが居た。
彼は車椅子生活を余儀無くされていたはずの二本の脚でしっかりと立ち、アレックスを見ていた。
呆然とするアレックスに向け小首を傾げ、ヘーゼルがにこりと笑った。
「今晩は、アレックス先生」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる