鏡のなかの魔法使い－現代女子高生がご令嬢のフリとかマジ無理なんですけど－

1

6.

「－－－－おまえ、何者だ？」
 

言い放った。
 
先ほどまで浮かべていた柔和な笑みは消え失せ、向けられる絶対零度の眼差しに震え上がる。ほらあ！　絶対こうなると思ったよ！

「目的はアリス様の力か。こんなちんちくりんに彼女の身体を乗っ取れるほどの力があるとは俄に信じがたいけど…、まあ、話は引き摺り出してからだな」とかなんとか言いながら銀髪の男がこちらに近付いてくる。

「ち、ちが…、私は」

それ以上の言葉が出てこない。動かせない身体で唯一動く口で身の潔白を証明したくても、私にも今の状況が何一つわからないのにどうしろと！

カツカツと響く硬質な靴音と同じような無機質な冷たい声音で男が言った。

「殺しはしない。少なくとも尋問が終わるまでは」

バチン！ ものすごい静電気のような閃光と衝撃が走った。

「ぎゃあ！」

たまらず、恥もへったくれもない悲鳴、というより雄叫びをあげて私はベッドから転がり落ちた。ごつん、と床に頭をぶつけて瞼の裏に星が散る。　

…ん？　でもそれ以外は何処も何ともない。

恐る恐る目を開ける。

「い、生きてる…？　アッ生きてる！　よかったー！」

脚だけベッドに残した逆さまの状態で生還を喜ぶ。
ひとしきり喜んだ私は、目の前に立派な姿見があることに気付き、更にそこに映った姿を見て瞠目した。